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そうだ、旅に出よう。音楽家・芸術家・小説家たちが綴った旅行エッセイをあつめました
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そうだ、旅に出よう。音楽家・芸術家・小説家たちが綴った旅行エッセイをあつめました

こんにちは、石井です。過ごしやすい気候になってくると、旅に出たくなりませんか?

休暇をとってバックパックを背負って、地球の反対側まで飛んでいく長旅。
週末に少し足を延ばして、観光を兼ねた1泊2日の小旅行。
家でページをめくりながら、気になる言葉をウィキペディアで検索。それもまた旅。

旅のかたちは多種多様。ああ、そろそろ旅に出たいなあという気持ちを込めつつ、音楽家・芸術家・文学者らが綴った、ひと癖もふた癖もある紀行文や旅行エッセイをあつめました。



妙音講、霊地を巡る

行き先
天河大弁財天社、戸隠神社、六本木、大山阿夫利神社、豊川稲荷、伊勢神宮、北口本宮富士浅間神社
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観光

編集
後藤繁雄
著者
細野晴臣、中沢新一
装丁
奥村靫正
出版社
角川書店
発行年
1985年
製本
ハードカバー
ページ数
246ページ
サイズ
単行本
本書「観光」は音楽家の細野晴臣 と宗教・人類学者の中沢新一 が不思議探検隊よろしく、日本の様々な霊地を巡礼した体験を語らう対談集。旅行記として愉しめるのはもちろん、チベット密教から日本神話、電子音楽、猥談・怪談にまでシフトしまくる話題の広大さも魅力。ちょっとダラけたマイペースな旅っていいですよね。各スポットの由緒、交通、見どころなどもきちんと掲載されています。

寺山修司の日本呪術紀行

行き先
大神島、比婆山、高知市、浅草、岡山県西大寺、春木競馬場、山口県向岸寺、青森県新郷村ほか
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花嫁化鳥

著者
寺山修司
装丁、画
宇野亜喜良
出版社
日本交通公社
発行年
1974年
製本
ハードカバー
頁数
223頁
サイズ
単行本
随筆家、劇作家の寺山修司 がつづった紀行文「花嫁化鳥」。風葬、ヒバゴン、犬神伝説、キリスト来日説などの謎や伝説を求めて日本各地をさすらう様子は、まるで怪奇探偵小説の主人公。これは現場検証なのか旅行なのか。各章ごとに取材・調査をしたうえで導きだした著者なりの推論も述べられています。こんなミステリアスな旅の計画を立てるなら「八つ墓村」や「犬神家の一族」などでさらに気分を盛り上げたいところ。

唐十郎と状況劇場のパレスチナ・バングラデシュ紀行

行き先
ベイルート、ダマスカス、ダッカ、チッタゴンほか
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風にテント 胸には拳銃

著者
唐十郎
装丁
合田佐和子
出版社
角川書店
発行年
1976年
製本
ハードカバー
頁数
209ページ
サイズ
単行本
風にテント 胸には拳銃」は劇作家・演出家の唐十郎がアングラ劇団「状況劇場」を引き連れ、パレスチナとバングラデシュに遠征した際の紀行エッセイ。行く先々で巻き起こるハプニングや出会い、そして血と汗と涙にまみれた旅公演の記録は、もはや壮大で痛快な大冒険譚!

三島由紀夫の徒然なる旅

行き先
ニューヨーク、メキシコ、ドミニカ共和国、キューバ、ジャマイカほか
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旅の繪本

著者
三島由紀夫
装丁
直木久蓉
出版社
講談社
発行年
1958年
製本
函・ハードカバー
頁数
210ページ
サイズ
単行本
旅の絵本」という愛らしいタイトルと装丁の本書は、小説家・三島由紀夫が記した旅のエッセイ集。ニューヨーク、ドミニカ、ハイチやハバナを訪れ、各地のバレエやミュージカルを鑑賞した思い出が、リラックスした文体で綴られています。

澁澤龍彦が訪ねた旅先の風景

行き先
南イタリア、バグダッド、テヘラン、沖縄、阿蘇、青森、北海道ほか
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旅のモザイク

著者
澁澤龍彦
出版社
人文書院
発行年
1976年
製本
函・ハードカバー
頁数
236ページ
サイズ
単行本
お次は仏文学者・澁澤龍彦によるエッセイ集「旅のモザイク 」。本来旅は好まないと語る澁澤氏ですが、いやいや、かなり熟達したトラベラー。海外はシチリア島の怪物庭園・パラゴニア荘やサーマッラーの大モスク、イランのペルセポリス。国内は南は石垣島、阿蘇山、北は竜飛岬、オホーツク海...etc。国内外を旅した様子を、風景写真を交え綴っています。文学や美術、そして歴史への造詣が深い澁澤氏ならではの個人的見解が随所に散りばめられ、読み応えのある1冊。

澁澤氏がヨーロッパを旅した際の日記を、巌谷国士が編纂した「滞欧日記」もおすすめ。

澁澤龍彦が綴ったヨーロッパ旅行記を、フランス文学者・巌谷国士が編纂したもの。
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この世ならざる世界、すなわち異界へ導かれて

行き先
天河大弁財天社、気多神社、浜比嘉島、鞍馬山、花巻ほか
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導かれて、旅

著者
横尾忠則
出版社
日本交通公社
発行年
1992年
グラフィックデザイナーの横尾忠則が綴る、国内外旅行のエッセイ集。
インドへ」に続く、芸術家・横尾忠則2冊目の旅行記。1990年から1991年に日本各地を旅した横尾氏。旅の途中で見たこと、想ったこと、考えたことが自身のことばで語られています。霊気漂う神社仏閣巡り、UFOとの交信、そして滝への偏愛。ページを捲るごとに、この世ならざる世界、すなわち異界へ一歩、また一歩と踏み込んでいくような感覚にとらわれます。

グラフィックデザイナーであり、芸術家でもある横尾忠則が綴るインド旅行記。見て、知り、そして体験し、本物のインドを受け止めていく。
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日本美術応援団、京都へ!

行き先
金閣寺、二条城、清水寺、京都御所、桂離宮、平等院、樂美術館、待庵ほか
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京都、オトナの修学旅行

著者
赤瀬川原平、山下裕二
装丁
南伸坊
出版社
淡交社
発行年
2004年
製本
ソフトカバー
頁数
223ページ
サイズ
単行本
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芸術家・赤瀬川原平と美術史家・山下裕二が結成した「日本美術応援団」がおくる、大人のための京都修学旅行ガイド。日本美術はどう鑑賞したらいいの?という素朴な疑問に、既存の教養主義や美術史にとらわれず楽しみ方の勘どころを教えてくれる、日本美術応援団シリーズの中でもお気に入りの一冊です。金閣からスタートし、二条城、清水寺、桂離宮、平等院と、絵に描いたような修学旅行の行程が、あら不思議。新しい発見や深い味わいに満ちています。修学旅行や社会見学は大人になってからのほうが絶対的に楽しい。ですよね、きっと。

坂本龍一と村上龍の国境をこえたディスカッション

行き先
ニューヨーク、パリ、ロンドン、ヘルシンキ、バルセロナ、キューバほか
友よ、また逢おう

友よ、また逢おう

著者
坂本龍一、村上龍
出版社
角川書店
発行年
1992年
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旅というよりは、国境をこえるのも暮らしの一部となっているふたり。当時手がけていた仕事の話、滞在先で出会った人、映画、音楽などを伝えあい、意見を交わし、時には愚痴をもらしたり、親密なやりとりが記録されています。旅と生活、両方の要素が感じられる1冊。

近場の秘境、魔都、パラダイスを徹底探検

行き先
名古屋、熱海、ハワイ、江ノ島、サハリン、清里
東京するめクラブ 地球のはぐれ方

東京するめクラブ 地球のはぐれ方

著者
村上春樹、吉本由美、都筑響一
出版社
文藝春秋
発行年
2004年
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小説家の村上春樹、エッセイストの吉本由美、そして写真家・編集者の都築響一が結成した「東京するめクラブ」。ちょっと変なところに行って、ちょっと変なものを見てまわろうじゃないか。というチーム結成時のコンセプトのとおり、全体的にゆるさに満たされた旅行記。一部を除き、気軽に足を延ばせる行き先が多くて助かります。観光スポットやご当地グルメ、お土産情報なども充実。
日々の暮らしを日常とするならば、旅は非日常。非日常はたのしむためのもの。旅の計画をいわゆる旅行ガイドブックではなく、こういった旅行記をながめることからはじめるのもきっと楽しいはず。

さて、休暇を取れたら、どこに行こう。



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ブックディレクター。古本の仕入れ、選書、デザイン、コーディング、コラージュ、裏側でいろいろやるひと。体力がない。最近はキュー◯ーコーワゴールドによって生かされている。ヒップホップ、電子音楽、SF映画、杉浦康平のデザイン、モダニズム建築、歌川国芳の絵など、古さと新しさが混ざりあったものが好き。