Raymond Pettibon | Phaidon Contemporary Artists Series
カリフォルニアを拠点に活動するアーティスト、レイモンド・ペティボンのドローイングを紹介する作品集。ソニック・ユースやブラック・フラッグのカバージャケットで知られるように、パンクやニューウェーブの精神を背景に独自の表現を切り拓いてきたペティボン。本書では、コミック的な構図に辛辣なユーモアと社会批評を織り交ぜた代表的ドローイングを多数収録する。デニス・クーパーとのインタビュー、MoMAキュレーターによるキャリア概説、特定シリーズの分析、本人が選んだテキスト、初期のインタビューや歌詞なども掲載され、多面的に作家像へ迫る内容。西洋絵画の系譜とアンダーグラウンド文化が交錯するペティボンの軌跡を巡る。
クリフォード・コフィン写真展
2000年に新宿・伊勢丹美術館で開催された、アメリカのファッションフォトグラファー、クリフォード・コフィンの展覧会図録。イギリス、フランス、アメリカの一流ファッション誌を彩ったヴィジュアルに加え、アンリ・マティスやクリスチャン・ディオールなど文学・美術・映画・演劇界の著名人を撮影したポートレートも掲載されている。大胆な構図やライティングによって戦後ファッション写真の新たな表現を切り拓いたコフィンの革新性が、多彩な図版を通して鮮やかに示され、時代の空気と創造の熱量を感じ取れる構成となっている。
Inagawa Cemetery 猪名川霊園 | デイヴィッド・チッパーフィールド、鈴木理策
写真家・鈴木理策が1年にわたり四季の移ろう猪名川霊園を撮影した建築写真集。新たに設計された礼拝堂と休憩棟は、2023年プリツカー賞を受賞した建築家デイヴィッド・チッパーフィールドによるもので、日本に足繁く通い施主と対話を重ね、宗教や文化の違いを越えて誰もが静かに祈れる空間として丁寧に形づくられた。霊園の緑や光と呼応する建築は、季節ごとに異なる表情を見せ、自然と建物が寄り添う時間の深さを静かに伝えている。80ページにわたる写真と図面、チッパーフィールド自身のエッセイを収録し、建築の思想と空間の美しさを重層的に感じ取れる内容となっている。
柚木沙弥郎との時間 | 柚木沙弥郎、木寺紀雄
染色家・柚木沙弥郎を、写真家・木寺紀雄が10年にわたり撮影したフォトブック。制作の現場で並ぶ型紙や染料のパレット、展覧会の舞台裏、旅先で得た着想の瞬間、そして茶目っ気あふれるポートレートまで、長年にわたる密やかな時間が242点の写真に凝縮されている。98歳となった現在も創作を続ける柚木の姿には、色彩への飽くなき探究と、日々の出来事を軽やかに受け取る感性がにじむ。約1万7千点のアーカイブから選び抜かれた写真群は、作品の源にある生活や人柄を温かく可視化し、柚木の創作世界に寄り添う深いまなざしを伝えている。
犬のための建築 Architecture For Dogs
グラフィックデザイナー・原研哉のディレクションにより企画された展覧会にあわせて刊行された作品集。ATELIER BOW・MVRDV・隈研吾・コンスタンティン・グルチッチら、世界で活躍する建築家・デザイナー13組が考案した“犬のための建築”を紹介する。設計図や組み立て方、コンセプトテキスト、完成写真を通して、犬という身近な存在のために空間や構造をどう発想できるのかを多角的に提示している点が特徴。小さな建築を前に見せる犬たちの自然な表情も収められ、遊び心と実験性が共存する内容。
堀部安嗣の建築 Form and Imagination
日本の建築家・堀部安嗣が1995年から2006年に手がけた25の作品を収録した初の作品集。デビュー作「南の家」をはじめ、「ある町医者の記念館」、「牛久のギャラリー」など、各プロジェクトの図版と解説を通して、素材への深い眼差しと造形への確かな感性が示されている。木・石・しっくいといった自然素材を活かした空間は、幾何学的なフォルムと温度感のあるディテールが調和し、時間の経過とともに風景に溶け込む静かな美しさを宿す。自ら撮影した写真やドローイングも収録され、堀部が追求する建築思想とその広がりを丁寧に伝えている。
Toiletpaper Magazine 12
現代アーティストのマウリツィオ・カテランと写真家ピエルパオロ・フェラーリによって創刊されたアート雑誌「TOILETPAPER Magazine」の第12号。テキストを排した誌面には、ユーモア、悪ふざけ、違和感、ポップカルチャーへの皮肉が入り混じる強烈なイメージが次々と展開し、視覚だけで読むアート作品のような存在となっている。広告写真やファッションフォトの語法を大胆に転用しながら、現代社会の欲望や不条理をビビッドに映し出す編集手法が際立ち、日常と非日常の境界を揺さぶる独特の世界観が鮮烈に展開されている。
Reflection | 井上佐由紀
写真家・井上佐由紀による写真集。よせてはかえす波打ち際で、真っ白なレオタードをまとった少女が舞う姿を捉えている。風になびく布や揺れる髪、まっすぐな眼差しが、決して同じ形を見せることのない景色の中に重なり合う。二度と訪れることのない瞬間を静かに切り取り、時間の儚さと存在の強さを同時に映し出す作品集となっている。
巨匠フランク・ロイド・ライト
近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトの歩みと作品を俯瞰する資料集。コンクリートやスチール、ガラスなど20世紀初頭に登場した新素材を積極的に取り入れ、歴史的様式に依存しない独創的な空間を生み出したライトの建築思想を、多数のカラー写真とスケッチ、本人の言葉を交えて紹介している。「落水荘」をはじめ、自然との調和を重んじた“有機的建築”の代表作が年代順に収録され、設計意図や造形のダイナミズムを追体験できる構成。建築史に刻まれた革新の軌跡を、視覚的にも読み解ける内容となっている。
1960年代グラフィズム 印刷博物館 企画展
2002年に印刷博物館で開催された企画展「1960年代グラフィズム」の図録。高度経済成長と国際化の波の中、写真や印刷技術の革新を背景に大きな飛躍を遂げた1960年代の日本デザインを紹介する。「世界デザイン会議」に始まり、「日本宣伝美術会」の解散で幕を閉じるまでの変化の時代を、多数の作品図版と関係者の証言で振り返る。デザイン史の重要な転換点を記録した資料であり、装丁は粟津潔が手がけている。
ヴァチカン教皇庁図書館展 書物の誕生 写本から印刷へ
2002年に印刷博物館で開催された展覧会図録。ヴァチカン教皇庁図書館が所蔵する写本や初期印刷本を中心に、西洋における書物の誕生と発展をたどる内容となっている。中世ヨーロッパの装飾写本に見られる精緻な彩色や写字生の技、グーテンベルク以降に始まる活版印刷の革新まで、聖書を軸に文字・宗教・美術が交差する文化史的変遷を豊富なカラー図版で紹介。写本から印刷へと移行する時代の息遣いを視覚的に感じ取ることができ、書物の成立過程を多角的に読み解く一冊となっている。
デザイナー誕生 1950年代日本のグラフィック
2008年に印刷博物館で開催された展覧会の公式図録。河野鷹思、原弘、亀倉雄策、北園克衛ら、日本の戦後グラフィックデザインを牽引した作家たちの作品を収録する。戦後の復興期から高度経済成長へと移り変わる1950年代を背景に、新しい造形意識や印刷表現の実験が芽生えた時代の空気を映し出す。グラフィックデザインが「デザイナー」という職能として自立していく軌跡をたどり、日本デザイン史の原点を検証している。
石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか
日本を代表するアートディレクター石岡瑛子の活動を総覧する展示図録。2020年に東京都現代美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された。資生堂、PARCO、角川書店の広告をはじめ、ニューヨークに拠点を移してからの映画、音楽、舞台といった分野での仕事も収録。レニ・リーフェンシュタール、フランシス・フォード・コッポラ、マイルス・デイヴィス、ビョークらとのコラボレーションを含む多岐にわたる活動を紹介し、石岡の表現が国際的に果たした役割を示している。
アイデア No.249 写楽と現代グラフィックス
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.249(1995年3月号)は、巻頭特集「写楽と現代グラフィックス」を通して、写楽登場から200年を経た視覚文化の連続性を多角的にたどる内容となっている。瀬木慎一による写楽論、田中一光・佐藤晃一らによる江戸文化の再解釈、伝統木版と現代デザインの比較検証、さらに映画『写楽』のアートディレクションをめぐる浅葉克己へのインタビューなど、歴史と現代を横断する視点が豊かに提示されている。併録企画では、マーシャル・アリスマンの「エンジェル」シリーズ、オランダのデザイン・オフィス「クウェイデン/ポストマ」、平野甲賀の〈架空装丁〉、アラン・ヴェイユのカードアートなど、多彩なトピックを収録。
アイデア No.245 ’94 卒業制作グラフィックデザイン誌上展
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.245(1994年7月号)は、全国の大学・専門学校から選りすぐった1994年の卒業制作を誌面上で紹介する特集を中心に、当時の若い世代による表現動向を広く俯瞰した号。多摩美術大学、東京芸術大学、武蔵野美術大学、金沢美術工芸大学ほか多数の学校から、ポスター、タイポグラフィ、写真、パッケージなど多岐にわたる作品を収録し、学生の自由な発想と造形実験の広がりを視覚的に示している。あわせて、テルアビブ国際ポスター展や“サラエボ、非常事態”ポスタープロジェクトなど時事性を帯びた企画を取り上げるほか、マーゴ・チェイス、エイミー・グイップ、ジェニファー・モーラといった個性豊かなデザイナーを紹介。
もじを描く | 平野甲賀
独自の描き文字で知られるデザイナー・平野甲賀が、自身の歩みや“文字”への思索を綴ったエッセイ集。手書き文字の線がどのように生まれ、形になり、読む人へ届いていくのか──その背景にある感覚や姿勢を、書き下ろしの文字とともに語っている。装丁や本づくりの現場で磨かれてきた感性、自由で奔放な発想、遊び心ある筆致が随所にのぞき、平野文字の奥に広がる世界観をやわらかく伝えている。著者自装。
HUMAN LAND 人間の土地 | 奈良原 一高
戦後日本を代表する写真家・奈良原一高が1956年の初個展で発表した「人間の土地」をまとめた復刊版写真集。第一部「緑なき島」では、最盛期に約5,000人が暮らした軍艦島の日常をとらえ、過酷な環境と密集した生活の中で営まれる家族の姿を力強いコントラストで描き出している。第二部「火の山の麓」では、桜島大噴火によって家屋や鳥居が埋没した黒神村を訪ね、自然災害に向き合いながら生きる人々の時間を静かに写す構成。隔絶された二つの土地に刻まれた近代日本の現実を、卓越した視覚表現で深く捉えた重要作であり、日本写真史におけるパーソナル・ドキュメントの原点を示している。
The Destruction of Lower Manhattan | Danny Lyon
アメリカの写真家ダニー・ライアンが、1960年代後半のロウアー・マンハッタンで進んだ大規模な取り壊しを記録した作品集。自身が暮らすロフト周辺で、19世紀建築が次々と立ち退き・解体されていく光景を目にした彼は、「消えゆく街並みを残す」という強い意志のもと、一軒ずつ丁寧に撮影を続けた。フルトン・ストリートやハドソン沿いの古いビル群、作業員の姿、瓦礫となる直前の建物など、都市の変容と記憶が重ねられた場面が静かな緊張感をもって写し取られている。のちにツインタワー建設へとつながる再開発の前夜を捉えたこれらの写真は、現在では失われた街区を唯一伝える記録となり、ニューヨークという都市の時間を深く考えさせる内容となっている。
Eames: Beautiful Details
20世紀のデザインを象徴するチャールズ&レイ・イームズ夫妻の創作を総合的に紹介する作品集。家具、映像、グラフィック、テキスタイル、玩具、建築、展示デザインなど、ジャンルを越えて展開された膨大なプロジェクトを多数の図版とともに収録し、夫妻が生涯を通じて追求した実験精神と柔軟な造形思考を多面的にたどる内容となっている。家具デザインでは成形合板やFRPを用いた革新的な試み、写真や映像では教育・コミュニケーションの可能性を広げる制作姿勢が際立ち、幅広い領域が相互に響き合うイームズ独自の世界が立ち上がる。
古道具、その行き先 坂田和實の40年
2012年に渋谷区立松濤美術館で開催された展覧会「古道具、その行き先 坂田和實の40年」の公式図録。骨董界の第一人者として知られる坂田和實がこれまでに見出し、扱ってきた古道具の数々を通して、その独自の審美眼と哲学を探る。時代や用途を超えて選び抜かれた器や道具の佇まいから、「使われてきたもの」に宿る美と価値を見つめ直す一冊。坂田が築き上げた“古道具”という概念の核心を提示している。デザインは有山達也によるもの。
陶磁のこま犬 特装限定版 | 本多静雄
陶芸研究家・本多静雄が各地に残る陶磁製こま犬の魅力を記録した資料集。愛知、岐阜、岡山をはじめとする地域に伝わるこま犬を丹念に調査し、威厳を湛えた姿からどこか愛嬌を感じさせる造形まで、多様な表情をカラー写真で紹介している。産地ごとの特徴や制作年代、技法に触れながら、由来や背景を整理した「こま犬の戸籍簿」も掲載され、地域文化と造形美の関係を読み解く手がかりが示される。表紙に愛らしいこま犬の陶板が埋め込まれた限定版の装丁。限定80部発行。
The Pioneering Work of Hermann Rosa: Purism in Concept, Form and Materials
彫刻家であり建築家でもあるハーマン・ローザの、彫刻と建築が交差する独自の実践を紹介する作品集。彼は重機を用いず自らの手でスタジオハウスを築き上げ、鉄筋コンクリートによる巨大な“歩行可能な彫刻”として空間を創出した。開かれた面の構成にはデ・ステイルやバウハウスの精神が響き、同時にベトン・ブリュット特有の素材感が力強く息づく。色彩や装飾を排し、形態と空間に徹底して向き合ったその思考を、新旧の写真やスケッチ、図面資料を通して多角的に検証する内容。戦後ドイツ建築の中でも特異な存在であるローザの仕事が、国際的文脈のなかで再評価されている。
Cai Guo-Qiang: I Want to Believe
中国出身の現代美術家・蔡國強(ツァイ・グオチャン)の活動を、1980年代から現在まで網羅的に紹介する決定版的作品集。火薬を紙面上で爆破して描くドローイングや、壮大なスケールで展開される爆発イベント、大気や空間全体を巻き込むインスタレーション、さらには地域コミュニティと協働する社会的プロジェクトまで、多岐にわたる実践を年代順かつテーマ別に整理している。230点以上の図版に加え、映像記録や準備スケッチも掲載され、火薬という素材を独自の表現言語へと昇華してきたプロセスを詳細に読み取ることができる一冊。国際的なアートシーンにおける蔡國強の思想的・造形的貢献を深く理解できる内容となっている。
It Don’t Mean a Thing スイングしなけりゃ意味がない | ソール・ライター、ポール・オースター
アメリカの写真家ソール・ライターの作品と、作家・詩人ポール・オースターの物語を組み合わせた一冊。偶然の連鎖や都市で交差する人生を描くオースターのテキストと、ニューヨークの路上に宿る光や人々の動きを静かにとらえたライターの写真が呼応し、日常の風景に潜む詩情が立体的に浮かび上がる。1947年から1970年代にかけて撮影された未発表作を含む白黒・カラー写真58点を収録し、都市の片隅で生まれる小さなドラマを新たな視覚体験として提示する構成。ふたりの視点が重なり合うことで、何気ない瞬間に宿る物語性が鮮やかに伝わってくる内容となっている。限定500部。
Jan Groover: Photographs
1970年代から1990年代にかけて制作されたヤン・グルーバーの代表作を収めた作品集。建築装飾のディテールに着目したシリーズから、カトラリーや植物など日常の器物を構成的に捉えた静物写真、さらに人物をとらえたポートレートまで、多様な視覚実験が展開されている。卓越した色彩感覚と精密なコンポジションによって、ごく身近な対象が抽象的な形態へと変化し、写真という媒介の造形的可能性が鮮やかに示される構成。初期のランドスケープ三連作や大型プリントも収録され、グルーバーが高い評価を得た理由が立体的に浮かび上がる。静物表現の新たな領域を切り開いた視覚言語を的確に伝えている。
Walking the Sea | Anton Ginzburg
ロシア出身のアーティスト、アントン・ギンズブルグが、カザフスタンとウズベキスタンの間に広がるアラル海地域を歩きながら記録した作品集。ソ連時代の環境破壊によって水を失った“海なき海”を、1960〜70年代アメリカのランドアートの手法にならい、巨大な地形作品=レディメイドとして読み解いている。フィルム、写真、彫刻によって構成された作品群は、巡礼する画家の伝承や、風景を琴のように鳴らすイメージ、地下に沈んだ「内海」の神話など、地域の文化的層位に触れつつ、不在となった海が残した歴史と想像力の空白を照らし出す。
Souvenirs | Benjamin Katz、Peter Feierabend
ベルギー出身の写真家ベンジャミン・カッツが、国際的なアートシーンを生きる人々を約900点の写真で紹介する大ボリュームの作品集。A.R.ペンク、ゲルハルト・リヒター、ジェームス・リー・バイヤースをはじめ、作家、コレクター、ギャラリスト、美術展の舞台裏まで、多様な現場が自然な距離感でとらえられている。控えめでありながら鋭いまなざしによって、表情や身振りの奥に潜む関係性や時代の空気がそっと姿を見せ、アート界を支える文化的文脈が豊かに感じ取れる内容。創作の現場をめぐる人間像を鮮明に描き出している。
Storytelling | Achim Lippoth
ドイツの写真家アヒム・リポットの活動を包括的に紹介する作品集。リポットは子ども時代の純粋さや繊細な感情を捉える写真で知られ、画面の中心には常に子どもたちが置かれているのが特徴である。彼らの姿は鮮やかな物語の主人公として描かれ、大人たちはしばしば脇役にとどまり、世界を見つめる視点の転換を促している。演出とドキュメントの境界を行き来する独自のスタイルは、親密さと緊張感を併せもち、日常の中に潜む演劇的瞬間を浮かび上がらせている。写真を通じて物語を紡ぐ試みが随所に示され、リポットのキャリアを理解する上で重要な一冊となっている。
Portrait of a House: Conversations with BV Doshi | Dayanita Singh, BV Doshi
写真家ダヤニータ・シンが、インドを代表する建築家バルクリシュナ・ドーシを長年にわたり撮影し、その思想に耳を傾けたコラボレーション作品集。ドーシの妻の名を冠したカマラ・ハウスを起点に、家族が暮らす空間を白黒のポートレートで丁寧に写し取り、そこに呼応するように建築家本人が創作の動機や建築哲学を語っていく。光が差し込む角度や空間の動き、人々の会話が生まれる配置といった要素が、住まいに潜む知性と感性を浮かび上がらせ、家という存在が生き方や感覚をどのように形づくるのかを静かに示している。
Time in Air, Time in Paper | Seiko Morikawa 森田幸子
フランス、アンジェを拠点に活動するアーティストの森田幸子による作品集。イタリア製水彩画紙に刷毛で感光剤を塗布し印画紙を製作、35mmフィルムカメラで自然光の中で撮影された写真をアンティークの引き伸ばし機を使用し印画紙に焼き付け、お湯と絵筆で感光剤を細心に取り除くという長い行程を経て創作活動を行っている。本書は、20年以上にわたる51作品を再編したもの。植物、果物、魚などの静物をモチーフに、時間をかけて丁寧に編み出された奥深さがにじみ出る作品群を掲載。英語表記。
ジャパニーズ・モダン 剣持勇とその世界
戦後日本のインテリアデザインを牽引した剣持勇の仕事を総合的に紹介する、巡回展のカタログ。木・藤・竹など日本の素材を活かした家具や照明、パッケージデザインを中心に、「ジャパニーズ・モダン」と呼ばれる彼独自の理念がどのように形成され、建築家や美術家との協働を通じてどのように発展していったのかを立体的に示している。剣持デザイン研究所の協力のもと、初期から晩年までの代表作に加え、豊口克平、渡辺力、イサム・ノグチ、猪熊弦一郎ら同時代の作家の作品も併載。素材と構造への静かな洞察を通して、剣持勇が築いた造形理念と実践を多角的に検証している。
デンマークの椅子 椅子は最も人間的な道具である | 織田憲嗣
デンマークを代表するデザイナーたちによる椅子の名作を集めた作品集。アルネ・ヤコブセン、フィン・ユール、ハンス J. ウェグナーら64名が手がけた170点を掲載する。代表的な作品は前後左右から撮影された写真とともに紹介され、デザイナーや作品の背景、デザインの特徴を解説。北欧デザインを象徴する椅子の造形美と機能美を、多角的に味わえる内容となっている。
The Bollocks: A Photo Essay of the Sex Pistols
写真家デニス・モリスが、1977年のセックス・ピストルズを間近で追いかけたフォト・ドキュメント。ステージ上の激情、移動中の素顔、バックステージの緊張と緩和、当時のロンドンの空気まで、パンク黎明期の“生”をそのまま封じ込める。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの撮影で知られるモリスが捉えた未公開含む106点の写真は、「オン・ザ・ロード」「サウンドチェック」「ライヴ」「バックステージ」「ポートレート」「ザ・シーン」の6章構成で展開。破壊衝動と創造の爆発が同時に燃え上がった瞬間を、鮮烈に伝える一冊。
Bay/Sky | Joel Meyerowitz
ジョエル・マイヤーウィッツが1980年代から90年代にかけて撮影した湾岸の水平線を収めた作品集。海と空が出会う境界のわずかな変化に焦点を当て、光、色、空気、風といった自然の要素が刻々と表情を変える瞬間を丁寧に追いかけている。日の出から黄昏、さらには光が消えていく時間帯まで、47点のカラー写真が連なり、観察と探求を重ねた16年に及ぶ視覚的思考の結晶を示す。マイヤーウィッツは水平線そのもの、あるいはその消失を視覚的軸として扱い、フォーマリズムと自然主義を往還する独自の構図を形成。撮影地点はほぼ同じでありながら、潮位、天候、光の変化が水面と雲の質感に微妙な違いを与え、画面に静かな多様性をもたらしている。
I Want to Spend the Rest of My Life Everywhere… コンパクト版 | Damien Hirst
イギリスの現代美術家ダミアン・ハーストの活動をコンパクトに俯瞰する作品集。代表作を中心に、テキストと図版を大胆に組み合わせた誌面構成が特徴で、ポップアップや多層的なレイアウトなど、書物自体を実験的なアートとして仕上げている。デザインはジョナサン・バーンブルックが担当し、タイポグラフィや写真、ドローイングが高速で切り替わるような視覚体験を生み出している。作家ゴードン・バーンによるエッセイも収録され、ハーストの思考の源泉とその影響力を読み解く手がかりが示される。
Topologies | Edgar Martins
ポルトガル出身の写真家エドガー・マーティンスによる自然と人工環境を横断する作品集。火災で荒れた森や極寒の雪原、夜の海岸、オーロラの走る空など、美しくも厳しい風景を大判カラーで収録している。デジタル加工を一切用いず、綿密な構図と統制されたフレーミングによって、現実のはずなのにどこか異化されたような情景が立ち上がる点が特徴的。自然の造形と人工物の痕跡が交錯する瞬間を鋭敏に捉え、風景が孕む緊張や違和感を静かに浮かび上がらせている。
Knokke Le Zoute Interiors: Living by the Sea
ベルギー屈指の高級リゾート地として知られるクノッケ・ル・ズートの住宅インテリアを紹介する写真集。モダンな邸宅から白亜のヴィラ、アートを随所に配した改装アパートまで、多様な住空間を丁寧に取材し、海辺の暮らしが育む美意識とこだわりを映し出している。住人たちが長年探し求めた一点物のアートや偶然の出会いによる家具がそれぞれの物語を語り、ギャラリーオーナーや写真家など多彩なオーナー像を通して、この土地特有の文化的厚みが立体的に伝わる構成。
Table Stories: Tables for All Occasions
世界各地で活躍する22人のアーティストが手がけた、100を超えるテーブルシーンを紹介するビジュアルブック。子ども向けパーティーからウェディング、クリスマスディナー、夏のガーデンパーティーまで、さまざまな場面に応用できるアイデアが豊富に盛り込まれている。整然とした形式よりも、心を込めてしつらえたカジュアルなエレガンスを重視し、食卓を囲む時間に生まれる喜びや温かな交流を引き立てる構成。各アーティストの個性が際立つテーブルコーディネートに加え、実践的なヒントやスタイリングの工夫も共有され、日常から特別なイベントまでの演出を豊かに広げている。
Japan: The Vegetarian Cookbook
日本の家庭料理をベジタリアンの視点から紹介するレシピ集。和え物、煮物、蒸し物、焼き物、揚げ物、漬物、甘味まで幅広い調理法を軸に分類し、250品以上の料理を写真とともに収録している。四季の素材を生かした品々は、植物性中心でありながら豊かな旨味と繊細な味わいを備え、日本の食文化が持つ多層性を感じさせる構成。著者ナンシー・シングルトン・八洲の解説では、食材の扱い方や調理技法の背景にある風土や歴史にも触れられ、家庭料理の奥行きを丁寧に伝えている。
jicca | 木寺紀雄
写真家・木寺紀雄が横須賀にある実家を撮り下ろした作品集。手作りのドアノブカバーや編まれた座布団、黒電話、掃除機、床の間や仏壇といった生活道具が静かな光の中で佇み、かつて当たり前だった日本の家庭の風景が丁寧に記録されている。生まれ育った場所から一定の距離を置くことで見えてくる “家” の時間や記憶が、何気ない室内の一瞬にそっと宿り、懐かしさと親密さが柔らかく伝わる構成。2000年に撮影され長く温められてきた写真群は、忘れていた感覚を呼び覚まし、個人の記憶と暮らしの風景を結び直す視覚的記録となっている。皆川明、岡本仁、リサ・ラーソン、ソニア・パークらが寄稿。
Kate ペーパーバック版
スーパーモデル、ケイト・モスの初期キャリアを記録した写真集。幼少期のプライベートショットから、デビュー当時のスナップ、ファッション誌の撮影現場をとらえたヴィジュアルまで、1990年代前半に形づくられた彼女の存在感を多角的に収めている。アーサー・エルゴート、ピーター・リンドバーグ、ニック・ナイトら名写真家によるポートレートをはじめ、モス自身が選んだ100点の写真を通して、モデルとしての表現力がどのように培われたのかが明らかになる構成。広告キャンペーンの舞台裏や撮影の背景に触れるコメントも収録され、時代を象徴するアイコンが形成されていく過程を丁寧に伝えている。
DRIVE | 森本美絵
東京を拠点に制作活動を行う写真家・森本美絵の作品集。さまざまな車のハンドルを握る手元やアスファルト、室内の床面、雪道の足元といった視界の断片が淡々と連なり、その合間に流れていく風景や、雨に濡れたフロントガラスの光景が差し挟まれる。日常の移ろいを拾い上げるように重ねられたイメージが、時間のリズムとささやかな感情の起伏を静かに描き出す。限定300部。
実験室からの眺め | 森山大道
写真の発明者ニセフォール・ニエプスが1827年に撮影した《ル・グラの窓からの眺め》──世界で最初の写真として知られるその一点をめぐり、森山大道がニエプスの実験室が残る“サン・ルゥ”を訪ね、186年前の光景に向き合う過程を収めた作品集。現地に立ち、当時の夏の日に射し込んだ光と影の気配を追いながら、写真というメディアが誕生した瞬間の残響を、現在の風景の中に探り当てようとする試みが軸になっている。装丁は町口覚。
Border Theories | Elian Somers
オランダのビジュアルアーティスト、エリアン・ソマーズが、ロシアの周縁に位置する3都市――ビロビジャン、カリーニングラード、ユジノサハリンスクを題材に、建築と政治、歴史が交錯する都市の成り立ちを読み解いた作品集。ソビエト期の理念に基づき計画・再編されたそれぞれの街を、風景写真、都市構造の記録、歴史資料を組み合わせて考察している。ユートピア的都市像が与えた影響と、その枠組みでは捉えきれない土地固有の時間を照らし出し、都市計画が抱える理想と現実のずれを浮かび上がらせる。