Hilma af Klint: Paintings for the Future
スウェーデンの芸術家、ヒルマ・アフ・クリントによる作品集。生前は発表を控え、没後長く封印されていた1000点を超える絵画から厳選した作品をカラーで収録している。カンディンスキーやモンドリアン、マレーヴィチに先駆けて抽象的な表現に到達したことで、抽象芸術の起源を再考させる存在として注目される。幾何学的形態や鮮烈な色彩、精神的象徴を通して、目に見えない世界への探究を描き出している。
Gerhard Richter: Abstraction
2018年にドイツ・ポツダムのバルベリーニ美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された、ゲルハルト・リヒターの抽象表現に焦点を当てた作品集。世界各地のコレクションから選ばれた80点以上の作品を通して、1960年代以降に展開された多様な抽象技法の変遷をたどる。グレーの単色作品や《インペインティング》《カラーチャート》シリーズ、スクレーパーによる絵具の重なりなど、意図と偶然のあいだに生まれる絵画の可能性を探る試みが貫かれている。美術史的考察とともに制作プロセスや思想にも踏み込み、リヒターが問い続けてきた「絵画とは何か」をあらためて見つめ直している。
Annette Kelm
ドイツの現代美術家、アネット・ケルムの作品集。ドイツ、オランダ、スイスでの初個展開催を記念して刊行され、2001年から刊行当時までの80点以上の作品を収録。日常の物や人物、風景を鋭く鮮明に捉え、周囲との関係性をほぼ断ち切る独特の視覚世界を展開することで知られるケルム。インテリアデザインや映画、エキゾチシズム、グローバル貿易といった多様な文化的・歴史的文脈を内包した作品群を通じて、直接的でありながら謎めいた視点を余すところなく紹介する。
Walead Beshty: Works in Exhibition 2011–2020
イギリス出身のアーティスト、ワリード・ベシュティによる作品集。スイス・ヴィンタートゥール美術館での展覧会にあわせて刊行されたもの。新作から代表作までを網羅し、写真作品や輸送用ボックスを用いた立体〈FedEx〉シリーズなど、ミニマルアートを想起させる幾何学的で工業的な作品群を収録している。制作と輸送、展示の過程そのものを作品の一部として可視化し、アートの流通や価値、鑑賞者の認識を問い直すベシュティの実践を明らかにしている。
Louise Bourgeois: Has the Day Invaded the Night or Has the Night Invaded the Day?
20世紀を代表するアーティスト、ルイーズ・ブルジョワの約70年に及ぶ創作活動を総覧する作品集。2023年から2024年にかけてオーストラリア・ニューサウスウェールズ州立美術館で開催された展覧会にあわせて刊行されたもの。昼と夜、秩序と混沌、意識と無意識といった相反する概念をテーマに、人間の感情の複雑な構造を探るブルジョワの芸術を多角的に紹介。水彩画、ドローイング、テキスタイル、ブロンズ彫刻など120点以上を収録し、作品を貫く「絶え間ない危機」や自己との対話の軌跡を浮かび上がらせている。豊富な図版に加え、キュレーターや研究者による論考も掲載し、ブルジョワの創作の源泉を深く読み解く内容となっている。
Bird Watching | Paula McCartney
アメリカのアーティスト、ポーラ・マッカートニーによる作品集。手書きの観察記録とともに多様な小鳥を収めた写真は、一見すると鳥類観察家のフィールドノートのように見える。しかし注意深く見ると、枝にとまる小鳥たちはクラフトショップで購入された装飾用の人工物であり、針金や塗料で巧みに固定されていることが明らかになる。記録と虚構の境界を曖昧にしながら、「自然らしさ」や「本物らしさ」に対する私たちの欲望と支配の感覚を批評的に映し出す。美しい自然写真の形式を借りて、観察と演出のあいだに潜む心理を問う、幻想的で鋭いコンセプト・フォトブック。
Libraries | Candida Hofer
ドイツの写真家、カンディダ・へーファーによる作品集。世界各地の図書館を撮影し、中世バロック様式からモダン建築まで多様な空間をカラーで収録。整然と並ぶ書架や装飾的な天井、差し込む自然光など、静寂の中に漂う知の気配を精緻な構図でとらえた作品が並ぶ。人の不在を通して空間そのものの記憶を映し出すへーファー独自の視点が際立ち、建築と文化の関係を静かに提示している。
イサム・ノグチと長谷川三郎 変わるものと変わらざるもの
2019年から横浜美術館、ノグチ美術館などを巡回した展覧会の図録。彫刻家イサム・ノグチと画家長谷川三郎の交流に焦点を当て、両者の作品や記録写真、関連資料を多数収録。戦後の日本における芸術とデザインの新たな方向性を模索した二人は、東洋と西洋、伝統とモダニズムのあいだに橋を架けようとした同時代の探究者でもあった。異なる表現領域を通じて共有された思想と創造の対話を浮かび上がらせている。
Man Ray: Sculptures et Objets
パリを拠点に活動したアーティスト、マン・レイによるオブジェ作品に焦点を当てたカタログ・レゾネ。長い創作活動のなかで制作された彫刻的オブジェを、作家自身の撮影によるモノクロ写真で多数収録。シュルレアリスムの精神を体現するような、機知とユーモア、詩的な不条理に満ちた造形の数々を体系的に紹介。写真家、画家、映像作家として多彩な活動を展開したマン・レイの立体表現の領域を明らかにしている。
Cut with the Kitchen Knife: Weimar Photomontages of Hannah Hoch
美術史家のモード・ラヴィンが、ダダ運動を代表するアーティスト、ハンナ・ヘッヒのフォトモンタージュ作品を分析した研究書。コラージュやスクラップブックを中心に、ヘッヒが新聞や雑誌の断片を用いて構築した独自の視覚言語を読み解く。政治的風刺とジェンダーへの問題意識が交錯する作品群を通して、男性中心の美術史の中で新たな表現領域を切り拓いたヘッヒの創作を照らし出している。
増補 磯江毅 写実考 1974-2007
日本の画家・磯江毅による作品集。写実絵画の可能性を徹底して追求し、現代リアリズムの旗手として国内外で高い評価を得た磯江の1974年から2007年までのペインティングやドローイングを収録している。対象を凝視し、絵具と光によって生命の質感を写し取る独自の手法が特徴で、静謐さと緊張感を併せもつ画面が展開される。装丁は中垣信夫と井川祥子が担当し、作品の世界観に呼応する端正な造本が印象的。現代写実の到達点を示している。増補版。
Rodrigo Valenzuela: Journeyman | Matthew Schum
写真、映像、インスタレーションを横断しながら、ドキュメンタリーとフィクションという相反する要素を行き来する表現で知られるチリ出身のアーティスト、ロドリゴ・ヴァレンスエラの作品をまとめた作品集。労働や移民、社会的階層といったテーマを背景に、構築と再現、現実と虚構のあいだに生まれる緊張を視覚化。映像的な構成と緻密な構造物の中に、人間の営みと記憶の断片をとどめようとするヴァレンスエラの創作の軌跡を示している。
Dunkelkammern der Fotografie | Hans Danuser
スイスの写真家、ハンス・ダヌーザーの作品集。1970年代末に写真を芸術的なメディアとして新しく捉え直し、その後のアナログ写真の発展に大きな影響を与え、1980年には当時のヨーロッパやアメリカの産業社会における研究機関や権力の中枢といった“タブー”の領域をテーマにした写真シリーズ「IN VIVO(イン・ヴィーヴォ)」に取り組み始めた。本書は過去35年間におけるダヌーザーの活動をまとめたもので、彼のこれまで作品を広い視点から紹介している。
Walking Memories 1959-69 | Jim Dine
アメリカのアーティスト、ジム・ダインの初期活動を紹介する作品集。1999年から2000年にかけてソロモン・R・グッゲンハイム美術館などで開催された展覧会にあわせて刊行されたもの。1960年代の代表的な制作を中心に、工具、バスローブ、ハート、パレット、インテリアといった象徴的モチーフを用いたミクストメディア作品、絵画、彫刻を収録。日常的な対象を個人的記憶や感情と結びつけ、ポップアート以降の表現に新たな詩的領域を切り開いたダインの創作を明らかにしている。
視覚のカイソウ | 岡崎乾二郎
造形作家・岡崎乾二郎の作品集。2019年に豊田市美術館で開催された大規模個展にあわせて刊行されたもので、絵画、彫刻、建築、ブロックタイルなど多岐にわたる表現を初期から最新作まで約300点収録している。松浦寿夫ら4名による論考を収録し、造形の構造や思想的背景を多角的に探究。400ページを超える構成の中で、岡崎の制作を貫く視覚的・思想的実践の広がりを明らかにしている。
NAGA | 津田直
写真家・津田直による作品集。ミャンマー北部ザガイン管区の山岳地帯に暮らすナガ族の人々とその風土を撮影した作品を収録。緑深い山々の風景や、鮮やかな民族衣装をまとった人々の姿を通して、自然と共に生きる営みの力強さを静かに見つめる。個と集団、過去と現在が交錯する土地の記憶を辿りながら、人間と自然の関係、そして私たちが共有する生命の根源を照らし出している。
Hyungsik Kim: Studio Practice
韓国の写真家、キム・ヒョンシクによる作品集。2013年から2014年にかけて撮影されたシリーズ〈Studio Practice〉を収録。スタジオという人工的な空間のなかで、被写体と光、構図の関係を精緻に探る実験的な試みが展開される。見開き右ページに1点ずつ配した大型図版による、白を基調としたシンプルなレイアウトが特徴で、静謐な構成の中に被写体の存在感と写真という行為そのものへの問いを提示している。
Benjamin Armstrong: Holding a Thread
オーストラリアを拠点に活動するアーティスト、ベンジャミン・アームストロングの作品集。ワックス、木、ガラス、インク、顔料など多様な素材を組み合わせ、優雅さと不穏さが共存する独特の造形世界を築いている。流動するかたちや有機的なフォルムは、生命と変化、記憶と感覚のあわいを暗示し、見る者の内面に静かな緊張を呼び起こす。素材の物質性と感情の深層が交差する、アームストロングの表現を提示している。
Xavier Veilhan
フランス・パリを拠点に活動するアーティスト、グザヴィエ・ヴェイヤンの作品をまとめたモノグラフ。建築、彫刻、インスタレーションなど、多様なスケールで展開される代表作を豊富なカラー図版で収録している。幾何学的な造形と光沢のある素材を用い、現代社会における人とテクノロジー、空間との関係を探るヴェイヤンの創作を体系的に紹介。造形の美と構築的思考が交差する、現代アートの動向を示している。
Elisabeth Wild: Fantaslas
オーストリア出身のアーティスト、エリザベス・ワイルドによる色彩豊かでダイナミックなコラージュ作品を多数収録した作品集。光沢紙の雑誌から切り抜かれた商業的なイメージを素材に、ユーモアと不穏さが共存し、きらめくような神秘性とともに次元や時間を超えたような不思議な世界を創り出している。ワイルドの独創性とその芸術の意義を多角的な視点で語られた寄稿も収録。
オラファー・エリアソン展 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期
2023年から2024年にかけて麻布台ヒルズギャラリーで開催された展覧会のカタログ。現代アーティスト、オラファー・エリアソンが麻布台ヒルズの開業にあわせて制作したパブリックアートを中心に、水彩、ドローイング、立体、インスタレーションなど多様な作品を紹介している。自然現象の観察や環境への関心を基盤に、光や水、空気の変化を通して知覚と感情の関係を探るエリアソンの創作を包括的に収録。人と環境、時間の流れが響き合う瞬間を提示している。
Light Scape | 清水行雄
写真家・清水行雄による作品集。アメリカ、中国、台湾、モロッコ、アフリカ、スペインなど、世界各地で撮影されたモノクロ写真を収録している。海や岩山、寺院、馬、クラシックカー、葉巻をくゆらす男といった被写体が、自然光のもとで生まれる光と影の強いコントラストによって浮かび上がる。人と風景が織りなす瞬間の美しさを静謐なトーンでとらえ、異なる土地の日常の中に通底する普遍的な生命のリズムを映し出している。
Grain of Light | 瀧本幹也
広告写真や映画の分野で高い評価を受ける写真家・瀧本幹也による作品集。「海」という原初的なモチーフに向き合い、光と水、時間の関係を探っている。白く砕ける波、陽光にきらめく水面、荒々しい潮のうねりなど、自然が見せる一瞬の変化を緻密な構図と繊細な階調で捉えた写真を収録。壮大な自然の力と、それを見つめる人間の感覚とのあわいを浮かび上がらせている。
驚異の部屋 京都大学ヴァージョン
2013年から2014年にかけて東京大学総合研究博物館と京都大学総合博物館の共同で開催された展覧会のカタログ。京都大学総合博物館が所蔵する貴重な学術標本コレクションを中心に構成され、動物の剥製や骨格標本、模型など約50点を精緻な写真で紹介している。学術資料としての正確さと、被写体がもつ造形的な美しさの両面に焦点を当て、自然史と美術表現のあいだに横たわる領域を探る視点となっている。
Goshka Macuga: Intellectual Co-operation
2018年にドイツ・ニュルンベルクのノイエス・ミュージアムで開催された展覧会のカタログ。ロンドンを拠点に活動するアーティスト、ゴーシュカ・マクーガの作品と展示風景を収録している。フォトコラージュ、彫刻、映像、パフォーマンスなど多様なメディアを横断しながら、歴史的資料とフィクションを組み合わせて再構築する独自の手法が特徴。国際的な知的交流というテーマを背景に、記憶と物語、権力と文化の関係を問い直すインスタレーションの数々を提示している。
Beauty Lies in the Eye
スイス出身の写真家、カトリーヌ・セレソールによる作品集。夫ニコラとともにニューヨークに滞在し、1980年代のアンダーグラウンド・ミュージック・シーンを間近で記録したもの。ソニック・ユース、ビースティ・ボーイズ、クリスチャン・マークレーら、当時のパンク、ニューウェーブ、アヴァンギャルドな音楽を牽引したアーティストたちの姿をモノクロームで収めている。荒々しくも親密な視線が交錯する写真の数々は、熱気と創造力に満ちた時代の鼓動を静かに伝えている。
MISSHAPES
ニューヨークを拠点に活動するDJデュオ〈The Misshapes〉のメンバー、ジョードン・ニコルによる写真集。2000年代初頭のダウンタウン・カルチャーを象徴するナイトクラブで撮影されたスナップを収録し、2002年から2007年にかけての時代の空気を鮮やかに写し取っている。ファッション、音楽、アートが交差する場に集ったミュージシャンやDJ、セレブリティたちが放つ奔放なエネルギーとスタイルの数々。フラッシュと音楽が交錯する夜の熱狂を通して、ニューヨークの一時代を映し出している。
Rester | Laurent Chardon
フランスの写真出版社〈Poursuite〉から刊行された、ロラン・シャルドンによる作品集。2009年、セネガル南部カザマンス地方の都市ジギンチョールで撮影された21点のモノクロ写真を収録。30年に及ぶ分離独立闘争を経てなお復興が進まない土地で、作者は建物や荒れた大地、自然、そしてそこに生きる人々や動物の姿を静かに見つめる。時間の層と記憶の痕跡が交錯する風景を通して、社会的現実と個人の感情が結びつく瞬間を浮かび上がらせている。
Neroli | 吉野英理香
写真家・吉野英理香による作品集。タイトルの〈ネロリ〉は、ビターオレンジの花から抽出されるアロマオイルの名に由来する。香りが記憶や感情を呼び起こすように、本書の写真もまた、時間や環境、人との関わりの中で生まれたイメージを静かにたたえている。光の揺らぎや被写体との距離感、微細な陰影が織りなす詩的な構成が特徴で、現実と記憶のあわいに漂うような感覚をもたらす。
小林且典 ひそやかな眼差し
彫刻家、小林且典の作品集。2012年に静岡市美術館で開催された展覧会にあわせて刊行されたもの。みずから鋳造したブロンズの静物を自作レンズでモノクロ写真として収めるなど、独自の手法で注目を集めてきた小林且典。静謐な佇まいと気配に満ちたその表現が、初期から近作に至るまで多彩に紹介されている。ひそやかに存在するものたちに光を当てる、小林のまなざしを辿る一冊。写真家、平野太呂が撮影した小林のアトリエ・制作風景の写真も収録。
Botanical Garden | 落合晴香
アーティスト・デザイナーの落合晴香による作品集。2019年から2022年にかけて制作された作品を収録している。紙に描かれた筆跡を切り取り、コラージュによって植物の形へと再構成し、その完成物を写真として撮影・編集するという独自のプロセスを経て生まれたシリーズ。イラストレーションと写真のあいだに位置する繊細な表現を探りながら、描くことと写すことの境界を見つめ直している。各プリントを手作業で貼り込んだ手製本として仕上げられている。
藤田嗣治 ✕ 国吉康雄 二人のパラレル・キャリア 百年目の再会
2025年に兵庫県立美術館で開催された展覧会図録。20世紀前半をフランスとアメリカで生きた画家、藤田嗣治と国吉康雄に焦点を当て、絵画に加え手紙、写真、スケッチなどの資料を豊富に収録する。国際的潮流や戦争、文化的葛藤といった背景を踏まえ、1920年代から戦後までの制作・移住・交流の軌跡を9章構成で時系列かつテーマ別に整理。藤田の乳白色の画風と国吉のアメリカン・モダニズムを対照させ、響き合いを明らかにしている。
Re construction 再構築
2020年に練馬区美術館で開催された展覧会の図録。同館の開館35周年を記念して企画され、所蔵作品を現代作家4名――青山悟、大小島真木、冨井大裕、流麻二果――とともに再解釈し、美術館そのものの構造や鑑賞のあり方を「再構築」する試みとして展開された。本書では公開制作や展示風景を豊富なカラー図版で紹介。作品と空間、観客との関係性を多角的にとらえ、過去と現在が交差する創造のプロセスを提示している。
Cave | 角田純
アーティスト・角田純による初の作品集。過去20年にわたり制作された抽象画やインスタレーションを中心に構成され、淡い色彩と微細な筆致によって形づくられた静謐な世界を記録している。光の角度や時間の経過によって表情を変える絵画作品に加え、展示風景や制作の痕跡も収録。色と空間のあいだに生まれる揺らぎを丁寧にすくい取りながら、見る者の感覚を静かに呼び覚ます。
クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime
2019年に国立新美術館をはじめ全国で開催された展覧会「クリスチャン・ボルタンスキー ― Lifetime」の公式図録。フランスを代表する現代アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーの初期から晩年に至る約50年の創作活動を網羅的に紹介。記憶や不在、生と死といったテーマを探求した代表作を豊富な図版で収録し、展覧会担当者による論考や、杉本博司との対談テキストも掲載。光と影、時間の痕跡をめぐるボルタンスキーの思索を浮かび上がらせている。
In-between 4 小野博 オーストリア、スロベニア
日本の写真家がEU全25カ国を撮影する写真集シリーズ「In-between」。全14巻のうちの第4巻となる本書では、写真家の小野博がオーストリアとスロベニアを撮影。オーストリアでは歴史と芸術の街、ウィーンやグラーツの街並みや風景を撮影。スロベニアでは、LIPICAと呼ばれる世界的に有名な白馬たちの凛とした姿と、占領されながらも独立の意志を貫き通したスロベニアの人々の精神を重ね合わせて写真に収めている。
In-between 6 野村恵子 イタリア、スウェーデン
日本の写真家がEU全25カ国を撮影した写真集シリーズ「In-between」の第6巻。写真家・野村恵子がイタリアとスウェーデンを訪れ、ナポリの下町やシチリア島、ストックホルムの街並みなど、異なる気候と文化のなかで暮らす人々の姿を穏やかなまなざしでとらえている。光と影の移ろい、空気の温度、被写体との距離が繊細に描き出され、旅の記録であると同時に、土地と人との関わりを見つめ直す視点を提示している。
In-between 10 今井智己 リトアニア、ベルギー
日本の写真家がEU全25カ国を撮影する写真集シリーズ「In-between」第10巻。写真家の今井智己がリトアニアとベルギーを撮影。リトアニアでは自然の景色と雪で覆われた静寂の街の様子を、ベルギーではラーケン王宮温室やゲント大学植物園など、前半のリトアニアと対比させるかのように人工的に作られた植物の姿を自然に写し出している。
ArT RANDOM Yoshihiko Ueda 上田義彦
写真家・上田義彦による作品集。京都書院のアートブックシリーズ「ArT RANDOM」の第87巻として刊行され、編集を都築響一が担当している。女性と男性のヌード、花や果実といったモチーフを通して、人間の存在と自然の生命力を詩的に捉えた構成。静謐な光と柔らかな質感の中に、感情と象徴が交錯する上田の初期表現の一端を示している。
オノデラユキ写真展
2005年に国立国際美術館で開催された写真家・オノデラユキの展覧会図録。「古着のポートレート」「真珠のつくり方」「関節に気をつけろ!」など、代表的なシリーズを中心に収録している。日常の中の違和感やユーモアを軽やかにとらえ、写真というメディアの構造そのものを問い直す独自のアプローチが特徴。実験的な発想と繊細な構成力が融合し、見る者に新たな視覚体験を促すオノデラの創作を照らし出している。
England | 若木信吾
写真家・映画監督の若木信吾による作品集。見開きに記された〈Dedicate to James Cook〉の言葉が示すように、18世紀にハワイ諸島を発見したイギリスの探検家ジェームズ・クックへのオマージュとして制作された。イングランドとハワイ、二つの土地を行き来しながら、そこに暮らす人々の姿や風景を独自の距離感でとらえた写真を収録。異なる文化と時間が交差するなかで、旅、記憶、アイデンティティといったテーマを静かに映し出している。
Rochester | 若木信吾
写真家・映画監督の若木信吾による作品集。2019年に訪れたアメリカ・ニューヨーク州ロチェスターで撮影された写真を収録。かつて写真産業の中心地として栄えた街の現在を背景に、建物や自然、人々の暮らしの断片を静かなまなざしで捉える。淡い光と影のなかに過ぎゆく時間の気配が滲み、記憶と風景が交差する瞬間が刻まれている。都市と個人の距離を見つめ直す、若木信吾の内省的な視点を提示している。
シェーカー家具 デザインとディテール | ジョン・カッセイ
19〜20世紀のアメリカで自給自足の共同体を築いたシェーカー教徒による家具を、詳細な図面と写真で紹介する資料集。テーブル、椅子、戸棚、寝台、時計、ゆりかごなど、実用性と美しさを兼ね備えた家具の構造を精緻な製図で再現している。木組みや継ぎ手、仕上げの技法に至るまで分析し、信仰に根ざした生活から生まれたデザインの本質を立体的に読み解く。シェーカー家具の設計思想と職人技を明快に伝える一冊。
Carlo Scarpa: Architecture in Detail
イタリアの建築家カルロ・スカルパの建築作品をディテールの視点から捉えた作品集。階段や手すり、タイルといった構成要素に焦点を当て、素材の扱いや空間のつなぎ方に表れる緻密な美意識を読み解いている。写真に加え、図面やドローイングなどの資料を豊富に収録し、スカルパ建築を特徴づける装飾性と構造的合理性の融合を検証する構成。細部から建築全体の思想を理解するための手がかりを提示している。