今回のおすすめ本の主人公はふたり。ひとりは美術館でタイカレーをサービスするパフォーマンスで一躍注目を浴びた、タイにルーツをもつ現代アーティスト、リクリット・ティーラワニット。
もうひとりはフィンランドの料理家、アント・マレスニーミ。レストランを経営する傍ら、太陽光を利用して調理した料理を屋外で提供する「ソーラーキッチンレストラン」など、食に関するプロジェクトも開催する面白い人物。
そんな個性的な2人が2011年に出会い意気投合しつくったのが、日本語で翻訳すると「ろくでなしの料理本」という意味になる『The Bastard Cookbook』。タイやフィンランドのローカルフードが、世界中の食材や料理と混ざり合って生まれたレシピの数々を紹介しているのですが、単なる「異国の料理を知ろう」という類の本ではありません。
現地で食材や人々、伝統的な料理に出会い、実際に調理し、食べた、旅の記録のような一冊。そこに添えられた文章、写真は、食にまつわるアートやプロジェクトをつくりあげてきた2人だからこその視点の面白さを感じます。丁寧に紹介されたレシピも、ぜひ翻訳しながら読み取ってみてほしい。
序文にこんな言葉が登場します。「料理本は、個人が自分の文化以外の文化に直面することになるかもしれない特別なもの。」見慣れない文化を受け入れるヒントとして、このゴールドに輝く表紙を開いてみてください。