懐かしい絵本から稀代の浮世絵師の作品集まで、さまざまな怖い話・不思議な話が並ぶ今回の特集。せっかくですのでこの機会に、おばけ・妖怪大好きなスタッフたちがそれぞれお気に入りの1冊をご紹介します。
それでは、どうぞ。
山田のおすすめ「ねないこだれだ」
山田が選ぶ1冊は、せなけいこの「ねないこだれだ 」。
理由はズバリ、小さな頃に読んでもらった思い出の本だから。自分がお姉ちゃんになってからは、弟や妹にも読み聞かせてあげてました。
ネコやふくろうの毛並み、ゆらゆらとしたおばけのあやしさが
ちぎった紙の繊維でよく表されています。
今改めて読んで気づいたんですが、おばけがツッコんでる。
「夜遅くまで起きているとおばけに連れて行かれるよ」という
シンプルなメッセージを込めたメッセージ。
いつの時代にも通じることだから、親から子どもに受け継いでいきたい絵本です。
理由はズバリ、小さな頃に読んでもらった思い出の本だから。自分がお姉ちゃんになってからは、弟や妹にも読み聞かせてあげてました。
ネコやふくろうの毛並み、ゆらゆらとしたおばけのあやしさが
ちぎった紙の繊維でよく表されています。
今改めて読んで気づいたんですが、おばけがツッコんでる。
「夜遅くまで起きているとおばけに連れて行かれるよ」という
シンプルなメッセージを込めたメッセージ。
いつの時代にも通じることだから、親から子どもに受け継いでいきたい絵本です。
ねないこだれだ
- 著者
- せなけいこ
- 出版社
- 福音館書店
- 発行年
- 1969年
人気シリーズ「いやだいやだの絵本」の1冊。おとなも子どもも楽しめる名作絵本。
店舗のみで販売しています。
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なつきのおすすめ「世界妖怪大全 世界はゲゲゲ」
なつきです。私、実は妖怪とか怪談とか、大好きなんです。高校の文化祭では、3年連続お化け屋敷をやったくらい。ホラー映画なんかも「怖い怖い」といいつつ、どうしても気になって指の隙間から覗きたくなっちゃうんですよね。
そんな私のオススメは、水木しげる著の「世界妖怪大全 世界はゲゲゲ」。今は亡き、「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる漫画家、水木しげる氏が世界の妖怪たちを描いた妖怪図鑑です。内容はとにかく、水木しげるワールド満載!登場する妖怪たちはどれもみな不気味で個性的。でも、どこか憎めない。
なかでも私のお気に入りは、オーストラリアの原住民、アボリジニの妖怪「モコイ」。見た目は人間のこどもとそっくりで、ジブリのもののけ姫に登場する「こだま」にも似てるかも。モコイはフクロウと一緒にジャングルに棲んでいて、どうやら夜に行動するらしいんですね。「カイ、カイ、カイ」という鳴き声をあげるというところが、なんともかわいらしい。でも、彼らが鳴くのは死者の影の魂が身体を離れるときだけというから、やっぱりちょっと気味悪いですね…!
さて、私が気になったポイントは、水木氏が本の冒頭で唱えている「妖怪千体説」。
「妖怪千体説」とは、全世界の妖怪たちは各種族によって呼び名が異なるけれども、だいたい同じようなものが千あり、その総数は決まっているというもの。たしかに妖怪たちの解説をよく読んでみると、その国特有の妖怪というのもいますが、なかには他の国でも似たような姿や悪さをはたらく妖怪がいるようです。この広い世界でこれだけ沢山の種族が暮らしているのに、似たような妖怪や精霊が言い伝えられているなんて不思議。
数多くの妖怪を描き続けた水木氏。目に見えない妖怪たちを世の中に広め続けた彼が綴った、「妖怪の数は決まっている」という言葉に、最初は違和感を感じました。ですが、それは水木氏が、妖怪や精霊といった存在を架空のものではなく、実在するものとして捉えているからにほかならないからなんですね。妖怪や精霊は、”この世と住人”と”あの世の住人”といったように切り離されている存在ではなく、今も人間世界のどこかで暮らしているのでしょう。
改めて本書をそういった視点で見ると、より妖怪たちが身近に感じられそうです。
そんな私のオススメは、水木しげる著の「世界妖怪大全 世界はゲゲゲ」。今は亡き、「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる漫画家、水木しげる氏が世界の妖怪たちを描いた妖怪図鑑です。内容はとにかく、水木しげるワールド満載!登場する妖怪たちはどれもみな不気味で個性的。でも、どこか憎めない。
なかでも私のお気に入りは、オーストラリアの原住民、アボリジニの妖怪「モコイ」。見た目は人間のこどもとそっくりで、ジブリのもののけ姫に登場する「こだま」にも似てるかも。モコイはフクロウと一緒にジャングルに棲んでいて、どうやら夜に行動するらしいんですね。「カイ、カイ、カイ」という鳴き声をあげるというところが、なんともかわいらしい。でも、彼らが鳴くのは死者の影の魂が身体を離れるときだけというから、やっぱりちょっと気味悪いですね…!
さて、私が気になったポイントは、水木氏が本の冒頭で唱えている「妖怪千体説」。
「妖怪千体説」とは、全世界の妖怪たちは各種族によって呼び名が異なるけれども、だいたい同じようなものが千あり、その総数は決まっているというもの。たしかに妖怪たちの解説をよく読んでみると、その国特有の妖怪というのもいますが、なかには他の国でも似たような姿や悪さをはたらく妖怪がいるようです。この広い世界でこれだけ沢山の種族が暮らしているのに、似たような妖怪や精霊が言い伝えられているなんて不思議。
数多くの妖怪を描き続けた水木氏。目に見えない妖怪たちを世の中に広め続けた彼が綴った、「妖怪の数は決まっている」という言葉に、最初は違和感を感じました。ですが、それは水木氏が、妖怪や精霊といった存在を架空のものではなく、実在するものとして捉えているからにほかならないからなんですね。妖怪や精霊は、”この世と住人”と”あの世の住人”といったように切り離されている存在ではなく、今も人間世界のどこかで暮らしているのでしょう。
改めて本書をそういった視点で見ると、より妖怪たちが身近に感じられそうです。
世界妖怪大全 世界はゲゲゲ
- 著者
- 水木しげる
- 出版社
- 集英社
- 発行年
- 1994年
水木しげるが、世界に伝わる妖怪を紹介。各種族によって名称が異なるものの、全世界には同じような妖怪が千ほど存在するという「妖怪千体説」を唱え、カラーのイラストを数多く掲載しながらユニークで少し不気味な世界の妖怪の姿を描く。
中野のおすすめ「国芳妖怪百景」
中野です。今回の特集の中で個人的に一番のおすすめは、歌川国芳の「国芳妖怪百景」。喜多川歌麿や歌川広重、葛飾北斎といった有名な浮世絵師も素晴らしいのですが、奇想天外なアイデアが盛り込まれた国芳が一番好きです。
本書は国芳が残した膨大な絵の中から、妖怪絵だけを編纂した一冊。妖怪といっても国芳の浮世絵にはオドロオドロしい印象はなく、どこかクスッと笑ってしまうユーモアあふれる作品ばかりです。
スマホもテレビもなかった江戸幕末という時代、メディアとしての一翼を担った浮世絵には、庶民を笑顔にする役目もあったのでしょうね。
こちらは天保改革の風刺画として人気を呼んだ作品。妖怪が天保改革の被害者ということなのではないか?と憶測を呼んだと言われています。目付の鳥居耀蔵がまたイヤなやつなんだなぁこれが。
本書は国芳が残した膨大な絵の中から、妖怪絵だけを編纂した一冊。妖怪といっても国芳の浮世絵にはオドロオドロしい印象はなく、どこかクスッと笑ってしまうユーモアあふれる作品ばかりです。
スマホもテレビもなかった江戸幕末という時代、メディアとしての一翼を担った浮世絵には、庶民を笑顔にする役目もあったのでしょうね。
こちらは天保改革の風刺画として人気を呼んだ作品。妖怪が天保改革の被害者ということなのではないか?と憶測を呼んだと言われています。目付の鳥居耀蔵がまたイヤなやつなんだなぁこれが。
国芳妖怪百景
- 編集
- 悳俊彦
- 出版社
- 国書刊行会
- 発行年
- 1999年
江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人、歌川国芳の図録。「相馬の古内裏」「舌切雀図」など、百余点の妖怪画をオールカラーで収録。浮世絵研究家である、悳俊彦の解説付き。
石井のおすすめ「稲生家=化物コンクール」
石井です。怖い話といいますと、本格的な心霊怪奇ものより、小泉八雲や柳田國男が綴ったフォークロア寄りの短編が好きです。本だけでなく「時空のおっさん」など、ネット上に漂う不思議な話を拾うこともしばしば。新旧問わず、いちど読み始めてしまうとページをめくる、もしくはスクロールする手を止められなくなる怪談・奇譚。その中から個人的なおすすめとして稲垣足穂の「稲生家=化物コンクール」をご紹介したいと思います。
本書は江戸時代後期の国学者、平田篤胤が記した妖怪物語「稲生物怪録」をモチーフに、稲垣足穂がアレンジを加えたもの。この妖怪譚に登場する妖怪の大将、山ン本五郎左衛門(曰く、『やまもとに非ず、さんもとと発音いたす』)がとても格好良い。
とある悪戯がきっかけで様々な化け物が出没するようになってしまった稲生家。ところが養子である平太郎少年が次々に怪異を退けてしまうものだから、ついに真打ちとして登場する山ン本五郎左衛門。ですが、ここからが世にある妖怪退治譚とは異なるところ。五郎左衛門は強さをひけらかすどころか、堂々と名乗りをあげ、平太郎の度胸をみとめ、からりと笑って潔く退散してしまうのです。なんとも粋です。
江戸的記述を現代語にアレンジし、稲垣足穂らしい言い回しで展開する本書。人と妖怪との異色の交流物語ともとれます。たまにはこんな洒落た妖怪譚はいかがでしょう。
ところで、夜中に部屋でひとり、しかも洒落怖を読み漁っているときに限って、天井の隅をバキバキ鳴らすのはどなたの仕業ですか。心臓によくないったらありゃしない。
本書は江戸時代後期の国学者、平田篤胤が記した妖怪物語「稲生物怪録」をモチーフに、稲垣足穂がアレンジを加えたもの。この妖怪譚に登場する妖怪の大将、山ン本五郎左衛門(曰く、『やまもとに非ず、さんもとと発音いたす』)がとても格好良い。
背の丈は鴨居を一尺を越す程である。肩幅広く四角四面のようだが、至極太っているので、体のどこにも角ばった所がないとも云えるような大男が、悠々と出てきた。齢の比は四十許り。甚だ人品良く、花色の帷子に浅葱の裃を着け、腰に両刀を差して、静かに歩いて向う側に坐った(略)
ー 山ン本五郎左衛門の登場シーンより抜粋
とある悪戯がきっかけで様々な化け物が出没するようになってしまった稲生家。ところが養子である平太郎少年が次々に怪異を退けてしまうものだから、ついに真打ちとして登場する山ン本五郎左衛門。ですが、ここからが世にある妖怪退治譚とは異なるところ。五郎左衛門は強さをひけらかすどころか、堂々と名乗りをあげ、平太郎の度胸をみとめ、からりと笑って潔く退散してしまうのです。なんとも粋です。
江戸的記述を現代語にアレンジし、稲垣足穂らしい言い回しで展開する本書。人と妖怪との異色の交流物語ともとれます。たまにはこんな洒落た妖怪譚はいかがでしょう。
ところで、夜中に部屋でひとり、しかも洒落怖を読み漁っているときに限って、天井の隅をバキバキ鳴らすのはどなたの仕業ですか。心臓によくないったらありゃしない。
稲生家=化物コンクール
- 著者
- 稲垣足穂
- 出版社
- 人間と歴史社
- 発行年
- 1990年
平田篤胤が記した妖怪物語「稲生物怪録」をモチーフに、稲垣足穂が自家薬籠中のものにした妖怪譚。「懐しの七月」「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」「稲生家=化物コンクール」の3作品に、俳人/高橋康雄による解説を併せて収録。