アメリカが生んだモダン・デザインの巨匠、チャールズ・イームズとレイ・イームズ夫妻。夫婦は二人三脚で20世紀を駆け抜け、主にインダストリアルデザインの分野において膨大な作品を生み出しました。それぞれに革新的なアイデアが盛り込まれているイームズのプロダクトですが、そのほとんどが今でもフレッシュな魅力を発し続けています。もしかして未来人なのかしら、と思うほどに。
そこで気になるのが、イームズ夫妻が何に関心を持ち、影響を受け、どんな試行錯誤を経てプロダクトデザインに取り組んだのか、ということ。
本書「Eames: Beautiful Details」は夫妻の作品と生涯を集成した大判アーカイブ。家具、グラフィック、テキスタイル、玩具、写真、映像、収集物、展示など、彼らの膨大な仕事を網羅。彼らが歩んだ道のりをじっくり辿ることができる決定版といえます。
わたしがイームズ夫妻に興味をもったのは映像作品「パワーズ・オブ・テン」がきっかけでした。「え?この科学映画をあのイームズが作ったの?」という驚きから、さらに、日本の民芸やインドの伝統工芸とイームズ夫婦の強い結びつきを知り、ミッドセンチュリースタイルのプロダクトの印象が大きく変化したことをいまでも鮮明に覚えています。
革新的なデザインの根底にあるものは、柔軟なものの見方、あらゆる方面への興味と、それらを取り入れて進化する勇気なのかもしれません。