発酵する日本 | 小倉ヒラク
発酵デザイナー・小倉ヒラクが日本全国を巡り、各地に息づく発酵文化を記録した写真集。味噌、醤油、しば漬け、豆腐ようなどの身近な発酵食品から、地方に伝わる珍しい発酵食までを取材し、発酵を軸に人々の暮らしと土地の記憶をたどっている。写真86点と書き下ろしエピソードを通して、47都道府県の多様な風土と発酵の知恵を可視化。微生物と人間の営みが共生する、日本文化の奥行きをやわらかく伝えている。
建築を考える | ペーター・ツムトア
スイスの建築家ペーター・ツムトア(ピーター・ズントー)による初のエッセイ集。素材と土地の力、光と影の設計に真摯に向き合い、詩的で情感に満ちた建築空間を生み出してきたツムトアが、幼少期の記憶や美への考察、谷崎潤一郎『陰翳礼讃』への言及を交えながら、建築と自然、感覚の関係を静かに語る。装幀は葛西薫、写真は杉本博司。建築という行為を通して、世界をどのように感じ、形づくるのかという根源的な問いを投げかけている。
ジャン・ヌーベル展
2003年から2004年にかけて開催された「ジャン・ヌーベル展」の図録。フランスを代表する建築家ジャン・ヌーベルが手がけた主要プロジェクトを、写真、図面、模型などの豊富な図版とともに紹介している。代表作から進行中の計画、さらには未完の構想までを網羅し、建築を「光」「素材」「空間」といった要素の交錯として捉えるヌーベルの独創的な手法を明らかにする内容となっている。
シミュレイテド・シティの建築 伊東豊雄
1946年に彰国社より創刊され、建築を文化として捉え、社会との関係を考え続けてきた建築雑誌『建築文化』の伊東豊雄特集号。シミュレイテド・シティの建築に関する論文をはじめ、下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館など、伊東豊雄による代表的なプロジェクトを多数紹介。また、座談会や建築家・多木浩二による論文も収録し、伊東豊雄の建築思想や実践の全貌を立体的に描き出す。
北の工藝 附 ヒゲベラ | 杉山寿栄男
図案家であり、縄文土器やアイヌ工芸の研究者・収集家として知られる杉山寿栄男による資料集。アイヌの造形文化を「アイヌ印の起源」「アイヌ文様」などの章で考察し、意匠の象徴性と美的体系を読み解いている。巻末では、神に酒を捧げる際に用いる箸〈ヒゲベラ〉を多くの写真とともに紹介。生活と信仰、装飾と機能が交差するアイヌ工芸の精神を丹念に伝えている。
戸隠の民具 | 清永安雄
写真家・清永安雄が長野県戸隠の民具を撮影した資料写真集。農具や家具、食器、祭具など、暮らしの中で受け継がれてきた道具を戸隠民俗館の協力のもとに記録している。木や竹、藁といった自然素材が生み出す素朴な造形と、生活の知恵に根ざした機能美を鮮やかにとらえる。道具の名称や用途、英訳を添えた丁寧な解説とともに、信仰と風土に支えられた日本の生活文化の原型を静かに伝えている。
Mario Botta: Public Buildings 1990-1998
スイスを代表する建築家マリオ・ボッタによる公共建築を紹介する作品集。1990年から1998年にかけて世界各地で手がけた11の建築を収録し、バーゼルのティンゲリー美術館、東京のワタリウム美術館、エヴリー大聖堂などを、カラー・モノクロ写真や木製模型とともに詳述している。重厚な幾何学構成と地域性の融合によって生み出された空間は、建築が公共性と精神性をいかに両立しうるかを示すもの。ボッタの建築思想の深化を的確に伝えている。
安藤忠雄展 挑戦
2017年に国立新美術館で開催された「安藤忠雄展 挑戦」の図録。独学で建築を学び、常に既成概念を打ち破る斬新な作品を生み出してきた安藤忠雄の活動を紹介する。「原点/住まい」「光」「余白の空間」など6つのセッションに分け、実際の建築作品や模型、ドローイングを多数収録。豊富な資料を通して、安藤建築の思想と挑戦の軌跡を浮かび上がらせている。
こけし手帖 創刊号-18号 復刻版
東京こけし友の会が発行した情報誌『こけし手帖』の創刊号から18号までを収録した復刻版。創刊25周年を記念して刊行されたもので、こけし蒐集家の記録、職人の紹介、産地の現状報告など、多角的な視点からこけし文化を掘り下げている。昭和期のこけし愛好家たちによる情熱と観察眼が凝縮された貴重な資料。民芸運動以後の郷土玩具研究の流れを知る手がかりを豊かに伝えている。
リチャード・マイヤーとフランク・ステラ 建築と絵画の接点
建築家リチャード・マイヤーと画家フランク・ステラによる創作の交点を探る展覧会カタログ。1996年から1997年にかけて開催された本展では、二人の半世紀にわたる交流を軸に「建築」と「絵画」の関係を検証している。マイヤーのハイ美術館、フランクフルト工芸美術館、バルセロナ現代美術館、ゲティ・センターなどの建築模型や図面に加え、ステラの絵画、立体レリーフ、建築プロジェクトを紹介。構築と抽象、機能と造形が交差する場に、20世紀後半の芸術思想が響き合う。
サーリネンとフィンランドの美しい建築展
2021年にパナソニック汐留美術館で開催された「サーリネンとフィンランドの美しい建築展」の公式図録。フィンランドのモダニズムの原点を築いた建築家エリエル・サーリネンの初期から渡米までの活動を、図面や写真、家具、生活用品のデザイン資料を通して紹介している。民族的ルーツとアール・ヌーヴォーを融合させたナショナル・ロマンティシズムから、光と自然に呼応する独自のモダニズムへと至る造形の軌跡をたどる。
フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活
2012年から2013年にかけて全国を巡回した展覧会「フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活」の公式図録。豊かな自然と風土に根ざしたフィンランドの芸術とデザインを、19世紀末から現代までの流れの中で紹介している。ムーミンの世界観をはじめ、エリエル・サーリネンの建築、マリメッコのテキスタイル、カイ・フランクの陶器などを通して、日常に息づく美意識を探る。
繋ぐ力 ideas for next japan
2012年、金沢21世紀美術館で開催された「繋ぐ力 Ideas for Next Japan」展にあわせて刊行された書籍。生活工芸プロジェクト第3弾として、使い手と作り手のあいだをつなぐ“繋ぎ手”の存在に焦点を当てている。Zakkaの吉村眸、古道具坂田の坂田和實、ギャルリ百草の安藤雅信・安藤明子、高橋みどり、中村好文、ナガオカケンメイら8組へのロングインタビューを収録。モノを通して価値を伝え、関係を育む人々の思想と実践を静かに掬い上げている。
作る力 creators for every day life
2011年、金沢21世紀美術館で開催された展覧会「作る力 creators for every day life」にあわせて刊行された作品集。赤木明登、内田鋼一、三谷龍二、皆川明など、現代の暮らしに寄り添う10組の作り手たちが登場し、それぞれに同じ問いを投げかけるロングインタビューを通して、モノづくりの根源的な思想を浮かび上がらせている。器や家具、衣服、ガラス作品など代表作の写真を豊富に収録し、日常と創造のあいだにある「生活工芸」の精神と、その多様な実践のかたちを静かに伝えている。
花宇宙 アジアの染め・織り・飾り | 杉浦康平、後藤多聞
1992年に開催された同名展覧会の図録。アジア各地に受け継がれる染めや織り、装飾品を通じて、人々が花の意匠をまとい「生命の樹」のイメージを育んできた歴史を探る。花柄の布や織物、生活用具に宿る象徴性を、豊富な図版とともに紹介。企画にはグラフィックデザイナーの杉浦康平も参加し、造形文化における自然観や宇宙観を多角的に読み解いている。装飾と日常の関わりを丹念に記録し、アジア文化の根底に流れる美意識と精神性を提示している。
11ARTS 代官山プロジェクトをめぐる、11建築家の提案
日本を代表する11組の建築家が構想した「代官山プロジェクト」を紹介する作品集。隈研吾、内藤廣、北山恒、乾久美子、みかんぐみ、アトリエ・ワンなど、世代や立場を超えた建築家たちが参加している。「かたち」と「ことば」の二章構成で、模型写真を中心に各建築家のインタビューを収録。都市と建築の関係を見つめ直しながら、未来の都市像を多様な視点で提示する。思考と造形の往復から現代建築の可能性を鮮やかに浮かび上がらせている。
Japan Houses | Marcia Iwatate、Geeta K. Mehta
日本各地の現代住宅を紹介する建築写真集。20人の建築家・デザイナーが手がけた住宅26事例を、鮮明なカラー写真と図面、解説とともに収録している。素材の質感や光の取り込み、空間構成の工夫など、日本の気候と生活様式に根ざした建築の美学を多角的に探る。現代日本の住宅デザインの創造力と洗練を的確に伝えている。
雅美生活 北大路魯山人
陶芸家・北大路魯山人の美の世界を紹介する作品集。器、花瓶、書、掛け軸など、多彩な作品をカラー図版で収録し、その造形に貫かれた美意識を多面的に伝えている。写真家・田沼武能による魯山人の日常の肖像や年譜も掲載し、芸術家としての創作と生活の姿を浮かび上がらせる。用と美を一体に捉えた魯山人の精神を通して、日本の美学の核心を静かに映し出している。
古寺巡礼 土門拳展 | 池田真魚、藤森武
1995年に全国で開催された「古寺巡礼 土門拳展」の公式図録。昭和を代表する写真家・土門拳が生涯をかけて撮影した全国の古寺や仏像の写真を多数収録している。リアリズムの精神に基づき、光と陰の対比を通して仏像の質感や祈りの空間を捉えた作品群は、圧倒的な存在感を放つ。静謐と迫力が同居する土門のまなざしを通して、日本の信仰と美の原点を深く見つめている。
地球の景色 | 藤本壮介
建築家・藤本壮介が『GA JAPAN』に8年間連載したエッセイ「地球の景色」をまとめた書籍。パリ、ニューヨーク、イスタンブール、東京など、世界各地で出会った建築や空間、人々との体験を通して、建築を超えた思索の旅を綴る。写真を新たに加え、50篇のテキストから藤本の思考の軌跡と感性の揺らぎをたどることができる1冊。
光と祈りの礼拝堂 | 田淵諭
現代日本の教会建築を代表する建築家、田淵諭による40年の活動をまとめた作品集。日本各地で手がけた30の教会を、美しい写真と手描きスケッチ、図面を交えて紹介している。建築資料に加え、世界各地で訪れた礼拝堂や大聖堂を描いたドローイングやエッセイも収録。光と空間、祈りと構築の関係を探りながら、宗教建築に宿る精神性と造形の美を静かに照らし出している。
CLOSURES 蓋の本 | アン &ヘンリー エンブレム
アン&ヘンリー・エンブレムによる、蓋やキャップ、栓といったクロージャーに焦点を当てたパッケージデザイン資料集。スポーツドリンクのボトルやスプレー容器、チューブ型歯磨き粉など、日常の製品に使われる多様な蓋の構造と仕組みを、写真や詳細な図面、キャプション付きで紹介している。小さな部品に込められた機能性と造形の工夫を通して、工業デザインの精緻な美を伝えている。CD-ROM付属。
石岡瑛子風姿花伝 Eiko by Eiko
世界を舞台に活躍したデザイナー、石岡瑛子の創作活動を総覧する作品集。パルコ広告やマイルス・デイヴィス『TUTU』のジャケット、映画や舞台の衣装、北京オリンピックのビジュアルなど、ジャンルを越境する表現の軌跡を豊富な図版で収録。黒澤明、イサム・ノグチ、三宅一生、坂本龍一、田中一光らによる寄稿も併せて掲載。造形、思想、身体表現が交差する場で、石岡の情熱と独自の美学を鮮烈に伝えている。
アイデア No.364 清原悦志・北園克衛
デザイン誌『アイデア』第364号(2011年11月号)。詩人・北園克衛とタイポグラファー・清原悦志を特集した一冊。戦前から戦後にかけてモダニズムの精神を体現した二人の活動を、膨大な図版とテキストを通して再検証している。特集「清原悦志の理」では、ブックデザインや企業制作物、実験的作品をラフスケッチやコメントとともに紹介し、清原の造形原理を明らかにする。「北園克衛の詩と造型」では、言葉と形、意味と視覚のあいだに生まれる詩的構造を読み解き、印刷物が持つ触感的魅力を再考。戦後日本の詩とデザインの交差点を通して、視覚表現の思想を多面的に示している。
Hayao Miyazaki
映画監督・宮崎駿の創作世界を総覧する作品集。2021年にロサンゼルスのアカデミー映画博物館で開催された回顧展にあわせ、スタジオジブリの協力のもと刊行された。『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』など、11本の長編作品を中心に、コンセプトスケッチや絵コンテ、背景画、セル原画など数百点を収録。自然や人間、成長をめぐる普遍的なテーマを描き続けた宮崎駿の想像力と美学を鮮やかに示している。
ヴェジタブル・イラストレーション | 大橋正
グラフィックデザイナー、イラストレーターとして活躍した大橋正による作品集。キッコーマンの広告などに用いられた野菜のイラストレーションを中心に、鮮やかな色彩と緻密な描写力で描かれた作品を多数収録。広告の視覚表現において、イラストレーションが果たす役割の大きさを示す資料としても価値が高く、解説を通してデザインと生活文化の接点を読み解くことができる一冊。
田中一光のデザイン
日本を代表するグラフィックデザイナー、田中一光の代表的な仕事を網羅した作品集。装幀、ポスター、ロゴ、企業アイデンティティなど、231点の作品を収録している。伝統美とモダニズムを融合させた造形言語は、時代を超えてなお新鮮な緊張感を放つ。ルウ・ドーフスマンによる序文を冒頭に、田中の構築的なデザイン哲学と造形理念の広がりを的確に伝えている。
Swissted: Vintage Rock Posters Remixed and Reimagined | Mike Joyce
ニューヨークのグラフィックデザイナー、マイク・ジョイスによるロックポスター作品集。1970〜90年代のインディやパンク、オルタナティヴ・ロックのコンサートポスターを、スイス・モダン・スタイルの構成とタイポグラフィで再構築している。ザ・クラッシュ、ソニック・ユース、ニルヴァーナ、デッド・ケネディーズなど、200点に及ぶ伝説的バンドのポスターを収録。すべてミシン目入りで切り離し可能。
The Russian Avant-Garde Book 1910-1934
1910年から1934年にかけて制作されたロシア・アヴァンギャルドの書籍を網羅的に紹介する資料集。ニューヨーク近代美術館(MoMA)での展覧会にあわせて刊行されたもので、ナタリア・ゴンチャロワ、エル・リシツキー、カジミール・マレーヴィチ、ロトチェンコ、ステパーノワらによる約300点の実験的なブックデザインを収録。詩と造形が融合した独創的な構成、手作業による印刷や装丁の技法など、芸術と出版の関係を革新した時代の息吹を鮮やかに伝えている。
Die Flache: Design and Lettering of the Vienna Secession, 1902-1911
ウィーン分離派およびウィーン工房を代表するデザイナーたちが手がけた雑誌『Die Fläche(ディ・フレーシェ)』全14号を原寸大で復刻した完全版。アルフレート・ローラー、コロマン・モーザー、ヨーゼフ・ホフマン、ベルトルト・レフラーらによるポスター、広告、装丁、木版画など、多様なグラフィック作品を収録している。芸術と教育の融合を試みた実験的誌面には、モダンデザインの理念が息づく。20世紀初頭のウィーンにおける造形思考の革新を明快に示している。
やさしい人へ | 大橋歩
イラストレーター、大橋歩の作品と文章をあわせて収めたポストカード+ブックセット。『平凡パンチ』の表紙画で知られる大橋が描く、日常の喜びや装いの楽しさに満ちたイラストレーションをポストカードとして収録。付属の冊子には、本人によるエッセイのほか、金子功や原由美子らが語る大橋歩へのオマージュを掲載している。時代の感性を軽やかにとらえた彼女のまなざしと温かな筆致を静かに伝えている。
Richard Paul Lohse: Konstruktive Gebrauchsgrafik
スイスのグラフィックデザイナー、リヒャルト・パウル・ローゼによる構成的デザインの集大成。ポスターをはじめ、1920年代から1980年代にかけての応用作品を多数のカラー図版で紹介している。戦後ヨーロッパの社会思想と美学が交錯する中で、ローゼは幾何学的秩序と明快な構成原理によってデザインの新たな可能性を切り開いた。本書はその全貌を体系的に示し、スイス・モダンの源流を検証する貴重な資料となっている。
DESIGN = MEMORY | ミナ ペルホネン
2024年にスウェーデン国立美術館で開催された展示の際に刊行されたカタログ。展覧会と同じコンセプトで構成され、テキスタイルとその原画、服、アート作品など、minä perhonenの創作や皆川個人の作品など、豊富な図版と併せて解説を収録。デザインと記憶のつながりを辿りながら、皆川とminä perhonenの思想や表現を体感できる貴重な一冊。和訳冊子付属。
シュミット・タイポグラフィ | ヘルムート・シュミット
タイポグラファー、ヘルムート・シュミットの仕事を総覧する作品集。戦後スイス・タイポグラフィの理念を継承しつつ、日本、スウェーデン、カナダ、ドイツを拠点に活動した各時代の仕事を、豊富な資料と本人の言葉でたどる。誌面構成や書体設計、企業ロゴなど、機能と詩情を兼ね備えた造形の実践を通して、デザインの倫理と思想を問い直す。東西の文化を往還したシュミットの造形哲学を伝える一冊。
人間と文字 Man and Writing | 矢島文夫、田中一光
写真植字発明70周年を記念して刊行された、文字文化の歴史を総覧する資料集。〈古代文字の開花〉〈アルファベットの形成〉〈漢字 悠久の流れ〉〈写本から電子文字へ〉の4章で構成され、文字の起源から現代タイポグラフィに至るまでの変遷を体系的にたどっている。監修は文字史研究の第一人者・矢島文夫、構成はデザイナー田中一光。造形としての文字と人間の精神活動との結びつきを探り、書くこと・読むことの本質を静かに照らし出している。
The Painted Page: Italian Renaissance Book Illumination 1450-1550 | J.J.G. Alexander
1450〜1550年のイタリア・ルネサンスにおける書物装飾を網羅的に紹介する展覧会図録。欧米の所蔵品から選ばれた写本と手彩色入りの印刷本、単葉を含む計137点をフルカラーで収録し、金箔を用いた素材の豊かさや精緻な意匠を伝える。ミニアチュール画家と書記、製本家の協働、パトロネージの仕組みや制作の流通、蔵書形成を八つの章で解説。作家の作業習慣や様式にも踏み込み、ルネサンス期における書物芸術の到達点を明快に示している。
佐野繁次郎装幀集成 西村コレクションを中心として | 西村義孝
画家・佐野繁次郎による装幀と表紙画を集成した作品集。西村義孝によるコレクションを中心に、単行本330点、雑誌120点に加え、『銀座百点』の表紙原画などをカラーで収録している。挿絵や図案のみならず、手描き文字の造形にも独特の魅力が宿る。絵画とタイポグラフィのあわいに生まれる温かなデザインの世界を通して、佐野繁次郎の繊細な感性と装幀芸術の豊かさを静かに伝えている。
Russischer Konstruktivismus Plakatkunst | Jelena Barchatowa
ロシア構成主義のポスター芸術を体系的に紹介する作品集。アレクサンドル・ロトチェンコ、ワルワーラ・ステパーノワ、ステンベルク兄弟らによる代表作を中心に、200点を超えるポスターを大判カラーで収録している。革命後の社会変革の中で生まれた、力強いタイポグラフィと幾何学的構成。芸術とプロパガンダ、理想と現実が交錯する緊張感の中に、構成主義が追い求めた視覚の秩序とエネルギーを鮮烈に伝えている。
The 20th Century Poster: Design of the Avant- Garde | Dawn Ades
20世紀のアヴァンギャルド・ポスターを通して、近代デザインの変革をたどる作品集。ステンベルグ兄弟、エル・リシツキー、マン・レイ、ハンナ・ヘッヒ、カッサンドル、ポール・ランドら、時代を牽引したデザイナーたちの代表作を多数収録している。ロシア構成主義からシュルレアリスム、バウハウスに至るまで、実験精神に満ちた造形の軌跡を体系的に紹介。
世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦
南インド・チェンナイを拠点とする出版社タラブックスの活動を紹介するビジュアルブック。2017年に板橋区立美術館で開催された展示に際して出版されたもの。手すき紙にシルクスクリーン印刷を施し、一冊ずつ手製本で仕上げる「ハンドメイド本」で知られる同社の代表作31冊を撮り下ろしで収録。絵本の原画や画家たちの制作風景、印刷工房やチェンナイの街並みなど、多数の写真を通して本づくりの背景を丁寧に伝える。伝統と創造が交錯する現場から、タラブックスの理念と美意識を鮮やかに浮かび上がらせている。
和田誠展 書物と映画
イラストレーター、和田誠の創作を「書物」と「映画」という二つの軸から紹介する展覧会図録。2011年に世田谷文学館で開催された展覧会にあわせて刊行されたもの。谷川俊太郎、井上ひさし、丸谷才一、村上春樹らとの協働による装画やポスター、絵本原画などを中心に、監督映画の脚本や絵コンテといった自筆資料も収録。言葉と映像のあいだを往還した和田誠の創造の軌跡を静かに示している。
アイデア No.341 有山達也の対話
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.341(2010年7月号)は、「有山達也の対話」と「クリティカル・マス」の二部構成による特集号。前半では『クウネル』をはじめ文芸書や料理書の装丁を通じて、有山達也がいかに言葉と写真を引き出し、他者と協働してデザインを構築しているかを探る。後半では「デザイナーにとって自主性とは何か」を問い、クライアントワークを超えた創作のあり方を考察。デザインの姿勢と倫理を多角的に照らし出している。
アイデア No.334 漫画・アニメ・ライトノベル文化のデザイン〈前編〉
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.334(2009年5月号)は、「漫画・アニメ・ライトノベル文化のデザイン〈前編〉」を特集。あずまきよひこ『よつばと!』を手がけるよつばスタジオの制作過程を紹介するとともに、祖父江慎、南伸坊、羽良多平吉らによる装丁やパッケージデザインを収録している。キャラクター表現とタイポグラフィが交錯する新しい装幀文化の潮流を、豊富な図版と批評的視点で探る内容となっている。
アイデア No.325 花形装飾の博物誌
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.325(2007年11月号)は、「花形装飾の博物誌」を特集。西洋の活版印刷で長く用いられてきた花形装飾活字を豊富な図版で紹介し、その起源から19世紀以降の展開までを丁寧にたどっている。花や植物、幾何学模様などをかたどった小さな活字ユニットが、組み合わせによって複雑なパターンや飾り窓を形成する。その緻密な構成のなかに、印刷技術と装飾文化が交差する視覚の芸術が息づく。活字という最小単位に宿る造形の知恵と、タイポグラフィの豊かな装飾性を鮮やかに示している。