Typiska Arbeten | Olle Eksell オーレ・エクセル
スウェーデンのグラフィックデザイナー、オーレ・エクセルの仕事を紹介する作品集。装丁やイラストレーション、ブックデザイン、ポスターをはじめ、絵本や展覧会の記録まで多彩な活動を収録している。ユーモラスで温かみのある作風は北欧デザインの精神を体現し、商業デザインからアートまで幅広い領域に影響を与えてきた。豊富な図版を通じて、エクセルの創造性とデザイン観を示している。
PATTERN’S 不揃4冊セット | Hironori Yasuda
グラフィックデザイナー安田博典によるパターンデザイン資料集『Pattern’s』から、No.1、No.12、No.15、No.21の不揃い4冊セット。白と黒を基調に、ドットや幾何学模様、波形、波線などを用いた構成が中心で、視覚的錯視を誘うような実験的パターンが多数収録されている。素材としての応用はもちろん、デザインの発想を広げるリファレンスとしても活用できる内容で、資料性と造形性を兼ね備えている。
晃文堂タイプブック Kobundo Type Book
1967年に晃文堂から発行された活字見本帖。多様なサイズとウエイトの欧文書体を網羅し、組み合わせ例もあわせて掲載している。本文のレイアウトはグラフィックデザイナー片山利弘が手がけ、見本帖としての実用性に加えてデザイン資料としての価値も高い。60年代のタイポグラフィの感覚を伝える資料として、当時の書体運用やレイアウトの傾向を示している。
カウンターパンチ 16世紀の活字製作と現代の書体デザイン | フレット・スメイヤーズ
書体デザイナー、フレット・スメイヤーズが活字製作の道具「カウンターパンチ」に着目して考察した研究書。16世紀の父型彫刻における技術と彫刻師の役割を丁寧に解説し、歴史的な制作工程を明らかにしている。さらに図版を交えながら、その思想や手法がどのように現代のデジタル書体デザインへと受け継がれているかを示す。活字史と現代タイポグラフィをつなぐ資料として高い価値を備えている。
VNIITE: Discovering Utopia – Lost Archives of Soviet Design
モスクワ・デザイン・ミュージアムのアレクサンドラ・サンコヴァとオルガ・ドゥルジニナが、忘れ去られたソ連の研究機関VNIITE(全ソ連技術美学科学研究所)の活動を紹介する一冊。スケッチやモデル、プロトタイプに加え、同研究所が発行した月刊誌『Technical Aesthetics』の表紙を厳選収録。1960年代から1990年代初頭にかけてのソビエト・デザインの動向を示す貴重な資料であり、社会主義体制下でのユートピア的デザインの理想と現実を浮かび上がらせている。
夜の木 第9刷 | シャーム、バーイー、ウルヴェーティ
2008年「ボローニャ・ブックフェア」でラガッツィ賞を受賞し、世界的に注目を集めた『The Night Life of Trees』の日本語版第9刷。中央インドのゴンド民族を代表するアーティスト、シャーム、バーイー、ウルヴェーティの3人が、木をめぐる神話的世界を鮮やかに描き出す。インド・チェンナイ郊外の工房で、手漉き紙にシルクスクリーン印刷を施し、製本も職人が一冊ずつ手作業で仕上げた、絵本でありながら工芸品の趣を持つ作品。
Design by Numbers デジタル・メディアのデザイン技法 | 前田ジョン
デザインとテクノロジーの融合を探求してきたデザイナー、前田ジョンによる著作。プログラミングを用いたデザイン技法を解説し、有限の命令や離散的な世界からいかに新たな表現が生み出されるかを考察している。今日では「クリエイティブ・コーディング」と呼ばれる領域の黎明期を象徴する内容であり、デザイン教育やメディアアートの発展にも大きな影響を与えた重要な一冊となっている。
Deco Type: Stylish Alphabets of the ’20s & ’30s
1920〜30年代、アール・デコ黄金期に生まれた書体美を収録したタイポグラフィ資料集。各国の見本帳や商業印刷物から集められたフォントやアルファベットデザインを紹介している。幾何学的で装飾的な造形は、当時の芸術運動とタイポグラフィが融合した様式を物語っており、モダンデザイン史の一断面を伝える内容。豊富な図版と解説を通して、華やかな時代の造形感覚とデザイン性を明らかにしている。
時代を変えたミニの女王 マリー・クワント
2022年にBunkamura ザ・ミュージアムで開催された展覧会にあわせて刊行されたカタログ。ロンドンからファッションに革命を起こしたマリー・クワントの軌跡を辿っている。新規撮り下ろしによるファッションアイテムの写真に加え、初公開となるスナップやスケッチなど貴重な資料を多数収録。豊富な図版と解説を通して、ミニスカートの代名詞となったデザイナーの革新性と、その影響が現代まで続くことを示している。
Story of… カルティエ クリエイション めぐり逢う美の記憶
2009年に東京国立博物館で開催された展覧会にあわせて刊行されたカタログ。ジュエリーブランド、カルティエの創作の軌跡と美の歴史を辿っている。ジュエリーや時計をはじめとする宝飾品を豊富なカラー図版で紹介し、その変遷を支えたデザインの背景や物語を丁寧に解説。監修はデザイナー吉岡徳仁が務め、カルティエの創造性と美学を多角的に捉えた内容となっている。
CHANEL | Danièle Bott
「CHANEL」の世界観を伝統と現代の視点からひも解くビジュアルブック。1920年に誕生したモチーフや装飾を再解釈し、ファッション、ジュエリー、ビューティーといった領域に息づくシャネルの美学を紹介している。未公開のアーカイブ資料やカール・ラガーフェルドによる写真、デッサンも収録され、ブランドの創造性と歴史を立体的に浮かび上がらせている。シャネルを象徴する香水「N°5」に呼応するように、5つのテーマで構成され、ブランドの哲学と進化を視覚的に示している。
シャネルの生涯とその時代 普及版 | エドモンド シャルル・ルー
普及版として刊行された、ココ・シャネルの生涯とその時代を紹介する一冊。孤児院での幼少期から売り子時代、手作りの帽子や服の制作、ショートヘアの流行、コルセットからの解放といった出来事をたどりながら、彼女がどのように新しい女性像を体現し、時代の先端を切り開いていったかを示している。200点を超える写真を収録し、ファッションを超えて文化と社会に刻まれたシャネルの軌跡を鮮やかに伝えている。
タイポグラフィスケッチブック | スティーヴン・ヘラー、リタ・タラリコ
世界各地で活動するタイポグラファーやデザイナーたちの制作過程を紹介する一冊。100名を超える書体デザイナー、アートディレクター、アーティスト、イラストレーターが手がけたスケッチやドローイングを収録し、文字の組み立てや造形のアイデアがどのように生まれるかを示している。完成品だけでは見えにくい思考のプロセスを豊富な図版とともに伝え、タイポグラフィの創造性と多様なアプローチを明らかにしている。
たべるトンちゃん | 初山滋
童画作家・初山滋による異色の絵本『たべるトンちゃん』の復刻版。しゃぼんだまの水を飲み、ゴミをあさり、お団子を食べる――いつもお腹を空かせて食べものを探し回るブタのトンちゃんの日常を、ユーモラスでありながら詩情豊かに描き出している。女の子との対話やトンちゃん自身のモノローグによって物語が展開し、予想を超える結末へと導かれていく。戦前から戦後にかけて活躍した初山滋の独自の感性を今に伝える一冊。
松永真のデザイン展 | セゾン美術館
日本を代表するデザイナー、松永真が1997年にセゾン美術館で開催した展覧会の図録。装丁やパッケージ、ポスターなど多彩な仕事をカラー図版で多数紹介している。女性誌『non-no』『MORE』のロゴデザインを手がけたことでも知られ、広告から出版、プロダクトにまで及ぶ幅広い活動を通じて独自の造形感覚を築いてきた。図録はその歩みを辿るとともに、日本のグラフィックデザイン史における松永真の位置づけを示している。
燐寸図案 北原照久コレクション
昭和初期、広告媒体として広く普及したマッチラベルを収録したコレクション集。1933年から1935年にかけて制作された作品を中心に、小さなポスターとも呼べる精緻なデザインを紹介している。ホテルや百貨店、音楽喫茶、宝塚、戦時広告、ミッキー&ベティ、菓子、紳士用品など、当時の時代性や風俗を反映した多彩な図版を掲載。グラフィックデザイン史の一側面としての資料価値を備え、昭和モダン文化の広がりを伝えている。
空間のグラフィズム | 廣村正彰
グラフィックデザイナー廣村正彰が、空間とグラフィックデザインの関係を論じた指南書。グラフィック処理や色彩、照明といった視覚要素から、建築、サインシステム、展示会、さらには環境デザインにまで視野を広げて紹介している。豊富なカラー・モノクロ図版と解説を通して、情報伝達としてのデザインと空間表現がどのように結びつくかを示し、空間におけるグラフィズムの可能性を明らかにしている。
G1: Subj.; Contemp.Design, Graphic | ネヴィル・ブロディ
1990年代に世界的な影響を与えたデザイナーたちの仕事をまとめたデザイン資料集。パッケージデザイン、ポスター、レコードジャケット、ブックデザイン、タイポグラフィなど、多岐にわたる分野の作品を収録している。特徴的なのは、あえてデザイナー名を伏せて作品のみを紹介している点で、純粋に造形表現そのものに焦点を当てていることにある。460点に及ぶ図版と解説から、90年代デザインの多様な潮流が浮かび上がってくる。
Spitzmaus Mummy in a Coffin and Other Treasures | Wes Anderson & Juman Malouf
映画監督ウェス・アンダーソンと、作家・衣装デザイナーのジュマン・マルーフが、ウィーン美術史美術館の膨大なコレクションからキュレーションした展覧会カタログ。1891年に創設された同館に所蔵される約450万点の中から、初公開を含む430点を独自の基準で選び出している。色や大きさなど従来の美術史の枠を超えた分類によって展示された作品群は、5000年にわたる文化の広がりを新鮮な視点で示している。アンダーソンとマルーフ自身のエッセイに加え、展示風景の豊富な記録も収録されている。
The Badger’s Song: Series 2013–2020 | Michael Borremans
ベルギーの現代アーティスト、ミヒャエル・ボレマンスによる2013年以降のペインティングをまとめた作品集。18世紀の肖像画技法を思わせる緻密な筆致でありながら、黒衣の人物や切断された手足に触れる子どもたちなど、不条理で不穏な場面を描き出す。特定の時代や場所を示さない構図は現実のわずか手前に位置し、観る者に独特の不安と魅了を同時にもたらす。ユーモアと技巧が織り合わさった7つのシリーズから、これまで未発表だった作品も含めて収録している。
Still Life | Irving Penn
アメリカの写真家アーヴィング・ペンによる静物写真を集成した作品集。1930年代から2000年代にかけて撮影された図版を収録し、長いキャリアの軌跡をたどることができる。『VOGUE』のために撮影された花のシリーズをはじめ、リップスティックやハイヒール、食べ物など、身近な題材を精緻にとらえ、独自の美学によって構成している。ファッション写真やポートレートで知られるペンのもうひとつの重要な領域を示す内容となっている。
Henri Matisse Jazz
フランス近代美術を代表する画家アンリ・マティスが70歳を過ぎてから始めた切り紙絵を収めた版画集。1947年に270部のみ限定刊行され、その後1500部限定で復刻された。筆の代わりに鋏を用い、直感的に色紙を切り抜き、即興的に形を構成する手法は、リズムに導かれるジャズの演奏にたとえられている。鮮烈な色彩と軽やかなフォルムが舞うように展開し、動物や神話、舞踏など多彩なモチーフが表現されている。老境に至ってなお新たな表現を探り続けた姿勢は、絵画の枠を超えた造形実験として高く評価され、20世紀美術史における革新性を示す資料となっている。
Henri Matisse: The Cut-Outs ペーパーバック版
20世紀を代表する芸術家アンリ・マティスによる切り絵作品を収めたペーパーバック版作品集。1940年代初頭から晩年の1954年までに制作された大胆なフォルムと鮮烈な色彩による作品群を紹介している。豊富な図版に加え、アトリエでの制作風景をとらえた当時の写真も収録し、創作の過程やその革新性を示す構成となっている。マティスが晩年に到達した表現のひとつの頂点を描き出している。
Guy Bourdin: A Message for You | ギイ・ブルダン
1970年代に『ヴォーグ』やシャルル・ジョルダンのキャンペーンで活躍したファッション写真家ギイ・ブルダンによる2巻組の作品集。第1巻にはお気に入りのモデル、ニコル・メイヤーを撮影した作品を収録し、第2巻にはポラロイド、スケッチ、コンタクトシートなど未公開資料を多数掲載している。洗練されたファッション写真と制作過程を示すドキュメントを併せて構成し、ブルダンの創作の舞台裏と時代の感覚を浮かび上がらせている。
Between Maple and Chestnut | Terri Weifenbach テリ・ワイフェンバック
アメリカ出身の写真家テリ・ワイフェンバックによる作品集。2005年から2007年にかけて撮影された牧歌的なアメリカの風景を収録している。鮮やかな色彩や浅い被写界深度、選択的なフォーカスといった直感的な手法が特徴で、画面には草花や木々、庭先の情景が柔らかな光とともに浮かび上がる。現実の風景を写しながらも、写真が絵画のように幻想的な印象をまとい、日常の風景が夢幻的な世界へと変容する様子を示している。自然の中に潜む美しさと、見る者の感覚を揺さぶる表現が重なり合い、写真表現の新たな可能性を描き出している。
鹿渡り | 白石ちえこ
写真家・白石ちえこが冬の北海道・道東を舞台に撮影した写真集。夕暮れの凍った湖を一列に渡るエゾジカの群れをはじめ、森や空、動物たちが静かに連なる情景をとらえている。限られた光のなかで浮かび上がる風景は、自然と生命とのつながりを深く感じさせるもの。厳しい冬に潜む静謐さと温もりが交錯する瞬間を映し出している。
New York New York | Marie Tomanova
チェコ出身でニューヨークを拠点に活動する写真家マリー・トマノヴァが、2019年の『Young American』に続いて手がけたポートレート集。2000年代生まれの若者たちが街角でカメラを真っすぐに見つめ、多様なルーツやジェンダー・アイデンティティを背景に個の存在を鮮烈に示している。都市に生きる彼らの姿は、現代アメリカ社会の変容と時代の空気を象徴的に映し出す。親密なまなざしを通じて、新しい世代の肖像が浮かび上がる。序文はソニック・ユースのキム・ゴードン。
Even the Birds were Afraid to Fly | Al Brydon
イギリスの写真家アル・ブライドンによる作品集。幼少期に耳にしたカラスの鳴き声の記憶を手がかりに、「なぜ写真を撮るのか」という根源的な問いに迫っている。収録された写真には、霧に包まれた森や鳥の群れ、動物の亡骸といった不穏なモチーフが並び、そこに画面を横切るように現れる白い線が繰り返し挿入される。その線は個人的な記憶と社会的分断の双方を象徴し、単なる風景写真を超えた視覚的メタファーとなっている点が特徴。静謐な自然の中に刻まれた境界の意識を通して、個人史とイギリス社会の現在を重ね合わせる視点を浮かび上がらせている。
Julian Schnabel | ジュリアン・シュナーベル
1990年にイタリア・プラトのルイジ・ペッチ現代美術センターで開催された展覧会にあわせて刊行されたカタログ。新表現主義の画家として国際的に活躍し、映画監督としても知られるジュリアン・シュナーベルが、1980年代後半に手がけた作品群を紹介している。軍用シートを支持体に用いた大作や、壊れた陶器を大胆に散りばめた作品など、多様な素材を取り込みながら独自の絵画空間を築いた表現を収録。言語中心のコンセプトから、再び視覚イメージとの融合へと移行する過程を示しており、作家にとって芸術的転換点となった時期の姿を浮かび上がらせている。
Oiseaux | Jochen Gerner
フランスを拠点に活動するイラストレーター、ジョシェン・ギャルネールの作品集。子ども用ノートをキャンバスに、フェルトペンで描かれた鳥のドローイング約200点を収録している。単純化されたフォルムと鮮やかな色彩が織りなすイメージは、愛らしさと同時に図形的な規則性をも備えており、視覚実験としての性格を強く持つ。ページに敷かれたグリッドや線と色の関係性を探る試みは、絵画やデザインの領域とも交差し、装飾性と理知的な構造を併せもつ独自の表現へと展開している。日常的なモチーフから抽象的な可能性を引き出す実験的な一冊となっている。
Camouflaged Cars of Tokyo | Alice Ishiguro
ロンドン出身で日本にルーツをもつデザイナー、石黒トージーアリスによる作品集。東京の街に駐車された車と、その背景となる建物や看板、壁面などの色彩の組み合わせに注目し、「調和」は意図的な選択か偶然の産物かを問いかけるプロジェクトをまとめている。街中で目にする日常的な風景をフレーミングすることで、車体の色と環境との関係性がユーモラスかつ鮮やかに浮かび上がり、都市の景観を再発見させる内容となっている。日本社会やデザイン文化に潜む「調和」の概念を、遊び心あふれる視点で提示している。
The Granny Alphabet | Tim Walker ティム・ウォーカー
ロンドンを拠点に活動するファッションフォトグラファー、ティム・ウォーカーによる写真集2冊組。第1巻では、ウォーカーが撮影したおしゃれを楽しむおばあさんたちの姿をアルファベット順に構成し、生き生きとした表情や個性的な装いをユーモラスに切り取っている。第2巻にはファッションイラストレーター、ローレンス・マイノットによる挿絵を収録し、写真とイラストの対比を通じて独自の世界観を描き出す構成となっている。世代やスタイルを超えて広がるファッションの楽しみを多角的に示し、ウォーカーらしい遊び心とヴィジュアルセンスが存分に発揮された内容となっている。
悪魔の遊び場 | ナン・ゴールディン
アメリカの写真家ナン・ゴールディンの活動を総覧する作品集。『Still on Earth』『57 Days』『Elements』の各シリーズに加え、テーマごとに構成された写真群を収録している。被写体に寄り添いながら日常と親密さをとらえ続けてきた作風は、写真表現を通じて愛や痛み、依存や喪失といった人間の根源的な感情を描き出してきた。大判の図版により作品の強度を体感できるほか、作家やアーティストによる詩や歌詞も添えられ、多層的にゴールディンの世界を構成している。長年にわたる軌跡をまとめた内容は、彼女の写真表現の広がりと深みを改めて示している。
PARIS | AMI SIOUX
写真家アミ・スーによるパリを舞台とした作品集。緯度経度をタイトルに冠し、都市の位置を明確に刻むことで、街そのものを被写体として提示している。表紙に配されたエッフェル塔の影のイメージを象徴に、街路や広場、建築や人々の営みを多角的に写し出す構成。パリという都市の輪郭を、記号と記憶の重なりとしてとらえた視覚的マッピングの試みとなっている。フランス語、英語表記。
Hannah Hoch: Album | ハンナ・ヘッヒ
ベルリン・ダダ運動の主要メンバーであったハンナ・ヘッヒが残したアルバムを再現した作品集。ヘッヒが日常的に切り抜き、貼り集めた400点以上の写真を114ページにわたって収録している。自然、テクノロジー、スポーツ、ダンス、新しい女性像、映画、民族学など多様なテーマが混在し、20世紀初頭の文化的潮流や彼女自身の関心領域を映し出す構成となっている。断片的なイメージの集積は、フォトモンタージュの先駆者としての実践と響き合い、個人的な視覚日記であると同時に、時代精神を体現する貴重な資料でもある。アヴァンギャルド芸術の歴史において独自の位置を占める作家の思考と審美眼を探ることができる内容となっている。
Sacrifice Your Body | Roe Ethridge
アメリカのアーティスト、ロー・エスリッジによる作品集。母の生まれ故郷であるフロリダ州パームビーチで撮影された個人的なドキュメンタリー写真をはじめ、幻想的なコラージュ、さらにシャネルの撮影から不採用となった未使用カットなど、多様な作品が収められている。商業写真とアートの境界を自在に行き来する手法は、現実と虚構、私的な記憶と大衆文化のイメージが交差する視覚的実験として展開されている。作品群は一見軽やかでありながら、イメージが持つ社会的な文脈や個人的背景を浮かび上がらせ、写真表現の可能性を拡張するものとなっている。
アシッド・ブルーム | 蜷川実花
写真家蜷川実花による作品集。被写体となるのは鮮烈な色彩と異彩を放つ存在感をもつ花々であり、花と自らの意識が溶け合うような境界の感覚を写真として定着させている。画面いっぱいに広がる色と形は、現実の花でありながら幻惑的で、見る者を強く引き込む。光や構図の操作を通じて、装飾的でありながらどこか不穏さを帯びた蜷川実花独自の世界が立ち上がる点が特徴。
The Journal | Ruth Asawa
アメリカの彫刻家ルース・アサワによる「アーティスト・ジャーナル」。日常の身近な対象から着想を得て創作の契機とすることを目的に構成されている。アーティスト・ジャーナルとは、単なる日記やスケッチブックではなく、アイデアや構想を記録し、創作の過程を支えるためのノートであり、持ち主の手によって完成していく道具でもある。本書には自由に書き込める白紙ページや、発想を促すパターン入りのページを収録。アサワが実践した「日々の観察から芸術を育む」という姿勢を反映し、内なる表現を喚起する手助けとなる内容を示している。
GROUND | 山谷佑介
写真家山谷佑介による作品集。2012年に東京のライブハウスやクラブで撮影したフロアの写真を、その場のイベント中に壁に貼り付け、音楽と観客の動きの中で変化していく様子を記録している。床にこぼれたアルコールやダンスで削れた靴底の痕跡など、場に刻まれる身体の残像が写真と交差し、時間と空間の重なりを可視化する試みとなっている。さらに同時期に撮影された個人的なスナップも収録され、公共の場と私的な視点が響き合う構成。音楽と身体のエネルギーが織りなす瞬間性を追体験させる作品集として、写真表現の新たな広がりを示している。
異端の奇才 ビアズリー展
2025年に開催された巡回展の会場限定版図録。イギリスで活躍し、25歳の若さで世を去った画家オーブリー・ビアズリーの作品を紹介している。『アーサー王の死』『サロメ』『モーパン嬢』といった挿絵や素描をはじめ、彩色ポスターや同時代の装飾品など約220点を収録。繊細で流麗な線描と大胆なデフォルメを融合させた表現は、19世紀末の欧米で熱狂的に受け入れられ、アール・ヌーヴォーや象徴主義といった潮流にも影響を与えた。図版と解説を通じて、その短くも鮮烈な軌跡を多角的に浮かび上がらせている。
De Paris Yearbook 2014
パリのスケートボードシーンを1年間にわたり記録した写真集。38名のフォトグラファーが参加し、街中で繰り広げられるダイナミックなアクションショットをはじめ、コンペティションの熱気やスケーターたちの何気ない日常までを多角的に捉えている。都市空間を自由に駆け抜ける身体表現は、スポーツであると同時にカルチャーとしてのスケートボードの魅力を伝えるものであり、街そのものを舞台とした創造的な活動として映し出されている。限定1000部の刊行で、現代のスケートシーンを記録した資料的価値をも備えた内容となっている。
SKIN 地球の肌 | 回里純子
2022年にKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭のサテライトイベント「KG+」での展示にあわせて刊行された作品集。アーティスト回里純子が「触れる」というテーマを軸に制作したシリーズを収録している。水面の揺らぎに映る光、水に触れる女性の姿、岩肌の質感や森の木々など、自然と人の関わりを映し出す情景が重層的に展開される。トレーシングペーパーを用いたページ構成によって、イメージがレイヤーのように重なり合い、過去から現在、そして未来へとつながる時間の曖昧さを体感させる仕上がりとなっている。触覚と視覚の両面から人と自然の関係を探り、写真表現の新たな可能性を示す内容となっている。
江之浦奇譚 | 杉本博司
現代美術作家杉本博司が「遺作」と位置づける「江之浦測候所」を舞台に綴ったエッセイ集。神奈川県小田原市に設けられた江之浦測候所は、ギャラリーや石舞台、茶室、光学硝子舞台などを備え、自然・歴史・芸術が交差する総合的な文化施設。その場所に呼応するように生まれた因縁ばなし44題を収録。和歌や随筆、写真を交えた構成は、歴史の記憶と個人的体験が重なり合う独自の世界を浮かび上がらせる。ランドスケープとしての創作の到達点であり、杉本の風狂な半生をも映し出している。