El Porque de las Naranjas | Ricardo Cases
スペインの写真家リカルド・カセスによる作品集。地中海沿岸のレバンテ地方を舞台に、日常の中に潜む奇妙で詩的な風景を捉えている。フランスパンの形をしたドアノブ、果物が詰まった排水口、積み重なる段ボールなど、取るに足らない光景を独自のまなざしで切り取る。ユーモアと郷愁が交錯するイメージ群は、スペインの地方都市に漂う時間の感触と、人間の営みの断片を静かに映し出している。
Hotel Petra | Robert Polidori
アメリカの写真家ロバート・ポリドリによる、レバノン・ベイルートの歴史的建築「ホテル・ペトラ」を撮影した作品集。1975年から1990年にかけて続いたレバノン内戦の痕跡を残す室内を題材に、崩れた壁や剥離した塗装、差し込む光が織りなす静謐な空間を捉えている。荒廃の中に潜む美と記憶の層を抽象絵画のように描き出し、時間と建築の関係を詩的に探る。失われゆく場所に宿る存在の余韻を照らし出している。
Synchrony and Diachrony: Photographs of the J. P. Getty Museum 1997
アメリカ・ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館設立20周年を記念して刊行された写真集。写真家ロバート・ポリドリが1997年の開館直前に撮影した館内の様子を収録している。建築家リチャード・マイヤーによる光と構造が織りなす空間の中で、絵画や彫刻が展示室に配置されていく過程を丹念に記録。美術館という「完成へ向かう建築」をテーマに、芸術と空間が出会う瞬間を精緻に映し出している。
Memory: State Hermitage Museum, St Petersburg | Candida Hofer
ドイツの写真家カンディダ・へーファーによる、サンクトペテルブルクの歴史的建築群を撮影した作品集。ユスポフ宮殿、国立図書館、マリインスキー劇場、エルミタージュ美術館などを10日間にわたって記録し、壮麗な空間と装飾の細部を精緻に捉えている。人の姿を排した静謐な構図の中に、過去と現在が交錯する時間の層を浮かび上がらせ、都市と記憶、建築と文化の継承を静かに映し出している。
The Blindest Man | Emily Graham
ロンドン出身のアーティスト、エミリー・グレアムによる写真作品集。1993年に匿名の作家が黄金の彫刻〈Chouette d'Or(黄金のフクロウ)〉をフランスのどこかに埋め、その手がかりを記した書物を発表した出来事を起点に構成されている。30年以上経った今も続く宝探しに魅せられた人々の姿を、写真、調査資料、手紙、地図など多様な記録とともに追う。信仰にも似た探求心と幻想が交錯する、人間の想像力と執念のドキュメントを浮かび上がらせている。
Ed Ruscha
1960年代初頭から現在に至るエド・ルシェの仕事を総覧する作品集。ポップ、コンセプチュアル、シュルレアリスムの諸相を横断する実践を、絵画・写真・版画・ブックワークにわたる代表作とともに検証する。リチャード・D・マーシャルによる批評的エッセイが、言葉とイメージ、都市景観への眼差し、反復とタイポグラフィといった主題を読み解く構成。豊富な図版を通じて、ルシェの独自の視覚言語が形成される過程を照らし出している。
Thomas Schutte
ドイツの現代美術家トーマス・シュッテの作品を紹介する展覧会図録。スイスのベルン美術館をはじめ各地を巡回した展覧会にあわせて刊行されたもので、1980年代に制作された彫刻や絵画を中心に構成されている。具象と抽象のあいだを行き来しながら、人間の存在や社会の構造をユーモラスかつ批評的に描き出す作品を、豊富なカラーおよびモノクロ図版で収録。シュッテの初期表現の軌跡を示している。
Pablo Picasso: Women, Bullfights, Old Masters
20世紀美術を象徴する芸術家、パブロ・ピカソの創作をテーマ別にたどる作品集。女性像、闘牛、オールドマスター、政治や文学、神話的主題、サーカスの人々、インテリアなど、70年にわたる活動の中で繰り返し描かれたモチーフを中心に構成されている。版画、リトグラフ、ドローイング、コラージュなど約200点を収録し、ピカソが生涯を通して追求した形と感情の変容、そして芸術への飽くなき探求を浮かび上がらせている。
HATS | 潮田登久子
写真家・潮田登久子による作品集。1992年から2004年に制作された「帽子」シリーズをまとめたもので、帽子デザイナー香山まり子の「布の彫刻」と称される作品群を被写体に撮影している。黒のストローハット、シルクオーガンジーのカクテルハット、ファーベロアの帽子など、それぞれの美しいフォルムと繊細な質感が丁寧に捉えられている。日本語、英語、中国語表記。
A Few Hermes Ideas For The Holiday Season | Gino Bud Hoiting
フランスの高級メゾン、エルメスによる、2018年ホリデーシーズンコレクションブック。オランダ・ロッテルダムを拠点に活躍するイラストレーター、Gino Bud Hoitingとのコラボレーションによって生まれた、ユニークなビジュアルブック。洗練されたエルメスの世界を、あえてシンプルで温かみのある線画とストーリーテリングによって再構築。まるで絵本をめくるような感覚で、エルメスの遊び心と芸術性、そしてイラストレーターの独自の感性が融合した一冊。
Objets Hermes | Andy Rementer
フランスのメゾン、エルメスによる2024年秋冬コレクションのルックブック。パリ・フォーブル・サントノーレ通り24番地の本店を舞台に、アーティストのアンディー・レメンターが最新コレクションをユーモラスで鮮やかなドローイングとして描き出している。日常の断片やディテールを軽やかな線と色彩で再構成し、エルメスのエスプリと職人技への敬意を感じさせる内容。ブランドの洗練と遊び心を併せもつ世界観を鮮明に映し出している。
A Magazine #15: Curated by Thom Browne | トム・ブラウン
ベルギーのファッションデザイナー、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクによって創刊された『A Magazine Curated By』第15号。毎号ファッションデザイナーをキュレーターとして招き、ファッションデザイナーの世界を探るファッションマガジン。今回は「THOM BROWNE」の創設者でありデザイナーのトム・ブラウンが担当。ランウェイの歩みとともに、「白と黒で描かれた死と弔い」をテーマに構成される。英語表記。
A Magazine #25: Curated by Sacai
ベルギーのファッションデザイナー、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクによって創刊された『A Magazine Curated By』第25号。毎号ファッションデザイナーをキュレーターとして招き、ファッションデザイナーの世界を探るファッションマガジン。今回は「sacai」の創設者でありデザイナーの阿部千登勢が担当。東京からLAまでの「sacaiTHEpeople」と題したポートレートシリーズほか、「sacai」のコミュニティとハイ・コンセプトの領域を探求する。英語表記。
イリヤ・カバコフ シャルル・ローゼンタールの人生と創造 2冊セット
1999年に水戸芸術館現代美術センターで開催された展覧会の図録。ウクライナ出身のアーティスト、イリヤ・カバコフが創作した架空の画家、シャルル・ローゼンタール。19世紀末から20世紀初頭に生き、若くして夭折した画家として設定された彼の画業を、図版、伝記、日記、批評文などを通じて、まるで実在したかのように丁寧に構成。個人史でありながら、絵画表現の探究と美術史の構造を内包したこのプロジェクトは、カバコフによる「代替の芸術史」の一環として、芸術とは何かを根源から問い直す試みとなっている。
A small, good things | ナカカズヒロ
ヘアスタイリスト・ナカカズヒロが、「初心に戻り、衝動のままに何かを作りたい」という思いから手がけた初の作品集。日常の中で“日本人らしさ”を感じた人々に声をかけ、モデルとして撮影を行った。スタイリングを施した演出されたポートレートから、まったく手を加えず被写体の素の姿を捉えたスナップまで、多様なアプローチで構成される。職業の枠を超えた、個人としての創作衝動が結晶化した一冊。
ZOO | Britta Jaschinski
写真家ブリッタ・ヤシンスキーによる、動物園で暮らす動物たちを捉えた作品集。ヤシンスキーのレンズは、檻の中の動物たちを「見世物」としてではなく、私たちと同じ感覚を持つ「他者」として描き出す。暗闇に浮かび上がる毛むくじゃらの手、水面下をただようアシカ、沈黙の中で立ち尽くすシマウマ。彼らの姿は断片的ながら、深い哀感と尊厳を帯び、私たちの心に静かに問いを投げかける。本書は、「人間は他の生きものを閉じ込める権利を持つのか」「動物園は保全か、娯楽か」といった根本的な倫理的問いを、写真というメディアを通して提示している。ヤシンスキーは感情を押し付けることなく、静かなまなざしで動物たちの存在を映し出す。その写真は、美しさとともに「見ること」の意味を問い直す力を秘めている。
Portraits by Avedon | 大竹伸朗
現代美術家・大竹伸朗によるドローイング集。1979年7月18日、写真家リチャード・アヴェドンの写真集『PORTRAITS』に触発され、一気に描き上げた73点の作品を収録している。被写体の表情やエネルギーを線と色彩で再構築し、写真から絵画への転換を試みた意欲的なシリーズ。衝動的な筆致と即興性に満ちたドローイングから、大竹の感性がアヴェドンのポートレートに呼応する瞬間が立ち上がっている。
Kaos Drom Idvll | Erik Harry Johannessen
「ノルウェー美術の異端児」と称される独自の表現主義者、エリク・ハリー・ヨハンネッセンの作品集。美術史家グンナル・セーレンセンがヨハンネッセンの作品世界を多角的に読み解き、彼が活動した同時代の芸術潮流や社会的背景と照らし合 […]
A Chorus of Birds Utamaro
江戸時代後期を代表する浮世絵師・喜多川歌麿による鳥類画を集めた作品集。色彩豊かな木版画に詩歌を添え、自然へのまなざしと繊細な描写力を融合させた構成となっている。蛇腹折りの装丁によって連続的に展開される図版は、絵巻のような流れの中で鳥たちの姿を生き生きと映し出す。写実と装飾のあわいに宿る美意識を通して、歌麿のもうひとつの芸術的側面を浮かび上がらせている。
Danh Vo oV hnaD ヤン・ヴォー ーォヴ・ンヤ
2020年に国立国際美術館で開催された展覧会の公式カタログ。ベトナム出身でメキシコシティを拠点に活動する現代アーティスト、ヤン・ヴォーの作品を収録している。木材の伐採や自然環境との関わり、素材の分解と再構築のプロセスを通して、創作と破壊、記憶と歴史の交錯を探る構成。制作過程の記録写真や展示風景を交えながら、ヴォーの作品に通底する「ものの生成と変容」の思想を提示している。解説冊子付属。
アセント 全3巻揃 | フィオナ・タン
インドネシア出身の映像作家フィオナ・タンによる作品〈アセント〉を収録した全3巻構成の図録。2016年にIZU PHOTO MUSEUMで開催された展覧会にあわせて刊行されたもので、「富士山」を主題に、人々の記録写真や風景写真を素材として再構成した映像作品を中心に紹介している。さまざまな時代と視点からとらえられた富士山、登山者の姿、自然との関わりを多層的に描写。映像・写真・インスタレーションの融合を通じて、記憶と風景の関係を探るフィオナ・タンの独自の表現を提示している。
Le Paris de Marelle: Hommage a Cortazar
ブエノスアイレス出身の写真家、エクトル・サンパリオーネによる、フリオ・コルタサルの小説『石蹴り遊び(Marelle)』へのオマージュ作品。 1950〜60年代のパリを舞台に、作中の登場人物たちが歩いたであろう街角を実際にたどりながら、その情景や空気感を写真のレンズを通して再構築する試み。各ページには作品中の印象的な文章とともに、それに対応する実在の場所の写真が収められ、加えて地理的・歴史的な解説も添えられている。本書は文学と写真が響き合いながら、読者を『マレル』の世界へと誘うとともに、『マレル』を愛するすべての読者のための遊びであり、あの小説に描かれたパリという都市への新たな視覚的アプローチでもある。
Thinking Aloud | Richard Wentworth
イギリスのアーティスト、リチャード・ウェントワースの作品集。人間が作り出した環境に対する鋭い観察力と、日常的な物の意味を巧みに変換する彫刻作品で広く知られるウェントワース。本書は視覚的創造性をめぐる想像力豊かな学際的プロジェクトであり、従来の狭義なテーマ分類や経験の正統的枠組みに挑戦する試みである。スケッチ、型、模型、地図、プロトタイプなど、アーティストやデザイナー、建築家、発明家らによる試作段階の「最初の思考」を、多様な領域から集められたオブジェクトと組み合わせて提示。これにより、創造行為の初期段階における視覚的思考や実践を探求している。出展作家にはベルント&ヒラ・ベッヒャー、ブラッサイ、ウォーカー・エヴァンズ、フランク・ゲーリー、ギルバート&ジョージ、ティム・ヘッド、マリエレ・ノイデッカー、ジュリアン・オピー、レイチェル・ホワイトリードといった著名な芸術家が名を連ねている。
君や僕にちょっと似ている | 奈良美智
2012年から2013年にかけて横浜美術館ほか全国各地で開催された展覧会の図録。日本の現代美術家、奈良美智が長年にわたり追い続けてきた「肖像」表現の深化を、刊行当時新作の作品群と共に記録する。代表的な絵画やドローイングはもちろん、作家が初めて挑んだブロンズ彫刻にいたるまで、全出品作品をフルカラーで収録。展示風景やスケッチ、制作過程の写真も多数掲載され、奈良美智の創作の軌跡を豊かに伝える一冊となっている。
I Love Paris展 J’aime la France
1992年に銀座のエスパースプランタンほか各地で開催された展覧会の図録。19〜20世紀の都市、風景、人々の暮らしやポートレートを捉えた作品群を収録。芸術的・記録的価値の双方を持つこれらの写真は、都市パリが内包する多層的な文化イメージを浮かび上がらせる。ナダール、アジェ、ケルテス、ラルティーグといった写真史に名を残す作家たちに加え、ボヴィス、コラール、ルネ=ジャックらによる作品も収録。パリという都市が、真というメディアを通じていかに記憶され、語られてきたか、その軌跡をたどることができる一冊となっている。
RED POINT | Al White
スコットランド・グラスゴー在住のアーティスト、アル・ホワイトによる作品集。2016年に制作された作品集『Concrete Cabin』のプロセスで使用された4×6インチのラボプリントを再構成し、写真という媒体の物質性と視覚的手触りに迫るというもの。ブルータリズムや未来派、そしてcrud(荒さ・未完成性)といった美的感覚に影響を受けたホワイトの作品は、イラストや版画にとどまらず、写真という手段を通じて新たな地平を切り拓いている。本書に収められたモノクロのイメージ群は、イメージと紙のあいだにある緊張感や記録性を鋭く浮かび上がらせ、視覚芸術としての写真のあり方を再考させている。
非常階段東京 | 佐藤信太郎
写真家・佐藤信太郎による、東京の都市風景を非常階段から撮影した作品集。密集する住宅地や墓地、東京タワー、歌舞伎町、団地など、日常の風景を水平の視点でとらえ、都市の奥行きと構造を静かに描き出している。見下ろすでも見上げるでもない中間的な視線から、東京という都市の息づかいや、匿名的でありながら個々の生活が重なる風景の層を浮かび上がらせている。
Glorious Flowers | Laura Peroni
イタリアの植物画家、マリレーナ・ピストイアによる精緻な水彩画とともに、各花に関する植物学的・文化的情報をあわせて紹介した作品集。植物の起源や分類、歴史的背景、さらに文学や神話、民間伝承の中で花が担ってきた象徴的意味について多角的に解説。花を単なる観賞対象としてではなく、人類の文化や感情と密接に結びついた存在として捉える視座が示されており、植物学、文化史、美術にまたがり、自然と人間との関係を再考するための手がかりを与えてくれる内容となっている。
Redoute Lilies Print Book: 50 Selections Prints | Pierre‑Joseph Redouté
ボタニカルアートの巨匠、ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテによる作品集。ルドゥーテは18〜19世紀に活躍したフランスの植物画家・宮廷画家であり、「花のラファエロ」とも称されるその精緻な描写と色彩感覚は今なお高く評価されている。本書は、彼の代表作であるユリ科植物を描いた図版の中から50点を厳選し、カラー印刷で再録したもの。各作品にはラテン語の学名とフランス語タイトルが添えられ、当時の博物学的視点と美術的価値をあわせ持った構成となっている。
額田宣彦 仮説の宇宙
画家・額田宣彦による2001年の展覧会にあわせて刊行された作品集。東京のギャルリー東京ユマニテと東京国際フォーラム・エキジビションスペースの2会場で同時開催された展示構成を反映し、代表作〈ジャングルジム〉シリーズをはじめ、新たに円をモチーフとした〈Reel, Point〉シリーズ、空間性を探る〈部屋〉シリーズなど約25点を収録している。マスキングを使わず手描きで緻密に線を重ねる独自の手法により、秩序と偶然、抽象と構造が交錯する仮設的な宇宙を描き出す。静謐で思索的な絵画の本質を探る一冊。
Hope is a Girl Selling Fruit | Amrita Das
インド・ビハール州の若手ミティラ画家、アムリタ・ダスによる絵本。伝統的なインド・ミティラ画の技法を現代的に解釈し、豊かな色彩と繊細な線画で女性の感情や葛藤を表現している。物語は列車の旅の途中で出会った貧しい少女への視点から始まり、彼女の背景や未来への希望を想像しながら展開。読者はそのシンプルながら普遍的なストーリーと美しいイラストを通して、女性の自由や勇気、社会的な役割について多様な視点を与えられる。単なる絵本を超え、女性の自己表現や階級、選択の問題に触れた瞑想的な作品として評価されており、静かに心に響くメッセージと、伝統美術の革新的な融合を楽しめる一冊。
CATS、CATS、CATS | アンディ・ウォーホル
1950年代を中心にアンディ・ウォーホルが描いた猫たちのドローイングを集めた、愛らしくも鋭い感性が光る絵本のような作品集。眠る子猫や堂々とした猫、サムという名前の猫など、個性豊かな猫たちがシンプルな線と色彩でユーモラスかつ詩的に表現されている。ウォーホル自身の言葉も随所に引用されており、猫という親しみやすいモチーフを通して、ポップ・アートの巨匠が見せるもうひとつの顔ーその遊び心や私的な感性が静かに浮かび上がる一冊となっている。横尾忠則による監修翻訳。
INTIMACY | フィリップ・ワイズベッカー
フランスのアーティスト、フィリップ・ワイズベッカーのドローイング集。日用品や無名の物体たちにどこか懐かしく、親密なまなざしを注ぐフィリップ・ワイズベッカー。本書のタイトル『INTIMACY』は、親密性という意味であり、着想の原点は子どもの頃に両親がとっていた古い通販カタログ。毎晩寝る前に夢中で眺めていたという当時の記憶をなぞるように、日常に埋もれたモノたちを線と余白だけで静かに掬い上げている。身近な物品をシンプルかつ親密な視点で描くことで、日常の中に潜む美しさや温もりを再発見することができる。
Afternoon Reading | 箕輪麻紀子
イラストレーター・箕輪麻紀子による作品集。街角や部屋の片隅で本を手にする人々の姿を、やわらかな筆致と繊細な色彩で描き出している。少女とくまの読書風景や、ストリートで本を開く青年など、日常の静かな瞬間に宿る温もりと想像の広がりを表現。見る者に読書の時間がもたらす安らぎと自由を感じさせる。巻末には台湾のアーティスト、Chihoiによる詩を収録し、本と人との親密な関係をやさしく伝えている。
柚木沙弥郎作品集
型染の第一人者として知られる染色家・柚木沙弥郎の創作を集成した作品集。深みのある色彩と自由な造形感覚によって生み出された多彩なテキスタイルを多数収録している。民藝の精神を継承しながらも独自のモダンな感性で展開された意匠には、日常の中に宿る喜びと生命力が息づく。柚木自身のエッセイに加え、大岡信、藤田慎一郎による寄稿も収録し、作家の思想と美の探求を多面的に伝えている。
日本建築の形 II | 齋藤裕
建築家・齋藤裕による、日本建築の美と構造を探る大型写真集。金閣、銀閣、龍安寺方丈、桂離宮、吉村家住宅、吉島家住宅など、室町時代から明治初期に至る23の建築を収録している。豊富なカラー写真と著者による解説を通じ、時代ごとに変化する様式や空間構成を精緻に捉え、日本建築が育んできた比例感覚と美意識の系譜を照らし出している。
復刻 伊勢貞丈 包結記 2冊揃 | 荒木真喜雄
江戸時代の研究家で、公家や武家の故実に通じた伊勢貞丈による『包結記』を復刻した全2冊。贈答の作法としての「つつみ」と「むすび」を解説した書を、折形の第一人者・荒木真喜雄が現代文で読み解いている。第2巻には、現代に応用可能な展開図や図解を収録し、伝統的な礼法を具体的に示している。歴史的資料としての価値に加え、今日の暮らしにも生かせる知恵を提示している。
はにわ | 三木文雄
考古学者・三木文雄による埴輪の研究と美を紹介する写真資料集。埴輪の起源や形態、用途、歴史的変遷、さらには出土分布地名までを網羅的に解説している。全国各地で発掘された埴輪の代表的作例を、80点のモノクロ図版と12点の貼り込みカラー図版で掲載。造形の素朴さと造作者の精神性を映し出しながら、日本古代の信仰や社会構造を読み解く手がかりを提示している。
エットーレ・ソットサス 151ドローイングス
イタリアの建築家・デザイナー、エットレ・ソットサスが1965年から1995年にかけて描いた151点のドローイングを収録した作品集。家具、建築、プロダクトなど多様な分野を横断する構想の過程を、直感的かつ自由な線描で記録している。一枚ごとのスケッチには、形が生まれ、思考が具現化していく瞬間が刻まれており、ソットサスの創造の源泉を示している。ジャンルの枠を超えたイマジネーションとデザイン哲学を伝える貴重なヴィジュアル・アーカイブを提示している。
Christian Coigny: Sittings
スイスの写真家クリスチャン・コワニーによるポートレート作品集。デザイナー、建築家、ミュージシャン、政治家、コメディアンなど多様な分野の人物が、個性豊かなデザインチェアに腰掛ける姿を捉えている。レイ・イームズ、マイルス・デイヴィス、ジョン・ケージ、イッセイ・ミヤケ、ピナ・バウシュらが登場し、それぞれの存在感と椅子の造形が響き合う構成となっている。椅子という媒介を通して、人間とデザインの関係を静謐に映し出している。
Carlo Scarpa: Museo di Castelvecchio Verona
イタリアの建築家カルロ・スカルパが改修設計を手がけた〈カステルヴェッキオ美術館〉を紹介する写真資料集。中世の城郭建築を舞台に、古代から現代までの美術作品を展示する空間構成を、スケッチや設計図、現地写真を通して詳細に記録している。石材や金属、光の扱いにより新旧の要素を調和させたスカルパ建築の精緻な美学を映し出している。
神聖空間縁起 | 毛綱毅昿、横尾忠則、藤塚光政
建築家・毛綱毅曠のテキスト、写真家・藤塚光政の写真、そして横尾忠則による二百数十点のドローイングによって構成された異色の建築書。神社仏閣をめぐる旅を通して、建築と宇宙、宗教と芸術の関係を壮大なスケールで描き出している。毛綱が「未来の都市や建築への予言めいた大ボラ」と語るように、論考、写真、絵画が一体となって展開する構成は、神聖空間の生成と人間の想像力の可能性を照らし出している。
蔵 暮らしを守る
日本各地に残る「蔵」をテーマに、その建築的構造と文化的背景を探る写真集。火災や風雪から生活や財を守るために発達した蔵のかたちを、建築学と民俗学の両視点から考察。地域ごとに異なる意匠や素材の特徴を捉え、暮らしの知恵としての蔵の存在を明らかにする。写真は石元泰博、装丁は白井晟一が手がけ、静謐で緊張感のある構成が日本建築の美と精神を照らし出している。英文解説冊子付き。
萬葉色名大鑑 | 上村六郎
万葉歌に詠まれた52の色名を、手染めの実物裂地で収録した資料集。各色には、その名称が登場する歌と解説が添えられ、古代文学と色彩文化の関わりを視覚的に伝えている。さらに巻末には摺衣に用いられた花や植物の写生図5枚を掲載し、当時の染織と自然観の結びつきを示している点も特徴。伝統的な染色技法による裂地と文献学的な考察を併せ持つ構成となっており、日本における色彩表現の歴史的背景と美的意識を明らかにしている。