お香「テリムクリ」の出来るまで(1):香りを作る
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お香「テリムクリ」の出来るまで(1):香りを作る

本は記憶を呼び起こす。
子どもの頃に読んだ物語、あの時助けられた一冊。

香りもまた同じ効能を持つ。
何かの香りを嗅いで、過去の思い出が一瞬で蘇る経験をした人は多いはずだ。

香りと読書で刺激される、自分の中に深く降りていくような感覚。

そんな記憶と感情を呼び覚ますノストスのオリジナルのお香を作りたいと思い立ってからはや2年。 ついに完成に至った制作の記録をどうぞ。



香りを作る

ノストスブックスで扱う全ての商品は、遅効性がキーワード。ジワジワと月日を重ねることで身体に染み込むような商品をセレクトすることをテーマにしている。

その中でも絶対に外せないブランドに東京香堂がある。調香師であるペレス千夏子さんの、素材との一期一会の出会いも大切にしながら、香りをアートとして捉えている姿勢にも共感している。今回のオリジナルお香は彼女と一緒に作ることにした。

ずっとイメージしていたのは、曖昧な境界線。 そして、読書。寝る前。 ふっと力を抜くこの時間帯にこそいい香りを嗅ぎたい。

とにかく頭にぼんやりと浮かぶ言葉をズラズラと書いてみた。

・静寂
・しっとり
・艶
・優しい
・やわらかな
・丸い
・ゆらぎ
・リラックスとリセット
・内省、洞察を促す
・知らない自分を知る
・ろうそくや焚き火をぼんやり見ているイメージ
・覚醒させないでそのままゆるりとまどろむイメージ
・今どこにいるか一瞬わからなくなる感じ
・現実と夢の間(起きているのか寝ているのか)
・時間(5分が30分的な)
・記憶の緒
・幽玄(奥深い、味わい尽くせない)
・深遠(奥深い、味わい尽くせない)
・余情の美(心に残って消えない情緒、余韻を味わう)

絵でいうとこんなイメージ。能の世界観。(©goole imege)

後日打ち合わせの場で思いついたままの言葉とイメージを見せると、しばらくそれを眺めたあとに一言、「これは面白いですねぇ」とゆっくりと話しだした千夏子さんが印象的だった。「うんうん、うんうん」と1人でうなづいて噛みしめるようにしていた姿も忘れられない。

「ちょっとお時間ください。」

期待を旨に事務所を後に。

サンプル完成!工房へ

期待して待つこと数ヶ月。
「工房までいらっしゃってください。」との連絡を頂き、群馬県にある東京香堂の工房へ。

「すごく良い香りができました!」
千夏子さんの第一声と笑顔を見て、嬉しさがこみ上げてきた。

川と緑の新鮮な空気を感じる東京香堂さんの工房。ここで調香とお香制作が行われている。

まずは何も聞かずに出来たばかりのお香サンプルを焚いてもらう。

「おぉ!なんか…いい…」(語彙のなさ…)

「あらやだ!香りが変わった!」

なんと、時間軸というキーワードをお香に落とし込んでくれた。香水のようにトップ、ミドル、ラストと香りが変化するのだ。

何かを依頼しても、ほとんど一発OKしたことがないことで名を馳せるワタクシ、今回は文句なし!イメージどおり!これだ!



調香した香りのレシピについて詳しく説明してもらったところ、打ち合わせでの言葉のイメージを香りに落とし込むにあたり、なんと20数種類の香料を使ったとのこと!驚き。

制作を依頼しておいて今さら知ったが、お香が完成するまでの過程は

1.精油の配合を決める
2.お香にするための木の種類を決める
3.精油と木のバランスを決める
4.燃焼時間や燃焼による香りの立ち方をチェック

というステップで作られていく。なんという手間暇…

精油と木のバランスをまだ悩む千夏子さんと、良い香りに夢中で、もはや説明を聞いてないワタクシ。

精油をブレンドするお部屋を見せていただく。膨大な量の精油を組み合わせ、量を調整しながら作る。ノートに配合量をテストした大量のメモが残されていた。

これだけの種類の香りをイメージと感覚で配合していく調香師という仕事は、アーティストと職人の両面を持ち合わせていないと成立しない。調香師という仕事は素晴らしく魅力的な職業だなと思った。

さてさて、もはや売らずに自分で買い占めたいぐらいの良い香りが完成した。

次はネーミングとパッケージ。このお香の名前とパッケージどうしよう… そういえばマガジンバッグのときは、パッケージなんてなかったし名前もそのままマガジンバッグだったな…

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◯制作ブログはこちら
お香「テリムクリ」の出来るまで(1):香りを作る
お香「テリムクリ」の出来るまで(2):パッケージを作る
お香「テリムクリ」の出来るまで(3):お香立てを作る

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ノストスブックス店主。歴史と古いモノ大好き。パンク大好き。羽良多平吉と上村一夫と赤瀬川原平と小村雪岱に憧れている。バンドやりたい。