Jane & Serge: A Family Album
俳優ジェーン・バーキンと、作曲家・映画監督セルジュ・ゲンズブールの12年間にわたるパートナーとしての生活を記録した写真集。撮影を手がけたのは、ジェーンの兄で映像作家のアンドリュー・バーキン。これまで未公開だった写真を含む1000点以上を収録している。カフェで絵を描き合う姿や、自宅で家族と過ごす時間など、世間の注目を集め続けた二人の、穏やかで私的な日常が切り取られている。娘シャルロットの誕生を含む家族の時間も写し出され、スキャンダラスなイメージとは異なる、親密で人間味あふれる姿が浮かび上がる。折りたたみポスター、ブックレット、写真プリント5枚、ステッカー、ワッペン付属。
A Trilogy | Jessica Backhaus
写真家ジェシカ・バックハウスによる三部作をまとめた作品集。日常のささやかな事物や静けさから着想し、実験的なアプローチで抽象性を深めている。色糸を背景に配置した「Beyond Blue」、反射や形態の変化を捉える「Shifting Clouds」、より自由で詩的な印象を展開する「New Horizon」の三シリーズを収録。削ぎ落とされた構成の中に、絵画やコラージュの要素を取り込み、写真表現の新たな地平を模索している。
Art in the System. the System in Art | Karl-Heinz Adler
東ドイツ出身のアーティスト、カール=ハインツ・アドラーの活動を紹介する作品集。1950年代末から、幾何学的な形を繰り返し用いた作品や、透明な素材を重ねた構成、連続する線による造形など、秩序あるかたちを追求してきたアドラー。体制下では前衛的な表現として評価されにくかったが、1968年に開発したコンクリートブロックの造形システムは実際に量産され、集合住宅の外観として人々の日常に広く用いられたことで知られている。本書にはハンス・ウルリッヒ・オブリストによるインタビューも収録され、芸術と社会のあいだを行き来したアドラーの仕事を丁寧に伝えている。
Bankett | Axel Grunewald
ドイツの写真家、アクセル・グリューネヴァルトによる作品集。5年以上にわたりモロッコと南スペインの海岸地帯を繰り返し訪れ、単色調で乾いた海景や風景を撮影している。写し出されるのは、ヨーロッパとアフリカを隔てる、目には見えないが越えがたい距離と緊張感。静かな風景の中に、地理的・歴史的な境界の存在を感じさせるシリーズとなっている。
UZURA | 関口隆史
写真家・関口隆史が、10年にわたり撮影し続けた約900点のうずらの卵を収めた異色の写真集。卵はカラー、モノクロ、折込図版など多彩な手法で記録され、整然と並べられたタイポロジカルな構成によって、一つひとつの模様や質感がまるで「未知の惑星」のよう。表象的な意味を排し、徹底して「見る」ことに向き合う姿勢は、日常的な対象に潜むスケールの大きな美しさを際立たせている。撮影意図を知らずに見る者には、それがうずらの卵であると気付かないほどの変容ぶりが作品の強度を高めている。
WORKSHOP MU!! | 眞鍋立彦、中山泰、奥村靫正
細野晴臣やYMO、はっぴいえんどのレコードジャケットを手がけたデザイン集団WORKSHOP MU!!の作品集。眞鍋立彦、中山泰、奥村靫正の3名によるグラフィックデザイン、コラージュ、ブックデザインなど多彩な仕事を収録している。1960年代末から30年以上にわたり展開された活動の軌跡をたどり、日本の音楽シーンや出版文化に大きな影響を与えた創造の数々を紹介。
呉州赤絵大皿
中国の明時代末期から清時代初期にかけて、主に輸出向けに焼成された磁器「呉州赤絵」を体系的に紹介する資料集。大皿を中心に、モノクロを主とした貼付写真と一部カラー図版を交え、意匠や技法の特徴を解説。倉橋藤治郎の所蔵品を軸に、柳宗悦、横河民輔、繭山松太郎、宮永東山らが蒐集した作例も収録。日本における受容の広がりを辿りながら、呉州赤絵が備える造形の魅力と評価の変遷を丁寧に伝えている。
Marcel Broodthaers: Livre d’image. Bilderbuch
ベルギーの詩人であり芸術家、マルセル・ブロータスの活動を紹介する作品集。インスタレーションの先駆的存在として知られ、数多くのコンセプチュアル・アートを手がけたブロータスの代表作を収録している。卵やムール貝の殻といった日常の素材を用い、象徴性と批評性を帯びた造形を展開する作品群は、20世紀美術の文脈において独自の位置を占める。本書は図版とテキストを通じて、その実験的で詩的な創作世界を浮かび上がらせている。
疾駆 chic 第9号・第10号 奈良美智
人や地域に光を当て、取材を通して日々の暮らしを捉え直す生活文化誌『疾駆 chic』の第9号・第10号2冊セット。ポートレート企画の一環として、美術作家・奈良美智に焦点を当て、ロングインタビューと作品、写真を通してその思考と歩みを辿っている。前編では幼少期から現在に至る生い立ちや、創作に影響を与えてきた経験を丁寧に掘り下げ、後編では若い頃から続けてきた「旅」を軸に、各地での出会いや体験が育んだ歴史観や未来への視線を浮かび上がらせる。連載は蓮沼執太、中島佑介、原川慎一郎他。装丁は田中義久。
In France | Michael Kenna
写真家、マイケル・ケンナの作品集。フランス各地を巡り、パリの街並みやル・ノートル設計の庭園、古い墓地、モン・サン・ミッシェルにかかる雲影などを静かなモノクロームで捉えている。長時間露光によって引き延ばされた時間の中で、抑制された構図と繊細な階調がフランスの風土に宿る詩情を静かに伝え、見る者を内省的な時間へと導いている。
Forms of Japan | Michael Kenna
アメリカを拠点に活動する写真家マイケル・ケンナによる作品集。日本各地の風景をモノクロの銀塩プリントで撮影したシリーズを収めている。日本海の荒波に削られた岩、雪に覆われた田園、霧に沈む富士山、人影のない寺院、神秘的に浮かび上がる鳥居など、瞑想的な情景をとらえた写真を掲載。芭蕉、蕪村、一茶といった俳人の俳句と組み合わせることで、自然と人間の精神世界を重ね合わせている。
Das Auge des Arbeiters Arbeiterfotografie und Kunst um 1930 | Wolfgang Hesse
1920年代、写真という新しいメディアを手にした労働者たちが、自らの暮らしや仕事、労働運動の現場を記録した「労働者写真」に焦点を当てた一冊。狭い住環境や集会の様子、日常の中の演出された瞬間など、当時の生活が率直な視線で写し出されている。本書はドイツ・ザクセン地方に残された膨大な写真資料の調査をもとに、同時代のデザインや絵画と比較しながら、この新しい写真表現の広がりを紹介する。建設労働者でありバウハウスでも学んだアルベルト・ヘニングの写真群も収録され、写真が人々の手に渡った時代の息遣いを伝えている。
History Repeating | Ori Gersht
イスラエル出身の写真家・映像作家、オリ・ガーシュトの活動を初めて包括的に紹介する作品集。サラエボの戦禍の痕跡やアウシュヴィッツへ向かう列車の記憶、ウクライナの森、日本の風景など、個人的・集団的記憶が刻まれた場所を舞台に、歴史と現在を重ね合わせる表現を展開してきた。静謐で絵画的なイメージの背後には、暴力や喪失の歴史が潜み、美と残酷さのあわいが鋭く示される。凍結した花や儚い桜のモチーフを通して、破壊の後に立ち現れる再生の可能性をも見つめる一冊。
Rodarte, Catherine Opie, Alec Soth
アメリカのファッションブランド、ロダルテ(Rodarte)の世界観を、写真家キャサリン・オピーとアレック・ソスの新作によって捉えた作品集。ケイト&ローラ・マレヴィ姉妹が手がけるロダルテは、自然、映画、アート、科学といった多様な要素を背景に、燃やす、染める、編む、ねじるなど複雑な手法を用いた独自の表現で、わずか数年で現代ファッションの最前線に躍り出た。本書は、両写真家がロダルテの創作に深く関わりながら制作した新たな写真シリーズを通して、その創造性を浮き彫りにしている。限定2000部発行。
Giorgio Morandi: Late Paintings
イタリアの画家ジョルジョ・モランディが、晩年の1948〜1964年に制作した静物画に焦点を当てた作品集。同じ瓶や器を使い、配置をわずかに変えながら描き続けたこの時期の仕事を通して、モランディの探求がどのように深まっていったかをたどる。「黄色い布」をモチーフにした1952年の代表的なシリーズをはじめ、重要作を精細な図版で収録。具象と抽象のあいだを静かに行き交う、モランディならではの絵画世界が伝えられている。
All Prize Winners Paraded | Jo Grant
オーストラリアの写真家ジョー・グラントによる作品集。1997年から2004年にかけて、ビクトリア州、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州の農業祭を巡り撮影されたシリーズを収録している。表彰の舞台裏で交わされる準備の手つきや、カントリー・ウィメンズ・アソシエーションの食堂、焼き菓子や花の装飾など、見過ごされがちな細部に静かな視線を向けている。
Twisted Tales - Road to Hope | Markus Henttonen
フィンランドの写真家マルクス・ヘントネンによる作品集。日常の一場面を起点に、舞台装置のように構成された夢幻的なイメージを収録している。初期のドキュメンタリー色の強いシリーズから一転し、本作では物語性を帯びた表現へと踏み込み、現実と想像の境界が揺らぐ瞬間を捉える。抑制された光と緊張感のある構図が、静かな不安や希望の気配を画面に滲ませ、鑑賞者に余白のある読みを促す。写真による物語の可能性を示す一冊。
目[mé]非常にはっきりとわからない
2019年に千葉市美術館で開催された展示のカタログ。アーティスト 荒神明香、ディレクター 南川憲二、インストーラー 増井宏文を中心とする現代アートチーム、目[mé]による作品「非常にはっきりとわからない」を中心に、長期にわたる創作プロセスを多角的な視点から捉え、総合的に記録。発想や判断、実現におけるチームの協働や精神的な創作意識の共有に注目し、これまでの作品や活動の記録とあわせて、制作現場における多様なクリエイティビティの形成過程を伝える。
ア・ツーリスト | デニス・ホッパー
俳優・映画監督として知られるデニス・ホッパーが京都を訪れた際に撮影した写真を収めた写真集。モノクロで構成され、石畳や祭りのお面、古寺など、京都の街や風景を"観光客"という視点から自由に捉えたホッパーの眼差しが印象的に映し […]
The Infidels | Marcel Dzama
カナダ出身でニューヨークを拠点に活動するアーティスト、マルセル・ザマのモノグラフ。ドイツ・デュッセルドルフのSies + Höke Galleryでの展覧会にあわせて刊行され、近作のペインティング、ドローイング、コラージュ、フィルムのストーリーボード、ジオラマなどを収録。近年の作品ではアメリカの歴史や同時代の事件を背景に、拷問やテロリズム、戦争といった政治的要素も色濃く反映されている点が特徴的である。特に木箱やガラスケースに収められたジオラマは、仮面をまとった人物や奇怪な動物、人形を配し、幻想世界を三次元の舞台へと展開している。
Der neue Morgen | Sebastian Nebe
ドイツの画家セバスティアン・ネーベによる作品集。森の奥や人里離れた小屋など、人の気配が消えた風景を主題にした絵画を収録している。近年の作品では人物は描かれず、整った構図と落ち着いた色調によって、静かでひんやりとした空気感が画面に広がる。本書のタイトルにもなっている「Der neue Morgen(新しい朝)」は、松林を描いた大きなパノラマ作品で、どこかロマン主義的な雰囲気を残す森の姿が印象的だ。人を寄せつけない自然の静けさと、その奥に潜む緊張感を丁寧に描き出している。
Nage Libre | Marc Wendelski
写真家、マルク・ヴェンデルスキの作品集。捨てられたマットレスやレース越しに漂う女性の気配、断崖に佇む人物、建築物や自然の静かな佇まいなど、日常と風景の断片を淡い光の中で捉えている。過度な説明を排したイメージは、見る者の想像を静かに誘い、時間の余白を感じさせる。『Sleeping by the Mississippi』以前のアレック・ソスを想起させる、自由で瑞々しい眼差しが印象的な一冊。
Unurgent Argilla | Nina Salsotto Cassina
ミラノを拠点に活動する陶芸家、ニーナ・サルソット・カッシーナによる自然の粘土をめぐるリサーチと実践を支えるプロセスの記録を収録した作品集。2023年にミラノで開催された展覧会「Unurgent Argilla」にあわせて刊行され、作家が各地で採取した粘土と向き合いながら積み重ねてきた思考と制作の軌跡を丁寧にたどる。地質学からフェミニズムに基づく組織運営の実践に至るまで、異なる分野の研究者や実践者による未発表の寄稿文を通して、作品の背後に層のように折り重なる多様なテーマを掘り下げている。
Matthias Mansen: About the House. New York 1989-1992
ドイツ出身の版画家、マティアス・マンセンの作品集。1989年から1994年までニューヨークで制作された木版画のオリジナル作品を収録し、技法の直接性や即時性を余すところなく伝える多彩な作品群を収録。伝統的な木版画の技巧を重視しつつ、絵画的・概念的な要素を取り入れることで、独自の表現可能性を追求するそのプロセスを探る。
M.T.V. 15.05.1963 - 12.04.2017 | Mika Vainio
電子音響作家であり、パンソニックのメンバーでもあった、フィンランドのエレクトロニックミュージシャン、ミカ・ヴァイニオへのオマージュとして編まれた作品集。家族のアーカイブ写真をはじめ、友人や共演者によるテキスト、ヴィジュアル作品、詳細ディスコグラフィ、未編集インタビュー記録など多彩な資料を収録。未発表ライブ音源を収めたCDを付帯し、アーティストの創造の軌跡を多面的にたどる。限定1000部発行。
Man Ray 1920-1934 | マン・レイ
写真家、マン・レイの作品集。1920年代から30年代にかけてパリを拠点に制作された写真を中心に、ドローイング、コラージュ、オブジェなど300点以上の作品を収録している。アメリカ出身の異邦人としてヨーロッパの前衛芸術と向き合い、シュルレアリスムの潮流のなかで写真と美術の境界を自在に行き来したキャリアが一望できる構成。ジャン・コクトーやサルバドール・ダリ、アンドレ・ブルトンら同時代の芸術家の肖像も含まれ、実験精神と洗練が共存する表現の幅が鮮明に示されている。20世紀前半の視覚文化を形づくった創作の核心に迫っている。
The Americans ペーパーバック版 | Robert Frank
アメリカの写真家、ロバート・フランクの代表作『The Americans』を再刊したペーパーバック版。1955年から56年にかけて全米各地を旅しながら撮影された83点の写真を収録。都市と地方、祝祭と倦怠、希望と分断といった相反する要素が同時に写し込まれ、戦後アメリカ社会の空気が鋭い感受性によって掬い取られている。写真表現の転換点として、後続世代に大きな影響を与えてきた重要な写真集。
Macguffin No.5 The Cabinet
オランダ発のデザイン&クラフトマガジン『MacGuffin』第5号のテーマは「キャビネット」。ものを収め、隠し、ときに見せる存在としてのキャビネットの多様なあり方を探っている。DIYの棚やセレブリティのクローゼット、カクテルバーの収納、社会主義時代のキオスク、古典的な箱型家具まで、私的で秘密めいた空間に宿る物語を豊富な事例とともに紹介。エミリー・キング、エットレ・ソットサス、ヴォルフガング・ティルマンスら、建築・デザイン・アートの分野を横断する多彩な寄稿者が登場し、キャビネットという存在を様々な角度から解剖している。
Macguffin No.8 The Desk
オランダ発のデザイン&クラフトマガジン『MacGuffin』第8号のテーマは「デスク」。もっとも“真面目なオブジェクト”とも言える机をめぐって、その多様な姿と文化的意味を探る。整然としたデスクや散らかったデスク、急ごしらえの作業台から大統領の執務机、トークショーのセットに至るまで、あらゆるデスクを検証。引き出しの中身やデスク上の植物、オフィスのいたずら、政治家の落書きなど、日常の創造の現場を多角的に掘り下げる。フランソワ・ダレグレ、エゴン・アイアーマン、エンツォ・マーリ、聖ヒエロニムス、スーパースタジオ、ヤン・シュヴァンクマイエルらが登場し、“机”という場が生み出す知的想像力を照らし出している。
MacGuffin No.10 The Bottle
オランダ発のデザイン&クラフトマガジン『MacGuffin』第10号のテーマは「ボトル」。本号では、時代の気分を閉じ込めた多様なボトルの文化とデザインを探る。安価な香水瓶の列挙、ボトルに託されたメッセージ、完璧な火炎瓶のレシピ、有名人の冷蔵庫の中身、家庭用ボトルの色彩史、ワインビジネスに潜む人種差別、AAのセッションに見る救済のかたち、そしてミニバーに隠れた小さな驚きまで、多彩な視点で“ボトル”を解剖。カンダス・シボーン・ウォーカー、ジョゼ・キンタナー、Studio Qiu Yang、AtelierNLら多くの寄稿者が参加している。
Harumi Gals | 山口はるみ
イラストレーター・山口はるみの作品を集めた一冊。エアブラシを駆使して描かれた独自の色彩と造形によるイラストレーションに加え、沢渡朔によるフォトパロディも掲載されている。寄稿者には和田誠、草森紳一、田中一光、つかこうへい、色川武大、横尾忠則らが名を連ね、当時の文化的広がりを物語る。監修は横尾忠則、編集は太田克彦が務め、1970年代の視覚文化に刻まれた山口はるみの表現を伝えている。
Juergen Teller: Handbags
ドイツ出身の写真家ユルゲン・テラーによる大判作品集。1990年代以降、ファッションフォトの第一線で活躍してきたテラーが、約30年にわたるキャリアの中で撮影した膨大な数のハンドバッグを集成している。被写体は単なるプロダクト写真にとどまらず、モデルや著名人との組み合わせによってユーモラスかつ挑発的な視覚表現へと展開される。ファッション写真の枠を超え、広告とアートの境界を揺さぶるテラー独自の視点を示している。
A Photographer’s Life: 1990-2005 | Annie Leibovitz
アメリカ出身の写真家アニー・リーボヴィッツによる作品集。2010年から2011年にかけて開催された巡回展にあわせて刊行されたもの。1990年から2005年までの15年間に撮影されたモノクロームを中心に、一部カラーを交えた大判作品図版を収録。著名人のポートレートだけでなく、家族やパートナーとの私的な場面も織り込み、「仕事」と「生活」の境界を取り払った構成となっている。
Olafur Eliasson: In Real Life
デンマーク出身の芸術家、オラファー・エリアソンの作品集。テート・モダンのキュレーターであるマーク・ゴッドフリーとの対話に加え、人類学、経済学、政治学、都市計画、ダンス、音楽、料理など、芸術の枠を越えて様々な分野で活躍する人々との対話を数多く収録。こうした対話の言葉とともに、エリアソンの圧倒的な没入型アート作品の写真が織り交ぜられ、エリアソンが掲げる「世界へと手を差し伸べる」という創作への姿勢が力強く表れている。英語表記。
Lifeguard Towers: Miami | Tommy Kwak
アメリカの写真家トミー・クワックによる写真集。ハリケーン後の再生の象徴として再設計された、マイアミ・ビーチに立つ30以上のライフガードタワーを撮影している。ビビッドな色彩とユニークな形状をもつタワーを、空や海、砂浜を背景に収めた写真群は、建築的かつグラフィックな魅力を際立たせる。ベッヒャー夫妻の給水塔シリーズを思わせる構成によって、都市と自然、機能と造形の交錯を映し出している。
Oliver Boberg
ドイツのアーティスト、オリバー・ボバーグの作品集。2003年から2005年にかけて世界各地で開催された展覧会にあわせて刊行されたもの。閑散とした建物の一部や薄暗い街並み、パステル調の住宅など、一見すると日常の風景の断片を思わせるモチーフを収録している。どこにでもありそうな景色でありながら、人の不在を暗示するその表現は、現実と虚構のあわいを意識させる。ボバーグ独自のミニマルな世界観を映し出している。
Neon Tigers: Photographs of Asian Megacities | Peter Bialobrzeski
ドイツの写真家ペーター・ビアロブルゼスキによる作品集。バンコク、クアラルンプール、香港、上海、ジャカルタ、シンガポール、深センの7都市を撮影し、近代的な建築やスケートパークと、古びた集合住宅や商店といった景観を並置している。急速な都市化の中で新旧の要素が混在する姿を、鮮やかな色彩と独特の視点で表現。複数の都市をひとつの仮想的な「巨大都市」として提示し、現実と幻想が交錯するアジアの都市像を映し出している。
Who is Changed and Who is Dead | Ahndraya Parlato
写真家、アンドラヤ・パルラートの作品集。母の自死と自身の出産という相反する出来事を起点に、母性や生、死をめぐる複雑な感情と構造を掘り下げている。枯れた花や覆いかぶさる布、赤い果実、子どもの姿といったモチーフを、静物、人物、風景として配置し、写真とテキストを交差させる構成。私的な体験に根差しながら、歴史や社会、ジェンダーの視点を織り込み、親であることの不安や継承される感情の行方を静かに問いかけている。
Fiat Lux | Pierre Seinturier
フランスのアーティスト、ピエール・サンチュリエの作品集。ドローイングとペインティングを自在に組み合わせ、1960年代のアメリカと現代の田園風景を交錯させた独自の表現を展開。写真や参考文献を交えつつ、近作と旧作を対比させる構成により、作品の背景や思想を読み解く手がかりを示している。物語性に満ちたイメージには謎と光が同居し、絵画的想像力と現実の風景が重なり合う。
アイデア No.384 髙田唯 形と態度
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.384(2019年1月号)は、デザイナー髙田唯を特集。「形」と「態度」の二部構成で、その仕事と姿勢を紹介する。前半ではAllright Graphics設立以降のブランディングやプロデュース的な領域に広がる仕事を取り上げ、後半では依頼者や展覧会関係者との対話を通じて髙田の思想を探る。デザインという行為に内在する誠実さと人間的まなざしを可視化し、髙田唯の思考と造形の関係を丁寧に読み解いている。
アイデア No.372 大原大次郎 曲線
デザイン誌『アイデア』第372号(2016年1月号)。巻頭特集「大原大次郎 曲線」では、タイポグラフィを基軸にグラフィック、イラストレーション、映像、ワークショップなど多様な領域を横断する大原大次郎の活動を総覧している。重力をテーマにしたモビール作品「もじゅうりょく」や、音楽ユニット・SAKEROCKのデザインワークなどを収録し、言葉と形が響き合う独自の造形思考を探る。クライアントワークと自主制作の境界を軽やかに行き来しながら、デザインを「問題解決」でも「自己表現」でもない第三の実践として紹介している。
アイデア No.376 グラフィックデザイナーと展覧会
デザイン誌『アイデア』第376号(2017年1月号)。巻頭特集「グラフィックデザイナーと展覧会」では、グラフィックデザインを〈展示〉という形式から捉え直し、その役割や可能性を探っている。半世紀以上の歴史をもつブルノ国際グラフィックデザイン・ビエンナーレを軸に、欧米や韓国での具体的な取り組みを紹介。デザイナー自身が展覧会を表現や批評の場として用いる動向を通じて、制作と発表、デザインと社会の関係を考察。あわせて日本の現状にも触れながら、展覧会という場がもつ意味をわかりやすく問い直している。