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【スタッフ山田の成長日記】読み方がわかると写真はこんなにおもしろい〜ポートレート、ファッション編〜
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【スタッフ山田の成長日記】読み方がわかると写真はこんなにおもしろい〜ポートレート、ファッション編〜

ご無沙汰しております、山田が自ら綴る成長日記第3弾。


過去記事はこちら。
スタッフ山田の成長日記 #1「え、古本って……めっちゃよくない?」
スタッフ山田の成長日記 #2「本の部位とか、もう語れちゃうんだから」


松陰神社前周辺にいると、写真家やデザイナーなど、クリエイティブなお仕事をされている方に出会う機会に恵まれます。飲みながらお話ししていると、私がまだまだ知らないことを教えてくださるので、本屋の仕事中以外でも学ぶことがとても多いのです。嬉しい、楽しい!

先日も「写真に興味を持ち始めた」と話していると、ノストスブックスで展示をしてくださった写真家・加藤孝さんが、アニー・リーボヴィッツ、ヘルムート・ニュートン、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ウィリアム・エグルストンという世界を代表する写真家たちのドキュメンタリーDVDを貸してくださいました。

ご厚意を噛みしめながらドキュメンタリーを鑑賞。かの有名な作品たちが撮られた裏側を知ることで、写真が写したかったものや込められた意味を知り、写真を見ることが一層楽しくなったのです。

そこでふと思ったのが、「写真は一瞬で見ることができるのに、なかなか手に取る人が少ないのはなんでだろう?」ということ。
写真集は読み物よりも価格的に手に届きにくいというのも大きいと思いますが、私のように写真の読み方を知らないんじゃないかなと思いました。そこで今回は、知りたてホヤホヤの写真の読み方を、ジャンル別で私なりに書いてみます。



撮るものと撮られるものの関係が写るポートレート

「ポートレート」という言葉を聞き慣れない方もいるかもしれません。これは「肖像」という意味で、人物を被写体とし、人物そのものが主題になった作品のことを指します。人が写っていても、その主題がカットそのものの世界観だったり、人が身に着けている衣服だったりすることもあるので、パッと見たときにモデルの人間性に目が行くなら、それはポートレート写真と考えていいでしょう。

こちらは、アニー・リーボヴィッツをはじめ、アントン・コービン、アルバート・ワトソンらがロックミュージシャンたちを撮影した写真集。「音楽」というよりも、「ミュージシャン」自身に迫るようなポートレートの数々が収められています。せっかくなので、貸していただいたDVDの中からアニー・リーボヴィッツの作品をピックアップ。

Rolling Stone: Images of Rock and Roll 畏怖、というかもはや恍惚の表情。

Rolling Stone: Images of Rock and Roll 本来ならば、親しい人しか目にすることのできない眠る姿。

アメリカにおけるロック、ジャズ、ヒップホップなどさまざまなジャンルのミュージシャンのポートレートを収録。
American Music
Rolling Stone: Images of Rock and Roll オノ・ヨーコ、無我の境地。水滴さえも表情として捉えた1枚。

Rolling Stone: Images of Rock and Roll

Rolling Stone: Images of Rock and Roll

著者
Aniie Leibovitz、Anton Corbjin他
出版社
Virgin Books
発行年
1995年
名だたる写真家たちが撮影した、ロックミュージシャンのポートレートを収録。
ミュージシャンや俳優のポートレートでは、映画監督としても活躍するアントン・コービンの写真もおすすめ。モデルそれぞれの人間性を最も表す作品の数々が収められています。特にU2のボノを見ていただきたい。

映画監督としても活躍するロック・フォトグラファー/アントン・コービンの写真集。デヴィッド・ボウイ、ボブ・ディラン、ニール・ヤングなどのミュージシャンの他、ハリウッド・スターたちのポートレートを掲載。
Werk
ファッションや広告で世界的に活躍するアメリカの写真家、ハーブ・リッツのポートレート集もとても人気があります。

Notorious 親しい人にだけ見せる、飾らない素の表情。

Notorious 写す者に身を委ねる。表情の大部分を占める瞳が閉じられていますが、モデルが醸し出す雰囲気を見事に捉えています。

Notorious 映画『博士と彼女のセオリー』の主人公となったスティーブン・ホーキング博士。メガネの奥で輝く、純粋な瞳。
ポートレートでは、モデルの表情を引き出したり、貴重な姿に迫ったりできるかで写真家の手腕が試されます。

Notorious

Notorious

著者
Herb Ritts
出版社
Bulfinch
発行年
1995年
ハーブ・リッツ3作目の写真集。ジョニー・デップとウィノナ・ライダーのキスショット、クリント・イーストウッドの変顔など、貴重でユーモラスなポートレートを多数収録。

非現実な世界観に心惹かれるファッション・モード

ファッション(モード)写真は、ブランドのコンセプトビジュアルや広告を目的として制作されることが多いもの。いかにトレンドの最先端、もしくはその一歩先に行けるかを意識しています。そのために表現された「日常とかけ離れた世界観」を味わうのが、ファッション写真の醍醐味だと思います。
それでは、ヘルムート・ニュートンの作品をいくつかご紹介します。

A Gun for Hire 何色にも輝く衣装と無機質な砂利のコントラストで、横たわる美女が印象的な1枚。なんで金網の下に入ることを思いついたのかがちょっと気になる。

A Gun for Hire A Gun for Hire コンクリートやテトラポットに身体を預ける美女。スタジオで撮るよりも背景に映り込むロケーションの迫力が強く、より印象の強い作品になります。とはいえちょっと痛そう。

A Gun for Hire 雄大な山をのぞむ更地にて。奥行きのある背景を使った遠近法で、モデルが一層際立ちます。ニュートンは1枚の作品ためのシーンを一糸乱れず完璧に作り上げるから、非現実な世界観でも、その世界そのもののリアリティを感じます。

A Gun for Hire

A Gun for Hire

著者
Helmut Newton
出版社
Taschen
発行年
2005年
シャネルやイヴ・サンローランらハイブランドのファッションフォトの他、ヴォーグなどに掲載されたエディトリアルワークを多数収録。
ヴォーグ誌などで活躍するスタイリスト、サラジェーン・ホーアの作品集では、大胆に取り入れたロケーションと衣装のマッチングに驚かされます。

Talking Fashion Sarajane Hoare 左は雄大な自然と大きな木が映える、丈の長さが印象的なデザインのドレス。
右では、テニスコートとそのラインに合わせたカラーのドレス。一見浮いてしまいそうなモデルと背景に統一感を生み出しています。これはすごい。

Talking Fashion Sarajane Hoare サバンナの背景に際立つ純白のドレス。こちらは動きやすさをイメージしてか、丈は短めでヒールではなくスニーカー?いかにロケーションから浮かせてファッションを見せるかを追求する、ニュートンとは異なるアプローチでおもしろいですね。

Talking Fashion Sarajane Hoare

Talking Fashion Sarajane Hoare

著者
Sarajane Hoare
出版社
Taschen
発行年
2005年
ヴォーグやハーパース・バザーなどのファッション雑誌で活躍するスタイリスト、サラジェーン・ホアが手がけた仕事集。
私なりの写真の読み方を紹介してきましたが、読み方は人それぞれ。同じ作品を読んだもの同士での受け取り方の違いを楽しむのもいいと思います。
そしてDVDを貸してくださった加藤さん、ありがとうございました!!!

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1990年4月22日午年、金沢出身。ギリ平成生まれのデジタルネイティブ、nostos booksを拠点にしながらカレーを作り続けるフリーランス編集者。実は理工学系。2019年2月退社。