【ECサイトにかかせない商品撮影の基本】撮影スタジオDIY編
さて、前回倉庫を撮影スタジオに改造して機材も揃ったところで、今までの撮影での問題点を解決するべく講習会を行いました。お招きした講師の先生は、鈴木公平氏。ライブ写真からファッションブランドのイメージカットまで、幅広く活躍しているプロカメラマンです。
まず、現在ノストスブックスが抱えている問題点は4つ。
1.基本的な機能を理解していない(いまさら!)
まずはカメラの基本的なお話から。 いつも撮影モードを適当にいじりながら曖昧な撮影をしていたノストスブックススタッフ一同。 まずは基本のきということで、F値やシャッタースピード、ISO感度、撮影モード などの説明を一通りしていただきました。ノートをとりつつ、まじめに聞くスタッフ。
焦点の範囲を決めるF値(絞り値)
写真を撮るには、まず対象となるものに向けてカメラを構え、シャッターを半押ししてピントを合わせます。その際に、ピント(焦点)を合わせる範囲を調節するのがF値。 値が小さいほど焦点は広く、大きいほど焦点は狭くなります。そこで、被写体の大きさや写したいものの範囲に合わせて、F値を調節します。このF値の正体は、実はシャッターの膜の開放量。明るいところでは瞳孔が閉じるように、値を小さくするほど写真は暗く、大きくするほど明るくなります。 カーテンに例えるなら、布を開く面積。すなわち、空間で光量を調節するためのものとイメージすることができます。
シャッタースピード
写したいもののピントを合わせ、焦点の範囲を合わせても、暗ければ写真は写りません。F値がカーテンを開く面積なら、シャッタースピードはカーテンを開く速さ。 F値を絞って光量が足りない場合は、シャッタースピードを遅くすることで長く光を取り込み、写真の明るさを調節します。一般的には、動いている対象をブレることなく写すためにシャッタースピードを速くし、短い瞬間を切り取るように調節しますが、今回は物撮りのため、F値を優先してシャッタースピードを調節します。
暗いところではISO感度
暗いところで撮影すると、物体が一切写らずに一面が黒くなることがあります。ここで、「ISO感度」を上げると、暗い背景から物体を識別することができます。音楽で言うなら、アンプのようなもの。 今回は十分なライティングやストロボで光量を安定させるため、ノータッチでOK。なるほどなるほど。機能が多すぎて何をどういじってよいのかわからなかったのですが、基本の説明を丁寧にしていただいたので、3つの関係性を改めてしっかり理解できました。
2.被写体が歪む
以前は簡易撮影ボックスの手前から撮っていたので、どうしてもこのぐらいの台形になってしまいます。見ていただくとわかりますが、本のサイズにとってはバック紙が足りないという部分も後加工していましたので加工時間がよりかかってしまうのです。長方形の本が台形に見えるように、歪んで写ってしまうことを「パースがつく」と言います。今まではレタッチで修正していましたが、毎度これでは画像の加工に時間がかかるかかる……。そこで、パースの原因とその対策を教えてもらいました。
方法その1:グリッドで正位置をつかむ
歪んで見えるということは、被写体を正面から捉えられていないということ。そこで、物体の正面を掴むために、カメラ上にグリッドを表示させます。 被写体の直線部分とグリッドが直角に交わっていれば、正位置にカメラを構えられているということ。ちなみに、これはiPhoneにも応用可能。方法その2:広角側ではなく、望遠側を使う
左が広角、右が望遠で撮影したもの。左はかなり歪みが発生してます。広角レンズでは、端のものは大きく、収束する中心のものは小さく写ります。この対比が奥行きを生み出しているのですが、近くの物を撮る場合には歪みとなってしまいます。そこで、遠くも近くも平滑的に写すことのできる望遠レンズを選ぶと、レンズによる歪みは軽減されます。
3.被写体へ均一に光が当たっていない
これまでは、卓上に設置した簡易撮影ボックスの天面から均一に光を当てて本を撮影していましたが、被写体までは均一に光が届かず……。撮影モードをオートにすると、シャッターを切るごとに自動補正がかり、一連の写真の明度にバラつきが生じていました。こちらの写真も、歪んでいることに加え、下にいくにつれて色味が変わってしまっています。ここも毎回色調整していました。
方法その1:ストロボを使う
ミニスタジオを照らしていたライトでは光量が足りなかったということで、思い切ってストロボを購入。使ってみると、被写体に均一に光が行き届くようになりました。本だけでなく、形の複雑な雑貨もきれいに撮れます。1つの商品に対して複数枚撮るときも、明度のバラつきが軽減しました。方法その2:暗くなりがちな端にはレフ板を置く
光の不均一は、1枚の中でも起こります。厚みや高さのある物体には影が強めにでてしまうのですが、被写体を挟んだ光源の対岸にレフ板を設置することで、光が反射して、影の濃さも軽減されます。このあたりは慣れが必要ですね。さらに右側が若干暗めなので、ストロボの位置とレフ板でよりフラットな光を作れると思います。4.反射する(本と雑貨)
ファッション写真に多いですが、黒の面積が多い&コート紙の場合は、上部から撮影しようとすると光を反射してしまったり、ページ上に手やカメラが写り込んでしまったりすることもしばしば。撮影ではかなり苦戦を強いられておりました。こちらもストロボである程度解消されます。どうしても難しい場合は無反射ガラス を使うとより反射を軽減できます。それだけでなく、開きづらかった本を手で押さえずにきれいに開いてくれて一石二鳥。ただし、ガラスなので取り扱いにはご注意。
購入前に実物を確認することができるお客様は限られていますから、ノストスブックスではできる限り実物と同じ状態で皆様に見ていただきたいと考えています。本の作り手に対する尊敬をこめる意味でも、どうしてもクオリティの向上は必須。
今回のまとめ+結果報告
講習を受けたとはいえすぐにプロ並みの撮影ができるわけではありませんが、今まであやふやだった基本を学べたのは大きな前進です。 今後は撮影技術とレタッチソフトの連動効率化など、日々改善していくことでさらなるブラッシュアップを目指します。さて、次回は最終回、イメージカットの撮り方の基本についてレポートします!