ノストスブックスはもともとフリーランスでwebデザイン・グラフィックデザインを主として活動していた中野と石井でスタートしました。 グラフィックデザイン・タイポグラフィを中心に取り扱っている理由も、個人的に資料として持っていた本を中心に始めた、ということがきっかけです。
文字を知るということは、デザインの力をつけるためには重要かつ基本になります。webデザイナーでも文字の扱い方に興味を持ち、学ぶことでクオリティは格段に上がります。
今回は、「タイポグラフィを知る」というテーマでぜひ知っていただきたい5冊を紹介してみようと思います。
スイス・タイポグラフィ:グリッド・システムの概念
Pioneer of Swiss Graphic Design
- 著者
- Josef Muller-Brockmann
- 出版社
- Lars Muller
- 発行年
- 2007年
スイスのタイポグラファー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン(Josef Müller-Brockmann)の作品集。
スイス・グラフィックデザインのパイオニアというタイトルの通り、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンの手がけた数々の作品がオールカラーで掲載されています。
ブロックマンが開発したグリッドシステムの概念は、各要素に秩序を与え、適切に情報を伝える、というタイポグラフィ本来の目的をコントロールすることに効果的な役割を果たします。
リヒャルト・パウル・ローゼ、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン、ハンス・ノイブルク、カルロ・ヴィヴァレリの4人のデザイナーにより1958年に創刊されたノイエ・グラーフィク(ニュー・グラフィック・デザイン)。独・英・仏3ヶ国語をレイアウトするためにもグリッド・システムは機能しました。
2014年に全18冊BOXセットで復刻しました。ほしい。。
http://post-books.info/new-arrivals/2015/1/12
左ページには、production drawing(製図)、右ページに完成作品。
左ページには、スケッチとproduction drawing(製図)、右ページに完成作品。美しい。
グラフィックデザインのみに収まらず、webデザイナーやアプリ、UIデザイナーの方にとっても非常に参考になる一冊だと思います。
こちらもグリッドシステムを学ぶには最適な一冊。リヒャルト・パウル・ローゼ、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン、ハンス・ノイブルク、カルロ・ヴィヴァレリの4人のデザイナーにより1958年に創刊されたノイエ・グラーフィク(ニュー・グラフィック・デザイン)。独・英・仏3ヶ国語をレイアウトするためにもグリッド・システムは機能しました。
2014年に全18冊BOXセットで復刻しました。ほしい。。
http://post-books.info/new-arrivals/2015/1/12
左ページには、production drawing(製図)、右ページに完成作品。
左ページには、スケッチとproduction drawing(製図)、右ページに完成作品。美しい。
グラフィックデザインのみに収まらず、webデザイナーやアプリ、UIデザイナーの方にとっても非常に参考になる一冊だと思います。
Grid Systems in Graphic Design
デジタル・タイポグラフィ:新時代の幕開けを感じさせる表現手法
The Graphic Language of Neville Brody
- 著者
- Ruari McLean
- 出版社
- Princeton Architectural Press
- 発行年
- 1997年
ザ・フェイスやアリーナのアートディレクターとして80年代~90年代に活躍した、ネヴィル・ブロディの作品集。
THE FACEのアートディレクターやレコードジャケットのデザインで一躍脚光を浴びたイギリスを代表するネヴィル・ブロディは、80年代当時いち早くコンピューターを取り入れオリジナルのタイポグラフィやロゴを、雑誌の中に取り入れてみせました。大きく配置したタイトルが視線の誘導をうまく促し、オリジナル書体もふんだんに使用して、他にはない画期的なビジュアル表現を確立していきます。
長体のかかった独特のオリジナルロゴの数々。
このイギリスからのムーブメントが世界中に飛び火して、アメリカではデヴィッド・カーソンがRay gunで見せたノイジーな表現などに繋がっていきます。
長体のかかった独特のオリジナルロゴの数々。
このイギリスからのムーブメントが世界中に飛び火して、アメリカではデヴィッド・カーソンがRay gunで見せたノイジーな表現などに繋がっていきます。
メッセージを増強させるアメリカン・タイポグラフィの力強さ
Herb Lubalin
- 出版社
- Rizzoli
- 発行年
- 1985年
「アヴァンギャルド」「エロス」誌等のタイポグラフィーや多岐にわたるデザインで著名なデザイナー/ハーブ・ルバリンの作品集。
ハーブ・ルバリンは、ラルフ・ギンズバーグと共同でEros、Fact、Avant Gardeと次々と雑誌をデザイン。その中で開発されたロゴは自身が立ち上げたインターナショナル・タイプフェイス・コーポレーション社からITC Avant Gardeとして発売され、一躍1970年代を代表する書体として世界中で使用されました。
バリエーション豊富なリガチャ(合字)も人気の一つです。昔この書体を知らず、どうしてもこれがやりたくて、Aを無理やり傾けたりしていました。元々あるのかい!って思いましたね。
興味のある方はこちらもどうぞ。
Avant Garde 全14冊揃
手書きのスケッチから書き起こされたロゴの数々。
ITC発行のタブロイド誌「U&lc(Upper and lower case)」も参考になるかもしれません。バリエーション豊富なリガチャ(合字)も人気の一つです。昔この書体を知らず、どうしてもこれがやりたくて、Aを無理やり傾けたりしていました。元々あるのかい!って思いましたね。
興味のある方はこちらもどうぞ。
Avant Garde 全14冊揃
手書きのスケッチから書き起こされたロゴの数々。
U&lc
世界のタイポグラフィ表現
ヘルムート・シュミットが資料の収集から構成まで一貫して手がけた、タイポグラフィ本としての資料価値の高い一冊。
TM誌の表紙。ウェイトの異なる正方形とデリケートな線のコントラストでリズムカルな映像的楽しさを表現。
エル・リシツキーによる構成主義らしい配置。
ドイツのアーティスト、フェルディナンド・クリウェットの作品。テキストやモチーフの反復に目を奪われます。
作品集はこちら:
Kriwet: Bibliographie
世界中のタイポグラファーの作品が解説ととも掲載されていて、どういう意図で作られているのか?といった内容や、「タイポグラフィとは?」という質問にも答えています。 捉え方は違えども、すべてのデザイナーが新しい表現方法を探っている様が見て取れます。ここまでくると学者の研究に近い領域かもしれないですね。
1980年当時のものではありますが、この本を纏めあげたヘルムート・シュミットの言葉も示唆を含んでいます。
タイポグラフィは、聞こえてくるものでなければならない。
タイポグラフィは、感じられるものでなければならない。
タイポグラフィは、体験できるものでなければならない。
今日のタイポグラフィとは、ただ置くだけでなく表現するタイポグラフィのことをいう。
シュミットさん難しいな。。
TM誌の表紙。ウェイトの異なる正方形とデリケートな線のコントラストでリズムカルな映像的楽しさを表現。
エル・リシツキーによる構成主義らしい配置。
ドイツのアーティスト、フェルディナンド・クリウェットの作品。テキストやモチーフの反復に目を奪われます。
作品集はこちら:
Kriwet: Bibliographie
世界中のタイポグラファーの作品が解説ととも掲載されていて、どういう意図で作られているのか?といった内容や、「タイポグラフィとは?」という質問にも答えています。 捉え方は違えども、すべてのデザイナーが新しい表現方法を探っている様が見て取れます。ここまでくると学者の研究に近い領域かもしれないですね。
1980年当時のものではありますが、この本を纏めあげたヘルムート・シュミットの言葉も示唆を含んでいます。
タイポグラフィは、聞こえてくるものでなければならない。
タイポグラフィは、感じられるものでなければならない。
タイポグラフィは、体験できるものでなければならない。
今日のタイポグラフィとは、ただ置くだけでなく表現するタイポグラフィのことをいう。
シュミットさん難しいな。。
新しいタイポグラフィを求めて
ドイツのタイポグラファー、ヤン・チヒョルトの人生を追いかけた一冊。本名はイワン・チヒョルト。看板屋の息子として生まれ、第一次世界大戦のドイツという背景を持つ少年チヒョルトは12歳からすでに活字の模写に夢中になっていたようです。
21歳でバウハウス展に大いに感銘をうけた若きイワン・チヒョルトは、自己顕示欲が強く、命令口調で、物事は正しいかそうでないかの2つしかない、と信じていたと書かれています。読んでいて、おぉまるで石田三成みたいじゃないかと思いましたが、今はチヒョルトの話しでした。
この若き日のイワン・チヒョルトがタイポグラフィ情報という機関紙の中で発表した「タイポグラフィの基本」という24ページに渡る特集は、ドイツ国内はもとより、アメリカ、さらにはその情報を孫引用していた日本のグラフィックデザイナーたちに衝撃を与えました。
最後に「この特集の編集と、タイポグラフィ造形は、ライプチヒのイワン・チヒョルトが担当しました。」と堂々と宣言。21歳の若者が世界にその名を轟かせた瞬間です。
マックス・ビルとの造形論争後に、「あれはまったくの若気の至りでした。」と自己否定をし、苦悶の中で新たなタイポグラフィについての考えを進化させる過程、このあたりは全然知らなかったなぁ。前期と後期で言っていることにこんなに差があるとは。
他にも細かなエピソードも多く、デザイナーや書体に興味がなくても、国の持つ背景や時代ということを踏まえた物語として楽しめる一冊です。
関連書籍はこちら:
タイポグラフィの領域
活字に憑かれた男たち
評伝 活字とエリック・ギル
再現か表現か
単純に「カッコイイ!」というところから、「どうしてこうなるのか?」という興味が生まれてくるきっかけになれば幸いです。