タラブックスはインドの民族画家と協働しながら、伝統芸術を取り入れて内容やデザイン、印刷、そして製本まで職人的な本づくりを行っています。 ハンドメイドで作られる絵本は、一枚一枚シルクスクリーン印刷により職人の手によって刷られます。
さらに絵本に使われている紙も、不要となった木綿から作られているので、そのどれもが個性的。シリーズによりますが、版が変わると表紙の絵の色が変わることも、タラブックスの楽しみ方のひとつです。
『太陽と月 3刷』
本書はわたしがタラブックスと出会うきっかけとなり、最初に購入した本です。インドの先住民族の代表的なアーティスト10人が、それぞれの民族で語り継がれてきた物語を背景にして制作した一冊。
生命や時、夫婦、あるときは兄と妹などさまざまな繋がりが、太陽と月に重ねて綴られています。1ページに1行だけの短い文という大胆な構成によって、そこから広がっていく物語が読み手の想像力に委ねられているようです。
『世界のはじまり』
こちらは中央インドのゴンド民族に伝わる創造神話をモチーフに、誕生から死までが描かれた物語。「世界のはじまり」は、美しい絵と詩的な言葉でストーリーを語っていく絵本。
ページをめくるごとに惹き込まれる、鮮やかな絵。それらをよく見るとドットや線の重なりなど、緻密な表現がいくつも散りばめられています。
『時をこえて ひと針のゆくえ』
こちらはインドの民俗画の絵本ではなく、作者はフランスの現代刺繍作家。西アフリカを旅行中に目にした、道端の黒いビニール袋が木々を覆う光景に衝撃を受けて作られた作品。
自分に何かできることはないかと考えた作者は、黒いビニール袋に絶滅危惧の植物を膨大な時間をかけ刺繍しました。本体には作品をプリントしたものを収録していますが、ひと針ひと針丁寧に縫われた植物たちに込められた思いと、刺繍そのものの美しさを味わえる本になっています。
表紙をめくるとふわっとインクと紙の独特な香りが漂い、これが一枚一枚丁寧に作られた本だと実感する瞬間。作り手の想いを触れた指先から感じさせられる一冊です。