沖潤子 さらけでるもの
2022年に神奈川県立近代美術館で開催された展覧会の図録。刺繡を軸に独自の表現を展開してきたアーティスト、沖潤子の創作の全貌をたどる内容。母が遺した布や糸を素材に、衣服やバッグなど身近なものへ針を刺すことから始まり、次第に平面や立体へと領域を広げていった作品群を豊富な図版で紹介。布地に刻まれる無数の縫い目は、個人的な記憶や感情を超えて、時間や存在の痕跡そのものを浮かび上がらせる。繊細でありながら圧倒的な力を放つ刺繡作品の記録として、貴重な資料となる図録。
画帖 桂離宮 | ブルーノ・タウト
ドイツの建築家ブルーノ・タウトが、桂離宮の美を描きとめた画帖。1930年代に来日したタウトは、日本建築の中に見出した機能美と精神性に深く感銘を受け、スケッチや文章によってその本質を記録した。本書はその記録をまとめたもので、離宮の構造や意匠、庭園の構成を繊細な筆致で描写している。西洋の建築理論と東洋の美意識が出会う貴重な記録として位置づけられる。タウト生誕100周年を記念して復刻された、建築史的にも重要な資料。限定800部。別冊解説付属。
アイデア No.321 ヤン・チヒョルトの仕事
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.321(2007年3月号)は、モダン・タイポグラフィの巨匠ヤン・チヒョルトを総特集。青年期の習作から「新しいタイポグラフィ」の時代、ペンギンブックスやロシュ製薬での仕事までを包括的に収録し、その変遷と思想を豊富な図版と資料で辿る。ロビン・キンロスやクリストファ・バークらによる最新研究の論考に加え、チヒョルト自身による「紙面と版面の明晰なプロポーション」も邦訳掲載。
アイデア No.344 カレル・マルテンスの教え
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.344(2011年1月号)。前半では、オランダを代表するデザイナー、カレル・マルテンスの仕事と思想を「日常のグラフィック工学」と題して特集。活版印刷や独自の構成法を通して、日常の中に潜む造形原理を探るマルテンスの実践を豊富な図版とともに紹介する。後半は松本弦人による特集「メディアの遠心力」。デジタル黎明期から「サルブルネイ」「BCCKS」まで、メディアとデザインの新たな可能性を切り拓いてきた活動を振り返る。
アイデア No.349 松田行正デザイン図鑑
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.349(2011年11月号)。特集は、エディトリアルデザインから建築グラフィック、ダイアグラムまで幅広く手がけるデザイナー・松田行正。「牛 若丸出版」を主宰し、企画・執筆・造本を自ら行う独自の出版活動でも知られる松田の仕事を、書物と図像を軸に多角的に検証する。書物や図が連鎖し、互いに呼応し合う思考の構造を豊富な図版で提示する内容となっている。ヨースト・グローテンス、今田欣一らによる寄稿も収録。
アイデア No.343 山口信博/タイポグラフィの書窓から
アイデアNo.343(2010年11月号)。巻頭特集は、折形デザイン研究所を主宰するグラフィックデザイナー・山口信博。「相即の形」と題し、ブックデザインを中心に、活版印刷、折形、俳句、古物蒐集など、多岐にわたる活動を通してその思想と創作の根幹を探る。第二特集「タイポグラフィの書窓から」では、『TM』誌のカバーデザインや『オクタヴォ』の軌跡をはじめ、杉浦康平、平野甲賀、原研哉ら34名によるタイポグラフィ関連書籍の紹介を収録。日本と世界のデザイン思考を架橋する内容となっている。
ABC: Beitrage Zum Bauen | Lars Muller
1920年代のヨーロッパ建築前衛を象徴する雑誌『ABC: Beiträge zum Bauen』の復刻版。スイス・バーゼルで1924〜1928年にかけて刊行され、マルト・スタム、ハンス・シュミット、エル・リシツキー、エミール・ロートらが編集を務めた。合理主義的な設計思想や新しい建築技術、都市計画、社会構想などを論じ、バウハウスやロシア構成主義と並ぶ重要な運動体として機能した。建築を科学・技術・社会の融合としてとらえるその誌面は、モダニズム建築史における貴重な記録となっている。
Win Wenders: Einmal
ドイツの映画監督、ヴィム・ヴェンダースによるフォト・エッセイ集。映画のロケ地や旅先など、世界各地で撮影した写真と、「かつて…」という書き出しで綴られる44のエッセイを収録する。風景と記憶、時間の断片を結び合わせた構成は、読む者にヴェンダースの旅に同行しているような感覚をもたらし、静かなロードムービーのような余韻を残す。
岡崎和郎 見立ての手法 Who’s Who
彫刻家・岡崎和郎の代表的シリーズ「Who’s Who(人名録)」に焦点をあてた展覧会図録。ヨーゼフ・ボイス、ブランクーシ、デュシャン、北斎、瀧口修造など、岡崎自身に影響を与えた実在の人物を題材に、敬意とユーモアを込めて制作されたオブジェ群を紹介する。身近な素材をもとに、形の内側や偶然の造形から新たなイメージを立ち上げる岡崎の創作を、多彩な図版とともに辿る。半世紀を超える造形思考の軌跡を検証する内容となっている。
The Coffee Table Coffee Table Book
日常的でありながら意外と注目されないコーヒーテーブルに焦点を当てた一冊で、タイトルも軽妙な言葉遊びとなっている作品集。19世紀フランスから現代のリビングルームにいたるまで、130点を超えるテーブルを充実したキャプションとテキストとともに紹介。イサム・ノグチ、チャールズ&レイ・イームズ、ヴェルナー・パントン、ロン・アラッド、アズミ夫妻らの作品を収録。モダンからコンテンポラリーまでの発展と流行を描き、デザインやインテリアに関心のある読者必携の内容となっている。
ex-dreams もうひとつのミッドセンチュリーアーキテクチャ | 福島加津也
アルミニウム素材に着目し、モダンからポストモダンへの変換期に作られた建築をリサーチした資料集的一冊。アメリカを中心にフェアフィールド・ゴールデンドーム、ダウニーのマクドナルド1号店など建築の発展とともに写真や図面、実際に訪れた際の体験談などを文章・漫画・イラストで収録。
純粋思考物体 | 河村悟
1989年に書き終えられながら長く未刊だった幻の著作、詩人・河村悟による『純粋思考物体』を、約30年を経て書籍化した一冊。1ページにわずか1行という詩や断章、舞踏論、寓話、ポラロイド写真など113の断片で構成され、言葉と沈黙、思考と存在のあわいを探るような内容となっている。直木賞作家・佐藤究が企画、プロデュースとして参加。アトリエ空中線による装丁が作品の持つ静謐な緊張感を際立たせている。詩と哲学、そして視覚芸術の交点に立つ、稀有な思索の書。
グッドバイ ピカソ
20世紀を代表する芸術家、パブロ・ピカソの創作と日常を記録した写真集。報道写真家デヴィッド・ダグラス・ダンカンが17年にわたり密着し、アトリエでの制作風景から家族や友人との親密な時間までをとらえる。絵画や彫刻などの作品図版に加え、ピカソの人間像を伝えるエッセイも収録。カメラを通して描かれたもう一つの「ピカソの自画像」ともいえる内容で、画家の創造の源泉とその生の息づかいを鮮やかに映し出している。
アフリカンデザイン クバ王国のアップリケと草ビロード | 渡辺公三、福田明男
アフリカ中部・コンゴ民主共和国のクバ王国に伝わるラフィアヤシの織物を紹介する資料集。草ビロードやアップリケによって構成された幾何学的な文様は、リズムと偶然が生み出す独自の造形美をたたえている。織りや刺繍の技法、図形構成の分析などを通して、クバの人々が継承してきた造形感覚と美意識を探る。渡辺公三と福田明男による解説を付し、アフリカン・デザインの根源的な魅力を明らかにしている。
Spoons in African Art
チューリッヒのリートベルク美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された一冊。木、骨、象牙などで作られたスプーンに焦点を当て、アフリカ美術におけるその造形と象徴性を探る。食事や儀式といった日常と信仰のあわいに用いられたスプーンを通して、アフリカ彫刻に宿る精神性と造形美を紹介。表現主義やキュビスムにも影響を与えた独自の美意識を、繊細かつ力強い作品群から読み解く。豊富なカラー・モノクロ図版と解説を収録している。
The Complete Pirelli Calendar Book
イタリアのタイヤメーカー、ピレリ社が1964年から1974年にかけて制作したカレンダーの写真を収録した作品集。ノベルティとして配布されてきた同カレンダーは、商業写真とファッション写真の境界を越えたビジュアル表現として知られ、サラ・ムーンやアレン・ジョーンズら著名写真家が撮影を担当している。洗練された構図と官能的なイメージが融合し、時代の美意識とスタイルを映し出す。10年間にわたるピレリ・カレンダーの軌跡をまとめた、写真史的にも貴重な資料となっている。
想像力博物館 | 荒俣宏
博物学者・作家の荒俣宏が構想した「想像力のための博物館」を誌上に展開した一冊。深海生物を特集した「アクアリウム」や、「寓意名画展示ギャラリー」「想像力文学展示室」など、多彩な展示室によって自然科学と幻想世界を往還する。装丁・構成は鈴木一誌。博物学的知とデザインの力が融合し、荒俣宏の豊かな想像世界が紙上に立ち上がる。
アルケオメトリア 考古遺物と美術工芸品を科学の眼で透かし見る
2012年に東京大学総合研究博物館で開催された展覧会の公式図録。考古遺物や美術工芸品を科学的手法で分析し、その内側に潜む歴史的・文化的情報を読み解く試みを紹介している。放射性炭素年代測定、X線CTスキャン、元素分析など、急速に進化する分析技術の原理と応用を解説し、縄文土器や漆工芸、化石標本など多様な資料の調査事例を収録。人文学と自然科学の協働によって、遺物に新たな生命を吹き込む「見ること」の再構築を提示している。
Snow-White | Gerhard Richter
ドイツを代表する現代アーティスト、ゲルハルト・リヒターによる作品集。2005年11月に制作されたエディション作品「Snow-White」全100点を、カラー図版で収録する。抽象絵画と写真の間を行き来する独自の表現は、柔らかな色面や微細なぼかし、質感のレイヤーによって構成され、見る者に多様な解釈を促す。本作はリヒターの探求するイメージの曖昧さや記憶の不確かさを象徴するシリーズとして位置づけられている。
ゲルハルト・リヒター
2022年に東京国立近代美術館などで開催された巡回展の公式図録。ドイツを代表する現代美術家、ゲルハルト・リヒターの16年ぶりとなる大規模な個展を記録している。代表作《ビルケナウ》(2014)をはじめ、ペインティング、ドローイング、写真、ガラス、映像作品など、多岐にわたる表現を収録。60年に及ぶ創作活動を通して、見ることや描くことの根源を問い続けてきたリヒターの思索をたどる内容となっている。シリーズごとの作品解説や論考、寄稿エッセイも充実し、その芸術的到達点を多面的に検証している。
Kisho Kurokawa: Museums
建築家・黒川紀章が設計した博物館や美術館建築を中心にまとめた写真資料集。国立民族学博物館、和歌山近代美術館、広島市現代美術館など、国内外の主要プロジェクトを大判の写真や図面で紹介している。メタボリズムの思想を源流に、自然や歴史、地域文化との「共生」を軸に据えた黒川の建築理念を多角的に検証。空間構成や素材の扱い、光の取り込み方など、構造と詩情を両立させた造形の特徴を明らかにしている。思想家としての一面も反映された、黒川建築の本質に迫る一冊。
Shiroiya Hotel Giving Anew 白井屋ホテル | 藤本壮介 ほか
群馬県前橋市で江戸時代に創業され、廃業した「白井屋旅館」が『白井屋ホテル』として再生したプロジェクトの記録。建築家、藤本壮介による建築設計、現代アート、デザイン、⾷へのこだわりほか、豊富な図版、解説を収録。塩田千春、小野田健三、KIGIら、アート作品が飾られた客室など、建築とアートとが融合した、『白井屋ホテル』の全容を知ることのできる一冊。英語表記、日本語の解説冊子付き。
Modern Architecture | William Saunders
建築写真家エズラ・ストーラーが撮影した、アメリカにおけるモダニズム建築をまとめた建築資料集。フランク・ロイド・ライト、マルセル・ブロイヤー、フィリップ・ジョンソン、ル・コルビュジエら、著名な建築家による建築作品を紹介。「建物の本質」を捉えようとする明快な構図、美的感覚で撮影されたカラー・モノクロ含む図版387点、解説を収録。英語表記。
Peter Beard
アメリカの写真家ピーター・ビアードの創作活動を包括的にまとめた作品集。若くして始めた手書きの日記やスケッチ、写真、コラージュを通じて、アフリカの自然や野生動物、そして自身の人生を芸術として記録してきた軌跡をたどる。1960年代にケニアへ移住し、作家カレン・ブリクセンとの交流を経て、象の大量死など環境破壊の現実をカメラで記録。血や新聞の切り抜き、筆跡を重ねた独自のコラージュは、生命と死、文明と自然の境界を可視化している。ファッション誌やアート界の人物たちとの交わりも含め、写真、日記、ドローイングが融合したビアードの芸術世界を壮大に再構成している。
Portraits | Hiroshi Sugimoto
写真家・杉本博司による「ポートレート」シリーズを収録した作品集。2000年にグッゲンハイム美術館で開催された展覧会にあわせて刊行されたもので、ロンドンのマダム・タッソー蝋人形館に所蔵される歴史上の人物像を、黒背景と劇的なライティングのもとで撮影している。ヘンリー8世やオスカー・ワイルド、ヴォルテール、昭和天皇など、歴史に刻まれた人々の姿が、現実と虚構の境界を曖昧にするかのように浮かび上がる。肖像画の伝統と写真のリアリティを交錯させながら、時間と存在、そして「見る」という行為の本質を問うシリーズを多角的に検証している。
Sean Scully
アイルランド出身でアメリカを拠点に活動する画家・版画家ショーン・スカリーの20年間の制作をまとめた作品集。1969年から1989年にかけて描かれた油彩、木版、エッチングなど135点を収録し、水平と垂直のストライプによる構成を通じて、形と色、秩序と感情の交錯を探る。幾何学的な構造の中に人間的な温度を宿すスカリーの絵画は、抽象表現に新たな詩的深度を与えるものであり、ミニマリズム以後の絵画における精神的探究を示している。
Yves Dana
スイスの彫刻家イヴ・ダナによる1983〜1988年の創作をまとめた作品集。鉄やブロンズといった重厚な素材を用い、力強くも繊細な造形で構築された彫刻74点を収録している。素材の表面に刻まれた傷や溶接の痕跡が、時間の堆積と物質の記憶を感じさせる。制作風景の写真や解説テキストを通して、形と質量、光と影の関係を探るダナの造形思考を浮かび上がらせている。静謐さと緊張感を併せもつ彫刻世界を記録した一冊。
The Snail that Climbed the Eiffel Tower and Other Work by John Minton
イギリスの画家・イラストレーター、ジョン・ミントンの商業デザインとイラストレーションを集成した初の作品集。書籍装画や雑誌、広告、映画スタジオや航空会社のポスター、さらには切手や壁紙のデザインまで、戦後イギリスの視覚文化を彩った多様な仕事を紹介している。エリザベス・デイヴィッドの料理書における挿絵など、洗練された線描と詩情ある構図は今なお新鮮な魅力を放つ。350点以上の図版を通じて、ミントンが確立した独自のドローイングの美学と、グラフィックアートにおける革新的な役割を明らかにしている。
ハマスホイとデンマーク絵画
デンマークの画家ヴィルヘルム・ハマスホイを中心に紹介する、2020年東京都美術館での展覧会図録。静謐な室内画や肖像画に加え、19世紀前半に花開いたデンマーク絵画黄金期の作品を収録している。ハマスホイを取り巻く同時代の画家たちの仕事を通じて、彼の独自の表現がいかにして育まれたかを探る。デンマーク美術の流れを一望できる資料性の高い内容で、芸術文化の背景を浮かび上がらせている。
スキン+ボーンズ 1980年代以降の建築とファッション展
2007年に国立新美術館で開催された展覧会「スキン+ボーンズ―1980年代以降の建築とファッション」の公式図録。国内外の建築家やファッションデザイナー約40名の作品を通じて、構成や素材、テクニック、概念など両分野に共通する創造の原理を探っている。彫刻的なフォルムや構築的衣服、インスタレーションなどを豊富な図版で紹介し、建築とファッションの交差から生まれる現代表現の可能性を提示している。
内藤礼 生まれておいで生きておいで
2024年から2025年にかけて銀座メゾンエルメスフォーラムで開催された展覧会の図録。東京国立博物館で開催された美術家、内藤礼による同名の展覧会と共同で企画されたもの。自然光と人工の光が交差する都市の空間において、儚くも濃やかに感じられる生への眼差しと、「生の没入」を見出そうとする内藤の試みを記録している。
トーキョー・トーテム 主観的東京ガイド
外国人デザイナーやアーティスト、社会科学者、都市研究者など46人の著者が東京を観察し、独自の視点でまとめたユニークな東京のガイドブック。美味しいレストランや観光スポットを紹介する従来のガイドとは異なり、東京での常識や都市のリズム、地形、居場所などに着目。2012年に「SHIBAURA HOUSE」で行われたアムステルダム拠点の都市研究ラボ「モニーク(Monnik)」のワークショップを起点に生まれたエッセイ、写真、地図、ポエム、マンガなど多彩な表現を通じて、理知的なリサーチと情緒的なアートが融合した東京の姿を描き出している。建築家、都市学者、人類学者、銭湯通やコンビニ研究者など、多彩な視点で切り取られた東京を、新たな目で楽しめる一冊。
氾濫するイメージ 反芸術以後の印刷メディアと美術 1960’s-70’s
2008年にうらわ美術館で開催された同名展示の図録。情報化社会の幕開けとともに、視覚表現が劇的に拡張した時代の動向を、ポスターや書籍、雑誌、版画など多様な資料から検証している。赤瀬川原平、木村恒久、中村宏、つげ義春、タイガー立石、宇野亜喜良、粟津潔、横尾忠則ら8名の作品を収録し、前衛美術やアングラ演劇、社会運動と連動した表現を豊富な図版で紹介。絵画が後退したとされる時代にあって、印刷メディアが果たした創造的役割を通じ、イメージの力が再び立ち上がる瞬間を描き出している。
Peter Lindbergh: Selected Work 1996-1998 for my friend Franca Sozzani
ファッション写真界の巨匠、ピーター・リンドバーグが1996年から1998年にかけて手がけた作品を厳選したヴィジュアルブック。白黒を基調としたリンドバーグらしい写真で、モデルたちの自然な美しさと力強さを引き出し、ファッションフォトグラフィーの新しい表現を切り開いた時代の記録となっている。副題にある通り、イタリア版ヴォーグの編集長、フランカ・ソッツァーニとの特別な関係性も垣間見え、雑誌『Vogue Italia』での仕事の背景や当時のモードシーンも感じられる一冊。巻頭にはインタビューも収録。
Lady by Mapplethorpe
アメリカの写真家ロバート・メイプルソープがボディビルダーでモデルのリサ・ライオンを被写体に撮影した作品集。筋肉美と女性らしさ、強さと官能性が同時に表現された作品群は、単なるポートレートの枠を超え、写真家とモデルが互いに協働して挑発的かつ洗練された美を追求している。メイプルソープ独特の光と影の演出によって、モデルの肉体は彫刻のように際立ち、視覚的なインパクトとともに心理的な緊張感を生み出している。
素手時然 SO SHU JI NEN
無印良品の創業35周年を記念して刊行されたコンセプトブック。「素・手・時・然」という四つの言葉を軸に、ものづくりや暮らし、自然との関わりを見つめ直す構成となっている。杉本博司、濱田庄司、北大路魯山人、深澤直人、向田邦子、岩宮武二など、時代や分野を超えて共鳴する作家や思想家の言葉と作品を収録。約150篇のテキストと100点の図版によって、人の手と時間、自然の理が織りなす「生活の美」を多角的に描き出す。無印良品の理念を、静かな哲学とともに提示する一冊。
ファッション イン ジャパン 1945-2020 流行と社会
日本の戦後ファッションの変遷を総合的にたどる展覧会の公式カタログ。昭和初期から現代までの装いの歴史を、デザイナーと消費者という二つの視点から検証し、社会やメディアとの関係性の中で再構築している。洋裁文化の普及、ヒッピーや竹の子族、渋谷のストリートカルチャーなど、多様な潮流を資料とともに紹介。イッセイミヤケ、コムデギャルソン、KENZO、ミナ ペルホネン、Mame Kurogouchiなど国内外で活躍するブランドの作品を含む約700点の図版を収録し、服飾と時代精神の交錯を浮かび上がらせる。装うことの社会的意味と文化的価値を多角的に示している。
アイデア No.241 ヘンリク・トマシェフスキー
アイデアNo.241(1993年11月号)。巻頭特集はポーランド・ポスター界の巨匠、ヘンリク・トマシェフスキー。シンプルな構成とユーモアに富んだ造形表現で知られるトマシェフスキーの代表作や軌跡を豊富な図版とともに紹介する。ほかにも「奔放なデザイン ラッセル・ウォレン・フィッシャー」「現代ロシアのグラフィックデザイン」「ソール・バスとイレーンのフィルム・ディレクション」など、国際的なデザイン動向を俯瞰する内容となっている。表紙デザインはトマシェフスキー自身によるもの。
アイデア No.239 ’93卒業制作グラフィックデザイン誌上展
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.239(1993年7月号)。巻頭特集は石岡瑛子。日本を代表するアートディレクターの石岡瑛子が手がけた舞台や映画の美術、衣装の仕事、ポスター、パッケージデザインなどを紹介。そのほか「東京ADC 40周年記念展『From Tokyo』&『Advertising Art History 1950-1990』」「イシュトバン・オロスのビジュアル・トリック」「’93卒業制作グラフィックデザイン誌上展」などを収録。
アイデア No.237 ジークフリート・オーデルマット&ロスマリー・ティッシィ
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.237(1993年3月号)。巻頭特集はジークフリート・オーデルマット&ロスマリー・ティッシィ。スイスのグラフィックデザイナーであり、共同でアトリエを構える2人がこれまで手がけたポスター群やトレードマーク、プロジェクトを紹介。そのほか「イラストレーター、ティム・バウワー」「スロバキアのグラフィック・デザイナー、デュシャン・ユネ」「アートディレクター○△□展2(青葉益輝、浅葉克己、長友啓典)」などを収録。表紙デザインはロスマリー・ティッシィ。
アイデア No.232 ヴァルデマル・シヴェジ
アイデアNo.232(1992年5月号)。巻頭特集はポーランド・ポスター界を代表するグラフィックデザイナー、ヴァルデマル・シヴェジ。独自の色彩感覚と構成力で知られ、1000点を超えるポスター作品を生み出してきたシヴェジの仕事を紹介する。ほかにも「オノフリオ・パチオーネ、その多才な変身振り」「マイケル・パークスのアート」「90年代のペンタグラム:新しい世代へ」など、90年代初頭の国際的グラフィックシーンを多角的に収録している。表紙デザインはヴァルデマル・シヴェジ。
アイデア No.116 クリエーティブ・パートナーズのコミュニケーション・パッケージ・デザイン
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.116(1973年1月号)。巻頭特集はクリエーティブ・パートナーズのコミュニケーション・パッケージ・デザイン。カナダでクリエイティブマーケティングコンサルタントとして活動する彼らによるこれまで手がけてきた仕事の数々を紹介。そのほか、「第20回ミュンヘン・オリンピックの視覚伝達」「アイデアのエレメントXIV《無限大の限りなく広がる絵》」「“少ない要素で最大の効果を”デビッド・ワイゼルタイヤー」などを収録。
Anselm Kiefer: Opus Magnum
ドイツの現代美術家アンゼルム・キーファーによる作品集。2024年、ファーガス・マカフリー東京で開催された日本では26年ぶりとなる個展にあわせて刊行された。展示された20点のショーケース作品と水彩画を中心に、12名の執筆者による論考と解説を収録。鉛、砂、植物、書物など多様な素材を用い、神話・歴史・記憶を重層的に織り込むキーファーの表現を多角的に読み解く。深い象徴性と物質の詩学が交差する造形世界を通して、彼の芸術観の核心に迫っている。
Joseph Beuys: Plakate/Posters
ドイツの芸術家ヨーゼフ・ボイス(1921–1986)が手がけたポスター作品を体系的に収録した作品資料集。1960年代から没年までに制作された280点以上のポスターを網羅し、展覧会の告知から政治的キャンペーンまで、その活動の広がりを示している。緑の党の設立にも関わったボイスにとって、ポスターは単なる告知媒体ではなく、芸術と社会を結ぶメディアであり思想の実践の場でもあった。タイポグラフィや写真を駆使した大胆な構成の数々から、彼の「すべての人は芸術家である」という理念と、表現と行動が一体化した芸術観が浮かび上がる。