現代の建築家 白井晟一
雑誌『SD』7601号の白井晟一特集を、上製の保存版として再構成した作品集。懐霄館、ノアビル、聖キアラ館、昨雪軒、尻別山寮、虚白庵など、白井建築を象徴する代表作をカラー・モノクロ図版で収録し、素材の質感や光の使い方、内部と外部の関係性に貫かれた独自の造形世界を鮮明に伝えている。テキストには磯崎新「破砕した断片をつなぐ眼」、針生一郎「建築における外部と内部」ほか、浅野敬一郎や白井昱麿らによる論考を収録し、白井建築を思想的・歴史的背景から多角的に読み解く視点が加わる。
茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術
2016〜2017年に京都国立近代美術館、東京国立近代美術館で開催された展覧会の公式図録。安土桃山時代、千利休の侘茶を具現化する器として初代・長次郎が創造した樂茶碗から、十五代樂吉左衛門に至る約450年の系譜を、現代の視点から総合的に読み解く内容となっている。歴代当主がそれぞれの時代に葛藤しながら独自の表現を切り開いてきた「不連続の連続」としての樂家の歴史を、豊富な図版とテキストでたどる点が大きな特徴。初代長次郎から当代に至る作品を「現代」から見直すことで、一子相伝という仕組みの内側でどのように革新が受け継がれてきたかを明らかにしている。
Tomoe Yokoi: Color Mexxotint Works | 横井巴
銅版画家・横井巴が長年取り組んできたカラーメゾチントの代表作を収めた作品集。深い黒を基調とした画面に、テーブルの上のランプや果物、開かれた書物など、ごく身近な静物が静かな光をまとって浮かび上がる。メゾチント特有の柔らかな階調と深い陰影が、対象の輪郭をわずかに震わせながら包み込み、日常の気配がゆっくりと記憶へと沈んでいくような余韻を生み出している。収録された図版は96点。
未来と芸術 Future and the Arts
2019〜2020年に森美術館で開催された「未来と芸術」展の公式図録。AI、バイオ技術、ロボット工学、ARといった先端テクノロジーと、それらがもたらす社会変容を軸に、世界のアーティストや建築家、デザイナーによる100点超のプロジェクトを紹介する。都市の新たな姿、ネオ・メタボリズム建築、ライフスタイルの革新、身体拡張と倫理、テクノロジー社会の人間像といった5章構成で、近未来の環境や生のあり方を多角的に見つめる内容。五十嵐太郎、久保田晃弘、ケイト・クロフォードら6名による論考も収録し、技術と人間の関係性を読み解く視点を提示している。
クララ洋裁研究所 | 立花文穂
出版や洋裁を軸に活動を行っていた小池四郎・元子夫妻による「クララ洋裁研究所」。布の切れ端や、パターン、型紙、断ち切り鋏などといった洋裁研究所に残されたモノたちを、その場に残る残像や記憶とともにまとめあげた立花文穂によるインスタレーション作品を収めた一冊。2000年に出版された1000部発行の限定版。製本は立花文穂の兄・立花英久と立ち上げた出版レーベル「バーナーブロス」によるもの。
工芸青花 1号
骨董、工芸、建築、美術を横断的に取り上げる季刊誌『工芸青花』の創刊号。花人・川瀬敏郎による「竹花入の花」、金沢百枝・小澤実による「フランスのロマネスク」、中里隆・福森雅武・辻村史朗の三人の陶芸家による「酒器のかたち」など、多彩な特集を収録。樂吉左衞門や青柳恵介、木村宗慎らによる「光悦の茶碗と書」も掲載され、古典と現代を往還する美意識の系譜を辿る内容となっている。工芸と美の原点を静かに見つめ直す創刊号。限定1000部発行。
工芸青花 2号
骨董、工芸、建築を通して「美の根源」を探る季刊誌『工芸青花』第2号。巻頭では、金沢百枝と小澤実によるフランス・モントワール・シュル・ル・ロワールのサン・ジル聖堂を特集。川瀬敏郎の「仏教美術と花」や、赤木明登による「縄文土器」、森岡督行の「骨董と本棚」、中村好文の「意中の美術館 フリック・コレクションの巻」など、多彩な視点から古今の美と手の仕事を見つめ直す。限定1200部。
工芸青花 3号
骨董、工芸、建築、美術を横断的に掘り下げる季刊誌『工芸青花』第3号。川瀬敏郎による「ローマングラスと花」をはじめ、「茶道具商とはなにか」「骨董屋 青井義夫と坂田和實」「ペルシャとインドの細密画」など、多彩な視点から工芸と美の本質を探る特集を収録。赤木明登や細川亜衣、三谷龍二らによる寄稿も含め、古今東西の造形と美意識の交錯を辿る内容となっている。限定1200部。
Imogen Cunningham
アメリカ写真の草創期から活躍したイモージン・カニンガムの創作を通覧する作品集。植物の細部を鋭く見つめた初期のボタニカル写真、身体のフォルムを抽象化して捉えた実験的な構図、光と影の効果を探る視覚的アプローチ、さらに雑誌『Vanity Fair』で撮影した多彩な人物像まで、長いキャリアのなかで展開された幅広い表現を収録している。近代写真の技法や美学を刷新し、被写体への観察と造形への探究を重ねることで、独自の視覚言語を築いた歩みを明快に示している。 英語表記。
Windows, Mirrors, Tabletops | Lucas Blalock
アメリカのアーティスト、ルーカス・ブレイロックによる作品集。撮影やデジタル加工の痕跡をあえて残し、写真が現実をそのまま再現するという通念を批評的に問い直す。ブレヒトの「異化効果」を写真の領域に転用し、制作のプロセスやツールの操作をあえて画面内に可視化することで、見る者に「写真とは何か」という根源的な問いを投げかける。写真を記録の手段ではなく、構築と再解釈の行為としてとらえるブレイロックの実践は、イメージと現実、虚構と真実のあわいを巧みに行き来する。デヴィッド・カンパニーとの対話も収録され、思考と実験が交錯する写真の現在を探る貴重な記録となっている。1000部限定で刊行。
和而不同 | 隈研吾、陳仁毅、王伝峰
建築家・隈研吾、家具デザイナー・陳仁毅、画家・王伝峰による異分野コラボレーション作品集。伝統と現代、自然と人工、素材と形態という対立と融合を通して、21世紀の東洋美学の可能性を探求する。隈研吾の空間デザイン、陳仁毅の家具、王伝峰の絵画が交わり、新たな調和と独自の世界観を生み出している。建築・インテリア・アートの枠を超えた視点で「和而不同」の精神を提示する一冊。写真は篠山紀信、装丁は中島英樹が手がけている。
ヴィラ・マイレア アルヴァ・アールト | 齋藤裕
フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルトによる住宅建築の中でも、とりわけ初期の到達点として知られるマイレア邸を詳細に紹介する写真資料集。1939年、ハリー&マイレ・グリクセン夫妻のために設計されたこの住宅は、自然環境に寄り添う空間構成や素材使い、アールト特有の有機的フォルムが随所に息づき、実験的精神に満ちた“生きた家”として今なお世界中の建築家を魅了している。緑豊かな敷地に差す光の変化とともに表情を変える内部空間を、150点に及ぶカラー写真で多角的に紹介。施主一家へのインタビューや実測図面も収録し、建築思想と生活空間が交差するマイレア邸の魅力を立体的に読み解ける内容となっている。
ジョゼフ・コスース コンセプチュアル・アートの軌跡 1965-1999
アメリカのコンセプチュアル・アートを代表するジョゼフ・コスースの活動を時系列でたどる展覧会図録。1965年から1999年までに制作された代表作約30点と、刊行当時の新作インスタレーションを収録している。椅子の実物・写真・辞書的定義を並置した初期作や、反転した辞書項目を扱うシリーズ、ネオンの文字作品など、言語・概念・視覚の関係を根底から問い直すアプローチが特徴。初期の思索に加え、1970年代以降に展開した空間的アプローチにも注目し、表現の変化と継続するテーマを簡潔に示している。言語を媒介に世界の構造を探ろうとするコスースの創作哲学を、多様な図版と考察を通じて読み解く内容となっている。
Storm Last Night | 津田直
写真家・津田直によるアイルランドでの旅を記録した作品集。ディングル半島やアラン諸島、クレア島、ドネゴール地方などを巡り、嵐のあとに残る風景や、古代の祈りが息づく土地の記憶をたどる。海や山、石碑や渦巻き模様の遺跡などをカラーで撮影し、自然と人との関係を静かに見つめるまなざしが貫かれている。古層の信仰や神話を内包する風景を通して、時間と記憶の循環を探るような構成。パノラマ写真を活かした造本設計は須山悠里が手がけている。
Ark Journal Volume III Spring/Summer 2020
スカンジナビア発の年2回刊行インテリア誌『Ark Journal』第3号(2020年春夏号)。「私たちの世界をどのように理解し、アートを通してどのように生きるか」をテーマに、建築・デザイン・アートの交差点をスカンジナビアの感性から探る。ベルリンのアーティスト、アンセルム・ライルと建築家ターニャ・リンケの住まい、デンマークの建築家デイヴィッド・トゥルストルプによる住宅プロジェクト、ヘンリク・ビューロウによるバウハウスを再解釈したフォトエッセイなどを収録。光や素材の儚さに焦点をあて、空間を哲学と表現の場として捉える視点が貫かれている。ヴィルヘルム・ハンマースホイらへのオマージュも含む内容。
村上隆のスーパーフラット・コレクション
2016年に横浜美術館で開催された大規模展の公式カタログで、村上隆が長年にわたり収集してきた約1,300点のコレクションを体系的に紹介する一冊。古美術、陶芸、骨董、現代美術までを縦横に横断する作品群は、作家としてだけでなくキュレーター、ギャラリスト、プロデューサーとして活動してきた村上の眼差しを端的に示している。展覧会で展示された全作品と全作家の紹介に加え、モナ美術館館長デイヴィッド・ウォルシュとのコレクター対談、桃居・広瀬一郎との陶芸対談、さらに分野別の用語解説や詳細な年譜も収録。魯山人からキーファーまで、東西や時代を超えて作品を等価に並置する「スーパーフラット」の思想を背景に、価値観の境界を軽やかに越えながら、個人の審美眼がどのように結晶していくのかを読み解く内容となっている。その収集哲学の広がりと一貫性を視覚的に伝えている。
Matisse: Life & Spirit
20世紀美術を象徴するアンリ・マティスの創作の歩みを、多彩な作品図版とともに立体的にたどる一冊。シドニーのニュー・サウス・ウェールズ州立美術館での展覧会にあわせて刊行され、フォーヴィスム期の鮮烈な色彩表現から、彫刻や素描、さらには晩年の切り絵による革新的な造形まで、その生涯にわたる探究を包括的に紹介する。初期の《Luxe I》から、装飾性と構成感覚が絶妙に交差する1920年代の作品、南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂へと至る精神性の深まりまで、時期ごとの表現が緩やかな連続性の中で示される。長いキャリアの中で幾度もビジョンを更新し、色と形の関係を新たに見つめ直す姿勢は、晩年の大作《王の悲しみ》にまで一貫して息づいている。作品を支える創造のエネルギーと、世界への祝祭的な眼差しを多角的に読み解く構成となっており、マティス芸術の精神を深い層から照らし出している。
Lee Ufan 李禹煥
2022年に国立新美術館で開催された、李禹煥(リ・ウファン)の大規模回顧展公式図録。1960年代の初期活動から、石や鉄板を組み合わせて彫刻の概念を刷新した〈関係項〉シリーズ、さらに余白と筆致の往還を探る近年の絵画までを体系的に収録する。国内外の批評家による論考に加え、制作の転換点を示す代表作を年代順に掲載し、「もの」と「行為」の関係を問い続けてきた思索の軌跡を立体的に示している。1968年の《風景》から、点と線の生成を探る絵画シリーズ、空間と呼応する近年の作品群まで、半世紀以上にわたり深化してきた表現の変遷を丁寧に整理。資料編には年譜、展覧会歴、文献一覧、作品リストも収め、作家像を多角的に検証する内容となっている。
Ai WeiWei: Architecture | アイ・ウェイウェイ
中国の現代美術を象徴する作家のひとりとして知られるアイ・ウェイウェイの建築的実践を総覧するモノグラフ。テート・モダンでの展覧会にあわせて刊行された本書は、東洋思想や伝統工芸への眼差しを背景にしつつ、社会や歴史への批評性を帯びた空間表現を読み解く構成となっている。素材の選択から構造の扱いまで、挑発に満ちた姿勢と厳密な検証が交錯し、場所固有の記憶や時間の層を呼び覚ますような建築のあり方を示している。住宅、公共施設、インスタレーションを含む30のプロジェクトを図版とともに収録し、多様なアプローチを通して建築の枠を拡張する試みを鮮明に伝えている。
街区の眺め | 飯田鉄
写真家・飯田鉄が1972年から1998年にかけて東京で撮影したモノクロ写真68点をまとめた作品集。衣料品店の看板や古い駅舎、小さな工場や倉庫、低層ビルが並ぶ街角など、いまでは失われつつある昭和後期の都市風景が静かに写し取られている。建築の細部を強調する硬質な光、壁面の質感、陰影の揺らぎは、都市の時間が折り重なるように画面へと定着され、記憶の層をそっと掘り起こす。明治以降に形成されてきた街並みを丹念に歩きながら、かつての東京の輪郭を再び「いま」の眼差しで読み直す試みとも言える内容で、喪失と継承のあわいにある都市の表情を丁寧にとどめている。
Le Bijou Dessine: Designing Jewels | Guillaume Glorieux
2021年から2022年にかけてエコール・デ・ザール・ジョワイエで開催された展覧会に際して刊行された作品集。本書は、ヴァンクリーフ&アーペル宝飾文化基金が所蔵するコレクションを中心に、18世紀後半から20世紀初頭にかけてのおよそ100点のジュエリーデザイン画を紹介。ティファニー、ラリック、ヴェヴェールといったジュエリーデザイン界の巨匠や、パイエ、ブレディヤール、メレリオなどの工房による作品だけでなく、無名の職人やアーティストによる作品も含まれており、ジュエリーデザイン画の技法や用途などを通して、多面的な視点からその奥深い世界を読み解く一冊。フランス語、英語表記。
Superquadra | Eric Van Der Weijde
アムステルダムとブラジルを拠点に活動する写真家エリック・ヴァン・デル・ヴァイデによる作品集。ブラジルの首都ブラジリアに整然と配置された大規模住宅団地「スーパークワドラ」を、モノクロームで記録している。6階建てまでに制限された建物の高さ、反復される住棟のリズム、広大な余白をともなう都市構造がもつ独特の抽象性を淡々と捉え、計画都市が孕むユートピアの理想と、その内側に漂う静けさや空虚さを浮かび上がらせる。人の姿がほとんど現れないフレーミングは、ブラジリアという都市の時間と空間のあり方を静かに問い直す視覚的記録となっている。
Covering the ’60s: George Lois, the Esquire Era
アートディレクションの歴史に残るジョージ・ロイスによる『エスクァイヤ』誌のカバーデザインを集成した作品集。公民権運動、ベトナム戦争、ポップカルチャーの拡大など、価値観が大きく揺れ動いた1960年代の社会を背景に、挑発的で象徴性の高い表紙を次々と生み出したロイスの創造力を多角的に辿る内容となっている。マリリン・モンロー、モハメド・アリ、アンディ・ウォーホルら同時代の人物を大胆に扱った構図や、視覚的インパクトと批評性を兼ね備えたイメージの組み立て方が詳らかにされ、雑誌という媒体の可能性を押し広げたデザイン思考の核が浮かび上がる。各カバーにはロイス自身の解説が添えられ、制作意図や当時の政治・文化的状況が具体的に語られ、メディア史における独自の到達点を示している。
未来に挑戦したデザイナー ハーブ・ルバーリン
大胆なタイポグラフィと鋭い造形感覚で知られるデザイナー、ハーブ・ルバーリンの多面的な仕事を総覧する作品集。『Eros』『Fact』『Avant Garde』といった誌面で展開された実験的なレタリングをはじめ、ポスター、ロゴタイプ、装丁、エディトリアルデザインまで、多岐にわたる制作を豊富な図版とともに紹介している。文字の形態そのものに表現を宿らせる独創的なアプローチや、誌面全体を構築的に捉える編集デザインの手法が丹念に示され、ルバーリンが切り拓いたモダンタイポグラフィの核心に迫る内容。巻末には貴重なインタビューも収録され、彼の思考と実践を立体的に読み解くことができる。
Without Thought vol.10 BOX | 深澤直人
プロダクトデザイナー・深澤直人によるデザインワークショップ「WITHOUT THOUGHT」第10回の成果をまとめた作品集。今回のテーマは「箱」。ものを入れる、運ぶ、守るといった機能に加え、日常に寄り添う造形としての箱の在り方を多角的に探る。分野の異なる若手デザイナーたちが参加し、素材や形状、用途の異なるプロトタイプを通して「箱」に付着する記憶や感覚を可視化。中身との関係や使い手の行為にまで踏み込んだ思考の軌跡を収録している。
Without Thought vol.11 容器
プロダクトデザイナー深澤直人が主宰するデザインワークショップ「WITHOUT THOUGHT」第11回の成果をまとめた作品集。今回のテーマは、日常に溢れる“容器”という最も身近で根源的な対象。企業デザイナーを中心とした参加者たちが、入れ物という行為の起点に立ち返り、素材の質感、容量の概念、形態の必然性、重力や手触りといった身体的スケールまで、多角的な視点からデザインを再考している。直感を重視するワークショップの精神のもと、器や箱、袋、ケース、境界をつくる仕組みなど、用途や産業を越えて多様な提案が並び、機能から意味へと拡張する“容器”の捉え方が浮かび上がる。
オラファー・エリアソン ときに川は橋となる
デンマーク出身の現代アーティスト、オラファー・エリアソンの日本で10年ぶりとなる大規模個展にあわせて刊行された公式図録。光、水、霧といった自然現象を素材に、知覚と環境の関係を問い直す体験型インスタレーションで知られるエリアソン。本書では、新作《ときに川は橋となる》をはじめ、本展のために制作された数々の新作と、代表的な光学的作品を豊富な図版とともに紹介する。展覧会キュレーター長谷川祐子による論考、哲学者ティモシー・モートンとの対話、スタジオによるサステナビリティへの提言も収録し、エリアソンの創造的思考と実践を多角的に読み解く内容となっている。
驚異の三人!! 高松次郎・若林奮・李禹煥
2020年に世田谷美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された公式カタログ。高松次郎、若林奮、李禹煥という、日本の戦後美術を語るうえで欠かせない3名の作家が手がけた“版”の表現に焦点を当て、その創造の背景と展開を紐解く。木版・リトグラフ・シルクスクリーンなど多様な技法による作品図版を豊富に収録し、立体や絵画と往還しながら探究を深めた彼らの思考の軌跡を可視化する構成となっている。素材への感受性、反復による形態の生成、媒介としての「版」がもたらす距離感など、三者それぞれの実践を比較しながら、現代美術における版表現の新たな位置づけを提示している。
板絵の控 | 芹沢銈介
型絵染の人間国宝・芹沢銈介による蛇腹製本の習作集。花や鳥、器物、人々の営みなど、日々の身近な景色を板絵に見立てて描いたペインティングを収めており、のびやかな線と自在な構図、手描きならではの温もりがページをめくるごとに立ち上がる。染色家として培った色彩感覚が随所に息づき、素朴さと装飾性が響き合う図像は、芹沢芸術の源泉ともいえる瑞々しい創造の瞬間を伝えている。
Things and Seen | 若木信吾
写真家・映画監督の若木信吾による作品集。理髪店の窓、ライフル、窓際に咲く花、収穫したトウモロコシ…2002年から2019年の間に世界各地で撮影された写真を収録した一冊。800部限定刊行。見開きに署名あり。
家族 2号 | HYOTA
家族と一年誌『家族』第2号では、千葉県大多喜町で薬草園兼ボタニカルブランド「mitosaya 薬草園蒸留所」を営む江口宏志・祐布子夫妻と娘の美糸(みと)ちゃん、紗也(さや)ちゃんの一家を3年間にわたって追う。ブックショップ「ユトレヒト」や「TOKYO ART BOOK FAIR」を手がけた江口宏志が、蒸留家として新たな道を歩み始めた日々を、奥山由之と吉楽洋平の写真で四季を通じて記録。植物とともに育つ家族の暮らしと、日々の発見、挑戦の過程を丁寧に描き出す。
Mの辞典 | 望月通陽
美術家・染織家として活動する望月通陽による詩画集。「MAGICIAN(魔法使い)」「MONOLOGUE(独白)」「MOVEMENT(発芽)」など、24の“M”で始まる言葉を主題に、版画と詩的なテキストによって構成されている。紙版画の手触りと静謐な言葉が響き合い、寓話のような世界観を織り上げる一冊。宗教的象徴や日常の断片、内的な思索が交錯し、望月の造形的想像力が詩として、また絵として展開される。装丁は望月克都葉によるもの。文字とかたちが共鳴する、詩と美術のあわいに立つ作品集。
カンディンスキー展
2002年に開催された「カンディンスキー展」の公式図録。ミュンヘンとモスクワを主な舞台とした1896年から1921年までの活動期に焦点を当て、具象から抽象へと向かうカンディンスキーの表現の転換をたどる内容となっている。初期の民俗的モチーフや神秘主義的傾向を持つ作品から、色彩と形態が解き放たれる《コンポジション》へ至る過程を豊富な図版で紹介し、当時の思想的背景や芸術運動との関係性も丁寧に整理。ロシア前衛芸術や青騎士との交流を視野に入れながら、内的必然性を追求したカンディンスキーの造形理念と、その変貌の核心を読み取ることができる構成になっている。
開校100年 きたれ、バウハウス展
2019年から2020年にかけて東京ステーションギャラリー等で開催された「開校100年 きたれ、バウハウス展」の公式図録。バウハウス創立100周年を記念し、その教育体系に焦点を当てながら、20世紀を代表する造形学校の全貌を多面的に紹介している。ワシリー・カンディンスキー、パウル・クレーら名だたる教師が担った基礎課程の授業内容を起点に、学生が進んだ家具・織物・金属・舞台など各工房での実習と成果物を豊富な図版で提示。バウハウスが現代の造形教育とデザインの基層をいかに形づくったかを読み解いている。また「総合の位相」や、日本人留学生4名の活動に光を当てた章も設けられ、国際的広がりの中で育まれた創造のダイナミズムを丁寧に示している。
Magnificent Obsessions: The Artist as Collector | Lydia Yee
現代アーティストたちの個人的なコレクションを通して、創作の源泉と美学的・心理的側面を探る資料集。アンディ・ウォーホル、ダミアン・ハースト、杉本博司、マーティン・パー、ソル・ルウィットらの蒐集品を紹介し、量産された日用品から希少なアートピースまで、彼らが惹かれた「モノ」とその眼差しを可視化する。作品と併せて展示されるコレクションは、それぞれの作家の思想や衝動を映し出し、創造行為と蒐集行為の密接な関係を浮かび上がらせている。
Virgil Abloh. Nike. ICONS
2016年にナイキとファッションデザイナー、ヴァージル・アブローが協働し、スニーカーカルチャーに革新をもたらした伝説的コレクション〈The Ten〉の創作過程を記録した一冊。エア ジョーダン1、エア フォース1、エア マックス90など、10足の名作を再構築し、解体と再構成を通して新たな意味を与えたデザインの舞台裏を、プロトタイプの資料やナイキのデザイナーとのメッセージ、アーカイブ写真などとともに紹介する。構造をあらわにした装丁も含め、アブローの思考と制作の全貌を可視化する。序文は藤原ヒロシ。
Horse | Jitka Hanzlova
チェコ出身の写真家、イトカ・ハンズロヴァによる作品集。人と環境の関係性を見つめてきたこれまでのシリーズに続き、本作では被写体を「馬」に定め、その身体性に迫る。毛並みやまつ毛、耳の産毛、尾に絡む草の一本に至るまで、細部を丁寧にとらえた親密なカラー写真からは、動物としての馬の存在感と気配が静かに立ち上がる。図版構成に加え、作家ジョン・バーガーによる序文を収録し、見る者の感覚を呼び覚ますような詩的な視覚体験を提示している。
An Incomplete Dictionary of Show Birds Vol.2 | Luke Stephenson
イギリスの写真家ルーク・スティーヴンソンが15年にわたり撮影を続ける「ショーバード」シリーズの第2巻。英国で行われる鳥の品評会に出品されるインコやフィンチ、カナリアなど、鮮やかな羽色をもつ小鳥たちを、単色の背景と緻密な構図で捉えている。セキセイインコから始まったこのプロジェクトは、愛玩と鑑賞、分類と審美の狭間にある人間と鳥の関係を静かに映し出すもの。華やかさとユーモアを併せもつポートレート群は、自然の造形と人工的な美意識の交錯を鮮やかに示している。
Art School | Paul Winstanley
英国のアーティスト、ポール・ウィンスタンリーが、全英50以上の美術大学の学部スタジオを撮影したシリーズを収録。学年の合間に訪れ、無人のまま記録されたスタジオは、白い仮設壁やペンキ跡、無機質な床が抽象的な空間性を生み出す。創造性を育む場でありながら、静かで中立的な室内が持つ二面性を浮かび上がらせる。200点以上のカラー写真に加え、美術批評家ジョン・トンプソンのテキストと、マリア・フスコによる作家インタビューを収録。英語表記。
Tokyo Style ソフトカバー版 | 都築響一
写真家・編集者の都築響一による代表的写真集。東京で暮らす人々のリアルな生活空間を撮影し、整然とした理想の部屋ではなく、「好きなものに囲まれた」個性的な住まいのあり方を捉えている。六畳一間のワンルームからアトリエ兼自宅まで、ジャンルも世代も異なる住人たちが、自らの感性で作り上げた空間に息づく「生活の美学」を可視化。インテリアやデザインの文脈を超え、都市の片隅にある無数の“生の現場”を照射する。生活のリアリティと創造性を併せもつ、東京の暮らしの記録。
Scandinavian Style: Classic and Modern Scandinavian Design and Its Influence on the World
北欧デザインの精神とその世界的影響を多角的に紹介するビジュアルブック。アルヴァ・アアルト、エーロ・サーリネン、アルネ・ヤコブセンらの建築や家具デザインをはじめ、iittala、Volvo、Hackmanなどのプロダクトやブランドまで、機能性と美しさを両立させた造形理念を豊富な写真で解説している。木やガラス、金属など自然素材への敬意と、「形は機能に従う」というモダニズムの理想を背景に、北欧の暮らしに根づいたデザイン文化の系譜をたどる構成。シンプルで洗練された造形が、いかに日常生活と結びつき、世界のデザイン思想を変えてきたかを明らかにしている。
沖縄の陶器 | 濱田庄司
陶芸家・濱田庄司の監修により、沖縄の陶器を体系的に紹介する資料集。17世紀の古我知焼、18世紀の知花焼、19世紀の壺屋焼など、各時代を代表する皿や花器を中心に、多彩な陶器をカラー写真で収録している。地域の土や釉薬、文様に宿る独自の造形感覚を通して、沖縄の陶芸史と美意識を読み解く構成。装丁は染色家・芹沢銈介によるもので、民藝運動と深く結びついた美の系譜を視覚的に伝えている。
むかし渡更紗 全3冊揃 | 芸艸堂
インドを起源とする染織文化・更紗を収めた全3冊構成の木版画集。草花や樹木、鳥獣、人など、自然と人間の営みをモチーフに描いた彩色木版72点を収録している。木綿布に多彩な文様を染め上げた更紗の豊かな表現を通じて、異文化の交流と装飾美の歴史を伝える貴重な資料。伝統的な手法によって再現された図柄からは、東西の美意識が融合する染織デザインの源流を読み取ることができる。
Another America: A Testimonial to the Amish | Robert Weingarten
写真家ロバート・ワインガーテンが、アメリカ中西部を中心に暮らすアーミッシュの共同体を4年間にわたり撮影した作品集。インディアナ、アイオワ、オハイオ、ペンシルベニア、テネシー、ウィスコンシンに点在する彼らの生活を記録し、信仰とともに営まれる日常の美しさと静けさを捉えている。農作業に励む姿や霧に包まれた風景、子どもたちの遊び、家族の集いなどを通して、300年以上にわたり守られてきた質素で自立した生活の哲学を視覚化。近代化を拒みながら信仰に根ざした共同体を維持する人々の姿を、詩的な光の中に描き出している。