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Michael Kenna: Images of the Seventh Day
2025年10月10日
風景写真の巨匠マイケル・ケンナの活動を網羅的に紹介するモノグラフ。2010年にイタリア・パラッツォ・マニャーニ美術館で開催された大規模な回顧展にあわせて刊行されたもので、1970年代初頭のイギリスでの初期作から、詩的なヴェネツィアの風景、そして世界各地で撮影された代表作までを収録している。白と黒の階調が織りなす静謐な構図は、記録性を超えて空間の気配や時間の流れを捉え、見る者の感覚を深く揺さぶる。モノクロ写真の表現を極限まで洗練させたケンナの世界観を余すところなく伝えている。
Trees Like Stones | Klaus Merkel
2025年10月10日
ドイツの写真家クラウス・メルケルによる、自然と造形の関係を探る作品集。30年以上にわたり撮影してきた石や岩の多い風景、そして木々の姿を題材に、自然と人工物の写真を対として構成している。互いに呼応するかのように並置されたイメージは、自然がもつ構造的な美と、人間のつくる形の共鳴を静かに示す。風景と芸術のあいだに潜む秩序と偶然の調和を見つめ、自然の中に宿る創造の原理を浮かび上がらせている。
Der Sonnenstich | Katinka Bock
2025年10月10日
ドイツの彫刻家カティンカ・ボックによる、写真表現に焦点を当てた初の作品集。2023年にパリのペルノ・リカール財団で開催された個展にあわせて刊行されたもので、2015年から2023年に撮影された55点の作品を収録している。家族的な空間や都市の風景、自然の断片など、日常の被写体を古いアナログカメラで静かに捉え、物体や空間の関係性を彫刻的な視点から探る。身体の部分や匿名的な人物像をクローズアップした写真には、触覚的な感覚と時間の堆積が繊細に表現され、写真というメディアを通して彫刻と感覚のあわいを照らし出している。
Cy Twombly: A Retrospective
2025年10月10日
アメリカの画家サイ・トゥオンブリーの創作活動を包括的に辿る回顧展カタログ。50点を超える代表作のカラー図版に加え、初期のアッサンブラージュやドローイング群、さらには初公開となる晩年の作品も収録されている。詩的な文字の断片や象徴的な記号が画面を走り、個人的な記憶と古代の神話、歴史が交錯するトゥオンブリー独自の表現世界を、多角的に紹介する内容。変遷と核心に迫る資料性の高い一冊となっている。英語表記。
Small Town / Kleinstadt | Ute Mahler, Werner Mahler
2025年10月10日
ドイツの写真家ユニット、ウーテ&ワーナー・マーラーによる4度目の共同作品集。ドイツ各地の小さな町を訪ね、そこに暮らす若者たちや街の風景をモノクロームで撮影している。商店街の静けさ、郊外の広がり、行き場のない眼差しなど、閉塞感と希望のあわいに揺れる地方都市の空気を繊細に描写。過ぎゆく時間と停滞する現実が交錯する情景を通して、現代ドイツの片隅に息づく人々の心象を静かに映し出している。
El Porque de las Naranjas | Ricardo Cases
2025年10月10日
スペインの写真家リカルド・カセスによる作品集。地中海沿岸のレバンテ地方を舞台に、日常の中に潜む奇妙で詩的な風景を捉えている。フランスパンの形をしたドアノブ、果物が詰まった排水口、積み重なる段ボールなど、取るに足らない光景を独自のまなざしで切り取る。ユーモアと郷愁が交錯するイメージ群は、スペインの地方都市に漂う時間の感触と、人間の営みの断片を静かに映し出している。
Hotel Petra | Robert Polidori
2025年10月10日
アメリカの写真家ロバート・ポリドリによる、レバノン・ベイルートの歴史的建築「ホテル・ペトラ」を撮影した作品集。1975年から1990年にかけて続いたレバノン内戦の痕跡を残す室内を題材に、崩れた壁や剥離した塗装、差し込む光が織りなす静謐な空間を捉えている。荒廃の中に潜む美と記憶の層を抽象絵画のように描き出し、時間と建築の関係を詩的に探る。失われゆく場所に宿る存在の余韻を照らし出している。
Synchrony and Diachrony: Photographs of the J. P. Getty Museum 1997
2025年10月10日
アメリカ・ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館設立20周年を記念して刊行された写真集。写真家ロバート・ポリドリが1997年の開館直前に撮影した館内の様子を収録している。建築家リチャード・マイヤーによる光と構造が織りなす空間の中で、絵画や彫刻が展示室に配置されていく過程を丹念に記録。美術館という「完成へ向かう建築」をテーマに、芸術と空間が出会う瞬間を精緻に映し出している。
Memory: State Hermitage Museum, St Petersburg | Candida Hofer
2025年10月10日
ドイツの写真家カンディダ・へーファーによる、サンクトペテルブルクの歴史的建築群を撮影した作品集。ユスポフ宮殿、国立図書館、マリインスキー劇場、エルミタージュ美術館などを10日間にわたって記録し、壮麗な空間と装飾の細部を精緻に捉えている。人の姿を排した静謐な構図の中に、過去と現在が交錯する時間の層を浮かび上がらせ、都市と記憶、建築と文化の継承を静かに映し出している。
The Louvre | Candida Hofer
2025年10月10日
ドイツの写真家カンディダ・へーファーによる、ルーヴル美術館を撮影した作品集。無人の展示室を被写体とし、建築空間とそこに収められた美術作品との静かな共鳴をとらえている。壮麗な装飾や光の反射、絵画や彫刻が放つ存在感を精緻な構図で捉え、西洋美術の殿堂に漂う秩序と静寂を可視化。空間の構造美と時間の停滞を繊細に描き出し、へーファー特有の観察眼が生む建築写真の詩学を提示している。
The Blindest Man | Emily Graham
2025年10月10日
ロンドン出身のアーティスト、エミリー・グレアムによる写真作品集。1993年に匿名の作家が黄金の彫刻〈Chouette d'Or(黄金のフクロウ)〉をフランスのどこかに埋め、その手がかりを記した書物を発表した出来事を起点に構成されている。30年以上経った今も続く宝探しに魅せられた人々の姿を、写真、調査資料、手紙、地図など多様な記録とともに追う。信仰にも似た探求心と幻想が交錯する、人間の想像力と執念のドキュメントを浮かび上がらせている。
Robert Frank: New York to Nova Scotia
2025年10月10日
アメリカの写真家ロバート・フランクの軌跡をたどる作品集。1986年にヒューストン美術館で開催された回顧展の際に刊行されたカタログの復刊版で、写真家としての歩みと多彩な表現活動を総覧している。ショートフィルムのスチール写真、未発表の書簡、評論、エッセイを交えながら構成され、作家の内面と創作過程を多角的に描き出す。モノクロの図版を中心に、ニューヨークからノヴァスコシアへと至るフランクの視点の変遷を示している。
Ed Ruscha
2025年10月10日
1960年代初頭から現在に至るエド・ルシェの仕事を総覧する作品集。ポップ、コンセプチュアル、シュルレアリスムの諸相を横断する実践を、絵画・写真・版画・ブックワークにわたる代表作とともに検証する。リチャード・D・マーシャルによる批評的エッセイが、言葉とイメージ、都市景観への眼差し、反復とタイポグラフィといった主題を読み解く構成。豊富な図版を通じて、ルシェの独自の視覚言語が形成される過程を照らし出している。
Thomas Schutte
2025年10月10日
ドイツの現代美術家トーマス・シュッテの作品を紹介する展覧会図録。スイスのベルン美術館をはじめ各地を巡回した展覧会にあわせて刊行されたもので、1980年代に制作された彫刻や絵画を中心に構成されている。具象と抽象のあいだを行き来しながら、人間の存在や社会の構造をユーモラスかつ批評的に描き出す作品を、豊富なカラーおよびモノクロ図版で収録。シュッテの初期表現の軌跡を示している。
Pablo Picasso: Women, Bullfights, Old Masters
2025年10月10日
20世紀美術を象徴する芸術家、パブロ・ピカソの創作をテーマ別にたどる作品集。女性像、闘牛、オールドマスター、政治や文学、神話的主題、サーカスの人々、インテリアなど、70年にわたる活動の中で繰り返し描かれたモチーフを中心に構成されている。版画、リトグラフ、ドローイング、コラージュなど約200点を収録し、ピカソが生涯を通して追求した形と感情の変容、そして芸術への飽くなき探求を浮かび上がらせている。
HATS | 潮田登久子
2025年10月10日
写真家・潮田登久子による作品集。1992年から2004年に制作された「帽子」シリーズをまとめたもので、帽子デザイナー香山まり子の「布の彫刻」と称される作品群を被写体に撮影している。黒のストローハット、シルクオーガンジーのカクテルハット、ファーベロアの帽子など、それぞれの美しいフォルムと繊細な質感が丁寧に捉えられている。日本語、英語、中国語表記。
A Few Hermes Ideas For The Holiday Season | Gino Bud Hoiting
2025年10月10日
フランスの高級メゾン、エルメスによる、2018年ホリデーシーズンコレクションブック。オランダ・ロッテルダムを拠点に活躍するイラストレーター、Gino Bud Hoitingとのコラボレーションによって生まれた、ユニークなビジュアルブック。洗練されたエルメスの世界を、あえてシンプルで温かみのある線画とストーリーテリングによって再構築。まるで絵本をめくるような感覚で、エルメスの遊び心と芸術性、そしてイラストレーターの独自の感性が融合した一冊。
Objets Hermes | Andy Rementer
2025年10月10日
フランスのメゾン、エルメスによる2024年秋冬コレクションのルックブック。パリ・フォーブル・サントノーレ通り24番地の本店を舞台に、アーティストのアンディー・レメンターが最新コレクションをユーモラスで鮮やかなドローイングとして描き出している。日常の断片やディテールを軽やかな線と色彩で再構成し、エルメスのエスプリと職人技への敬意を感じさせる内容。ブランドの洗練と遊び心を併せもつ世界観を鮮明に映し出している。
Furthermore | Jeffrey Fraenkel
2025年10月10日
サンフランシスコのフレンケル・ギャラリー創立30周年を記念して刊行された写真作品集。アンディ・ウォーホル、ロバート・アダムス、ベッヒャー夫妻、杉本博司、アーヴィング・ペンをはじめ、作者不詳の写真も含む多様な作家による99点の作品を収録している。時代や様式を超えて選ばれたイメージ群が、写真という表現の多義性とその内に潜む詩的な力を静かに示している。ギャラリーの歩みと写真芸術の広がりを映し出している。
Now Becoming Then | Duane Michals
2025年10月10日
アメリカの写真家デュアン・マイケルズによる作品集。1991年から1993年にかけて開催された展覧会にあわせて刊行されたもので、初期の連作やポートレート、未発表作品を収録している。詩的なテキストを添えた連続写真や、幻想と現実の狭間を描く独自の物語性を特徴とし、写真というメディアの枠を超えた表現を追求。図版と解説を通して、マイケルズの思考と視覚言語の変遷を明らかにしている。
LIM | 松江泰治
2025年10月10日
写真家・松江泰治による、世界各地の墓地を撮影したランドスケープ作品集。画面全体に均一なピントを施し、遠近や感情の介入を排した視点によって、死を象徴する場を純粋な形態としてとらえている。個々の墓や記念碑ではなく、地表のパターンや構造そのものに焦点を当て、抽象的でイメージを構成。カラーによる多数の図版を通して、被写体と写真の関係をめぐる松江の一貫したまなざしを提示している。
Mina Perhonen: Ripples | Akira Minagawa
2025年10月10日
ファッションブランド〈ミナ ペルホネン〉の創設者・皆川明によるビジュアルブック。ブランドを象徴するテキスタイルとその原画、スケッチ、制作過程の記録、手紙など多彩な資料を収録し、デザインが生まれる背景と思想を可視化している。工場での制作風景や図案の断片を通して、手仕事と創造の循環を静かに描き出す構成。ブックデザインはサイトヲヒデユキが手がけ、ブランドの詩的な世界観を繊細に映し出している。
A Magazine #15: Curated by Thom Browne | トム・ブラウン
2025年10月10日
ベルギーのファッションデザイナー、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクによって創刊された『A Magazine Curated By』第15号。毎号ファッションデザイナーをキュレーターとして招き、ファッションデザイナーの世界を探るファッションマガジン。今回は「THOM BROWNE」の創設者でありデザイナーのトム・ブラウンが担当。ランウェイの歩みとともに、「白と黒で描かれた死と弔い」をテーマに構成される。英語表記。
A Magazine #25: Curated by Sacai | サカイ
2025年10月10日
ベルギーのファッションデザイナー、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクによって創刊された『A Magazine Curated By』第25号。毎号ファッションデザイナーをキュレーターとして招き、ファッションデザイナーの世界を探るファッションマガジン。今回は「sacai」の創設者でありデザイナーの阿部千登勢が担当。東京からLAまでの「sacaiTHEpeople」と題したポートレートシリーズほか、「sacai」のコミュニティとハイ・コンセプトの領域を探求する。英語表記。
King for a Decade: Jean-Michel Basquiat
2025年10月10日
アメリカの画家ジャン=ミシェル・バスキアの軌跡をたどる資料集。短くも濃密な10年間の活動を、ペインティングやドローイングをはじめとする多彩な作品図版とともに紹介している。マイケル・ホフマンやアンディ・ウォーホルなど、彼と親交のあった人々による証言やインタビューを収録し、創作の背景や内面の葛藤を多角的に描き出す。アートとストリートが交錯した1980年代のニューヨークを生きたバスキアの精神を浮かび上がらせている。
イリヤ・カバコフ シャルル・ローゼンタールの人生と創造 2冊セット
2025年10月10日
1999年に水戸芸術館現代美術センターで開催された展覧会の図録。ウクライナ出身のアーティスト、イリヤ・カバコフが創作した架空の画家、シャルル・ローゼンタール。19世紀末から20世紀初頭に生き、若くして夭折した画家として設定された彼の画業を、図版、伝記、日記、批評文などを通じて、まるで実在したかのように丁寧に構成。個人史でありながら、絵画表現の探究と美術史の構造を内包したこのプロジェクトは、カバコフによる「代替の芸術史」の一環として、芸術とは何かを根源から問い直す試みとなっている。
A small, good things | ナカカズヒロ
2025年10月10日
ヘアスタイリスト・ナカカズヒロが、「初心に戻り、衝動のままに何かを作りたい」という思いから手がけた初の作品集。日常の中で“日本人らしさ”を感じた人々に声をかけ、モデルとして撮影を行った。スタイリングを施した演出されたポートレートから、まったく手を加えず被写体の素の姿を捉えたスナップまで、多様なアプローチで構成される。職業の枠を超えた、個人としての創作衝動が結晶化した一冊。
ZOO | Britta Jaschinski
2025年10月10日
写真家ブリッタ・ヤシンスキーによる、動物園で暮らす動物たちを捉えた作品集。ヤシンスキーのレンズは、檻の中の動物たちを「見世物」としてではなく、私たちと同じ感覚を持つ「他者」として描き出す。暗闇に浮かび上がる毛むくじゃらの手、水面下をただようアシカ、沈黙の中で立ち尽くすシマウマ。彼らの姿は断片的ながら、深い哀感と尊厳を帯び、私たちの心に静かに問いを投げかける。本書は、「人間は他の生きものを閉じ込める権利を持つのか」「動物園は保全か、娯楽か」といった根本的な倫理的問いを、写真というメディアを通して提示している。ヤシンスキーは感情を押し付けることなく、静かなまなざしで動物たちの存在を映し出す。その写真は、美しさとともに「見ること」の意味を問い直す力を秘めている。
Portraits by Avedon | 大竹伸朗
2025年10月10日
現代美術家・大竹伸朗によるドローイング集。1979年7月18日、写真家リチャード・アヴェドンの写真集『PORTRAITS』に触発され、一気に描き上げた73点の作品を収録している。被写体の表情やエネルギーを線と色彩で再構築し、写真から絵画への転換を試みた意欲的なシリーズ。衝動的な筆致と即興性に満ちたドローイングから、大竹の感性がアヴェドンのポートレートに呼応する瞬間が立ち上がっている。
Kaos Drom Idvll | Erik Harry Johannessen
2025年10月10日
「ノルウェー美術の異端児」と称される独自の表現主義者、エリク・ハリー・ヨハンネッセンの作品集。美術史家グンナル・セーレンセンがヨハンネッセンの作品世界を多角的に読み解き、彼が活動した同時代の芸術潮流や社会的背景と照らし合 […]
A Chorus of Birds Utamaro
2025年10月10日
江戸時代後期を代表する浮世絵師・喜多川歌麿による鳥類画を集めた作品集。色彩豊かな木版画に詩歌を添え、自然へのまなざしと繊細な描写力を融合させた構成となっている。蛇腹折りの装丁によって連続的に展開される図版は、絵巻のような流れの中で鳥たちの姿を生き生きと映し出す。写実と装飾のあわいに宿る美意識を通して、歌麿のもうひとつの芸術的側面を浮かび上がらせている。
Danh Vo oV hnaD ヤン・ヴォー ーォヴ・ンヤ
2025年10月10日
2020年に国立国際美術館で開催された展覧会の公式カタログ。ベトナム出身でメキシコシティを拠点に活動する現代アーティスト、ヤン・ヴォーの作品を収録している。木材の伐採や自然環境との関わり、素材の分解と再構築のプロセスを通して、創作と破壊、記憶と歴史の交錯を探る構成。制作過程の記録写真や展示風景を交えながら、ヴォーの作品に通底する「ものの生成と変容」の思想を提示している。解説冊子付属。
アセント 全3巻揃 | フィオナ・タン
2025年10月10日
インドネシア出身の映像作家フィオナ・タンによる作品〈アセント〉を収録した全3巻構成の図録。2016年にIZU PHOTO MUSEUMで開催された展覧会にあわせて刊行されたもので、「富士山」を主題に、人々の記録写真や風景写真を素材として再構成した映像作品を中心に紹介している。さまざまな時代と視点からとらえられた富士山、登山者の姿、自然との関わりを多層的に描写。映像・写真・インスタレーションの融合を通じて、記憶と風景の関係を探るフィオナ・タンの独自の表現を提示している。
Le Paris de Marelle: Hommage a Cortazar
2025年10月10日
ブエノスアイレス出身の写真家、エクトル・サンパリオーネによる、フリオ・コルタサルの小説『石蹴り遊び(Marelle)』へのオマージュ作品。 1950〜60年代のパリを舞台に、作中の登場人物たちが歩いたであろう街角を実際にたどりながら、その情景や空気感を写真のレンズを通して再構築する試み。各ページには作品中の印象的な文章とともに、それに対応する実在の場所の写真が収められ、加えて地理的・歴史的な解説も添えられている。本書は文学と写真が響き合いながら、読者を『マレル』の世界へと誘うとともに、『マレル』を愛するすべての読者のための遊びであり、あの小説に描かれたパリという都市への新たな視覚的アプローチでもある。
Thinking Aloud | Richard Wentworth
2025年10月10日
イギリスのアーティスト、リチャード・ウェントワースの作品集。人間が作り出した環境に対する鋭い観察力と、日常的な物の意味を巧みに変換する彫刻作品で広く知られるウェントワース。本書は視覚的創造性をめぐる想像力豊かな学際的プロジェクトであり、従来の狭義なテーマ分類や経験の正統的枠組みに挑戦する試みである。スケッチ、型、模型、地図、プロトタイプなど、アーティストやデザイナー、建築家、発明家らによる試作段階の「最初の思考」を、多様な領域から集められたオブジェクトと組み合わせて提示。これにより、創造行為の初期段階における視覚的思考や実践を探求している。出展作家にはベルント&ヒラ・ベッヒャー、ブラッサイ、ウォーカー・エヴァンズ、フランク・ゲーリー、ギルバート&ジョージ、ティム・ヘッド、マリエレ・ノイデッカー、ジュリアン・オピー、レイチェル・ホワイトリードといった著名な芸術家が名を連ねている。
君や僕にちょっと似ている | 奈良美智
2025年10月10日
2012年から2013年にかけて横浜美術館ほか全国各地で開催された展覧会の図録。日本の現代美術家、奈良美智が長年にわたり追い続けてきた「肖像」表現の深化を、刊行当時新作の作品群と共に記録する。代表的な絵画やドローイングはもちろん、作家が初めて挑んだブロンズ彫刻にいたるまで、全出品作品をフルカラーで収録。展示風景やスケッチ、制作過程の写真も多数掲載され、奈良美智の創作の軌跡を豊かに伝える一冊となっている。
I Love Paris展 J’aime la France
2025年10月10日
1992年に銀座のエスパースプランタンほか各地で開催された展覧会の図録。19〜20世紀の都市、風景、人々の暮らしやポートレートを捉えた作品群を収録。芸術的・記録的価値の双方を持つこれらの写真は、都市パリが内包する多層的な文化イメージを浮かび上がらせる。ナダール、アジェ、ケルテス、ラルティーグといった写真史に名を残す作家たちに加え、ボヴィス、コラール、ルネ=ジャックらによる作品も収録。パリという都市が、真というメディアを通じていかに記憶され、語られてきたか、その軌跡をたどることができる一冊となっている。
RED POINT | Al White
2025年10月10日
スコットランド・グラスゴー在住のアーティスト、アル・ホワイトによる作品集。2016年に制作された作品集『Concrete Cabin』のプロセスで使用された4×6インチのラボプリントを再構成し、写真という媒体の物質性と視覚的手触りに迫るというもの。ブルータリズムや未来派、そしてcrud(荒さ・未完成性)といった美的感覚に影響を受けたホワイトの作品は、イラストや版画にとどまらず、写真という手段を通じて新たな地平を切り拓いている。本書に収められたモノクロのイメージ群は、イメージと紙のあいだにある緊張感や記録性を鋭く浮かび上がらせ、視覚芸術としての写真のあり方を再考させている。
非常階段東京 | 佐藤信太郎
2025年10月10日
写真家・佐藤信太郎による、東京の都市風景を非常階段から撮影した作品集。密集する住宅地や墓地、東京タワー、歌舞伎町、団地など、日常の風景を水平の視点でとらえ、都市の奥行きと構造を静かに描き出している。見下ろすでも見上げるでもない中間的な視線から、東京という都市の息づかいや、匿名的でありながら個々の生活が重なる風景の層を浮かび上がらせている。
Glorious Flowers | Laura Peroni
2025年10月10日
イタリアの植物画家、マリレーナ・ピストイアによる精緻な水彩画とともに、各花に関する植物学的・文化的情報をあわせて紹介した作品集。植物の起源や分類、歴史的背景、さらに文学や神話、民間伝承の中で花が担ってきた象徴的意味について多角的に解説。花を単なる観賞対象としてではなく、人類の文化や感情と密接に結びついた存在として捉える視座が示されており、植物学、文化史、美術にまたがり、自然と人間との関係を再考するための手がかりを与えてくれる内容となっている。
Redoute Lilies Print Book: 50 Selections Prints | Pierre‑Joseph Redouté
2025年10月10日
ボタニカルアートの巨匠、ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテによる作品集。ルドゥーテは18〜19世紀に活躍したフランスの植物画家・宮廷画家であり、「花のラファエロ」とも称されるその精緻な描写と色彩感覚は今なお高く評価されている。本書は、彼の代表作であるユリ科植物を描いた図版の中から50点を厳選し、カラー印刷で再録したもの。各作品にはラテン語の学名とフランス語タイトルが添えられ、当時の博物学的視点と美術的価値をあわせ持った構成となっている。
額田宣彦 仮説の宇宙
2025年10月10日
画家・額田宣彦による2001年の展覧会にあわせて刊行された作品集。東京のギャルリー東京ユマニテと東京国際フォーラム・エキジビションスペースの2会場で同時開催された展示構成を反映し、代表作〈ジャングルジム〉シリーズをはじめ、新たに円をモチーフとした〈Reel, Point〉シリーズ、空間性を探る〈部屋〉シリーズなど約25点を収録している。マスキングを使わず手描きで緻密に線を重ねる独自の手法により、秩序と偶然、抽象と構造が交錯する仮設的な宇宙を描き出す。静謐で思索的な絵画の本質を探る一冊。
Hope is a Girl Selling Fruit | Amrita Das
2025年10月10日
インド・ビハール州の若手ミティラ画家、アムリタ・ダスによる絵本。伝統的なインド・ミティラ画の技法を現代的に解釈し、豊かな色彩と繊細な線画で女性の感情や葛藤を表現している。物語は列車の旅の途中で出会った貧しい少女への視点から始まり、彼女の背景や未来への希望を想像しながら展開。読者はそのシンプルながら普遍的なストーリーと美しいイラストを通して、女性の自由や勇気、社会的な役割について多様な視点を与えられる。単なる絵本を超え、女性の自己表現や階級、選択の問題に触れた瞑想的な作品として評価されており、静かに心に響くメッセージと、伝統美術の革新的な融合を楽しめる一冊。
CATS、CATS、CATS | アンディ・ウォーホル
2025年10月10日
1950年代を中心にアンディ・ウォーホルが描いた猫たちのドローイングを集めた、愛らしくも鋭い感性が光る絵本のような作品集。眠る子猫や堂々とした猫、サムという名前の猫など、個性豊かな猫たちがシンプルな線と色彩でユーモラスかつ詩的に表現されている。ウォーホル自身の言葉も随所に引用されており、猫という親しみやすいモチーフを通して、ポップ・アートの巨匠が見せるもうひとつの顔ーその遊び心や私的な感性が静かに浮かび上がる一冊となっている。横尾忠則による監修翻訳。
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