「これは山の辞典ではありません。もっと楽しい美しい本です。」函に書いてある一文を読んだだけで、5人の男たちの生き生きとした喜びが伝わってくるようです。
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10年をかけて3部作という形で仕上げた『山のABC』は、様々な職業の山を愛する人々が集まり、それぞれ得意なやり方で山愛を表現したシリーズ。タイトルの通り、AからZのアルファベット順で、山にまつわる事柄が綴られています。
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編集人は、詩人・串田孫一をはじめ、尾崎喜八、深田久彌、内田耕作。そしてイラストを担当したのは、山の版画家として知られる畦地梅太郎。それぞれ山に登ることが大好きで、山にまつわる作品も多数発表している5人は、まさに適役。
「何度となく集まって、これは私だ、それは誰だと、実に仲良く積極的に仕事を進めた」という、後記に綴られたエピソードも頷けます。
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山への愛とロマンに溢れた『山のABC』。山好きにはもちろん、山とふれあいたいすべての方におすすめします。