詩と芸術。心踊る組み合わせです。
近ごろ、詩人の祭典「スポークンワーズスラム」を知り、暇さえあればポエトリー・リーディングや詩人ラッパーの動画を検索しています。心に刺さる言葉は時代を問わず、生まれ続けているのですね。
さて、いまから時を遡ること100年と少し。大正3年に「月映(つくはえ)」という雑誌が3人の画学生によって創刊されました。田中恭吉、藤森静雄、恩地孝四郎によってつくられた詩と木版画の雑誌です。本書は「月映」に掲載された全版画や、私家版となる私輯「月映」やその関連作品などを掲載。そして3人の出会いから別れまでを追っています。
しづやかに ゑみうたふもの
なみだぐみ かきならすもの
しらがねの つきてるつちに
しめやかに つどひたるもの
「月映」創刊号に掲載された田中恭吉の「つくはえ序歌」からは静かでありながら、根底にある情熱、はじまりへの祝福が感じ取られ、じわっと心に響きます。結核を患い、命のかぎり木版画を制作した田中恭吉、いちはやく抽象表現へ踏み出した恩地孝四郎、2人の存在に触発されモノクロームの世界を彫り続けた藤森静雄。
この雑誌、この3人なくしては、日本の創作版画草創期を知ることはできません。この機会にモダニズム詩と芸術に触れてみてはいかがでしょう。