沖縄の陶器 | 濱田庄司
陶芸家・濱田庄司の監修により、沖縄の陶器を体系的に紹介する資料集。17世紀の古我知焼、18世紀の知花焼、19世紀の壺屋焼など、各時代を代表する皿や花器を中心に、多彩な陶器をカラー写真で収録している。地域の土や釉薬、文様に宿る独自の造形感覚を通して、沖縄の陶芸史と美意識を読み解く構成。装丁は染色家・芹沢銈介によるもので、民藝運動と深く結びついた美の系譜を視覚的に伝えている。
むかし渡更紗 全3冊揃 | 芸艸堂
インドを起源とする染織文化・更紗を収めた全3冊構成の木版画集。草花や樹木、鳥獣、人など、自然と人間の営みをモチーフに描いた彩色木版72点を収録している。木綿布に多彩な文様を染め上げた更紗の豊かな表現を通じて、異文化の交流と装飾美の歴史を伝える貴重な資料。伝統的な手法によって再現された図柄からは、東西の美意識が融合する染織デザインの源流を読み取ることができる。
Another America: A Testimonial to the Amish | Robert Weingarten
写真家ロバート・ワインガーテンが、アメリカ中西部を中心に暮らすアーミッシュの共同体を4年間にわたり撮影した作品集。インディアナ、アイオワ、オハイオ、ペンシルベニア、テネシー、ウィスコンシンに点在する彼らの生活を記録し、信仰とともに営まれる日常の美しさと静けさを捉えている。農作業に励む姿や霧に包まれた風景、子どもたちの遊び、家族の集いなどを通して、300年以上にわたり守られてきた質素で自立した生活の哲学を視覚化。近代化を拒みながら信仰に根ざした共同体を維持する人々の姿を、詩的な光の中に描き出している。
Bauhaus-Architecture 1919-1933 | Hans Engels、Ulf Meyer
1919年から1933年までのバウハウス期に建設された建築作品を体系的に記録した建築資料集。ヴァルター・グロピウス、マルセル・ブロイヤー、ミース・ファン・デル・ローエをはじめとする教師や卒業生による約70件の建築を、豊富な写真と図面、解説とともに収録している。ドイツを中心にウィーン、プラハ、バルセロナ、ブダペストなどヨーロッパ各地に残る建築群を通して、機能性と美学を融合させたバウハウスの理念を視覚的に辿る構成。芸術と産業の統合を目指したその精神が、いかに現代建築の礎となったかを示す重要な記録となっている。
赤瀬川原平の芸術原論展
2014年に千葉市美術館、大分市美術館、広島市現代美術館を巡回した「赤瀬川原平の芸術原論展」の図録。1960年代から現在に至るまでの赤瀬川原平の活動を総覧し、絵画、インスタレーション、彫刻、漫画、写真など多彩な表現を包括的に紹介。巻末には荒俣宏、南伸坊、藤森照信、山口晃ら17名による寄稿を収録し、幅広い視点から赤瀬川の創作を振り返る構成となっている。日本の前衛芸術における赤瀬川原平の軌跡を浮かび上がらせている。
ジョセフ・コーネル 箱の中のユートピア | デボラ ソロモン
アッサンブラージュの先駆者として知られるジョゼフ・コーネルの創作人生をたどる評伝。女優のブロマイドや天体図、貝殻、古い切り抜きなど、心を捉えた断片を木箱に収め、詩的な世界へと変換した独自の作品を生涯に800点以上制作した芸術家の歩みを、豊富な資料とともに読み解く。デュシャンからダリまで、多くの芸術家を魅了したその美学に迫り、映画制作や雑誌デザインなど幅広い活動も紹介。日常の欠片からユートピアを紡いだコーネルの創造の軌跡を掘り下げる一冊。
Phenomena | Sara Galbiati, Peter Helles Eriksen, Tobias Selnaes Markussen
コペンハーゲンを拠点とする3人の写真家、サラ・ガルビアーティ、ピーター・ヘレス・エリクセン、トビアス・セルナエス・マークセンによる共同作品集。UFOや宇宙人といった現代の神話に着目し、ネバダ、ニューメキシコ、アリゾナ各州を巡る調査旅行を通じて撮影された写真を収録している。研究者や信奉者たちのポートレート、収集された資料や記録を交えながら、人間が未知の存在に抱く信仰や想像力の在りかを探る一冊。英語表記。
長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。
2017年に東京都写真美術館で開催された、写真家・長島有里枝の展示図録。初期の代表作〈self-portrait〉〈家族〉〈empty white room〉から、アメリカ留学期やスイス滞在制作の作品、さらに女性のライフコースをテーマとした新作まで、約25年にわたる表現の軌跡を豊富な図版とともに紹介している。自己と家族、ジェンダー、社会との関係を問い続ける長島の視線を通して、個人的な経験が社会的問題と交差する写真表現の可能性を探る内容。タイトルの通り、ユーモアと批評精神が織り交ざる彼女の創作世界を総覧する一冊。
Flora ドイツ語版 | Nick Knight
ファッションフォトグラファー、ニック・ナイトによる植物写真集のドイツ語版。ロンドン自然史博物館に所蔵される約600万点の植物標本の中から、ナイトが3年半をかけて選び抜いた46種を撮影している。押し花となった植物を超高精細で写し取り、その繊細な構造や色彩、自然が生み出す形態の多様さを芸術的に再構成。キュレーターのサンドラ・ナップによる解説が添えられ、科学的記録と美術表現のあわいに立ち上がる生命の痕跡を浮かび上がらせている。写真とデザインの調和が際立つ、植物美の新たな視覚体験を提示する一冊。 ドイツ語表記。
かぜとつちと x elements | 紀成道
写真家・紀成道による作品集。島根・奥出雲を舞台に、千年以上続くタタラ製鉄を軸として、人と自然、風土と文化の関係を見つめ直す試みを収めている。変化し続ける空や大地の色、季節とともに営まれる祈りや行事、そこに生きる人々の表情を通して、土地に息づく時間の層を静かに映し出す。伝統と現代が交錯する風景の中に、継承の力と変化の兆しを見いだす視点が貫かれており、「風」と「土」が織りなす生命の循環を写真という記録のかたちで提示している。
VOU: Visual Poetry, Tokio, 1958-1978
写真家・詩人・デザイナーとして活動した北園克衛が主宰した前衛詩誌『VOU』に掲載されたビジュアル・ポエトリーを再構成した作品集。1958年から1978年にかけて展開された北園晩年の創作活動を中心に、9名の主要詩人による代表作を収録している。活字と図像、構成と余白を駆使して言葉の造形性を探求した実験的な詩表現を、当時の文化的・社会的背景とともに再考。モノクロ図版とともに詩人たちの軌跡をたどり、日本における視覚詩運動の到達点とその国際的意義を明らかにしている。
海市 もうひとつのユートピア
1997年にNTTインターコミュニケーション・センターで開催された、建築家・磯崎新監修による都市実験プロジェクトの公式ドキュメント。インターネットの黎明期に構想された「もうひとつのユートピア」として、現実の建築空間と仮想都市が交錯する新しい都市像を提示している。日本をはじめ世界各地の建築家・デザイナー・アーティストが参加し、デジタルネットワークを介した共同制作や通信環境を活用した都市モデルを展開。従来の都市計画や建築理論を超え、情報社会における「都市」と「身体」のあり方を問い直した、メディア・アーキテクチャの先駆的記録となっている。
Great British Editorial | Javier Fernandez
イギリスのエディトリアルデザインを総覧する資料集。ロンドンを拠点とする出版社・デザインスタジオ46社による、ブックデザイン、新聞、雑誌などの仕事を紹介。Alexander Boxill、David Pearson、Marcus Piper、Matt Willeyらによる作品を、オールカラー646ページにわたり収録している。分析や批評をあえて排し、英国デザインの多様なアプローチと洗練された表現をフラットに提示。90年代『Sleazenation』誌などの象徴的な誌面も含め、ブリティッシュ・デザインの創造力を視覚的に堪能できる一冊。
100+3 Swiss Posters: Selected by Siegfried Odermatt
スイスのグラフィックデザイナー、ジークフリート・オデルマッツが精選したポスターを紹介する作品集。マックス・ビル、カール・ゲルストナー、エミール・ルーダー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンら、スイス・デザインを代表する巨匠たちによるポスターを多数収録。スイス・モダンデザインの精髄を示す貴重な記録。英語、ドイツ語、フランス語表記。
Paul Rand ペーパーバック版 | ポール・ランド
ABCやIBMをはじめとする数々の企業ロゴを手がけ、モダングラフィックデザインに大きな影響を与えたポール・ランド(1914–1996)の生涯と仕事を追った評伝。スイス・スタイルの導入者としても知られるランドが、どのように独自のデザイン哲学を築き、企業アイデンティティの確立に貢献したのかを探っている。スティーヴン・ヘラーによる分析と解説を通して、20世紀デザイン史におけるランドの位置づけを明確に示す内容となっている。
M.I.A. | Mathangi "Maya" Arulpragasam
イギリス出身のミュージシャン、M.I.A.のアートワーク集。アルバムやミックステープのジャケットから、ライブパフォーマンス、展覧会、インスタレーション、ミュージックビデオに至るまで、多彩なビジュアル表現を収録。独自のグラフィックセンスと政治的・社会的メッセージを融合させた彼女の活動を網羅的にたどることができる一冊。歌詞や独占インタビューの抜粋もあわせて掲載。
ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情
2008年に国立西洋美術館で開催された展覧会の図録。デンマークの画家ヴィルヘルム・ハンマースホイの代表作をまとめたもので、静かな室内に人物を配した絵画や、独特のくぐもった光が生む詩情豊かな世界を多数のカラー図版で紹介。妻イーダの後ろ姿を繰り返し描いた室内画は、親密さとわずかな距離感が同時に漂う独自の空間をつくり出し、フェルメールを思わせる静謐さで観る者を引き込む。19〜20世紀転換期の北欧で、日常の光景に深い感性を宿した画家の魅力を丁寧に伝えている。
ピノッキオの冒険 | ジャンルイジ・トッカフォンド
イタリアの画家・映像作家ジャンルイジ・トッカフォンドが、『ピノッキオの冒険』を独自の解釈で再構築した作品集。原作の物語を自由に変奏し、奔放な筆致とダイナミックな構図によって、ピノッキオの世界を鮮烈に再生している。流動する線と色が生む独特のリズムが、アニメーション作家としての感性をも映し出す。邦訳テキストとともに構成され、装丁は葛西薫が手がけている。
象形文字遊行 文字始源 | 粟津潔
グラフィックデザイナー・粟津潔が、古代文字の造形に潜む美と思想を探った書体研究書。文字の始源とされる甲骨文字や金文を中心に、「象形」「会意」によって生まれた約900字を収録し、それぞれの成り立ちと造形的意味を独自の観点から考察している。デザインや現代美術にも通じる象形のリズムと構成に注目し、人類の思考が形を獲得する瞬間を鮮やかに読み解く一冊となっている。
アルヴァー・アールト 1898-1975 20世紀モダニズム人間主義
1998年から1999年にかけてセゾン美術館で開催された、フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトの回顧展公式図録。人間の感性と自然との調和を重視したアアルトの建築哲学を、住宅から公共建築、家具デザインに至る代表作を通して紹介している。平面図やスケッチ、写真資料に加え、建築史家や研究者による論考を多数収録し、モダニズムの中に息づくアアルトの人間主義的アプローチを多角的に検証。設計競技による実践的な創造の姿勢をもとに、20世紀建築におけるアアルトの思想的遺産を深く掘り下げている。
アイノとアルヴァ 二人のアアルト | 国書刊行会
2021年に開催された巡回展にあわせて刊行された図録。フィンランドを代表する建築家・デザイナー、アルヴァ・アアルトとアイノ・アアルトの軌跡を、互いに与え合った影響とともにたどる。Artek(アルテック)製品のアーカイブをはじめ、建築、ガラス製品、インテリアなど多彩な作品を紹介。カラー・モノクロを含む豊富な図版と解説で、その創作の広がりを伝えている。
SANAA/Sejima and Nishizawa: Novartis Campus Fabrikstrasse 4
妹島和世と西沢立衛による建築ユニット・SANAAが2006年に設計した、スイス・バーゼルのノバルティス・キャンパス内の施設「Fabrikstrasse 4」を詳細に紹介する資料集。コンクリートとガラスという2つの素材のみで構成されたこの建築は、階層性を排し、架構がそのまま空間を形づくるという設計思想のもとに生まれた。ウォルター・ニーダーマイヤーによる写真、アーロン・ベッツキーとヴァレリオ・オルジアーティによる論考、さらに詳細な図面資料も収録し、この建築の魅力を多角的に読み解く構成となっている。ドイツ語、英語表記。
黄金の鳥 | 荒俣宏
作家・博物学研究家の荒俣宏が、フランス博物学の黄金期を象徴する二つの鳥類図鑑「黄金の鳥あるいは金属の光沢」と「北米鳥類図譜」を細密に覆刻した作品集。両書から美術的価値の高い56葉を精選し、さらに参考図版5葉と付録図版2葉を加えた全61葉を収録。直接製版によって原図の色彩や質感を忠実に再現し、19世紀の博物画がもつ華麗さと科学的精緻さを現代に甦らせた。造本は鈴木一誌によるもので、装丁の美しさにも高い完成度を示している。
天文学と印刷 新たな世界像を求めて
2018年に開催された企画展「天文学と印刷―新たな世界像を求めて」の図録。15〜16世紀ヨーロッパ、ルネサンス期において発展した天文学と印刷術という二つの営みを軸に、知の転換がもたらした世界像の変化を探る。コペルニクス『天球の回転について』をはじめとする貴重な書物や図版資料を通じ、学者と印刷者の協働がいかに科学思想の普及と進化を支えたかを明らかにする。知の歴史と技術革新が交錯する時代の息吹を伝える内容となっている。
縄文の夜神楽 | 滋澤雅人
写真家・滋澤雅人による写真集『縄文の夜神楽』。全国の博物館・考古館を巡り、12年の歳月をかけて撮影された縄文土器・土偶27点を収録する。暗室で一点ずつ光を調整しながら長時間露光で写し出されたモノクロームの像は、縄文造形の緻密な文様と造形美を鮮やかに浮かび上がらせる。原始の祈りと美が宿る器に、写真家の静謐な眼差しが交錯し、時を超えた生命の気配を伝えている。
イメージの力 国立民族学博物館コレクションにさぐる
2014年に国立新美術館と国立民族学博物館で開催された展覧会「イメージの力 国立民族学博物館コレクションにさぐる」の図録。世界各地の伝統的な民芸品や造形物を通して、人・神・時間といった根源的テーマに対するイメージの普遍性を探る内容となっている。博物館と美術館という異なる視点から、造形と信仰、記憶と象徴の関係を多角的に提示。人類の創造行為に内在する「イメージの力」を改めて問う構成となっている。
Freunde von Freunden: Berlin
ベルリンで活躍する28人のクリエイターたちの仕事場や住まいを紹介するビジュアルブック。2009年にデザインスタジオ、NoMoreSleepによって設立されたwebマガジン「Freunde von Freunden」を書籍化したもので、ギャラリスト、アーティスト、写真家、イラストレーター、建築家、起業家など、ベルリンのトレンドセッターたちの暮らしをユニークかつ独自の視点で紹介する一冊。ドイツ語、英語表記。
野口里佳展 予感 Mimoca’s Eye Vol.1 | 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
2001年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催された展覧会「MIMOCA'S EYE Vol.1:野口里佳展 予感」の公式図録。若手アーティストに焦点をあてるシリーズの第1回として写真家・野口里佳を特集し、「ドリーミング・オブ・バビロン」「ロケットの丘」「創造の記録」「果たして月へ行けたか?」の4シリーズを収録。種子島宇宙センターで撮影された〈ロケットの丘〉をはじめ、何かが起こる前の静かな時間をとらえた作品群が、見る者に「予感」としての世界の広がりを感じさせる。装丁は中島英樹。
倉俣史朗とエットレ・ソットサス
2010年に21_21 DESIGN SIGHTで開催された展覧会「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」の公式図録。日本のデザイナー・倉俣史朗とイタリアの巨匠エットレ・ソットサス、20世紀デザインを象徴する二人の交流と創作の軌跡を豊富な図版とテキストでたどる。安藤忠雄、伊東豊雄らによる論考をはじめ、倉俣の素材への探究や空間設計、ソットサスの思想を対比的に紹介。デザインとは何かを根源から問い直す、二人の精神を伝える一冊。
C International Photo Magazine 創刊号
スペイン・マドリードを拠点とするIvory Pressが創刊した国際写真誌の第1号。世界各国の現代写真家による作品を豊富な図版とともに特集し、写真表現の多様性と現在性を多角的に紹介している。未公開資料として、彫刻家イサム・ノグチが第二次世界大戦後に撮影・収集した写真アーカイブを初掲載。さらに、ウィリアム・エグルストン、トマス・ストルート、森山大道、オラファー・エリアソンら著名作家の作品を収録し、写真の芸術的地位とその社会的影響を検証する内容となっている。
PETER DOIG ピーター・ドイグ展
2020年に東京国立近代美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された公式図録。現代を代表する画家のひとりピーター・ドイグの初期作から最新作までを網羅的に収録している。写真や記憶、映画や美術史など多様なイメージを重ね合わせて描き出された作品は、懐かしさと新鮮さが共存する独自の世界観を形づくっている。豊富な図版とテキストを通じて、ドイグ絵画の多面的な魅力を提示している。
石内都 マザーズ 2000-2005 未来の刻印
写真家・石内都による作品集で、第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館(2005)での展示にあわせて刊行されたもの。母の遺品を撮影したシリーズ〈マザーズ 2000-2005 未来の刻印〉を中心に構成され、衣服や化粧品、皮膚のような質感をもつ日用品のクローズアップを通して、母の不在と記憶の痕跡を静かに見つめている。確執と愛情のあわいにある「母」という存在を、身体とモノの関係から描き出したプライベート・ドキュメンタリー。併せて初期三部作〈絶唱・横須賀ストーリー〉〈アパート〉〈連夜の街〉も収録し、石内の表現の原点と到達点を往還する構成となっている。
小さな画面に無限の世界 熊谷守一展
2011年から2012年にかけて開催された巡回展「小さな画面に無限の世界 熊谷守一展」の図録。油彩画約160点、日本画や書33点を収録し、代表作から新たに発見された作品までを網羅する。草花や虫、猫、鳥といった身近な生命を明快な線と色彩で描き出した独自の画風“モリカズ様式”を多面的に紹介。簡素で静謐な造形の奥に、自然と生命へのまなざし、そして人としての自由を貫いた熊谷の精神を伝える内容となっている。
藤田嗣治展 東と西を結ぶ絵画
2016年に開催された藤田嗣治の回顧展公式カタログ。1909年から1968年までの創作活動を網羅し、「模索の時代」「パリ画壇の寵児」「さまよう画家」「戦争と国家」「フランスとの再会」「平和への祈り」の6章で構成されている。白い下地と繊細な線描で知られる代表作をはじめ、戦争画や宗教画、晩年の作品までをカラー図版で収録。日本とフランス、東洋と西洋という二つの文化の間で揺れ動いた藤田の人生と芸術を多角的に検証し、画家が追い求めた「調和」と「祈り」のかたちを静かに照らし出している。
アイデア No.373 ポスト・インディペンデント・マガジン
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.373(2016年4月号)。特集「ポスト・インディペンデント・マガジン」では、国内外18の雑誌に依頼し、それぞれが自由に制作した4ページを合綴した実験的構成を試みる。『Agapornis Magazine』『BLINK』『疾駆/chic』など、多様な独立系媒体が参加。デジタル時代における「紙のメディア」を再考し、雑誌をつくる行為そのものの意義と表現の可能性を探る。インディペンデント出版の現在地を可視化した特集号。
アイデア No.240 世界のグラフィックデザイナー100
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.240(1993年9月号)。巻頭特集は世界のグラフィックデザイナー100人。ソール・バス、ミルトン・グレイザー、ヤン・レニツァ、ピエール・ベルナール、田中一光、永井一正など、世界を代表するデザイナーの作品と思想を紹介する。さらに、創刊40周年を記念して、亀倉雄策、福田繁雄が寄稿。1990年代初頭の国際的デザイン潮流を記録した、資料的価値の高い一冊。表紙デザインは亀倉雄策。
アイデア No.235 福田繁雄
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.235(1992年11月号)。巻頭特集は「福田繁雄」。ピエール・ベルナールによる論考とともに、ポスター、壁画、オブジェなど、多面的な活動を豊富な図版で紹介する。そのほか、「第38回ニューヨーク・タイプディレクターズクラブ展+日本タイポグラフィ年鑑1992」、「巻末特集:オランダのタイポグラフィック・デザイン」などを収録。
アイデア No.233 亀倉雄策
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.233(1992年7月号)。巻頭特集は日本を代表するグラフィックデザイナー、亀倉雄策。オリンピックポスターなどで知られる亀倉の造形思想と仕事の軌跡を多面的に紹介する。そのほか「ミサワホーム・バウハウスコレクション 芸術と技術―新しき統一」「風刺のきいたイラストレーター、ロブ・デイ」「世界エイズポスター展」など、デザインと社会の関わりを探る記事を収録。
Zufaellige Begegnungen. Photographien | Sarah Moon
ロンドンやパリでのモデル業のかたわら写真を撮り始め、1970年より写真家へとキャリアを転向したフランス出身の写真家、サラ・ムーンの作品集。1980年代から2000年代にかけて撮影された作品をまとめたもの。ランドスケープ、ポートレート、ファッションなど、様々なテーマで捉えられた作品図版とテキストを収録。現実と幻想の中を行き来する揺れ動く心情、その世界が映し出される。
Luc Tuymans: Graphic Works 1989-2012
ベルギーのアーティスト、リュック・タイマンスによる1989〜2012年のグラフィック作品を網羅した回顧的作品集。歴史や記憶、トラウマといった主題を再構成するタイマンスの表現を、未公開資料やプルーフ、ポラロイド、水彩画などの制作過程とともに紹介している。色分解や版作りなど印刷技法の実験を通して、イメージの生成と変換を探る思考のプロセスを詳細に検証。『The Spiritual Exercises』や『The Rumor』を含む全作品を図版付きで収録し、初期ドローイングから近年のモノタイプまで、タイマンスの造形思考の展開を多面的に読み解く内容となっている。
写真と絵画 セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策
2022年にアーティゾン美術館で開催された展覧会の公式カタログ。写真家・柴田敏雄と鈴木理策が、それぞれの創作において影響を受け続けてきたポール・セザンヌを起点に、写真と絵画の関係性を探る構成となっている。セザンヌや雪舟をはじめとする石橋財団コレクションの名品と、両作家による新作・未発表作を対話的に配置し、見ること・描くこと・写すことのあいだにある思考の共鳴を可視化。時代や技法を超えて、表現の根底にある「視覚の構築」を問い直す内容となっている。
What’s Wrong with Redistribution? | Wolfgang Tillmans
ドイツ出身の写真家ヴォルフガング・ティルマンスが、2015年のハッセルブラッド国際写真賞受賞を機に発表した作品集。2005年以降、彼の展覧会で中核をなすインスタレーション《Truth Study Centre》を中心に構成されている。英国製ドアパネルを用いた木製テーブル上に、写真、新聞記事、印刷物、メモなどを固定せずに並置し、現代社会の情報や視覚的断片を再構成する試みを高精細に再現。多様な視点や矛盾する主張が同一平面上で共存する構成は、写真を超えたコラージュとして、現代の複雑な現実を照射する。全320ページにわたって展開される図版と、トム・マクドノウによる論考が、ティルマンスの思索的かつ批評的な創作姿勢を浮かび上がらせている。
Yukimasa Ida Crystallization 井田幸昌作品集
現代アーティスト・井田幸昌の国内初作品集。20代から現在に至るまでの代表作約150点を収録し、人物・風景を厚塗りの絵具で描く力強い筆致と鮮烈な色彩による独自の絵画世界を包括的に紹介している。10メートルを超える大作《箱庭―創造的な寓意―》を折り込みで掲載し、画面全体から立ち上がるエネルギーと構築的な造形感覚を体感できる構成。国内外で注目を集める若き才能の軌跡と、その結晶としての現在を捉えた一冊。
Stieglitz, Steichen, Strand: Masterworks from The Metropolitan Museum of Art
アルフレッド・スティーグリッツ、エドワード・スタイケン、ポール・ストランドという20世紀写真史を代表する三人の作家を紹介する、メトロポリタン美術館のコレクションによる作品集。2010〜2011年に開催された同館での展覧会にあわせて刊行された。写真を芸術の領域へと押し上げたスティーグリッツ、フォト・セセッションを牽引したスタイケン、ピクトリアリズムからモダニズムへの転換を象徴したストランドという、写真史の異なる潮流を体現する三者の作品を一堂に収録。未発表作や貴重な大型プリントを含む構成で、肖像や都市景観、抽象表現など多様な主題を通して、写真が芸術として成熟していく過程を辿ることができる内容となっている。