Relative Moments | Deanna Dikeman
アメリカの写真家ディアナ・ダイクマンによる作品集。家族の日常の瞬間を撮影した200点の写真で構成されている。両親や親族との日々をとらえた記録は、写真家自身の家族の歴史を紡ぐと同時に、アメリカにおける生活文化や人と人との親密さを示している。個人的な記憶を掘り下げながらも普遍的な感情に訴えかけ、写真が持つ物語性と時間の積層を浮かび上がらせている。
Bildgeschehen | Gabriela Stellino
アルゼンチン出身のアーティスト、ガブリエラ・ステリーノの作品をまとめた作品集。横長の画面に展開するパノラマ的な構図や、ヴェールのように流動する色彩表現が特徴で、モノタイプ、水彩画、油彩画など多彩な技法を駆使した制作を収録している。ステリーノの創作の幅と一貫した感性を示しながら、現代絵画の可能性を探る視点となっている。
Bauhaus and America: Experiments in Light and Movement
バウハウスが第二次世界大戦後のアメリカに与えた影響を探る資料集。ヨゼフ・アルバース、ワシリー・カンディンスキー、アンドール・ワイニンガーといった当時の芸術家に加え、ロバート・ラウシェンバーグやソル・ルウィットら、バウハウスの理念を受け継いだアメリカの作家たちの作品を紹介している。1919年にドイツで設立されたバウハウスは、建築、デザイン、美術を横断する教育と実践で知られ、20世紀以降の視覚文化に大きな影響を及ぼしたことを示している。
三岸節子画集
2005年に東京日本橋三越本店をはじめ全国各地で開催された展覧会の図録。戦中から戦後にかけて女流画家の先駆者として活躍した洋画家・三岸節子の生涯をたどっている。19歳で画壇に登場したデビュー作「自画像」から、94歳で描かれた「花」まで、力強い筆致と鮮烈な色彩を特色とする代表作95点を収録。長い画業を通じて築かれた三岸節子の芸術的軌跡を照らし出している。
ゴードン・マッタ=クラーク展 | 東京国立近代美術館
2018年に東京国立近代美術館で開催された「ゴードン・マッタ=クラーク展」の図録。ニューヨークを拠点に活動し、35歳で早世したアーティスト、ゴードン・マッタ=クラークの多面的な創作を紹介している。建築物を切断する「ビルディング・カット」や、レストラン「Food」のプロジェクトをはじめ、素描や写真、彫刻作品を収録。加えて批評的な解説も掲載され、1970年代アートシーンにおける彼の革新性を浮かび上がらせている。
Appearances are Often Deceptive | ヒロ杉山
イラストレーター、デザイナーとして活動するヒロ杉山による作品集。外観は絵本のようなポップな装丁だが、よく見ると世界的に知られるキャラクターに巧みな仕掛けが施されている点が特徴である。ユーモラスでありながらダークな要素を帯び、視覚的な違和感を通じて現代社会のイメージ消費やアイコンの在り方を問いかけている。限定500部刊行。
ボイス+パレルモ展
2021年から2022年にかけて豊田市美術館などを巡回した「ボイス+パレルモ展」の図録。教師と教え子の関係にあったヨーゼフ・ボイスとブリンキー・パレルモを取り上げている。社会への働きかけを重視し芸術概念を拡張したボイスと、静謐で抽象的な作品を追求したパレルモは、一見対照的でありながら芸術を生の営みへと引き戻そうとする点で共通していた。代表作や書き下ろしの評論をはじめ、ドキュメント写真やアーカイブ資料を多数収録し、その関係性を浮かび上がらせている。
The Elements: Air and Water; Part 1 / 1970-1980 | Joel Meyerowitz
アメリカの写真家ジョエル・マイヤーウィッツによる作品集。2008年にGallery White Room Tokyoでの展覧会にあわせて刊行された。オリンピックの飛び込み競技を撮影したシリーズ「The Elements: Air and Water; Part 1」と、1970年から1980年にかけて撮影された代表的な作品を収めた「1970-1980」の2冊で構成され、マイヤーウィッツの多面的な活動を示している。
Cowboy Kate and Other Stories: Director’s Cut | Sam Haskins
南アフリカ出身の写真家サム・ハスキンスによる代表作『Cowboy Kate and Other Stories』を改訂し、作品を追加したディレクターズ・カット版。1960年代に発表された原著はモノクロームの構図と演出で高い評価を受け、多くのファッション・フォトグラファーに影響を与えた。本書には新たな図版も加えられ、女性のポートレートやヌードを中心とする独自の美学が一層際立つ。
EMMA 杉本エマ | 大倉舜二
広告やファッションの分野など幅広い活動で知られる写真家・大倉舜二による作品集。『カメラ毎日』別冊「PRIVATE」シリーズ第2弾として刊行されたもの。モデル杉本エマの奔放で可憐な魅力を収めたポートレートを中心に構成され、人間像の表現に焦点を当て、当時の写真界における多彩な試みを映し出している。表紙と扉絵は池田満寿夫が手がけ、作品に独特の造形的な彩りを与えている。
Hockney Paints the Stage | David Hockney
ポップアートの旗手として知られる画家デイヴィッド・ホックニーによる作品集。演劇の舞台美術に焦点をあて、衣装や装置のデザイン、さらには上演風景を描いたペインティングをカラーで多数収録している。舞台に実現された絵画的世界を伝える写真も収められ、絵画と演劇の領域を往還するホックニーの創造力を多角的に示している。
チャイナ・ダイアリー | スティーブン・スペンダー、デイヴィッド・ホックニー
画家デイヴィッド・ホックニーと詩人スティーブン・スペンダーによる旅行記。香港、北京、西安、南京、杭州、上海など中国各地を訪れた際の体験を、ホックニーの写真やドローイングと、スペンダーの文章によって綴っている。現地で出会った人々や建物、風景をカラーとモノクロの図版で多数収録。視覚と文学の両面から旅の記録を描き出し、1980年代中国の姿を文化的交流の視点から提示している。
Act of Love: A Visual Dictionary of Animal Courtship
写真とテキストで動物たちの多様な求愛行動を解き明かすビジュアル辞典。ピーコックスパイダーのダンスや、チャイロニワシドリが東屋を築く姿など、73種に及ぶ行動を収録している。単なる生態紹介にとどまらず、各動物が進化の過程で獲得した表現のユニークさや美しさに焦点を当て、アートブックとしても鑑賞できる構成となっている。本書は本企画のために設立された出版社「Human Research」の編集チームによる独自調査をもとに編纂されたもので、学術的な価値とデザイン性の双方を兼ね備えている。
メカスの友人日記 | ジョナス・メカス
リトアニア出身の詩人、作家のジョナス・メカスによる交遊録。ニューヨークを中心に興った前衛芸術家集団「フルクサス」のメンバーであったオノ・ヨーコ、ジョン・レノン、ジョージ・マチューナスらとの手紙や会話、日記などを収録。60年代、たぐい稀なアーティストたちが何を夢見て、企み、描き、集っていたのか。メカスによって丹念に掘り起こされた、輝ける一時代を記録した貴重な「友人日記」となっている。
Ben Nicholson | Jeremy Lewison
イギリスを代表する画家ベン・ニコルソンの作品集。1919年から1979年にかけての創作活動を網羅し、初期の実験的な試みからリリーフ作品、後期の静物画に至るまでを紹介している。全142点の図版を収録し、あわせて解説を掲載。モダニズムの文脈の中で展開したニコルソンの生涯と芸術の変遷をたどり、その独自の造形感覚を明らかにしている。
熊谷守一画文集 ひとりたのしむ
画家・熊谷守一による画文集。油彩、書、デッサンに加え、写真家・藤森武による未発表写真を収録している。作品とともに熊谷自身の思い出や数々の言葉が収められ、飾らない人柄や独自の美意識を伝えている。絵と言葉が響き合う構成を通じて、自然や日常を題材にした熊谷の視点と、孤高の画家としての姿を浮かび上がらせている。
ドイツ写真の現在 かわりゆく「現実」と向かいあうために
2005年から2006年にかけて開催された巡回展のカタログ。1990年代以降、国際的に高い評価を得てきたドイツの現代写真を紹介している。ベルント&ヒラ・ベッヒャー、ミヒャエル・シュミット、アンドレアス・グルスキー、トーマス・デマンド、ヴォルフガング・ティルマンスらをはじめとする主要作家の作品図版と解説を収録。変容する「現実」と写真表現の関わりを照らし出している。
パウル・クレー 創造の物語
2006年に川村記念美術館、北海道立近代美術館、宮城県美術館を巡回した「パウル・クレー 創造の物語」展の公式図録。画家としてだけでなく、バウハウスで教育にも携わったクレーの創作に光を当て、絵画作品を中心に豊富な解説とともに紹介している。色彩や線のリズムに独自の詩情を宿らせ、抽象と具象のあわいを探究した表現を幅広く収録。あわせて、音楽や自然、哲学など多方面から影響を受けた背景をたどり、制作の姿勢と感性の形成過程を照らし出している。
南天子画廊・30年
1960年に東京都中央区京橋で創業した現代美術の拠点、南天子画廊の30年史。麻生三郎、横尾忠則、岡﨑乾二郎、福島秀子、サム・フランシスをはじめ、多彩な作家を紹介してきた活動の軌跡をたどっている。展示会記録や作品図版をカラー・モノクロで収録し、画廊創設から30年にわたる歩みを振り返りつつ、日本の戦後美術史におけるギャラリーの役割を浮かび上がらせている。
Parkland | Andy Goldsworthy
イギリスの芸術家アンディ・ゴールズワージーによる作品集。1987年の1年間にわたり、ヨークシャー彫刻公園で制作・撮影された四季折々の作品を収録している。木の枝や葉、石、雪、氷といった自然素材のみを用い、環境と一体となって形成されたインスタレーションを記録。時間や季節の移ろいと共生する創作のあり方を映し出している。
Yes オノ・ヨーコ展
アーティスト、オノ・ヨーコの半世紀にわたる創作活動を総覧する作品集。2001年より開催された巡回展にあわせて刊行されたもので、1950年代からの詩的なテキスト、インスタレーション、オブジェクト、絵画、音楽など多岐にわたる表現を紹介。作品図版と解説を通じて、芸術を社会的メッセージの発信手段とし、人々に影響を与え続けてきた活動の広がりを示している。CD付属。
Today is my New Favourite Day | Jennifer Drabbe
オランダ出身の写真家ジェニファー・ドラッベによる作品集。寄宿学校で幼少期の多くを過ごした自身の経験を背景に、家庭という安全な場で自由に動き回る娘たちの日常を10年以上にわたり撮影している。無意識の行動やしぐさをユーモラスな視点でとらえ、親密な家庭生活の一瞬が強く、美しく、時に演劇的なイメージとして浮かび上がる。写真を通して家族という関係性と個人の表現の可能性を提示している。
Casper Faassen: Photographic Works
オランダのアーティスト、カスパー・ファーセンによる作品集。写真と絵画を融合させ、さらに独自のクラックル技法(ひび割れ表現)を取り入れることで、時間の経過や儚さの美を象徴的に表現している。ダンサーとのコラボレーションをはじめ、静物画シリーズ〈ReCollections〉、ポートレートやヌード、風景や雲を題材とした作品を収録。写真と絵画の境界を越える独特の表現を通じて、ファーセンの創作世界を浮かび上がらせている。
William Eggleston Portraits
アメリカの写真家ウィリアム・エグルストンによるポートレート作品を集めた作品集。1950年代から1970年代にかけて撮影された友人や家族、ミュージシャン、アーティストなどを被写体とした写真を収録。カラー写真表現の先駆者として知られるエグルストンの眼差しは、日常の中に潜む個人の存在感を鮮やかにとらえている。あわせてエッセイや年表、本人および近親者へのインタビューも掲載し、作家の人物像と写真史における位置づけを浮かび上がらせている。
Richard Diebenkorn
20世紀アメリカを代表する画家、リチャード・ディーベンコーンの作品集。1980年代半ばから晩年にかけて制作された作品を収録し、風景画や人物画、色彩と線の構成が特徴的な代表作「オーシャン・パーク」シリーズなどを紹介する。油彩、ドローイングを含む多彩な作品をカラーおよびモノクロ図版で掲載し、画家の成熟期における表現の幅と深化を辿る内容となっている。解説も併載され、作品の背景や制作意図を読み解く手がかりを与えている。英語表記。
篠山紀信写真集 パリ
写真家・篠山紀信による写真集。市場や花屋の店先、古びた建物、雨に濡れた石畳など、どこかブラッサイを思わせる当時のパリの街並みをありのままにとらえている。都市の空気感を写し取った図版に加え、ジュール・ロマン作・堀口大學訳の詩や、瀧口修造らによる寄稿も収録。写真とテキストが交差する構成を通じて、1960年代のパリをめぐる文化的風景とその記憶を浮かび上がらせている。
ODE | Melissa Schriek
オランダ出身の写真家メリッサ・シュリークによる作品集。姉妹愛や女性の友情に敬意を表し、その力強さと結束を讃える写真シリーズを収録している。しばしば「有害」や「ドラマチック」「敵対的」として誤解されがちな女性同士の関係を、リアルで純粋な視点からとらえ直す構成。親友同士のペアをポートレートや身体表現によって撮影し、彼女たちのつながりの本質を探求している。女性の関係性に宿る連帯と親密さを浮かび上がらせている。
Aseptic Field | Lean Lui
香港出身のアーティスト・写真家リーン・ルイによる作品集。無菌状態の聖域に外部から異物が侵入することで、純粋さが徐々に汚染され、色や質感までもが歪められていく過程を描いている。無垢で完璧な幻想はやがて恐れや欲望、痛み、孤独を伴う体験へと変容し、純粋と不安の境界が詩的かつ挑発的に示される。視覚表現を通じて、幻想が現実に侵食される瞬間を浮かび上がらせている。
DISTANCES | Romain Laprade
グラフィックデザイナーとして『Vogue Paris』や『Holiday』での経験を積み、現在はパリを拠点に活動する写真家ロマン・ラプラードによる作品集。モダニズム建築や日常の断片を象徴的に切り取り、光の扱いや構図により独自の詩的な世界を提示している。ミニマルな構成と温かみのあるトーンで描かれるイメージは、身近な風景を静謐な表現へと昇華させ、写真が持つ時間性と感覚の広がりを浮かび上がらせている。
李禹煥全版画 1970-1998
「もの派」を代表する美術家として国際的に活動する李禹煥(リ・ウファン)の版画作品を集成した一冊。1998年に開催された展覧会をもとに刊行され、1970年から1998年に制作された版画をフルカラーで収録している。余白と筆致の緊張関係を探る独自の表現は、絵画や彫刻と同様に版画においても一貫しており、制作の軌跡を視覚的に示している。
KUMO 雲 | 横浪修
ファッション誌や広告で活躍する写真家・横浪修による作品集。若さや集団性、匿名性といったこれまで追求してきたテーマを、「雲」の象徴性と重ね合わせて再構築している。流動性や均質性をもつ雲は、社会におけるつながりや文化的な同調性を想起させ、人間の集合的な姿を映し出すメタファーとして提示される。館山、富士山、三浦、沼津など日本各地で撮影された風景を通じ、個と集団の関係を静かに問いかけている。
BLR: Brooklyn Lot Recordings | 高木康行
写真家・高木康行による作品集。1993年に移住したニューヨーク・ブルックリンを舞台に展開した長期プロジェクト「Brooklyn Lot Recordings」を収録している。2001年の同時多発テロ以降、マンハッタンからブルックリンへと人々が移り住み、地域が急速に変化する中で、散乱する家具や廃車、壊れたフェンスや雑草が覆う空地を撮影。使われていないように見えるその場所には、人や動物、植物の営みが確かに息づいている。やがて消えゆく一時的な風景を静かに映し出している。
螺旋海岸 note book | 志賀理江子
写真家・志賀理江子による連続レクチャーをまとめた記録集。2011年から2012年にかけてせんだいメディアテークで全10回にわたり行われた講義を収録し、展覧会「螺旋海岸」に向けて展開された思考の軌跡をたどっている。「写真というメディアとは何か」「土地とともにある生と表現とは何か」といった問いを中心に構成され、志賀自身の言葉に加え、図版や展示風景も掲載。作品とテキストを往還しながら、表現の核心を探る視点となっている。
歴史の歴史 | 杉本博司
現代美術家・杉本博司による作品集。古墳時代の銅矛、奈良時代に伝来した裂布、鎌倉時代の密教法具図像といった古美術のコレクションに加え、自身の写真作品もあわせて収録。古美術と現代美術を横断する視点を通じて、時間や空間に対する杉本独自の美学が示されている。図版とテキストを組み合わせた構成は、歴史をどのように認識し再構築するかという問題意識を映し出し、芸術表現の根源を探る視点となっている。
Gordon Parks: A Poet and His Camera
アメリカの写真家・映画監督・作家として幅広く活動したゴードン・パークスによる作品集。写真家としてだけでなく詩人としての側面をあわせ持つパークスの視点を示す一冊となっている。人種差別や貧困といった社会問題を背景にしつつ、日常の中に潜む人間性や詩情をとらえた写真を収録。ステファン・スペンダーによる序文、フィリップ・B・クンハルト・ジュニアによる解説を収め、20世紀アメリカにおける芸術と社会の交差点を映し出している。
UFO Drawings From The National Archives | David Clarke
イギリス国防省が60年以上にわたり収集してきたUFO関連資料をまとめたビジュアルブック。手紙や公式報告書に加え、目撃証言に基づく写真やドローイングを多数収録している。ハムステッド上空に現れたとされる空飛ぶ円盤や、マクレスフィールドの小学校に着陸した宇宙船の記録など、印象的な事例を紹介。国家機関が蓄積した一次資料を通じて、英国におけるUFO目撃と表象の歴史をたどることができる。未確認飛行物体をめぐる社会的想像力の広がりを映し出している。
Campbell Addy: Feeling Seen
ロンドンを拠点に活動するフォトグラファー、キャンベル・アディの初作品集。写真界の新星と称されるアディが手がけた著名人のポートレートや、『TIME』『Rolling Stone』といった雑誌の表紙、さらには未発表作品までを多数収録している。加えてライターのエコウ・エシュンとの対談を収め、クィアで黒人の写真家としての自身の過去やアイデンティティ、芸術における課題を語る内容。視覚表現を通じて現代社会における多様性を照らし出している。
Eye Candy | Hildegard Theodora Monssen
ドイツ出身のアーティスト、ヒルデガルド・セオドラ・モンセンによる作品集。自然光のもとで枯れゆく花々をクローズアップでとらえ、重なり合う花びらや曲線、張りを失った姿を静謐に描き出している。花の官能性や個性、そして脆さに焦点を当てることで、儚さとともに時間の流れに宿る美しさを強調。写真を通して花の存在がもつ多層的な意味を示し、見る者に自然の循環を意識させる構成となっている。
小島一郎写真集成
青森を拠点に活動した写真家・小島一郎の作品を集成した作品集。39歳で急逝するまでの短い生涯に撮影された写真から、津軽平野で働く農夫や、寒風が吹き荒れる下北の浜辺など、北国特有の厳しい風景を収録。強いコントラストで描き出された人々と自然の姿は、土地の記憶と生活の営みを鮮やかに伝えている。地域に根差した眼差しと力強い造形表現を通じて、小島一郎の写真世界の全貌を浮かび上がらせている。
Location Scouting | Local Artist
ファッションフォトグラファーとして活動するLocal Artistによる初の作品集。日本各地をロケーションハンティングで訪れた際に撮影された風景を収録している。本来はモデルが立つはずの場所に誰もいない光景が並び、存在の不在やモチーフの欠落を示唆する構成。空間に潜む違和感や余白が強調されることで、写真表現の本質や被写体と場の関係を改めて考察させる内容となっており、独自の視点を提示している。限定300部発行。
トポフィリア | 由良環
写真家・由良環による作品集。東京、パリ、ニューデリー、イスタンブールなど10都市を対象に、同じ方法論を用いて撮影を行っている。朝と夕方という異なる時間帯の光の中で都市をとらえ、その空気や雑踏、人々の姿を対比的に提示。モノクロームの図版とテキストを組み合わせ、各都市に内包された歴史や文化、政治的背景が立ち現れる構成となっている。
Beyond Inn Out | 大竹央祐
建築写真家・大竹央祐による作品集。大阪市此花区のホテル「The Blend Inn」の内観と、その周囲の街並みや風景を撮影し、空気や温度感をそのままに見開きで対比的に掲載している。建築空間と地域の景観を交錯させながら、ホテルを取り巻く環境全体を一つの風景として提示する構成。巻末には建築家・島田陽へのインタビューや、撮影地に関するメモやマップも収録され、建築と写真、都市の関係を探る視点となっている。
人間関係 全3冊揃 | 篠山紀信
写真家・篠山紀信が雑誌『BRUTUS』で1992年から2004年まで連載した「人間関係」をまとめた全3冊揃の作品集。篠山自身が人選に関わり、20世紀末から21世紀初頭を駆け抜けた人物と、その「関係」のある相手を縁の地で撮影している。作家、俳優、歌手、スポーツ選手、画家、写真家、政治家など幅広い分野から集まった537名を、12年間・全270回にわたって記録。日本の同時代史を人と人との結びつきを通して浮かび上がらせている。
Beyond | 城林希里香
ニューヨークを拠点に活動する写真家・城林希里香の写真集。荒野や砂漠、山、ビーチ、真っ白な海に浮かぶ船といった多様な風景を収め、それぞれに重なる記憶や感情を呼び起こす構成。過去の思い出と現在の視覚体験が交差する作品群は、風景のもつ普遍的な力を示すと同時に、個人的な内面世界とも結びつく。別紙には自身の記憶や想いを綴った散文も添えられ、写真とテキストが響き合いながら表現を形づくっている。