Even the Birds were Afraid to Fly | Al Brydon
イギリスの写真家アル・ブライドンによる作品集。幼少期に耳にしたカラスの鳴き声の記憶を手がかりに、「なぜ写真を撮るのか」という根源的な問いに迫っている。収録された写真には、霧に包まれた森や鳥の群れ、動物の亡骸といった不穏なモチーフが並び、そこに画面を横切るように現れる白い線が繰り返し挿入される。その線は個人的な記憶と社会的分断の双方を象徴し、単なる風景写真を超えた視覚的メタファーとなっている点が特徴。静謐な自然の中に刻まれた境界の意識を通して、個人史とイギリス社会の現在を重ね合わせる視点を浮かび上がらせている。
Julian Schnabel | ジュリアン・シュナーベル
1990年にイタリア・プラトのルイジ・ペッチ現代美術センターで開催された展覧会にあわせて刊行されたカタログ。新表現主義の画家として国際的に活躍し、映画監督としても知られるジュリアン・シュナーベルが、1980年代後半に手がけた作品群を紹介している。軍用シートを支持体に用いた大作や、壊れた陶器を大胆に散りばめた作品など、多様な素材を取り込みながら独自の絵画空間を築いた表現を収録。言語中心のコンセプトから、再び視覚イメージとの融合へと移行する過程を示しており、作家にとって芸術的転換点となった時期の姿を浮かび上がらせている。
Oiseaux | Jochen Gerner
フランスを拠点に活動するイラストレーター、ジョシェン・ギャルネールの作品集。子ども用ノートをキャンバスに、フェルトペンで描かれた鳥のドローイング約200点を収録している。単純化されたフォルムと鮮やかな色彩が織りなすイメージは、愛らしさと同時に図形的な規則性をも備えており、視覚実験としての性格を強く持つ。ページに敷かれたグリッドや線と色の関係性を探る試みは、絵画やデザインの領域とも交差し、装飾性と理知的な構造を併せもつ独自の表現へと展開している。日常的なモチーフから抽象的な可能性を引き出す実験的な一冊となっている。
Camouflaged Cars of Tokyo | Alice Ishiguro
ロンドン出身で日本にルーツをもつデザイナー、石黒トージーアリスによる作品集。東京の街に駐車された車と、その背景となる建物や看板、壁面などの色彩の組み合わせに注目し、「調和」は意図的な選択か偶然の産物かを問いかけるプロジェクトをまとめている。街中で目にする日常的な風景をフレーミングすることで、車体の色と環境との関係性がユーモラスかつ鮮やかに浮かび上がり、都市の景観を再発見させる内容となっている。日本社会やデザイン文化に潜む「調和」の概念を、遊び心あふれる視点で提示している。
The Granny Alphabet | Tim Walker ティム・ウォーカー
ロンドンを拠点に活動するファッションフォトグラファー、ティム・ウォーカーによる写真集2冊組。第1巻では、ウォーカーが撮影したおしゃれを楽しむおばあさんたちの姿をアルファベット順に構成し、生き生きとした表情や個性的な装いをユーモラスに切り取っている。第2巻にはファッションイラストレーター、ローレンス・マイノットによる挿絵を収録し、写真とイラストの対比を通じて独自の世界観を描き出す構成となっている。世代やスタイルを超えて広がるファッションの楽しみを多角的に示し、ウォーカーらしい遊び心とヴィジュアルセンスが存分に発揮された内容となっている。
悪魔の遊び場 | ナン・ゴールディン
アメリカの写真家ナン・ゴールディンの活動を総覧する作品集。『Still on Earth』『57 Days』『Elements』の各シリーズに加え、テーマごとに構成された写真群を収録している。被写体に寄り添いながら日常と親密さをとらえ続けてきた作風は、写真表現を通じて愛や痛み、依存や喪失といった人間の根源的な感情を描き出してきた。大判の図版により作品の強度を体感できるほか、作家やアーティストによる詩や歌詞も添えられ、多層的にゴールディンの世界を構成している。長年にわたる軌跡をまとめた内容は、彼女の写真表現の広がりと深みを改めて示している。
PARIS | AMI SIOUX
写真家アミ・スーによるパリを舞台とした作品集。緯度経度をタイトルに冠し、都市の位置を明確に刻むことで、街そのものを被写体として提示している。表紙に配されたエッフェル塔の影のイメージを象徴に、街路や広場、建築や人々の営みを多角的に写し出す構成。パリという都市の輪郭を、記号と記憶の重なりとしてとらえた視覚的マッピングの試みとなっている。フランス語、英語表記。
Hannah Hoch: Album | ハンナ・ヘッヒ
ベルリン・ダダ運動の主要メンバーであったハンナ・ヘッヒが残したアルバムを再現した作品集。ヘッヒが日常的に切り抜き、貼り集めた400点以上の写真を114ページにわたって収録している。自然、テクノロジー、スポーツ、ダンス、新しい女性像、映画、民族学など多様なテーマが混在し、20世紀初頭の文化的潮流や彼女自身の関心領域を映し出す構成となっている。断片的なイメージの集積は、フォトモンタージュの先駆者としての実践と響き合い、個人的な視覚日記であると同時に、時代精神を体現する貴重な資料でもある。アヴァンギャルド芸術の歴史において独自の位置を占める作家の思考と審美眼を探ることができる内容となっている。
アシッド・ブルーム | 蜷川実花
写真家蜷川実花による作品集。被写体となるのは鮮烈な色彩と異彩を放つ存在感をもつ花々であり、花と自らの意識が溶け合うような境界の感覚を写真として定着させている。画面いっぱいに広がる色と形は、現実の花でありながら幻惑的で、見る者を強く引き込む。光や構図の操作を通じて、装飾的でありながらどこか不穏さを帯びた蜷川実花独自の世界が立ち上がる点が特徴。
The Journal | Ruth Asawa
アメリカの彫刻家ルース・アサワによる「アーティスト・ジャーナル」。日常の身近な対象から着想を得て創作の契機とすることを目的に構成されている。アーティスト・ジャーナルとは、単なる日記やスケッチブックではなく、アイデアや構想を記録し、創作の過程を支えるためのノートであり、持ち主の手によって完成していく道具でもある。本書には自由に書き込める白紙ページや、発想を促すパターン入りのページを収録。アサワが実践した「日々の観察から芸術を育む」という姿勢を反映し、内なる表現を喚起する手助けとなる内容を示している。
GROUND | 山谷佑介
写真家山谷佑介による作品集。2012年に東京のライブハウスやクラブで撮影したフロアの写真を、その場のイベント中に壁に貼り付け、音楽と観客の動きの中で変化していく様子を記録している。床にこぼれたアルコールやダンスで削れた靴底の痕跡など、場に刻まれる身体の残像が写真と交差し、時間と空間の重なりを可視化する試みとなっている。さらに同時期に撮影された個人的なスナップも収録され、公共の場と私的な視点が響き合う構成。音楽と身体のエネルギーが織りなす瞬間性を追体験させる作品集として、写真表現の新たな広がりを示している。
異端の奇才 ビアズリー展
2025年に開催された巡回展の会場限定版図録。イギリスで活躍し、25歳の若さで世を去った画家オーブリー・ビアズリーの作品を紹介している。『アーサー王の死』『サロメ』『モーパン嬢』といった挿絵や素描をはじめ、彩色ポスターや同時代の装飾品など約220点を収録。繊細で流麗な線描と大胆なデフォルメを融合させた表現は、19世紀末の欧米で熱狂的に受け入れられ、アール・ヌーヴォーや象徴主義といった潮流にも影響を与えた。図版と解説を通じて、その短くも鮮烈な軌跡を多角的に浮かび上がらせている。
De Paris Yearbook 2014
パリのスケートボードシーンを1年間にわたり記録した写真集。38名のフォトグラファーが参加し、街中で繰り広げられるダイナミックなアクションショットをはじめ、コンペティションの熱気やスケーターたちの何気ない日常までを多角的に捉えている。都市空間を自由に駆け抜ける身体表現は、スポーツであると同時にカルチャーとしてのスケートボードの魅力を伝えるものであり、街そのものを舞台とした創造的な活動として映し出されている。限定1000部の刊行で、現代のスケートシーンを記録した資料的価値をも備えた内容となっている。
SKIN 地球の肌 | 回里純子
2022年にKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭のサテライトイベント「KG+」での展示にあわせて刊行された作品集。アーティスト回里純子が「触れる」というテーマを軸に制作したシリーズを収録している。水面の揺らぎに映る光、水に触れる女性の姿、岩肌の質感や森の木々など、自然と人の関わりを映し出す情景が重層的に展開される。トレーシングペーパーを用いたページ構成によって、イメージがレイヤーのように重なり合い、過去から現在、そして未来へとつながる時間の曖昧さを体感させる仕上がりとなっている。触覚と視覚の両面から人と自然の関係を探り、写真表現の新たな可能性を示す内容となっている。
江之浦奇譚 | 杉本博司
現代美術作家杉本博司が「遺作」と位置づける「江之浦測候所」を舞台に綴ったエッセイ集。神奈川県小田原市に設けられた江之浦測候所は、ギャラリーや石舞台、茶室、光学硝子舞台などを備え、自然・歴史・芸術が交差する総合的な文化施設。その場所に呼応するように生まれた因縁ばなし44題を収録。和歌や随筆、写真を交えた構成は、歴史の記憶と個人的体験が重なり合う独自の世界を浮かび上がらせる。ランドスケープとしての創作の到達点であり、杉本の風狂な半生をも映し出している。
Botanical Garden Volume I
世界の植物を網羅する全2巻構成の植物図鑑の第1巻。樹木や低木、つる植物を対象に、450を超える木本植物の属を紹介している。太古のシダ植物やイチョウ、針葉樹から始まり、モクレン、果樹、カエデ、ヤシ、竹に至るまで、進化の流れに沿って整理されている点が特徴。各属は精緻な写真と解説によって示され、形態や生態的特性に加え、自然環境との関係にも焦点を当てている。古代から現代までの多様な樹木を体系的に収め、植物学的資料としても園芸や自然観察の手引きとしても役立つ内容を描き出している。
Botanical Garden Volume II
世界の植物を網羅的に紹介する全2巻構成の植物図鑑の第2巻。草本植物を中心に550を超える属を取り上げ、一年草・二年草・多年草に加え、球根植物や水生植物まで幅広く収録している。コケやシダといった原始的な植物から、イネ科やカヤツリグサ科など現代の園芸に欠かせない草花までを精緻な写真と詳細な解説で紹介。分類学的な視点と実用的な園芸知識をあわせもち、観賞用から栽培まで幅広い利用に役立つ構成となっている。植物の多様性を体系的に示し、学術的資料としても園芸の手引きとしても価値を持つ内容となっている。
Handbuch der Pilze
代表的な食用・毒キノコ96種を取り上げ、その見分け方や特徴を詳しく解説した図鑑。キノコの外形や断面の構造、生育環境といった基本的な情報から、毒成分や中毒時の症状までを整理している。さらに料理レシピや保存方法も紹介されており、採集から調理まで実用的に役立つ内容となっている点が特徴。精密な図版や断面図を豊富に収録し、観察の際の手引きとしても有用である。科学的知識と生活の知恵を兼ね備え、キノコの多様な魅力を多角的に示している。
デ・ステイル 1917-1932 | セゾン美術館
1997年から1998年にかけてセゾン美術館をはじめ全国を巡回した「デ・ステイル 1917-1932展」の公式図録。20世紀初頭にオランダで誕生した芸術運動デ・ステイルは、幾何学的な形態と三原色を基調とした表現により、モダニズムの核心を形づくった。本書では絵画や彫刻、建築資料など約250点を収録し、運動の展開と影響を多角的に紹介している。デ・ステイルがバウハウスの機能主義デザインや1930年代以降の抽象芸術へ与えた影響を検証し、モダンデザインと抽象美術の発展における重要性を浮かび上がらせている。
Mario Testino Portraits
ペルー出身の写真家マリオ・テスティーノによるポートレート作品集。ナオミ・キャンベル、ケイト・モス、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトローら、セレブリティの姿を収録している。モデルや俳優、ミュージシャンらが放つ魅力を、被写体と自然な関係を築きながら引き出す手腕により、写真は一枚のポートレートを超えて視覚的アイコンとして機能する。『Vogue』編集長アナ・ウィンターが「人々はマリオに撮られることを愛している」と評したように、洗練されたファッション感覚と親密なまなざしが同居する作品群は、現代を代表するポートレート写真の地平を示している。
Sarah Illenberger | サラ・イレンベルガー
ベルリンを拠点に活動するアーティスト、サラ・イレンベルガーの作品をまとめた作品集。紙や食べ物、木材、植物、金属といった身近な素材を自在に組み合わせ、ユーモアと鋭い観察眼を備えたコンセプチュアルな造形へと昇華させている点が特徴。誌面や広告の依頼によるプロジェクトでは「Time Magazine」や「Nike」といった国際的なクライアントのために制作した作品を収録し、同時に個人的な試みや自由な実験も数多く含まれている。デザインとアートの領域を横断しながら展開される創造の軌跡を、多彩なビジュアルを通して浮かび上がらせている。
横尾忠則展 反反復復反復
2012年に「横尾忠則現代美術館」の開館を記念して開催された展覧会の公式図録。美術家横尾忠則の作品における重要な要素である「反復」の手法に焦点を当てている。「ピンクガールズ」や「Y字路」など代表的なシリーズを中心に、鮮やかな色彩と強烈なイメージが展開する作品をオールカラーで収録。横尾が時空を超えて繰り返し描き出すモチーフは、記憶や無意識と深く結びつき、独自の絵画世界を形成している。反復の技法が生み出す美学と思想を豊富な図版とともに示し、創作の核心に迫る内容となっている。
マルセル・デュシャン展 反芸術「ダダ」の巨匠 見る人が芸術をつくる
1981年、高輪美術館の移転開館を記念して開催された日本初のマルセル・デュシャン展の公式図録。1913年の代表作「階段を降りる裸体」以降の活動を軸に、絵画からレディメイド、オブジェ、ドローイングまでを収録している。芸術の創造と破壊を自在に行き来し、見る者の意識に問いを投げかけるデュシャンの歩みを豊富な図版と解説で紹介。カラーとモノクロを織り交ぜた作品群は、反芸術的態度を貫きながらも現代芸術の可能性を切り拓いた稀有な存在としての姿を鮮明に伝えている。
ROSAS XXV 1980-2005 ローザスとアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの25年 ダンス、空間、そして音楽の軌跡
ベルギー出身の振付家・ダンサー、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルと、彼女が率いるダンスカンパニー「ローザス」の25年の歩みに焦点を当てた展示カタログ。2005年に東京都写真美術館で開催された展覧会にあわせて刊行されたもので、舞台写真や映像作品の図版を豊富に収録している。1980年代の結成以来、音楽や建築、文学との緊密な関係を築きながら独自のダンス表現を探求し続けてきたケースマイケルの軌跡をたどり、ローザスの活動の全体像を示している。身体、空間、音楽が織りなす創造の歴史を視覚的に描き出している。
わたしの時間旅行 | 山本容子
銅版画家山本容子が「旅」をテーマに制作したアートワークと散文をまとめた作品集。ルイ・ヴィトン表参道ビルの工事仮囲いを活用した1年間のプロジェクトをはじめ、自身の旅の記録を377点の図版とテキストで収録している。19世紀半ばから1960年代のパリを舞台に、ピカソやクレー、フロイト、マン・レイといった芸術家や知識人の姿、当時の街並みや空気感を交えながら、時代を超えた「時間旅行」を描き出している。視覚表現と散文が重なり合い、旅と芸術をめぐる多層的な世界を伝えている。
秘められたスペイン展 クリスティナ・ガルシア・ロデロの世界
1994年に三鷹市美術ギャラリーで開催された「秘められたスペイン展」の公式カタログ。スペイン出身の写真家クリスティナ・ガルシア・ロデロが、1973年から約15年にわたり各地で撮影を続けた作品群を収録している。祭りや宗教的儀式、地域に根ざした風習や日常の営みがユーモアと神秘性を交えた視点で捉えられ、スペイン文化の多層的な姿を伝えている点が特徴。伝統を記録するだけでなく、人々の感情や共同体の精神を映し出す写真は、ドキュメンタリーと芸術表現の境界を探るものとして評価されている。独自の視線を通じて文化の奥行きを描き出している。
アウトサイダー・アートの作家たち
ボーダレス・アートミュージアムNO-MAの理念に寄り添い、写真家大西暢夫が日本各地のアウトサイダー・アート作家17名を取材した記録をまとめた一冊。自室や工房、施設といったそれぞれの場で生み出される表現は、優しく、清らかでありながら激しさも秘め、創作へのエネルギーがほとばしっている。絵画や立体、文字作品のほか、制作の様子や日常の風景を撮影した写真を収録し、作家たちの生き方と創作の根源に迫っている。障害や健常、福祉やアートといった境界を越え、表現の純粋な力を浮かび上がらせている。
大辻清司アーカイブフィルムコレクション 1
写真家大辻清司による「フィルムコレクション」シリーズ第1弾は「舞台芸術」をテーマとする。1950年代後半に撮影されたネガフィルムから、文学座や俳優座といった劇団の公演や稽古、さらに前衛舞台の記録を収録している。舞台上の一場面だけでなく、稽古に臨む俳優たちの繊細な表情やダイナミックな動き、光と影の陰影を静謐かつ鮮烈に写し取った写真群は、当時の演劇表現の熱気をよく伝えている。図版と解説を通じて、戦後日本の舞台芸術の姿を後世に伝えている。
大辻清司アーカイブフィルムコレクション 3
写真家大辻清司による「フィルムコレクション」シリーズ第3弾は「アトリエ訪問」をテーマとする。1950年代、雑誌記事のために撮影された原弘、山口薫、剣持勇、猪熊弦一郎ら70名を超える作家とその制作現場を収録している。制作に集中する姿からデッサンや画材に至るまで、大辻が独自の視点でとらえた写真群は、当時の芸術家たちの活動を生き生きと伝えている。さらに未掲載の写真を加え、作品図版と解説を通じて、戦後日本の芸術家たちの制作環境と創造の息吹を提示している。
大辻清司アーカイブフィルムコレクション 4
写真家大辻清司による「フィルムコレクション」シリーズ第4弾は、創作活動の転機となった1975年を特集する一冊。自身の実験的な取り組みに焦点を当て、『アサヒカメラ』で連載された「大清司実験室」の未公開カットやコンタクトプリントを多数収録している。写真家が作品を選び抜き、形を与えていく過程を具体的に示す構成となっており、制作の裏側を追体験できる点が特徴。シュルレアリスムや前衛芸術と関わりながら歩んだ大辻の活動の中で、重要な節目を記録する資料的価値の高い内容であり、1970年代の写真表現の動向を浮かび上がらせている。
大辻清司アーカイブフィルムコレクション 5
写真家大辻清司による「フィルムコレクション」シリーズ第5弾は、戦後日本を代表する前衛美術グループ「具体美術協会(具体)」をテーマとする。東京での公開制作や展覧会、舞台公演の記録を中心に、嶋本昭三、白髪一雄、田中敦子、村上三郎ら主要メンバーの活動を撮影した貴重なフィルムを収録している。絵具を投げつける動作やダイナミックな身体表現など、実験的なパフォーマンスの数々を鮮やかにとらえ、戦後美術のエネルギーを伝えている点が特徴。当時未掲載だった初公開カットも加わり、図版と解説を併せて、具体の初期活動を多角的に描き出している。
大辻清司アーカイブフィルムコレクション 6
写真家大辻清司の活動を記録する「フィルムコレクション」シリーズ第6弾。本巻には、1969年に国立代々木競技場で開催されたインターメディアの祭典「クロストーク/インターメディア」のリハーサル風景を収録している。秋山邦晴、ロジャー・レイノルズ、湯浅譲二、今井直次ら多彩なアーティストやエンジニアが参加し、演奏や試行の様子、当時の最先端機器を含む現場の全カットを公開。大辻がシュルレアリスムや前衛的な活動に関わった文脈とも響き合い、1960年代後半の実験芸術の息吹を伝えている。図版とあわせて解説を収録し、貴重な資料としてインターメディア研究の視点からも価値を示している。
写真論 | スーザン・ソンタグ
アメリカの作家・批評家スーザン・ソンタグによる写真評論集。絵画や文学との比較を通じて、写真が「現実と想像力の交差点」として現代文化を映し出す姿を鋭く考察している。アジェやダイアン・アーバスらの作品分析を交えながら、写真が単なる記録にとどまらず、表象や権力、社会的文脈と結びついた存在であることを明らかにする。冷静で詩的な筆致は芸術批評の領域を越え、写真をめぐる思想的議論の基盤を築いている。刊行以来、美術やメディア研究で参照され続け、写真の意味や役割を再考させるテキストとして位置づけられている。
日本の木組 | 清家清
建築家・清家清による建築資料集。日本の伝統木造建築に用いられる木組を、「木組の起源」「木組の機能」「継手」「仕口」などの章立てで体系的に解説している。精緻な図版を交えながら、その構造や機能を丁寧に紹介。巻頭には入江泰吉や植田正治によるモノクロ写真を収録し、建築的視点と写真表現の両面から木組の魅力に迫っている。
Diptyque: White Book
フレグランスメゾン「ディプティック」が限定版として刊行した作品集。写真家ティム・ウォーカーが「Do Son(ド ソン)」コレクションの詩的世界を再解釈し、その幻想的な視覚表現を収めている。香りの着想源となったのは、創業者イヴ・クエロンが幼少期を過ごしたベトナム・ドソンでの夏の記憶。潮風や海辺の光景に結びついた個人的体験が、文学や美術への参照とともにウォーカーの独自の写真世界へと昇華されている。夢と想像の境界を行き来するイメージを通じて、ディプティックの香りに宿る物語性を視覚的に体感できる構成となっている。
アイヌ文様の美 線のいのち、息づくかたち | 北海道立近代美術館
2006年に北海道立近代美術館と北九州市立いのちのたび博物館で開催された展示の公式図録。遺跡からの出土品をはじめ、戦前期までに制作・使用されていた工芸品に施された文様に焦点を当て、アイヌ文化の造形美と精神性を探っている。刺繍や木工、衣服、生活道具に表れた多様な意匠は、自然観や信仰と深く結びつき、独自の美的体系を築いてきたことを示している。豊富な図版と解説を通じて、伝統の継承と文化の息づかいを伝える構成となっている。
Cabinet of Wonders: The Gaston-Louis Vuitton Collection
ルイ・ヴィトン3代目オーナー、ガストン=ルイ・ヴィトンの蒐集品を紹介するビジュアルブック。アンティークのトランクや旅行用品、錠前やエスカッション、香水瓶、書籍、ラベル、さらにアフリカの仮面や子供用のヴィンテージ玩具まで、多岐にわたるコレクションを収録している。洗練された審美眼と好奇心が映し出す「知のキャビネット」を、フルカラーの図版で余すところなく伝える。
Vincent Van Duysen: Complete Works | ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン
ベルギーを拠点に活動する建築家・デザイナー、ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンの仕事を網羅したモノグラフ。住宅や集合住宅から、オフィス、商業空間、さらに家具や装飾品のデザインまで幅広い分野に及ぶプロジェクトを収録している。250点のカラー図版と50点のモノクロ図版を通して、素材の質感を生かした細部のこだわりや、静謐で洗練された空間表現を伝える。ミニマルでありながら温かみを宿す作風は国際的にも高い評価を受けており、建築とインテリア、プロダクトを横断する活動の全貌を視覚的に辿ることができる一冊。英語表記。
Richard Meier: Details | リチャード・マイヤー
アメリカを代表する建築家リチャード・マイヤーの作品を収録した一冊。1978年から1998年にかけて手がけられた12の主要建築とプロジェクトを取り上げ、立地条件や動線計画、構造の工夫を平面図や詳細写真とともに解説している。ホワイトを基調とした端正な造形と、光と空間の扱いに特徴をもつ彼の設計思想を、図面とビジュアル資料の両面から明らかにする構成。20世紀後半のモダニズム建築の展開を理解するうえで重要な記録であり、設計者の意図と実際の建築の関係を探ることができる内容となっている。英語、ドイツ語表記。
Private Architecture: Masterpieces of the Twentieth Century
20世紀を代表する住宅建築を集成した写真資料集。フランク・ロイド・ライトによる落水荘とダナ・ハウス、チャールズ・レニー・マッキントッシュのヒル・ハウス、ル・コルビュジエのサヴォア邸、アルヴァ・アアルトのマイレア邸、アドルフ・ロースのカルマ邸、リチャード・マイヤーのラホフスキー邸など、個性豊かな30軒を取り上げている。建物の外観や内部をとらえた豊富な写真とともに、それぞれの設計思想や時代背景を照らし出し、20世紀の住宅建築が切り拓いた可能性を示す構成。近代から現代に至る建築史を学ぶうえでも有益な一冊。英語表記。
Charlotte Perriand: The Modern Life | シャルロット・ペリアン
フランスの建築家・デザイナー、シャルロット・ペリアンの仕事を総合的に紹介する研究書。代表的な家具デザインや建築プロジェクトに加え、未公開だったスケッチブックを収録し、創作のプロセスをたどっている。ル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレとの協働を経て築かれたキャリアの歩みを振り返りながら、機能性と美しさを融合させた造形思想を再評価。豊富な資料を通じて、20世紀デザイン史におけるペリアンの位置づけに新たな視点を与え、モダンライフをめぐる彼女の実践の広がりを示す内容となっている。
柳宗理 デザイン | セゾン美術館
インダストリアルデザイナー柳宗理の仕事を紹介する図録。1998年4月にセゾン美術館で開催された同名展の内容を収録している。椅子やキッチン用品、食器といった身近な生活道具から、蛇口や高速道路、トンネルに至るまで幅広い領域のプロダクトを網羅。カラー・モノクロ図版を通じて、機能性と造形美を兼ね備えた柳のデザイン哲学を視覚的に示している。日本のモダンデザイン史において重要な位置を占める活動の軌跡を振り返ることができる構成となっている。
Terence Conran: Making Modern Britain | テレンス・コンラン
イギリスを代表するデザイナー、テレンス・コンランの人生と仕事を描いた評伝。1960年代にライフスタイルショップ「ハビタ」を創設し、1980年代にはデザイン・ミュージアムを設立するなど、英国の暮らしとデザイン文化に大きな影響を与えた軌跡をたどっている。デザイン、食、ビジネスなど七つのテーマで構成され、家具やインテリアからレストラン経営に至るまで多岐にわたる活動を紹介。豊富な資料とともに、多面的な実践を通してモダン・ブリテンを形づくったコンランの役割を浮かび上がらせる内容となっている。
陶 長倉翠子
栃木県益子町を拠点に活動した陶芸家・長倉翠子の作品を紹介する作品集。自由で躍動感にあふれる造形と鮮やかな色彩を特徴とする陶芸作品を100点以上収録している。益子の土と向き合いながら培われた独自の表現は、伝統と現代性を融合させたもので、器としての機能を超えて造形美としての存在感を放つ。写真によって作品の質感や彩りを伝え、長倉翠子の創作の広がりと個性を視覚的に体感できる内容となっている。