久しぶりにクラブイベントのフライヤーを作ることになりました。楽しい作業です。でもここ最近はPHPとばかり触れ合っていたためか、グラフィックデザインに頭を切り替えるための石井スイッチがなかなか見つかりません。さて困りました。
そうだ、そんな時は偉大な先達の足跡を追ってみよう。ということで、今回は昭和のアングラ演劇をめぐるポスターや写真にまつわる書籍をあつめてみました。それでは、どうぞ。
小劇場演劇をめぐるグラフィックデザイナーたちの競演
小劇場演劇とは、1960年代から70年代にかけて商業演劇と一線を画す実験的な表現で時代の潮流を生み出した劇団の活動のこと。「アングラ演劇」とも言われます。当時彼らが起こしたテント劇場や街頭劇などの多様な展開、既成概念にとらわれない型破りな舞台は多くの若者を魅了しました。そして実験性にあふれた演劇に呼応するように、それまでの演劇ポスターの枠を破る大胆で斬新なポスターが気鋭のグラフィックデザイナーたちの手で次々に作られたのです。
このムーブメントの口火を切ったのは横尾忠則でした。画像は、唐十郎が率いる劇団・状況劇場の「腰巻きお仙」(左)と「ジョン・シルバー」(右)。ほかにも「少女都市」は赤瀬川原平、「少女仮面」は金子國義、「二都物語」は及部克人、「ベンガルの虎」は合田佐和子といったように、状況劇場の公演ポスターには驚くほど多くのデザイナーや美術家が携わりました。
1967年に結成された寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷のポスターも顔ぶれが多彩。
左は1969年、粟津潔「犬神 海外版」。
右は1968年、宇野亜喜良の「男装劇 星の王子さま」。
こちらも同じく天井桟敷。合田佐和子と戸田ツトムの「レミング」「百年の孤独」。
本書「ジャパン・アヴァンギャルド」には状況劇場、天井桟敷の公演のために制作されたポスターを中心に、選りすぐりの100点が掲載されています。A3サイズの大判書籍なので、ポスターの隅々まで見ることができるのが嬉しいところ。
アングラ演劇をはじめとする副文化(サブカルチャー)をデザイナーとしてのまなざしで見つめ、その中心人物達を紹介したエッセイ集「東京モンスターランド」もおすすめです。
このムーブメントの口火を切ったのは横尾忠則でした。画像は、唐十郎が率いる劇団・状況劇場の「腰巻きお仙」(左)と「ジョン・シルバー」(右)。ほかにも「少女都市」は赤瀬川原平、「少女仮面」は金子國義、「二都物語」は及部克人、「ベンガルの虎」は合田佐和子といったように、状況劇場の公演ポスターには驚くほど多くのデザイナーや美術家が携わりました。
1967年に結成された寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷のポスターも顔ぶれが多彩。
左は1969年、粟津潔「犬神 海外版」。
右は1968年、宇野亜喜良の「男装劇 星の王子さま」。
こちらも同じく天井桟敷。合田佐和子と戸田ツトムの「レミング」「百年の孤独」。
本書「ジャパン・アヴァンギャルド」には状況劇場、天井桟敷の公演のために制作されたポスターを中心に、選りすぐりの100点が掲載されています。A3サイズの大判書籍なので、ポスターの隅々まで見ることができるのが嬉しいところ。
アングラ演劇をはじめとする副文化(サブカルチャー)をデザイナーとしてのまなざしで見つめ、その中心人物達を紹介したエッセイ集「東京モンスターランド」もおすすめです。
デザイナー・榎本了壱が、サブカルチャーを軸に20世紀を振りかえるエッセイ集。粟津潔、寺山修司、萩原朔美、糸井重里、黒川紀章など、一癖も二癖もある、魅力的な「かいぶつ」達を紹介する痛快な人物伝。
舞台演出としての小劇場演劇ポスター
「現代演劇のアート・ワーク 60's~80's」も同時代の演劇ポスター集。上記の「ジャパン・アヴァンギャルド」より小ぶりなサイズではあるものの、より多くの種類のポスターが掲載されています。当時デザイナーたちが競うように腕を振るったポスターは、ときに劇団員の役作りやシナリオにまで影響を及ぼしました。そういったエピソードからもデザイナーと劇団は互いに影響を与え合う密接な関係にあったことが伺えます。これら演劇ポスターは単なる宣伝媒体ではなく、幕があがる前から始まっている舞台演出という位置付けだったのですね。
右は演劇センター68/71「翼を燃やす天使たちの舞踏」。デザインは平野甲賀、及部克人、串田光弘の共同作業。大胆な文字組に痺れます。
左は1969年 東京キッドブラザーズ「What」。デザインはペーター佐藤と木村道弘。
右は1979年 黒色テント68/71「与太浜パラダイス」。デザインは平野甲賀、イラストレーションは大友克洋。
コミカルで軽快なつかこうへいの舞台のポスターは和田誠が。
1981年に結成された生田萬主宰「ブリキの自発団」のポスターデザインは羽良多平吉が手がけていました。グラフィックデザインのみならず、シルクスクリーン印刷を使用した実験的な試みも多く見られます。
1983年、NOISE「光の時代」。イラストレーションはひさうちみちお。60年代の重く荒々しいデザインから、80年代は明るくポップなデザインへ。
右は演劇センター68/71「翼を燃やす天使たちの舞踏」。デザインは平野甲賀、及部克人、串田光弘の共同作業。大胆な文字組に痺れます。
左は1969年 東京キッドブラザーズ「What」。デザインはペーター佐藤と木村道弘。
右は1979年 黒色テント68/71「与太浜パラダイス」。デザインは平野甲賀、イラストレーションは大友克洋。
コミカルで軽快なつかこうへいの舞台のポスターは和田誠が。
1981年に結成された生田萬主宰「ブリキの自発団」のポスターデザインは羽良多平吉が手がけていました。グラフィックデザインのみならず、シルクスクリーン印刷を使用した実験的な試みも多く見られます。
1983年、NOISE「光の時代」。イラストレーションはひさうちみちお。60年代の重く荒々しいデザインから、80年代は明るくポップなデザインへ。
新宿・花園神社からはじまった状況劇場の疾走
さて、先程から名の上がっている劇団「状況劇場」。一体どんな人びとがどんな活動を展開していたのでしょうか。その活動記録を収めた写真集がこちらの「唐十郎と紅テントその一党」です。「状況劇場」には主宰の唐十郎をはじめ、李礼仙、麿赤児、四谷シモン、根津甚八、小林薫など個性と才能に溢れる役者たちが所属していました。
1969年「少女都市」カーテンコールの風景。公演に際し、寺山修司から届けられた葬儀用の花輪をめぐり大乱闘に発展、劇団員が多数逮捕されるという武闘派な一面も。
1973年「ベンガルの虎」公演風景。熱気が伝わってくるような写真。
怪優・麿赤兒の鬼気迫るポートレート。細江英公、井出情児、御子柴滋らが彼らの活動を記録しており、グラフィックデザイナーだけでなく写真家たちも小劇場演劇と深い関わりを持っていたことが伺えます。
人形作家として知られる四谷シモンも看板役者のひとり。右は根津甚八。
公演中のエピソードや劇団員の証言、上演記録などより詳しい情報をお求めの方には「唐組 状況劇場全記録 」がおすすめです。
1969年「少女都市」カーテンコールの風景。公演に際し、寺山修司から届けられた葬儀用の花輪をめぐり大乱闘に発展、劇団員が多数逮捕されるという武闘派な一面も。
1973年「ベンガルの虎」公演風景。熱気が伝わってくるような写真。
怪優・麿赤兒の鬼気迫るポートレート。細江英公、井出情児、御子柴滋らが彼らの活動を記録しており、グラフィックデザイナーだけでなく写真家たちも小劇場演劇と深い関わりを持っていたことが伺えます。
人形作家として知られる四谷シモンも看板役者のひとり。右は根津甚八。
公演中のエピソードや劇団員の証言、上演記録などより詳しい情報をお求めの方には「唐組 状況劇場全記録 」がおすすめです。
唐十郎が主宰した劇団「状況劇場」が解散し、「唐組」へと生まれ変わるまでの全記録を収めた写真集。鬼気迫る演技の様子などを収めた写真をモノクロで多数掲載しているほか、当事者たちの証言も収録。
暗黒舞踏と日本の原風景
写真集をもう一冊。写真家・細江英公と舞踏家・土方巽の共作写真集「鎌鼬(かまいたち)」です。暗黒舞踏の創始者であり演出家でもある土方巽は、小劇場演劇に大きな影響を与えた人物でもあります。巣鴨とげぬき地蔵、葛飾界隈、そして秋田の農村風景を舞台に繰り広げられた土方巽の即興的なパフォーマンスは、躍動感と生命力にあふれています。
おおぉ、格好良すぎて言葉になりません…。
おおぉ、格好良すぎて言葉になりません…。
言葉の錬金術師、寺山修司
書を捨てよ、町へ出よう
- 著者
- 寺山修司
- 出版社
- 芳賀書店
- 発行年
- 1970年
随筆家、劇作家など幅広い分野で活動し、「言葉の錬金術師」と評された寺山修司による代表的な評論・エッセイ集。
最後は演劇実験室・天井桟敷主宰であり、詩人、随筆家、劇作家など幅広い分野で活動した寺山修司の初期評論・エッセイ集「書を捨てよ、町へ出よう」です。挑発的なタイトルですが、軽快な文体で非常に読みやすい一冊。「青年よ大尻を抱け」「自由だ、助けてくれ」「痩せた日本人のための書」「行きあたりばったりで跳べ」等の収録タイトルからも漂う、ナンセンスさ・ほほえましさにピンときてしまうような精神的パンクスな方々は是非。
読み手をはぐらかすような、なのに妙に強く印象に残る独特の文体から「言葉の錬金術師」と評された寺山修司。遊び心満載な横尾忠則の挿画・装丁が、テラヤマワールドをさらに盛り立てています。
あまり知られていませんが、本書には続編的な「続 書を捨てよ町へ出よう」もございます。
そのほか、寺山修司の著作はこちら。
読み手をはぐらかすような、なのに妙に強く印象に残る独特の文体から「言葉の錬金術師」と評された寺山修司。遊び心満載な横尾忠則の挿画・装丁が、テラヤマワールドをさらに盛り立てています。
あまり知られていませんが、本書には続編的な「続 書を捨てよ町へ出よう」もございます。
そのほか、寺山修司の著作はこちら。