アイデア別冊 カルフォルニアグラフィックス
グラフィックデザイン誌『アイデア』別冊 カルフォルニアグラフィックス。 ミック・ハガティー、マイケル・シュワブ、パトリック・ナーゲルら、多数のカルフォルニアのデザイナーによる作品を紹介したほか、「カリフォルニアスタイルとは何か?」や「デザイナーのスタジオ」として各デザイナーの制作空間を写したスタジオ写真を掲載。当時のカリフォルニアを拠点としたデザインシーンの特色と多彩な表現を収めた一冊。
Blahnik by Boman: A Photographic Conversation
ファッション界を代表するシューズデザイナー、マノロ・ブラニクと、長年の友人である写真家エリック・ボーマンによるコラボレーション作品集。ブラニクの靴を中心に、彫刻や本、果物、自然素材、地図、さらにはねずみ捕り器まで、意外性のあるオブジェクトと組み合わせて撮影した165点のカラー図版を収録している。ボーマンの鋭い構図と遊び心あふれる視線が、ブラニクの靴がもつ彫刻的なフォルムや色彩の豊かさを際立たせ、日常の中に潜む美を再発見させる構成。靴そのものを“被写体”としてとらえ直すことで、ファッションと写真が響き合う独自の世界観を描き出している。
イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
2023年に国立新美術館で開催された大回顧展の公式図録。「モードの帝王」と称されたイヴ・サンローランの40年にわたる創作の軌跡を、豊富なヴィジュアル資料とともにたどる一冊。伝説的なルック110体に加え、アクセサリー、写真、ドローイングなど262点を収録し、ディオール時代の鮮烈なデビューから独立後のブランド確立までを12章構成で体系的に紹介している。サファリ・ルックやパンツスーツといった革新的なデザインがどのように生まれ、女性のワードローブに変革をもたらしたのかを多角的に示す内容。芸術や舞台、さらには日本文化からの影響にも触れ、サンローランの創造力と美学が紡いだスタイルの進化を鮮やかに伝えている。
TIME & STYLE Philosophy of Japanese Life Culture
日本の伝統工芸の技術を生かしながら、上質でシンプルかつ素材が持つ手触りを大切にしたものづくりを追求するライフスタイルショップ「タイムアンドスタイル(TIME&STYLE)」のカタログ。キャビネットやテーブル、ソファ、椅子、ライトなど、洗練された美しいデザインのインテリアの数々を多数掲載。
Japanese Typography Yearbook 2019-2020 | 日刊タイポ
デザイナー7人による作字ユニット「日刊タイポ」が、SNSに毎日投稿したタイポグラフィ作品を収録したビジュアルブック。2019年1月1日から2020年12月31日まで、全728点の作字を掲載し、ユニークな表現の積み重ねを日めくりカレンダーのように楽しめる内容となっている。
La Chose Litteraire | Jean Philippe Delhomme
フランスの画家ジャン=フィリップ・デロームによる、文学をテーマにしたユーモアと風刺の効いた作品集。作家や批評家の世界を内側から知るデロームが、軽妙な語りとイラストレーションで「文学をめぐる小さな社会」を鋭く、しかしどこか愛情を込めて描き出す。観察者としての冷静さと、当事者としての親密さが交差する視点が魅力で、言葉と絵が響き合いながら文学界の滑稽さと本質を浮かび上がらせている。
美のなごり・立原正秋の骨董 | 立原潮
小説家・随筆家・詩人として知られる立原正秋が愛した美術品と、その美意識に迫る随筆集。愛用の器や書画をはじめ、原稿、自筆の色紙といった身辺の品々を手がかりに、立原の暮らしに息づいていた美の感覚とこだわりを静かに辿る。恵比寿「懐石 立原」の主である立原潮が、父・正秋の眼差しや物への向き合い方を回想し、生活の細部にいたるまで徹底された美学を鮮やかに描き出している。文化への深い愛情と独自の審美観が交差する、立原正秋の内面に触れる一冊。
萬葉乃譜 轆轤乃茶碗 | 樂吉左衞門
樂家の当代である十五代樂吉左衞門による作品集。手ごねではなく、轆轤(ろくろ)を用いて茶碗を制作した「萬葉乃譜」のシリーズである83点の茶碗を収録。作品銘は万葉集から引用されており、巻末には銘の元となった読み下し文などの情報も掲載。
歌こころカレンダー 2026 <立春はじまり>
詩人・白井明大と写真家・當麻妙によるものづくりユニット、白井商店の「歌こころカレンダー2026」。二十四節気・七十二候の季節の名前、日付・曜日、新月・満月のしるし、その季節に合わせた白井さんの言葉を掲載。七十二候に沿って短冊をめくることで、季節の移ろいをより身近に感じることができます。2026年2月4日の立春はじまり、翌年2027年2月3日まで。
勝山八千代 カレンダー 2026
イラストレーター・勝山八千代によるカレンダー、2026年版。ポットやカッティングボード、ピッチャーなど、暮らしの道具たちが表と裏でぐるりとループするように描かれています。横長のポスタータイプで、表面には1月〜6月、裏面には7月〜12月。日々の空間にそっと寄り添ってくれるカレンダーです。
oshow カレンダー 2026
福岡在住のイラストレーター、oshowによる2026年カレンダー。思わずくすっと笑ってしまう、自由でシュールな世界観と、色鮮やかな色彩が織りなす、手描きならではの温かみあふれるドローイングが魅力。ページをめくるたびに微笑んでしまう、月ごとに楽しめるカレンダー。封筒付。
Tina Enghoff: Possible Relatives
デンマークの写真家ティナ・エングホフによる、孤独死した人々の痕跡を静かにたどる作品集。誰にも看取られず亡くなった人々の部屋に残された家具や日用品、空白の時間が漂う室内を撮影し、豊かな福祉社会の中でも顕在化する孤立や断絶を見つめている。個人の私的空間に刻まれた生活の名残と、社会が抱える孤独の問題が写真の中で重なり合い、誰も語らない現実をそっと照らし出す。34点のカラー写真は、残された部屋の静けさを通して人間の尊厳やつながりの不確かさを考えるきっかけを与え、見る者に深い問いを投げかけている。
Empire: A Journey to the Remote Edges of the British Empire | Jon Tonks
イギリスの写真家、ジョン・トンクスの作品集。南大西洋の4つの孤島—アセンション島、トリスタン・ダ・クーニャ、フォークランド諸島、セントヘレナ—を巡る旅を通じて、人々や風景、土地に刻まれた歴史の痕跡を捉えた記録である。2007年以降、著者は各島に最長1か月滞在し、軍事基地や薄暗い滑走路、貨物船や漁船、最後の現役ロイヤルメール船を利用して6万マイルに及ぶ旅を行った。カラー写真80点に加え、歴史と逸話を記した短いテキストを交えながら、かつての大英帝国の名残として歴史に結びつく孤島の暮らしと風景を描き出す。現代英国史の一部としての島々の姿を知る貴重な記録。
hinism ヒニスム 0–9号 10冊セット
クリエイティブディレクター・泊昭雄とアートディレクター・副田高行により2004年に創刊された、WALL発行のアート・フォトマガジン『hinism(ヒニスム)』0–9号、10冊セット。「日々にみる、日常にいきる、日本に住む、そして日本に宿る」をテーマに、写真を中心としてエッセイやイラストを収録するビジュアル誌。毎号、デザイナーやアーティスト、写真家など多彩な表現者が参加し、撮り下ろしの写真作品に、詩的なエッセイやイラストが静かに響き合う構成が特徴。余白を生かした静謐なデザインでまとめられた誌面も美しい。
photograph | 濱田祐史
東京を拠点に活動し、国内外で発表を続ける写真家・濱田祐史によるカラー作品をまとめた一冊。2005〜2006年に制作され、2013年にP.G.I.で発表されたシリーズを再構成し、日常の風景に潜む光の存在を鮮明にとらえた28点を収録している。自身が「印画紙の上で光を描きたい」と語るように、特別な被写体を求めるのではなく、身近な空間に射し込む光そのものへ視線を向けたことが特徴で、透明感のある色調と静かな濃淡が作品に独特の奥行きを与えている。。限定700部刊行、装丁は田中義久。
Eggs and Rarities | Paul Kooiker
オランダのアーティスト、ポール・コイカーが2018年にアントワープ写真美術館(FOMU)での展覧会にあわせて発表した作品集。164点の写真から成る本書は、風景、ヌード、静物といった異なるジャンルを縦横に行き来しながら、写真というメディアの幅広さと揺らぎを探る野心的なプロジェクトである。観光パンフレットや政治・宗教的レトリックを想起させるクリシェをあえて用いる一方で、途中から作家の私的な写真が静かに忍び込み、公的と私的の境界が溶け合う構造が生まれる。客観性と主観性、演出と素顔、生と死といった要素がひとつの連なりの中で交差し、写真がもつ複層的な語りの可能性を大胆に示す内容。現代写真の射程を再考する上で示唆的な一冊。限定2000部発行。
Le Corbusier: Ideas & Forms
モダニズム建築を代表する建築家ル・コルビュジエの没後50周年に刊行された包括的な作品集。建築作品を中心に、スケッチ、図面、家具デザイン、絵画まで、その多岐にわたる実践を年代順に整理し、都市計画や芸術観と結びつけながら読み解く構成となっている。本書は1996年に発表された名著を大幅に増補・改訂した新版で、近年の研究成果や資料を反映しつつ、コルビュジエの思想と造形の展開を丹念に掘り下げている。ル・コルビュジエ財団のアーカイブ資料にも基づき、新規写真、図面、スケッチを豊富に掲載。
Breuer | Robert McCarter
ハンガリー出身の建築家・デザイナー、マルセル・ブロイヤー(1902–1981)の仕事を体系的に紹介する包括的な作品集。バウハウス在籍時に発表したスチールパイプ家具から、アメリカ移住後に手がけた住宅、大学施設、公共建築まで、多岐にわたる活動を豊富な図版とテキストで辿っている。モダニズムの理念を踏まえつつ、新素材や技術への探究心から導かれた造形は、家具と建築の両分野に革新をもたらし、20世紀デザイン史に確かな影響を残した。ヨーロッパ時代からグロピウスとの協働、独立後の展開までを通して、その創造の広がりと思想の変遷を丁寧に読み取れる内容となっている。
Venice: 3 Visions in Glass | Barry Friedman
イタリア・ヴェネチアの沖合に位置するムラーノ島は、中世から続くガラス工房の伝統で知られ、吹きガラスや彩色技法における高度な職人技により“ムラーノガラス”の名を世界に広めてきた。本書は、その伝統を継承しながら新たな表現を切り拓く3名の作家――クリスティアーノ・ビアンキン、大平陽一、ラウラ・デ・サンティラーナ――に焦点を当てた作品集である。ビアンキンは濃淡や透明度を巧みに操り土質的な色調を引き出し、デ・サンティラーナは彫刻的フォルムと大胆な色彩で現代的解釈を加える。大平陽一は日本の美意識とムラーノの技を融合させ、唯一無二の造形へと昇華させている。巻頭インタビューと豊富な図版を通して、伝統と革新が息づくガラス表現の現在を多角的に感じ取れる一冊。
Dior: The Perfumes
ディオールが生み出してきた香水の歴史と美学を、多彩なビジュアルとともにたどる作品集。1947年の「Miss Dior」にはじまり、「J’adore」「Dior Homme」など象徴的な香りの背景、広告ヴィジュアル、ファッションとの連動までを丹念に紹介している。写真家テリ・ワイフェンバックによる柔らかな光に満ちた写真群は、香りそのものが持つ余韻やイメージを詩的に可視化し、調香とデザインが交差する豊かな世界を引き寄せる。ブランドの革新性と香水文化の深さを併せて味わえる構成で、香りをめぐる創造性を多角的に体感できる内容となっている。
クリスチャン ディオール 夢のクチュリエ
2022年から2023年にかけて東京都現代美術館で開催された展覧会の図録。ディオール創設期から現代まで続く創造性と革新を、多彩なビジュアルとともに体系的に紹介する内容となっている。象徴的な“ニュールック”をはじめ、歴代デザイナーが生み出したオートクチュールの名品、アーカイブ資料、写真などを網羅し、日本文化とのつながりにも焦点を当てる構成が特徴。写真家、高木由利子による撮り下ろし写真によって、メゾンの美意識と職人技の精華が鮮やかに浮かび上がってくる。
Yves Saint Laurent Accessories | Patrick Mauries
イヴ・サンローランが手がけたクチュールアクセサリーの魅力を網羅的に紹介する写真資料集。パリのイヴ・サンローラン財団が所蔵する2万点を超えるアーカイブから厳選されたジュエリー、帽子、靴、バッグの写真に加え、デザイナー自身のポートレートや制作スケッチ、舞台裏のスナップ、キャットウォーク、広告ヴィジュアルまで幅広く収録している。アクセサリーによって服に新たな表情を与えるというサンローランの美学が、長年のコレクションを彩った多彩な資料から鮮明に伝わり、メゾンの創造性を多角的に味わえる一冊となっている。
Naoto Fukasawa 日本語ハードカバー版
プロダクトデザイナー・深澤直人による作品集。無印良品のCDプレイヤーやTAKEO PAPER SHOWのパッケージデザインをはじめ、家具や日用品など幅広いプロダクトを紹介している。シンプルで人の生活に寄り添う造形を重視した深澤のデザイン哲学を示す内容となっており、多数の写真図版で展開されている。さらにジャスパー・モリソン、アントニー・ゴームリー、原研哉らによる寄稿テキストも収められ、国際的視点から深澤の仕事を考察する一冊となっている。
Brands A-Z: Muji
衣服や生活雑貨、食品まで幅広いアイテムを手がける「無印良品」に焦点を当てたビジュアル資料集。歴代の広告アートワークを中心に構成され、ブランドが築き上げてきた独自のストーリーを辿ることができる。さらに、デザイナーへのインタビューや企業としての歩みを通じて、世界的な支持を得た背景を明らかにしている。シンプルさと普遍性を重視したデザイン哲学を再確認できる内容で、ブランド研究や広告資料としても価値の高い一冊。
Havana | Robert Polidori
アメリカの写真家、ロバート・ポリドリによる作品集。表面的には建物を捉えた写真でありながら、廊下や裏部屋、ファサードに残された生活の痕跡を通して、人々の暮らしや都市の歴史を映し出している。特にハバナを舞台に、街路の曲線や柱、かつての建造物の残影を写し取り、政治的・社会的・経済的な力が刻んだ都市の姿を伝える。ポリドリの色彩感覚と構図は、写真を鮮やかな記憶のようにし、日常の痕跡と都市のアイデンティティの対比を浮かび上がらせる。かつての栄華と現在の生活が交錯する瞬間を捉え、各写真が都市の伝記の断片として観る者に新たな発見をもたらしている。
Snowpark | Philippe Fragniere
ロンドンとスイスを拠点に活動する写真家フィリップ・フラニエールが、フリースタイル競技のために設計されたスノーパークを撮影した作品集。人工的なジャンプ台やレール、滑走面などの構造物が、雪原の中で彫刻のような存在感を放ち、幾何学的なラインと自然の柔らかな光が交錯する風景が静かに写し出されている。構図の遊びや抽象的なフォルムへの意識が、ランドスケープ写真と現代的なスティルライフのあいだを行き来する独自の視覚世界を形成。Kodoji Pressによる緻密な造本やゲートフォールドも作品の体験を豊かにし、スノーパークという人工環境の美しさと詩性を鮮やかに伝えている。
Zivile Operationen/Civil Operations | Walter Niedermayr
イタリア出身の写真家ウォルター・ニーダーマイヤーの代表的シリーズを横断的に紹介する作品集。国際的評価を受けたアルプスの風景写真に加え、病院や刑務所、高速道路、建設現場といった人工環境を淡い光の中で静かに写し取り、人が空間とどのように関わり、影響を与え合っているのかを繊細に考察している。可視と不可視の境界を揺らすような表現は、広がりのある空間の緊張と詩情を同時に浮かび上がらせ、見る者の知覚を静かに揺り動かす。多方向へ広がるシリーズ構成を通して、建築的スケールと人の気配が交錯するニーダーマイヤーの視覚世界が豊かに伝えられている。
Nordic Moods: A Guide to Successful Interior Decoration
デンマークのインテリアデザイナー、カトリーネ・マーテンセン=ラーセンが、9軒の多彩な北欧住宅を通じて理想の住まいづくりを指南するヴィジュアルブック。素材や色、家具の選び方から節度のある装飾まで、北欧スタイルの基本を丁寧に解説。ムードボードを活用して優先順位を見極め、自分らしい個性と調和のある空間をデザインする方法を学べる。豊富な写真で構成された本書は、北欧の美しい暮らしを実感しながら、誰でも自宅で取り入れられる実践的なヒントが満載。デザイン初心者から愛好者まで幅広く楽しめる、視覚的にも魅力的なガイドブック。
Giorgio Morandi | Karen Wilkin
イタリアの画家ジョルジョ・モランディの静物画を中心に、その生涯の仕事を幅広く収めた作品集。瓶や器といった身近な対象を繰り返し描いた代表作に加え、初期の人物画、風景画などを網羅し、作風の変遷と探究の軌跡を丁寧にたどる構成となっている。落ち着いた色調と限られた対象物による構成は、一見素朴でありながら、形と光を探る絵画的思索に満ちており、静寂の中に微細な揺らぎを感じさせるモランディ独自の世界が立ち上がる。キャリア全体を通した豊富な図版が添えられ、色彩、配置、陰影の微細な差異が作家の思索の深まりとともに読み取れる内容となっている。
1986 ハードカバー版 | 上田義彦
写真家・上田義彦が1986年、ニューヨークでモデルのマリー・ソフィー・ウィルソンを撮影した作品をまとめた一冊。平田暁夫のハットを纏う姿や、飾り気のない衣装のまま真っすぐこちらを見つめる表情など、若き上田の感性がとらえた端 […]
Hiroshima Collection | 土田ヒロミ
写真家・土田ヒロミが長年にわたり撮影してきた広島平和記念資料館所蔵の被爆資料を集成した作品集。溶けたガラス瓶、焼け焦げた弁当箱、破損した学生服、変形した仏頭など、原爆が一瞬で奪い去った日常の痕跡を300点以上のモノクロ写真で収録している。写真には被爆者や遺族の証言が添えられ、当時の過酷な状況や消えることのない喪失が静かに浮かび上がる。1980年代から続く土田の“ヒロシマ”シリーズの集大成ともいえる本書は、声なき資料の存在を写真によってすくい上げ、核がもたらす暴力の現実をあらためて考えさせる構成。和英文併記により、国境を越えて記憶の継承を促す視点となっている。
新・砂を数える | 土田ヒロミ
写真家・土田ヒロミが、日本社会における群衆のあり方を長期的に記録してきたシリーズをまとめた作品集。カラーの「新・砂を数える 1995–2004」と、モノクロの「砂を数える 1976–1989」の二部構成で、人々が集まる場所に生まれる空気や振る舞い、大衆文化の変容を丹念にすくい取っている。大型判ならではの解像度によって、群衆のなかに潜む個々の存在感や時代の気配が細部まで立ち上がり、個と集団の関係が映し出される点が特徴。長年にわたる観察の蓄積を通して、日本の社会風景の変遷を読み解く。
大きな屋根 建てる 釜石市民ホールTETTO 2013-2019
東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市に新たに建設された「釜石市民ホールTETTO」。その構想の始まりから完成、そして地域に根づいていく現在までの6年間を追ったドキュメント。建築家・ヨコミゾマコトの文章と、写真家・奥山淳志による255点の写真を通じて、鉄骨工事や外装の施工、現場で働く人々の表情、こけら落としの舞台の緊張、竣工後に街の日常へと溶け込む建築の姿が丁寧に描かれている。設計の思考を記した「設計ノート」も収録され、建築が多くの手と時間を通して形づくられ、地域の風景へとゆっくり馴染んでいく過程が伝わる一冊。
盲いた黄金の庭 | 吉増剛造
詩人・吉増剛造が20年以上にわたり取り組んできた多重撮影の作品を厳選して収めた写真集。世界各地で撮影した風景や人々の気配、街や自然の断片が幾層にも重ねられ、詩人ならではの感受性が刻まれた“写像”として新たな像を結ぶ。各作品には吉増自身の書き下ろしによる詩語が寄り添い、視覚と言葉が互いの輪郭を曖昧にしながら響き合う表現世界が立ち現れる。多重露光が生む未知のイメージは、記録と詩作の境界を越える試みとして評価されており、掲載された論考や解説がその創造性を多方面から読み解く手がかりを与えている。
涯テノ詩聲 詩人 吉増剛造展
詩人・吉増剛造の半世紀に及ぶ活動を総合的に振り返る展覧会の図録。詩集を軸に、写真、映像、立体など多岐に広がった表現を丹念に紹介するとともに、その創作を支えてきた言葉・声・身体の探求に迫る内容となっている。各時代の代表作を手がかりに、初期から近作に至るまでの思考の変遷をたどり、詩を超えて表現領域を横断してきた軌跡を立体的に提示する構成が特徴的。さらに吉増と関わりの深い作家や研究者の作品・資料・寄稿も掲載され、芥川龍之介、折口信夫、瀧口修造、荒木経惟、東松照明、中平卓馬、森山大道、若林奮など多彩な表現者の言葉と視覚資料が響き合っている。
Artist Work Lisson | Ossian Ward
創立50周年を迎えたロンドンのリッソン・ギャラリーが、その半世紀にわたる活動を体系的にまとめたアーカイブブック。マリーナ・アブラモヴィッチ、アイ・ウェイウェイ、ジョン・アコマフラ、フレッド・サンドバック、ローレンス・ウィナーなど、同ギャラリーで個展を開催した150名以上のアーティストをA〜Z順に収録し、500を超える展覧会の記録を横断的にたどることができる。インスタレーションビューや招待状、書簡、エフェメラ、主要な批評文や記事を1,200ページにわたり集成し、現代美術の重要な潮流を俯瞰する資料性の高さが際立つ。装丁・デザインはイルマ・ボームが担当し、アーカイブとしての重厚さと造本の美しさをあわせもった内容となっている。
軽井沢時代 1947-1970 | 森澤勇
写真家・森澤勇が、戦後から高度経済成長期に至る軽井沢の姿を記録した写真集。1947年から1970年までの約四半世紀にわたり、避暑地として発展する町の活気、四季の自然、別荘地に滞在する人々の日常をモノクロ写真で丹念に写し取っている。写真館を営んでいた森澤が撮影したネガは、長く忘れられていたのち、孫によって発見・プリントされ新たな命を得たもの。観光地としての賑わいと、静謐な時間が流れる土地の空気が交差し、移りゆく町の表情と記憶が豊かに伝わってくる記録集となっている。
視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション | 神奈川県立近代美術館、京都国立近代美術館 他
2011年に神奈川県立近代美術館などを巡回した展覧会の公式図録。20世紀美術に革新をもたらし、バウハウスで教鞭を執ったモホリ=ナジ・ラースローの創作をたどる。生い立ちから構成主義への傾倒、バウハウス時代の活動に至るまでを順に紹介し、写真、ペインティング、グラフィックデザインなど多彩な作品を掲載している。モホリ=ナジ自身のエッセイ「写真は光の造形である」に加え、パシュート・クリスティナやオリヴァー・A・I・ボーターらによる論考も収録し、その思想と実践を多角的に検証する内容となっている。
Earth Stations: Future Sharing Architectures
イタリアを代表する建築家ミケーレ・デ・ルッキと、彼が率いるAMDL CIRCLEの取り組みを紹介するデザイン資料集。人と人が豊かに関わり合える未来の建築として構想された〈Earth Stations〉の理念を軸に、世界各地のプロジェクトへ展開する思想や模型、図面が整理されている。建築とは何をもたらし得るのか、いかに持続可能な思考を空間の質として体現できるのかを多分野の専門家との対話を通して探究する構成。集う場を「生きた記念碑」として捉えるデ・ルッキの視点が、建築を介した新しい関係性の可能性を提示している。
nendo ghost stories | 佐藤オオキ
デザイナー・佐藤オオキ率いるnendoのプロジェクトを、写真家・樋口兼一が制作現場から記録した写真資料集。建築、インテリア、プロダクト、グラフィックと幅広い分野で発表されてきた210点以上の作品の中から22点を選び、その制作プロセスを丁寧に追っている。素材の試行や模型の検証、手を動かしながら形が立ち上がっていく瞬間が写され、日常の“気づき”をデザインへと翻訳するnendo特有の思考の流れが静かに伝わる構成。シンプルな装丁も世界観を補完し、アイデアが生まれる現場の空気に触れられる一冊となっている。
A Pink Flamingo | Jack Latham
イギリスの写真家ジャック・レイサムが、かつて数十万人の開拓者が西を目指した「オレゴン・トレイル」を辿り、2012年のアメリカ西部に暮らす人々と風景を記録した作品集。金属探知機を手にする人物、車で生活する家族、ひっそりとした道路や遊具の残骸など、旅の道中で出会った光景が、開拓時代の記憶と現在の不安定な暮らしを重ね合わせるように写されている。タイトルに引用されたプラスチック製のピンクフラミンゴは、アメリカン・ドリームの象徴性を揶揄するアイコンとして作品のトーンを導き、巻末に収められたスクラッチカードは旅で得た偶然性への姿勢を象徴する要素となっている。過去と現在が交錯するアメリカの素顔を静かに描き出している。
The Kinfolk Table 小さな集いのためのレシピ集
ポートランド発のライフスタイル誌「KINFOLK」の世界観をそのまま引き継ぎ、著者ネイサン・ウィリアムスが世界各地を旅して出会った家庭料理を紹介する日本語版レシピ集。朝の静かな食卓から、友人と囲む気取らないディナーまで、日々の暮らしの中にある“小さな集い”の時間を大切にするレシピが85品掲載されている。料理を作る人々へのインタビューや、生活の背景にある価値観にも触れられ、食がつくるコミュニティや関係性の豊かさが丁寧に伝わってくる。写真とデザインもKINFOLKらしい静けさと温もりに満ち、レシピ本でありながらライフスタイルを見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊。
Via del Mare | Jannis Kounellis
1990年にアムステルダム市立美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された、ヤニス・クネリスの図録。1960年代後半から70年代初頭の「アルテ・ポーヴェラ」を代表する作家として知られるクネリスが、鉄や石、木材、布など多様な素材を用いて生み出した作品群を、モノクロ図版を中心に紹介している。素材の重さや温度、配置によって空間そのものを変容させるクネリスの実践は、彫刻とインスタレーションの境界を横断しながら、物質と身体、歴史との関係性を強く意識させる。展覧会当時の視覚的記録を通して、その表現の核心に触れられる内容となっている。
Waterfall: The Spectacle of Now
台湾発のアートマガジン「Waterfall」第4号。かつての「世界の七不思議」を引き合いに、方向感覚を失いつつある現代人の姿を描きながら、日常的なオブジェを用いた現代アート作品などを通して「今」の世界を映し出す。多角的に現代社会の光景を切り取る一冊であり、読者に現代を考察する視点と思索を促している。