Live Greener | Cayetano Cardelus Vidal
環境配慮型の建築と設計事例をまとめた写真資料集。気候変動や環境劣化が深刻化する近年、地球の持続可能性を支える主要なアプローチのひとつとして注目されている「グリーン・アーキテクチャー」を、多様な写真、図面、資料とともに紹介する。自然素材の活用、エネルギー消費の最小化、地域気候への適応、生態系との共生など、各プロジェクトが採用する手法や思想を視覚的にたどる構成。建築が周囲の環境とどのように調和し得るのか、また都市や生活の未来にどのような変化をもたらすのかを検証し、持続可能な空間づくりの可能性を示している。
Figuring Space: Sculpture | Penelope Curtis
2007年にリーズのヘンリー・ムーア・インスティテュートで開催された展覧会の公式カタログ。20世紀モダニズムを象徴する建築家ミース・ファン・デル・ローエと、イギリスを代表する彫刻家ヘンリー・ムーアの作品を軸に、建築空間における彫刻と家具の役割を多角的に検証している。ミースが残したドローイングやコラージュには、建築内部に置かれる彫刻の位置づけや家具との関係が読み取れ、ムーア作品との対比は空間認識の差異を鮮明に浮かび上がらせる。会場風景を収めたカラー/モノクロの図版に加え、戦後の有機的な家具デザインへとつながる動向も提示され、近代以降の造形言語がどのように相互作用し、空間を形づくってきたのかを考察する構成となっている。建築と彫刻が交差する視点を示している。
遠圀、近景 | クサナギシンペイ
画家クサナギシンペイが、日常の風景写真と花の絵をゆるやかに重ね合わせるように構成した作品集。描かれた色彩と記録された風景が互いに滲み合い、記憶の奥に沈む断片や、ふとした感情の揺れをそっと呼び覚ます構成。写真と絵が行き来しながら、時間が折り重なるような視覚体験を生み出し、日常に潜む気配と微細な変化へのまなざしを促している。クサナギの静謐な世界観を体現している。100部限定刊行。
たて・ヨコ組版自由自在 | 府川充男、小池和夫
書体史から文字コード、テキスト処理、組版規則まで、DTP組版に必要な基礎知識を体系的にまとめた解説書。日本語組版に欠かせない漢字字体の理解や文字コード体系、外字の作成方法など、文字情報の扱いに関する技術的事項を丁寧に解説するとともに、縦組・横組における処理の違いや、レイアウト設計の要点をわかりやすく整理している。実務上避けて通れないタグ操作やテキスト処理の基本にも触れ、組版の精度を支える仕組みを具体的に把握できる構成となっている。
ABZ : More Alphabets and Other Signs | Julian Rothenstein ジュリアン・ローゼンスタイン
英国の出版社レッドストーンプレスの創設者、ジュリアン・ローゼンスタインによる、アルファベットや記号をめぐるヴィジュアル・スクラップブック。モダニズムやロシア・アヴァンギャルド、さらには日本のいろは文字まで、多様な文字体系やサインを遊び心あふれる編集で紹介する。タイポグラフィの歴史と文化の断片を軽やかに横断しながら、記号の持つ美しさと不思議な魅力を再発見させてくれる一冊。英語表記。
ポ/ 大竹伸朗 ✕ アイデアポスター全集
現代美術家・大竹伸朗が1999〜2006年にデザイン誌『アイデア』で連載した付録ポスター全85点を収録した一冊。誌面という限定的な媒体で発表されてきたポスター群を体系的にまとめた初の集成であり、最大8色の特色を用いた高密度な刷りや、折り仕様が途中で倍になるなど、連載当時から際立っていた過剰な制作姿勢がそのまま再現されている。各作品には大竹本人のコメントが添えられ、制作の背景や思考がより深く読み解けるよう構成。シルクスクリーンによる特装カバーや用紙・特色を駆使した造本も、作品世界の質感を高める重要な要素となっている。
アイデア No.266 ワーク・フロム・ニューヨーク NY発 表現領域を拡大し続けるヴィジュアル・フロンティアたち
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.266(1998年1月号)は、ニューヨークで活動する第一線のクリエイターを、ヴィジュアル表現とウェブデザインの2部構成で紹介する特集号。「パート1」では Chip Kidd、James Victore、Stefan Sagmeister、Amy Guip など、多様なメディアを横断しながら新しい視覚言語を切り拓いたデザイナーを取り上げ、90年代NYの活気に満ちた表現文化を可視化する。「パート2」では Razorfish、Kioken、MTV Interactive など、インターネット黎明期に台頭したウェブデザインの先駆者を紹介し、デジタル表現が広がり始めた時代の実験を簡潔に示している。
アイデア No.246 ニューヨークADC第73回年次展、第8回国際展入賞作品
グラフィックデザイン誌『アイデア』No.246(1994年9月号)は、巻頭で「ニューヨークADC第73回年次展・第8回国際展」の入賞作品を特集し、当時の国際広告・デザインシーンの潮流を多角的に紹介する号。タイポグラフィ、イラストレーション、広告、ポスターなど幅広いカテゴリーの受賞作を取り上げ、作品ごとの造形的特徴とメッセージ性を読み解く構成となっている。続く企画では、ミニマルな構成で強い印象を与えるウヴェ・レーシュ、ノスタルジックな表現で知られるジーン・グライフ、社会性と造形性を兼ね備えたクロード・バイヤルジョンなど、国際的なデザイナーの仕事を紹介。表紙デザインはウヴェ・レーシュ。
刻字 | 美山有
グラフィックデザイナーとして活動する美山有が、展覧会「彫刻刀が刻む戦後の日本―2つの民衆版画運動」を契機に取り組んだ木版作品をまとめたZINE。およそ3ヶ月にわたり制作した20点の文字作品を収録し、漢字を造形として再解釈する美山の視点が、手彫りならではの質感とともに鮮やかに立ち上がる構成となっている。ZINEは留め具を外すと1枚ごとのシートとして取り外せる造本で、小さなポスターのように壁に飾ることも可能。
日本の家 空間・記憶・言葉 | 中川武
日本の住まいに長く受け継がれてきた言葉を手がかりに、住宅文化の記憶を読み解く一冊。大黒柱、縁側、格子、襖、茶の間といった、現代の家づくりから姿を消しつつある25の語を取り上げ、それぞれが生まれた背景や空間的役割、暮らしの中でどのように機能してきたのかを丁寧に辿っている。写真資料は、かつての住まいに息づいていた流れや響き、人の営みを静かに写し出し、言葉が運ぶ情景と重なり合う。失われゆく生活のかたちを単なるノスタルジーとして扱うのではなく、記憶に宿る空間性を現在へ照らし返す内容となっている。
現代の建築家 白井晟一
雑誌『SD』7601号の白井晟一特集を、上製の保存版として再構成した作品集。懐霄館、ノアビル、聖キアラ館、昨雪軒、尻別山寮、虚白庵など、白井建築を象徴する代表作をカラー・モノクロ図版で収録し、素材の質感や光の使い方、内部と外部の関係性に貫かれた独自の造形世界を鮮明に伝えている。テキストには磯崎新「破砕した断片をつなぐ眼」、針生一郎「建築における外部と内部」ほか、浅野敬一郎や白井昱麿らによる論考を収録し、白井建築を思想的・歴史的背景から多角的に読み解く視点が加わる。
茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術
2016〜2017年に京都国立近代美術館、東京国立近代美術館で開催された展覧会の公式図録。安土桃山時代、千利休の侘茶を具現化する器として初代・長次郎が創造した樂茶碗から、十五代樂吉左衛門に至る約450年の系譜を、現代の視点から総合的に読み解く内容となっている。歴代当主がそれぞれの時代に葛藤しながら独自の表現を切り開いてきた「不連続の連続」としての樂家の歴史を、豊富な図版とテキストでたどる点が大きな特徴。初代長次郎から当代に至る作品を「現代」から見直すことで、一子相伝という仕組みの内側でどのように革新が受け継がれてきたかを明らかにしている。
Tomoe Yokoi: Color Mexxotint Works | 横井巴
銅版画家・横井巴が長年取り組んできたカラーメゾチントの代表作を収めた作品集。深い黒を基調とした画面に、テーブルの上のランプや果物、開かれた書物など、ごく身近な静物が静かな光をまとって浮かび上がる。メゾチント特有の柔らかな階調と深い陰影が、対象の輪郭をわずかに震わせながら包み込み、日常の気配がゆっくりと記憶へと沈んでいくような余韻を生み出している。収録された図版は96点。
未来と芸術 Future and the Arts
2019〜2020年に森美術館で開催された「未来と芸術」展の公式図録。AI、バイオ技術、ロボット工学、ARといった先端テクノロジーと、それらがもたらす社会変容を軸に、世界のアーティストや建築家、デザイナーによる100点超のプロジェクトを紹介する。都市の新たな姿、ネオ・メタボリズム建築、ライフスタイルの革新、身体拡張と倫理、テクノロジー社会の人間像といった5章構成で、近未来の環境や生のあり方を多角的に見つめる内容。五十嵐太郎、久保田晃弘、ケイト・クロフォードら6名による論考も収録し、技術と人間の関係性を読み解く視点を提示している。
Daily Life 辻和美ガラス作品集
ガラス作家・辻和美が金沢を拠点に制作してきた器やグラス、皿など、日常に寄り添う作品を丁寧に収めた一冊。透明でありながら確かな存在感をもち、ときに儚さを帯びながらも凛とした表情を見せるガラスの特性を、写真家・小泉佳春が繊細なまなざしで捉えている。日常使いの器から美術作品へと展開する幅広い制作が収録され、装飾性を極力そぎ落とした形に込められた思考が読み取れる点も特徴。ページをめくるたびに、澄んだ空気や居心地のよい時間が流れ込み、ガラスという素材が持つ強さと柔らかさの両面が浮かび上がる。
クララ洋裁研究所 | 立花文穂
出版や洋裁を軸に活動を行っていた小池四郎・元子夫妻による「クララ洋裁研究所」。布の切れ端や、パターン、型紙、断ち切り鋏などといった洋裁研究所に残されたモノたちを、その場に残る残像や記憶とともにまとめあげた立花文穂によるインスタレーション作品を収めた一冊。2000年に出版された1000部発行の限定版。製本は立花文穂の兄・立花英久と立ち上げた出版レーベル「バーナーブロス」によるもの。
Max Bill | Edouard Huettinger
「バウハウスの最後の巨匠」と称され、建築、彫刻、グラフィックデザイン、家具デザインなど多彩な分野で活躍したマックス・ビルの作品集。幾何学的構成と明快な造形理論を基盤に展開された彫刻や絵画を、豊富なカラーおよびモノクロ図版で紹介する。造形思想やモダニズムの理念を体現した作品群を通して、20世紀デザイン史におけるビルの重要な位置づけと、その創造の幅広さを視覚的に辿ることができる構成となっている。英語表記。
工芸青花 1号
骨董、工芸、建築、美術を横断的に取り上げる季刊誌『工芸青花』の創刊号。花人・川瀬敏郎による「竹花入の花」、金沢百枝・小澤実による「フランスのロマネスク」、中里隆・福森雅武・辻村史朗の三人の陶芸家による「酒器のかたち」など、多彩な特集を収録。樂吉左衞門や青柳恵介、木村宗慎らによる「光悦の茶碗と書」も掲載され、古典と現代を往還する美意識の系譜を辿る内容となっている。工芸と美の原点を静かに見つめ直す創刊号。限定1000部発行。
工芸青花 2号
骨董、工芸、建築を通して「美の根源」を探る季刊誌『工芸青花』第2号。巻頭では、金沢百枝と小澤実によるフランス・モントワール・シュル・ル・ロワールのサン・ジル聖堂を特集。川瀬敏郎の「仏教美術と花」や、赤木明登による「縄文土器」、森岡督行の「骨董と本棚」、中村好文の「意中の美術館 フリック・コレクションの巻」など、多彩な視点から古今の美と手の仕事を見つめ直す。限定1200部。
工芸青花 3号
骨董、工芸、建築、美術を横断的に掘り下げる季刊誌『工芸青花』第3号。川瀬敏郎による「ローマングラスと花」をはじめ、「茶道具商とはなにか」「骨董屋 青井義夫と坂田和實」「ペルシャとインドの細密画」など、多彩な視点から工芸と美の本質を探る特集を収録。赤木明登や細川亜衣、三谷龍二らによる寄稿も含め、古今東西の造形と美意識の交錯を辿る内容となっている。限定1200部。
境界 boundary 特別限定版 | クロヌマタカトシ
木彫を中心に制作を続けるクロヌマタカトシの創作世界を、限定100部の特別仕様でまとめた作品集。流木や陶土、樟といった自然素材に深く向き合い、そこに宿る静けさや気配を彫刻として立ち上げる独自のアプローチを、多彩なモチーフを通して辿ることができる。木にとまる一羽のカラス、寄り添うように並ぶ雀、人の姿や花々――いずれの造形も、素材が本来持つ質感と陰影を生かしながら、丹念に刻まれた線が生命のかたちを呼び覚ましている。近年の注目作に加え、初期作も収録し、作家の歩みと表現の深まりを立体的に示している。見開きにサインあり。ドローイングシート1枚付属。
Imogen Cunningham
アメリカ写真の草創期から活躍したイモージン・カニンガムの創作を通覧する作品集。植物の細部を鋭く見つめた初期のボタニカル写真、身体のフォルムを抽象化して捉えた実験的な構図、光と影の効果を探る視覚的アプローチ、さらに雑誌『Vanity Fair』で撮影した多彩な人物像まで、長いキャリアのなかで展開された幅広い表現を収録している。近代写真の技法や美学を刷新し、被写体への観察と造形への探究を重ねることで、独自の視覚言語を築いた歩みを明快に示している。 英語表記。
Windows, Mirrors, Tabletops | Lucas Blalock
アメリカのアーティスト、ルーカス・ブレイロックによる作品集。撮影やデジタル加工の痕跡をあえて残し、写真が現実をそのまま再現するという通念を批評的に問い直す。ブレヒトの「異化効果」を写真の領域に転用し、制作のプロセスやツールの操作をあえて画面内に可視化することで、見る者に「写真とは何か」という根源的な問いを投げかける。写真を記録の手段ではなく、構築と再解釈の行為としてとらえるブレイロックの実践は、イメージと現実、虚構と真実のあわいを巧みに行き来する。デヴィッド・カンパニーとの対話も収録され、思考と実験が交錯する写真の現在を探る貴重な記録となっている。1000部限定で刊行。
KAMO HEAD | Katsuya Kamo
世界を舞台に活躍したヘア&メイクアップアーティスト、加茂克也の作品集。パリコレを中心にランウェイで発表された数々のヘッドピースを収録。メゾンとのコラボレーションにより生まれたアートピースを、自らの思いで撮り溜めた作品集となっている。1997年のJUNYA WATANABE COMME des GARCONSから、UNDERCOVER、CHANEL、MINTDESIGNS、ANREALAGE まで、病床で倒れた2019年までの22年間の思いが詰まったアートピース、約220点を収集したアートブックが『KAMO HEAD』として蘇る。 日本語・英語表記。
in the blanket | 今城純
広告・雑誌・CDジャケットなどさまざまな媒体で活動している写真家、今城純による作品集。秋のオランダの風景をモチーフに、独自の色彩感覚と視点で切り取られた日常の瞬間を収めている。各プリントが1枚ずつページに貼り込まれ、本物のアルバムのような装丁も美しい一冊。写真の奥に漂う繊細な感覚と世界観が、見る者に深い余韻を残す。限定600部刊行。
和而不同 | 隈研吾、陳仁毅、王伝峰
建築家・隈研吾、家具デザイナー・陳仁毅、画家・王伝峰による異分野コラボレーション作品集。伝統と現代、自然と人工、素材と形態という対立と融合を通して、21世紀の東洋美学の可能性を探求する。隈研吾の空間デザイン、陳仁毅の家具、王伝峰の絵画が交わり、新たな調和と独自の世界観を生み出している。建築・インテリア・アートの枠を超えた視点で「和而不同」の精神を提示する一冊。写真は篠山紀信、装丁は中島英樹が手がけている。
紙のフォルム | 尾川宏
彫刻家・尾川宏による紙の造形作品集。多様な素材と手法で制作された立体作品をモノクロ写真で収録し、紙という素材がもつ柔軟さと構築性を浮かび上がらせている。「作る」の章では、制作プロセスを図とテキストで丁寧に解説し、造形が生まれる思考と手の動きを可視化。序文は原弘、造本は田中一光が手がけている。
紙のフォルム II | 尾川宏
彫刻家・尾川宏による紙造形の作品集第2弾。多面体をはじめとする対称的な空間図形を紙で表現し、作品写真とともに展開図を収録している。シンプルな素材から幾何学的な美を導き出す造形は、数学的思考と芸術的感性の交錯を示すものとなっている。構成を田中一光、レイアウトを太田徹也が担当し、造本としても完成度が高い。紙という身近な素材を通じて、立体と平面の関係を探る視点を見せている。
ヴィラ・マイレア アルヴァ・アールト | 齋藤裕
フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルトによる住宅建築の中でも、とりわけ初期の到達点として知られるマイレア邸を詳細に紹介する写真資料集。1939年、ハリー&マイレ・グリクセン夫妻のために設計されたこの住宅は、自然環境に寄り添う空間構成や素材使い、アールト特有の有機的フォルムが随所に息づき、実験的精神に満ちた“生きた家”として今なお世界中の建築家を魅了している。緑豊かな敷地に差す光の変化とともに表情を変える内部空間を、150点に及ぶカラー写真で多角的に紹介。施主一家へのインタビューや実測図面も収録し、建築思想と生活空間が交差するマイレア邸の魅力を立体的に読み解ける内容となっている。
Arne Jacobsen: Arkitekt & Designer
デンマークを代表する建築家・デザイナー、アルネ・ヤコブセンの作品集。1929年から始まる建築プロジェクトを中心に、家具、照明器具、カトラリーなどのプロダクトデザインに至るまで、多岐にわたる創作活動を多数の図版とともに紹介。機能美を追求しながらも詩的な造形を実現したヤコブセンの仕事を、スケッチや設計図、写真資料と解説を通して総覧できる内容となっている。英語、デンマーク語表記。
ジョゼフ・コスース コンセプチュアル・アートの軌跡 1965-1999
アメリカのコンセプチュアル・アートを代表するジョゼフ・コスースの活動を時系列でたどる展覧会図録。1965年から1999年までに制作された代表作約30点と、刊行当時の新作インスタレーションを収録している。椅子の実物・写真・辞書的定義を並置した初期作や、反転した辞書項目を扱うシリーズ、ネオンの文字作品など、言語・概念・視覚の関係を根底から問い直すアプローチが特徴。初期の思索に加え、1970年代以降に展開した空間的アプローチにも注目し、表現の変化と継続するテーマを簡潔に示している。言語を媒介に世界の構造を探ろうとするコスースの創作哲学を、多様な図版と考察を通じて読み解く内容となっている。
Storm Last Night | 津田直
写真家・津田直によるアイルランドでの旅を記録した作品集。ディングル半島やアラン諸島、クレア島、ドネゴール地方などを巡り、嵐のあとに残る風景や、古代の祈りが息づく土地の記憶をたどる。海や山、石碑や渦巻き模様の遺跡などをカラーで撮影し、自然と人との関係を静かに見つめるまなざしが貫かれている。古層の信仰や神話を内包する風景を通して、時間と記憶の循環を探るような構成。パノラマ写真を活かした造本設計は須山悠里が手がけている。
Joseph Beuys: Werke aus der Sammlung Ulbricht
ドイツの文学者ギュンター・ウルブリヒトが蒐集したヨーゼフ・ボイス作品群を紹介する展覧会図録。フィルツ(フェルト)や脂肪を素材にした挑発的な造形で知られるボイスと親交を重ね、1944〜1983年に制作されたドローイング、油彩、コラージュ、水彩など58点を収集した。代表作《Das Ende des 20. Jahrhunderts》《Konzertflügeljom》なども含まれ、ウルブリヒト・コレクションがノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館に収蔵された経緯とともに紹介している。ドイツ語表記。
Ark Journal Volume III Spring/Summer 2020
スカンジナビア発の年2回刊行インテリア誌『Ark Journal』第3号(2020年春夏号)。「私たちの世界をどのように理解し、アートを通してどのように生きるか」をテーマに、建築・デザイン・アートの交差点をスカンジナビアの感性から探る。ベルリンのアーティスト、アンセルム・ライルと建築家ターニャ・リンケの住まい、デンマークの建築家デイヴィッド・トゥルストルプによる住宅プロジェクト、ヘンリク・ビューロウによるバウハウスを再解釈したフォトエッセイなどを収録。光や素材の儚さに焦点をあて、空間を哲学と表現の場として捉える視点が貫かれている。ヴィルヘルム・ハンマースホイらへのオマージュも含む内容。
村上隆のスーパーフラット・コレクション
2016年に横浜美術館で開催された大規模展の公式カタログで、村上隆が長年にわたり収集してきた約1,300点のコレクションを体系的に紹介する一冊。古美術、陶芸、骨董、現代美術までを縦横に横断する作品群は、作家としてだけでなくキュレーター、ギャラリスト、プロデューサーとして活動してきた村上の眼差しを端的に示している。展覧会で展示された全作品と全作家の紹介に加え、モナ美術館館長デイヴィッド・ウォルシュとのコレクター対談、桃居・広瀬一郎との陶芸対談、さらに分野別の用語解説や詳細な年譜も収録。魯山人からキーファーまで、東西や時代を超えて作品を等価に並置する「スーパーフラット」の思想を背景に、価値観の境界を軽やかに越えながら、個人の審美眼がどのように結晶していくのかを読み解く内容となっている。その収集哲学の広がりと一貫性を視覚的に伝えている。
Matisse: Life & Spirit
20世紀美術を象徴するアンリ・マティスの創作の歩みを、多彩な作品図版とともに立体的にたどる一冊。シドニーのニュー・サウス・ウェールズ州立美術館での展覧会にあわせて刊行され、フォーヴィスム期の鮮烈な色彩表現から、彫刻や素描、さらには晩年の切り絵による革新的な造形まで、その生涯にわたる探究を包括的に紹介する。初期の《Luxe I》から、装飾性と構成感覚が絶妙に交差する1920年代の作品、南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂へと至る精神性の深まりまで、時期ごとの表現が緩やかな連続性の中で示される。長いキャリアの中で幾度もビジョンを更新し、色と形の関係を新たに見つめ直す姿勢は、晩年の大作《王の悲しみ》にまで一貫して息づいている。作品を支える創造のエネルギーと、世界への祝祭的な眼差しを多角的に読み解く構成となっており、マティス芸術の精神を深い層から照らし出している。
Lee Ufan 李禹煥
2022年に国立新美術館で開催された、李禹煥(リ・ウファン)の大規模回顧展公式図録。1960年代の初期活動から、石や鉄板を組み合わせて彫刻の概念を刷新した〈関係項〉シリーズ、さらに余白と筆致の往還を探る近年の絵画までを体系的に収録する。国内外の批評家による論考に加え、制作の転換点を示す代表作を年代順に掲載し、「もの」と「行為」の関係を問い続けてきた思索の軌跡を立体的に示している。1968年の《風景》から、点と線の生成を探る絵画シリーズ、空間と呼応する近年の作品群まで、半世紀以上にわたり深化してきた表現の変遷を丁寧に整理。資料編には年譜、展覧会歴、文献一覧、作品リストも収め、作家像を多角的に検証する内容となっている。
Gerhard Richter: Wako Works of Art 2002
2002年、ワコウ・ワークス・オブ・アート開廊10周年を記念して開催された展覧会カタログ。ドイツを代表する現代美術家ゲルハルト・リヒターの油彩画、ガラス作品、オイル・オン・フォトなど、多様なシリーズを横断的に収録する。抽象と具象、絵画と写真の境界を揺るがし続けてきたリヒターの探究を、少数精鋭の作品群から読み解くことができる構成。あわせて清水穣による論考「アブストラクト・ペインティングの変容」を収録し、リヒターの表現がたどった変化と思想をより深く考察できる内容になっている。
Ai WeiWei: Architecture | アイ・ウェイウェイ
中国の現代美術を象徴する作家のひとりとして知られるアイ・ウェイウェイの建築的実践を総覧するモノグラフ。テート・モダンでの展覧会にあわせて刊行された本書は、東洋思想や伝統工芸への眼差しを背景にしつつ、社会や歴史への批評性を帯びた空間表現を読み解く構成となっている。素材の選択から構造の扱いまで、挑発に満ちた姿勢と厳密な検証が交錯し、場所固有の記憶や時間の層を呼び覚ますような建築のあり方を示している。住宅、公共施設、インスタレーションを含む30のプロジェクトを図版とともに収録し、多様なアプローチを通して建築の枠を拡張する試みを鮮明に伝えている。
Friederike von Rauch & David Chipperfield: Neues Museum | デイヴィッド・チッパーフィールド
1997年から2009年にかけて英国の建築家デイヴィッド・チッパーフィールドが修復を手がけた、ベルリン・ミュージアム・アイランドの〈新博物館(Neues Museum)〉の写真資料集。19世紀半ばにフリードリヒ・アウグスト・シュテューラーが完成させた新古典主義建築は、第二次世界大戦で甚大な被害を受けた。チッパーフィールドは保存と融合を重視し、歴史的要素を残しつつ静謐な現代的意匠を挿入。ベルリン拠点の建築写真家フリーデリーケ・フォン・ラウフが自然光のみでその空間を端正に捉えている。ドイツ語、英語表記。
没後40年 熊谷守一 生きるよろこび
2017年から2018年にかけて開催された展覧会の公式図録。初期の重厚な画風から、猫など身近な題材を鮮やかな色彩と明快な輪郭で描いた代表作に至るまで、熊谷守一の画業を豊富なカラー図版で紹介している。闇から光へと移ろうように変化した作風は、その生涯の歩みとも深く結びつき、孤高の画家が追い求めた表現の核心を映し出す。人生と芸術の関わりを改めて浮き彫りにする内容となっている。
街区の眺め | 飯田鉄
写真家・飯田鉄が1972年から1998年にかけて東京で撮影したモノクロ写真68点をまとめた作品集。衣料品店の看板や古い駅舎、小さな工場や倉庫、低層ビルが並ぶ街角など、いまでは失われつつある昭和後期の都市風景が静かに写し取られている。建築の細部を強調する硬質な光、壁面の質感、陰影の揺らぎは、都市の時間が折り重なるように画面へと定着され、記憶の層をそっと掘り起こす。明治以降に形成されてきた街並みを丹念に歩きながら、かつての東京の輪郭を再び「いま」の眼差しで読み直す試みとも言える内容で、喪失と継承のあわいにある都市の表情を丁寧にとどめている。
雪の刻 | 中井菜央
写真家・中井菜央が2015年から撮影を続けてきた、津南町と周辺の豪雪地帯を写す作品集。毎冬100日を現地で過ごし、さらに2020年から約1年の滞在を経て、重く多湿な雪がつくり出す風景や、雪と共に生きる人々の姿を鮮明なカラーで収録している。天地の感覚を奪う雪の落下、湧き出す水の気配、緑のうねりに潜むかつての雪の記憶など、土地がもつ固有の表情が繊細に捉えられている点が特徴。8000年の歴史を抱く地層や森の色、集落の人々の瞳までもが、雪によって律される時間の層として立ち上がり、目の前の光景と太古の記憶が重ね合わされていく。静けさと重みを湛えた構成のなかに、雪の持つ時間の厚みを見つめる視点が提示される。
Le Bijou Dessine: Designing Jewels | Guillaume Glorieux
2021年から2022年にかけてエコール・デ・ザール・ジョワイエで開催された展覧会に際して刊行された作品集。本書は、ヴァンクリーフ&アーペル宝飾文化基金が所蔵するコレクションを中心に、18世紀後半から20世紀初頭にかけてのおよそ100点のジュエリーデザイン画を紹介。ティファニー、ラリック、ヴェヴェールといったジュエリーデザイン界の巨匠や、パイエ、ブレディヤール、メレリオなどの工房による作品だけでなく、無名の職人やアーティストによる作品も含まれており、ジュエリーデザイン画の技法や用途などを通して、多面的な視点からその奥深い世界を読み解く一冊。フランス語、英語表記。