Landscape | Toshio Shibata
写真家・柴田敏雄によるモノクロームの風景作品を収めた写真集。1980〜90年代に撮影された、法面のコンクリート壁、砂防ダム、落石防止ネットなど、人工構造物が自然の中に存在する風景を精緻に捉えている。絵画を学んだ経験をもとに、造形としての「形」と「面」に強い関心を寄せ、土木的構築物をランドアートのように再構成する視覚的アプローチを展開。人為と自然、保護と破壊のはざまに立ち現れる日本の風景を、静謐で緊張感ある構図の中に写し出している。形態への美意識と批評的視線が交差する、柴田写真の原点を示す一冊。1000部限定刊行。
TERRA | 柴田敏雄
写真家・柴田敏雄による初期の代表作集。砂防施設やダム、整地された山肌など、人為によって変形した風景をモノクロームで静かに捉える。コンクリートと岩石、水と土が交錯する場所に潜む造形的な秩序と、そこに滲む時間の痕跡を研ぎ澄まされた眼差しで描き出す。そっけなくも澄明な画面のなかに、自然と人間の営為が織りなす繊細な均衡を浮かび上がらせている。木村伊兵衛賞受賞後、初の作品集。
The Touch: Spaces Designed for the Senses
『Kinfolk』の創刊者ネイサン・ウィリアムスと、デンマークの建築ユニット Norm Architects のジョナス・ビャーレ=プールセンによる共著。視覚的な美しさにとどまらず、「五感で感じる空間デザイン」をテーマに、世界各地の住宅、ホテル、美術館、店舗など25以上の空間を紹介する。イルゼ・クロフォードやビジョイ・ジャインによる現代建築から、アルネ・ヤコブセンの名作まで、光、素材、自然、色彩、共同体といった要素がもたらす豊かな感覚体験を探る。ジョン・ポーソンやデイヴィッド・トゥルストルプへのインタビューも収録し、デザイン哲学や色彩理論の歴史的文脈を踏まえながら、空間の本質に迫る内容となっている。
Axel Vervoordt: Living with Light
インテリアデザイナーでありアートディーラーとしても知られるアクセル・ヴェルヴォールトが手がけた、20の邸宅と空間を収録した写真集。自然光を中心に据え、水、金属、木などの素材をモダンな美学と融合させた、調和のとれた空間を紹介する。都市から海辺、田園まで多様な環境に展開される住まいのなかに、アートと自然の共存というヴェルヴォールトの理念が貫かれている。写真家ラジーズ・ハマニが撮影を担当し、光が生む陰影と造形の美を余すところなく捉えている。
The 2001 File: Harry Lange and the Design of the Landmark Science Fiction Film
映画『2001年宇宙の旅』の美術・プロダクションデザインを、アートディレクター/インダストリアルデザイナー、ハリー・ラングの資料から徹底検証したアーカイブブック。宇宙船やインテリア、機器、コスチュームに至るまでのスケッチ、コンセプトアート、試作、スチル写真を通して、NASAでの経験を背景にもつラングがいかに「機能しうる未来像」を構築したかを辿る。採用案だけでなくボツ案も収録し、平面ディスプレイやタブレット端末、宇宙ステーションなど、後に現実となるテクノロジーを先取りしたデザイン思考の全貌に迫る一冊。
POOL | 平野太呂
写真家・平野太呂による作品集。舞台はアメリカ西海岸、使われなくなりスケーターたちの遊び場となったプールである。優美なカーブを見せるもの、草木に覆われ荒廃したもの、グラフィティに彩られたものなど、多様な姿を写し取っている。そこには平野が愛するアメリカと、同時に憂うアメリカの両面が交錯し、時代の記憶と風景の変容が静かに刻まれている。
Andrea Cochran: Landscapes
サンフランシスコを拠点に活動するランドスケープアーキテクト、アンドレア・コクランの25年にわたる活動をまとめたモノグラフ。住宅、商業施設、公共空間など11の代表的プロジェクトを収録し、写真、図面、平面図とともにその設計思想を明らかにしている。自然環境と建築の対話を重視し、地形や気候、植生を繊細に読み解きながら、幾何学的な構成と有機的な素材感を融合させた空間づくりが特徴。コルテン鋼や黒いコンクリート、地元の石材などを用い、風景の中に静けさと緊張感を同時に生み出す。秩序と詩情を兼ね備えたその造形は、現代ランドスケープの新たな可能性を示している。
Andreas Gursky
ドイツの写真家、アンドレアス・グルスキーによる作品集。2007年から2008年にかけてスイスのバーゼル美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された。大量生産や消費社会、情報化といった現代の構造を象徴的に映し出す視覚的スケールの大きな作品を収録。〈スーパーカミオカンデ〉やF1レース会場、北朝鮮・平壌のアリラン祭など、圧倒的な構図と精緻なディテールで世界の風景を再構築し、グルスキーの写真世界の到達点を示している。
鳥を見る | 野口里佳
写真家・野口里佳による初期代表作を収めた作品集。「潜る人」(1995年)、「鳥を見る」、「フジヤマ」(1997年)の三部構成で、水中を漂う人、空を見上げる人、山に挑む人など、自然とともにある人間の姿を静かなまなざしでとらえる。日常の風景のなかに潜むもうひとつの宇宙を写し出し、見る者を現実と幻想のあわいへと導く。野口が初期より追い求めてきた「世界の根源に触れる瞬間」を感じさせる一冊。
Photosynthesis 1978-1980 | 田原桂一
写真家・田原桂一がダンサー田中泯とともに1978〜1980年にかけて行った「光と身体」のフォトセッションを収めた作品集。パリ、ローマ、ニューヨーク、アイスランド、九十九里浜など、異なる土地と気候のもとで、身体が光にどう呼応し、環境とどのように交感するのかを探る試みである。被写体と主題、記録と表現が溶け合う三年間の軌跡は、田原の写真表現の原点を示すものとなった。潜水艦基地の暗がりから白夜のアイスランドまで、光が身体に触れ、皮膚が世界を感じ取る瞬間が写し取られる。長く封印されていたネガから蘇った本作は、「身体気象」という言葉のもとに展開された、光と人間存在の関係をめぐる根源的探求であり、田原の芸術観を再考させる内容となっている。
Touchable Sound: A Collection
アメリカのDIYロックシーンを象徴する7インチレコードのアートワークを網羅したデザイン資料集。ブライアン・ロッティンガーらによる企画・編集のもと、約25年にわたり全米各地で生まれた手作業による限定プレス盤のジャケットやスリーブデザインを収録している。The Olivia Tremor ControlやNeutral Milk Hotelなど、インディ・シーンを支えたバンドの作品に加え、ミュージシャンやレーベル運営者によるエッセイも掲載。大量生産とは無縁の、時間と労力を注ぎ込んだ一点物のデザインを通して、音とヴィジュアルが結びつくアンダーグラウンド文化の創造力と自由な精神を鮮やかに伝えている。
Le Corbusier Alive
20世紀建築を代表する巨匠ル・コルビュジエの主要作品を再考する作品資料集。ラ・ロッシュ邸、ユニテ・ダビタシオン、ロンシャンの礼拝堂、チャンディーガルの都市計画など、代表作から知られざる建築まで20のプロジェクトを取り上げ、未発表を含む約180点のカラー写真と図面を収録している。理想都市「輝く都市」構想から修道院や小住宅まで、造形思想と人間的スケールの交錯を多角的に検証。没後も論争と再評価が続くコルビュジエの建築を、現代の視点から鮮やかに読み解いている。
ROOMS STUDIO 2023
ジョージア・トビリシを拠点とするインテリアデザインスタジオ「Rooms Studio」による作品集。ナタ・ヤンベリゼとケティ・トロライアが2007年に設立した同スタジオは、トビリシ初の女性主宰スタジオとして、建築、家具、インテリアを横断する独自の世界観を築いてきた。本書では、設立以来の代表的プロジェクトを美しい写真とともに収録し、素材の質感や空間の陰影、造形のリズムを通してその創作哲学を可視化している。ジョージアの文化的背景と現代的感性が交錯する空間表現を通じて、Rooms Studioの造形理念と実践を的確に示している。
Supernatural: The Work of Ross Lovegrove
イギリスのデザイナー、ロス・ラブグローブの創作活動を包括的に紹介するモノグラフ。アップル、ソニー、ノル、カッペリーニなど世界的企業との協働を通して、自然界の構造や生命的なフォルムを先端技術と融合させた造形を探求してきた。家具や照明、家電、ボトルデザインから航空機のインテリアまで、多様なプロジェクトを収録。ポーラ・アントネッリやセシル・バルモンドによる論考を交えながら、形態とテクノロジー、機能と感性が共鳴するラブグローブのデザイン思想を多角的に検証している。
Tiny Living Spaces: Innovative Design Solutions | Lisa Baker
世界各国のミニマムな住空間をテーマに、限られた面積を最大限に活かす建築デザインを紹介する資料集。アメリカ、スウェーデン、スイス、ブラジルなど、多様な気候や文化的背景をもつ地域から厳選された小住宅の事例を収録している。巧みな間取り設計や収納の工夫、複数機能を兼ね備えた空間構成など、狭小であることを前向きに捉えた豊かな発想が随所に見られる。440点に及ぶ写真、図面、内外装のディテールとともに、ミニマルな暮らしがもたらす新しい価値観と住まいの可能性を明快に伝えている。
情報の歴史21 象形文字から仮想現実まで
人類がどのように情報を生み出し、編集し、伝えてきたのかを壮大なスケールで描く年表。象形文字の誕生から現代のAIや仮想現実まで、政治・経済・科学・思想・文化の五つの領域を横断し、情報の進化を多層的に整理している。東西を貫く世界同時年表の構成により、出来事の関係性や知の連鎖が浮かび上がる。1990年刊行の初版をもとに増補された新版では、新章「情報の文明」と序文「人新世に突入した〈情報の歴史〉の光景」を追加し、人類史の中で情報が果たしてきた役割とその未来像を立体的に提示している。
Party in the Back | Tino Razo
プロスケーター、ティノ・ラゾによる写真作品集『Party in the Back』は、南カリフォルニアの住宅街に点在する空きプールを舞台にしたスケートカルチャーの記録である。水を抜かれたプールを滑走の場とし、仲間たちとともに過ごした日々を、スケーターならではのまなざしでとらえている。そこには、サブカルチャーの自由と衝動、そしてアメリカン・ドリームの残影が交錯する。荒廃と美が同居するプールの造形を、類型的かつ叙情的に写し出した本書は、消えゆくプール文化へのオマージュであり、都市と遊びの関係を再考させる視覚的記録となっている。
Herman Miller: Interior Views
アメリカの家具メーカー、ハーマン・ミラー社のデザイン史を体系的にまとめた作品資料集。1930年代にギルバート・ローデがアール・デコ様式の家具で同社を刷新して以降、ジョージ・ネルソン、チャールズ&レイ・イームズ、アレキサンダー・ジラードらによる名作家具やテキスタイル、さらに新世代デザイナーの仕事まで、アーカイブに残る200点以上の写真で紹介している。家庭とオフィスのモダンデザインを牽引してきたハーマン・ミラーの思想と造形の変遷を、当時のカタログや年表とともに視覚的にたどる構成。アメリカン・モダニズムの発展を読み解くための貴重な資料であり、デザイン史における革新の軌跡を明快に伝えている。
apartamento issue 08
スペイン発のインテリア誌『Apartamento』第8号。世界各地で活躍するアーティストやデザイナー、編集者らの居住空間を紹介し、暮らしと創造の関係を探る。写真家マルセロ・クラシルシック、メンフィスのメンバーとして知られるナタリー・デュ・パスキエ、デザイナーのフェイ・トゥーグッド、Rafael de Cárdenas、R.E.M.のマイケル・スタイプらが登場。生活の痕跡や空間の個性をありのままに捉え、ライフスタイル誌としての独自の視点を提示している。
Carlo Scarpa
イタリアの建築家カルロ・スカルパ(1906–1978)の仕事を体系的に紹介する作品集。ヴェネツィア建築大学で教鞭をとりながら、ロンドン、パリ、ローマ、ミラノなどで展覧会の会場構成を手がけ、ヴェネツィア・ビエンナーレでも長年にわたり空間設計を担ったスカルパ。本書では、円窓が印象的な代表作ブリオン家の墓をはじめ、カステルヴェッキオ美術館、カノーヴァ美術館、バルボーニ邸など、彼の主要建築を豊富な写真と図面で紹介している。細部の意匠から素材の質感、光の操作に至るまで、スカルパが建築と工芸、伝統とモダニズムを融合させた造形理念と実践を的確に示している。
Fictitious Dishes: An Album of Literature’s Most Memorable Meals
文学作品に登場する食事を実際に再現し、写真として記録したユニークな作品集。『失われた時を求めて』のマドレーヌ、『ライ麦畑でつかまえて』のチーズサンド、『不思議の国のアリス』のティーパーティーなど、古典から現代文学まで約50作品の名場面を、著者自らが料理し、スタイリングし、撮影している。写真には原作の引用や作家の逸話、食文化にまつわる小話が添えられ、文学と味覚、記憶と想像力が交錯する世界が広がる。読書と食の関係を視覚的に探る、文学へのオマージュに満ちた一冊。
Simplicity at Home | Yumiko Sekine
ライフスタイルブランド「fog linen work」創設者、関根由美子による暮らしの提案をまとめた一冊。日本の四季や伝統に根ざしながら、自身の感性を軸に組み立てた心地よい生活の工夫を紹介している。キッチンや寝室など日々の空間づくりから、花の飾り方、季節ごとのリネンの使い分け、保存食の仕込み、ハーブバス、リース作りに至るまで、自然の移ろいに寄り添う実践的な知恵が詰まっている。整えること、飾ること、育むことを通して「シンプルに暮らす」ことの豊かさを伝え、住まいと心をともに整えるヒントを示している。
柚木沙弥郎 life·LIFE(小鳥柄)
2021年に開催された染色家・柚木沙弥郎の展覧会にあわせて刊行された作品集。1969年から2020年にかけて制作された布作品を、写真家・平野太呂が撮り下ろした写真で紹介している。全図を収めるだけでなく、断ち落としの原寸大布を12の片観音に大胆にレイアウト。色彩の力強さ、模様のリズムが紙面から立ち上がる構成となっている。さらに代表的な染色作品や絵本原画、紙粘土と布による人形作品を大判で掲載し、作家の幅広い表現を伝える。インタビュー「心を形で残す」も収録し、創作への思いや姿勢を映し出している。
Design in Steel | Mel Byars
世界各国のデザイナーやメーカーによるスチール製プロダクトを100点以上紹介したデザイン資料集。家具、照明、テーブルウェア、キッチンツール、バスルーム用品など、日常のさまざまな領域におけるスチールの造形美と機能性を探る。堅牢で傷つきにくい素材特性に加え、光沢や質感、曲線やエッジの表現を通して多彩なデザインアプローチを提示。各作品には設計者によるコメントや技術情報も添えられ、スチールという素材が持つ構築的な魅力と、現代デザインにおける可能性を明快に伝えている。
石が書く | ロジェ・カイヨワ
哲学者・社会学者ロジェ・カイヨワ(1913–1978)が、自身の蒐集した石を通して自然と美の根源を考察した名著。風景石や瑪瑙、セプタリアなど、偶然に生まれた石の模様に人の想像力が見出す風景や形象をめぐり、自然と芸術、偶然と意識のあいだに横たわる美の起源を探る。石の断面に現れる抽象的な文様を前に、カイヨワはそれを「自然の書く言葉」として読み解き、聖性や詩学、神話的思考にまで思索を広げていく。『遊びと人間』に連なる知的冒険として、自然と人間の感性が交錯する地点を鮮やかに提示している。
ジャン・アンリ・ファーブルのきのこ 221点の水彩画と解説
フランスの博物学者ジャン・アンリ・ファーブル(1823–1915)によるきのこ図鑑。『昆虫記』で知られる彼が晩年に手がけた植物学的研究の集大成であり、221点に及ぶ水彩画と詳細な解説を収録している。観察と描写を重ねて描かれたきのこたちは、学術資料としての精密さと芸術作品としての美しさを兼ね備え、自然の造形への深い洞察を伝える。ファーブルの科学的眼差しと詩情が融合した本書は、博物学と美術の境界を超える貴重な一冊となっている。
Japan Style
ヴィクトリア&アルバート博物館と国際交流基金による展覧会の図録『Japan Style』。日本文化の造形的魅力を「Materials」「Elegance」「Simplicity」などのテーマに沿って紹介し、伝統から現代までの美意識とデザイン思想を俯瞰する。展示のアートディレクションとエディトリアルデザインは田中一光、デザインは佐村憲一、テキストは勝見勝が担当。端正で洗練された構成のなかに、日本の「かたち」と「精神」を視覚的に再構築した内容となっている。
Xiaoxiao Xu: Watering My Horse by A Spring at the Foot of the Long Wall | Maria-Caterina Bellinetti
中国生まれでオランダを拠点に活動する写真家、シャオシャオ・シュウによる作品集。万里の長城に沿って約25,000キロを旅し、その道中で出会った人々の暮らしや風景を丁寧に写し取っている。壮大な象徴としての「長城」ではなく、その周縁に息づく現実に焦点をあて、廃墟となった城壁や塔、かつての防衛施設の痕跡をたどりながら、生活の痕跡や民間伝承、儀式、土地に刻まれた記憶を掘り起こしていく。急速に変化する経済発展の陰で、なお伝統的な営みを続ける人々の姿を通して、歴史と現在が交錯する中国の風景を静謐に描き出している。
Concrete in Contemporary Art | Marcel Joray
スイスの批評家マルセル・ジョレによる、コンクリートと美術の関係を探究した研究書。石や青銅のように古代文明と結びついた素材とは異なり、コンクリートが現代においていかに美の言語となり得るかを多角的に論じている。彫刻や建築壁面へのレリーフ作品、さらに都市計画や公共空間の中で造形的要素を担う環境芸術までを包括的に紹介。建築技術者とアーティストの協働によって生み出されたモニュメンタルな造形を通じて、素材としてのコンクリートがもつ新しい美の可能性を提示している。
Tomoo Gokita The Great Circus | 五木田智央
2014年にDIC川村記念美術館で開催された展覧会「五木田智央 Tomoo Gokita The Great Circus」にあわせて刊行された公式カタログ。独自のモノクローム表現で知られる画家・五木田智央の代表作から最新作まで約40点を収録している。抽象と具象、ユーモアと不穏さが交錯するペインティング、ステンシルやドローイング、カラーのペーパーワークなど、多様な技法と主題が展開される。90年代以降のサブカルチャーに根ざしたグラフィカルな感性と、絵画そのものへの探究心が融合し、人物像やフォルムを通して現代の視覚文化を再構築する試みが示されている。
Pop Will Eat Itself | Stella Populis
スケートボーダー、アーティスト、モデル、デザイナーとして活動するブロンディ・マッコイによる作品集。ロンドンのロンキーニ・ギャラリーで開催された初個展「Pop Will Eat Itself」を記録したもので、世界のセレブリティ50人の肖像を“トーストの焦げ跡”で描いたユーモラスかつ風刺的な作品群を収録。インターネット上で話題となった「トーストに現れたキリスト像」の逸話をモチーフに、現代の偶像崇拝やメディア文化を軽妙に批評する。テイラー・スウィフトやビヨンセ、リアーナ、ベッカムなど、現代ポップカルチャーの象徴的存在を題材に、マッコイのウィットと美意識が凝縮された一冊。
Richard Prince | Phaidon Contemporary Artists Series
アメリカのアーティスト、リチャード・プリンスの作品世界を総覧する資料集。70年代後半、出版社タイム・ライフ社の切り抜き部門で働いていたプリンスは、広告のみが残った雑誌ページを再撮影し、自らの写真として再構成するという実験的手法を始める。既存のイメージを引用・転用するその姿勢は、消費社会やメディア文化を批評的に映し出すポップ・アート以降の表現として高く評価された。マールボロ広告を用いた「カウボーイ」シリーズや、モーターサイクルギャング、ジョークやコミックを題材にした作品など、アメリカのサブカルチャーを素材とした独自の再構成が展開される。インタビューや論考を通して、プリンスの「真正性」への問いとアーティストとしての自己演出を多角的に検証している。
In The Darkness of The Night | Bruno Munari
イタリアの美術家・デザイナー、ブルーノ・ムナーリによる絵本。紙の質感や色彩、くりぬき加工など、造本そのものを遊びの場とするムナーリらしい創意に満ちた一冊。暗闇の中に潜む光や形、静けさのなかで息づく生命の気配を、ページをめくる行為そのものを通して体感させる。見る・触れる・想像することが一体となった、ムナーリの造形哲学を凝縮した作品となっている。
The Three Robbers | Tomi Ungerer トミ・ウンゲラー
フランス出身の絵本作家、トミー・ウンゲラー(1931–2019)による代表作『The Three Robbers(すてきな三にんぐみ)』の英語版。黒いマントと帽子に身を包んだ三人の泥棒たちは、夜道で人々を脅かしていたが、ある日出会った孤児の少女ティファニーとの交流をきっかけに運命を変えていく。恐ろしさと優しさ、闇と光が交錯する寓話的な物語は、子どもだけでなく大人にも深い余韻を残す。1969年の初版以来、16の言語に翻訳され、世界中で読み継がれてきたロングセラー。グリムやアンデルセンの系譜に連なるウンゲラーらしい、ユーモアと風刺、そして人間への温かなまなざしが息づく一冊。
レイモン・サヴィニャック パリの空のポスター描き(カバー緑) | サントリーミュージアム
フランスのポスター作家、レイモン・サヴィニャックの仕事を紹介する展覧会「レイモン・サヴィニャック パリの空のポスター描き」の図録。〈モンサヴォン〉〈ビック〉など、ユーモアと温かみのあるポスター作品をはじめ、デザイン原画やスケッチを多数掲載している。単純な線と明快な色彩で人々の記憶に残る広告を生み出したサヴィニャックの創作の魅力と、フランス戦後ポスター芸術の豊かさを伝えている。
玩草亭 百花譜 福永武彦画文集 全3冊揃
小説家であり詩人の福永武彦による晩年の画文集。長野・信濃追分での療養生活の傍らに描かれた草花の写生と随筆をまとめた全3冊構成。ヤブカンゾウ、ワレモコウ、ニシキギ、ボケなど、身近な植物の姿を丹念に描き、採集場所や花の名を添えたスケッチは、まるで小さな植物図鑑のように詩情豊か。筆致と文からは、自然と静かに向き合う福永の晩年のまなざしと、絵筆に託した安らぎが伝わる一冊となっている。
もうひとつの創造 芹沢銈介の収集品 | 静岡市立芹沢銈介美術館
型絵染の人間国宝として知られる芹沢銈介(1895–1984)が生涯を通じて蒐集した工芸品を紹介する、静岡市立芹沢銈介美術館による図録。自らの収集行為を「もうひとつの創造」と呼んだ芹沢は、染織、陶器、木工、ガラス、仮面、装身具など、世界各地の生活文化に根ざした造形を精力的に集めた。本書では、約4,500点におよぶコレクションの中から339点を精選し、国や地域、時代を超えて手仕事に宿る美を探る。蒐集品を通じて、芹沢が見出した「用の美」と創作の源泉を読み解く貴重な資料となっている。
益子の父 人間国宝 濱田庄司
日本の陶芸家であり人間国宝の濱田庄司(1894–1978)の生涯と作品をたどる作品集。益子を拠点に独自の民藝陶を築き上げた濱田の初期から晩年までの代表作を時代順に収録し、皿や壺、土瓶、片口など多彩な造形を紹介している。柳宗理や芹沢銈介、土門拳ら盟友による寄稿も掲載され、彼の創作を支えた人々との関係や思想的背景にも光を当てる。工房での制作風景や道具の記録を通して、素材と手業に根ざした美意識、そして「用の美」を追求した濱田の造形哲学の核心に迫っている。
A Smile In The Mind | Beryl McAlhone
グラフィックデザインにおける“ウィットの力”に焦点を当てた名著。記憶に残るデザインとは何か、人の心を惹きつける「ひらめき」や「遊び心」はどのように生まれるのかを探求する。曖昧さ、置換、二重の読みなど、視覚的ユーモアを構成する要素を分析しながら、広告や企業レポート、パッケージ、情報グラフィックなど多岐にわたる実例を紹介。アメリカ、イギリス、ヨーロッパ、日本の300名以上のデザイナーによる作品を収録し、知的な発想と視覚表現の関係を体系的に示している。ウィットをデザイン思考の核心としてとらえる、時代を超えて読み継がれる一冊。
季刊デザイン no.16 廃墟と建築
太田出版が発行したグラフィックデザイン、エディトリアル・デザインを中心とする季刊誌『季刊 d/SIGN』no.16。特集は「廃墟と建築」。建築という多様なデザイン行為の集約を、あえて「廃墟」という切り口から照らす。そのほか、磯崎新のインタビュー記事や原武史+塚本由晴の対談、畠山直哉、坂口トモユキによる写真、戸田ツトムの連載など、多彩な内容を収録。
季刊デザイン no.14 小さな画面
太田出版が発行したグラフィックデザイン、エディトリアル・デザインを中心とする季刊誌『季刊 d/SIGN』no.14。特集は「小さな画面(スモールスクリーン)のデザイン」。携帯電話、iPod、ノートパソコン、デジカメなどの。外界との接触面である小さな画面に、「デザイン」「レイアウト」〉の視点から、光を当てる。そのほか、杉浦康平、港千尋らのインタビュー記事や松田行正による連載「旋回する線」も掲載。
アイデア No.386 アラブ首長国連邦“グラフィックデザイン省”をめぐる61のキーワード
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.386(2019年7月号)は、「アラブ首長国連邦“グラフィックデザイン省”をめぐる61のキーワード」を特集。中東初のデザイン・ビエンナーレ「フィクラ・グラフィック・デザイン・ビエンナーレ」を中心に、非西洋圏におけるデザイン・ビエンナーレの意義を考察する。アラビア語タイポグラフィの論考や中東デザイナーのインタビューを通して、グローバルなデザイン言語の多様性を浮き彫りにし、中東におけるグラフィックデザインの表現を歴史的文脈から照らし出している。
アイデア No.377 グラフィックデザインのめ
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.377(2017年4月号)は、「グラフィックデザインの〈め〉新世代デザイナー21人の姿勢」を特集。1980年代後半生まれのデザイナーたちに焦点を当て、SNSの普及、東日本大震災、五輪エンブレム問題など、価値観が揺らぐ時代における彼らの思考と実践を多角的に紹介している。「め」という言葉には、見るための「眼」、芽吹きの「芽」、文化の肌理を示す「目」など、複数の意味が重ねられており、新しい世代が示す感性と表現の方向性を象徴している。混沌と変化の時代におけるデザインの現在形を浮かび上がらせている。
アイデア No.371 アイデアのアイデア
デザイン誌『アイデア』第371号(2015年9月号)。巻頭特集「アイデアのアイデア」では、デザインの完成形ではなく、その生成過程や思考のプロセスを多角的に検証している。テクノロジー、道具・方法、コミュニケーション、編集・メディア、環境・社会の五章構成で、世界各国のデザイナーが選んだキーワードとテキストを通して、現代デザインにおける思考の地図を編み上げる。特別企画「カセットカルチャーの現在形」では、音楽とデザインの関係を通じてDIY精神とメディア表現の交錯を考察。