上野の国際子ども図書館で開催されている「絵本に見るアートの100年―ダダからニュー・ペインティングまで」展はご覧になりましたか?
20世紀初頭に起こった前衛芸術運動から、第二次世界大戦を経て現代にいたる芸術運動の潮流に乗せるようにして、国内外の希少な絵本を紹介しています。建築遺産を保存利用した重厚で美しい建物も合わせてたのしめる、素晴らしい展示でした。みなさまもぜひ。その流れで、本日のおすすめをご紹介。
さて、1900年代前半のヨーロッパにおける前衛芸術運動といえば、何を思い浮かべるでしょう。未来派、ダダ、バウハウス、シュルレアリスム。わたしたちに馴染みが深いのは主に西側諸国のものですが、当然、東欧にも前衛芸術は発生していました。戦中戦後の政治的な理由により作品は「反体制的」とみなされ、広く知られていないだけなのです。政治と芸術の関係は、いつの時代も興味深い。
本書は、そんな隠された東欧圏アヴァンギャルドのなかから、チェコで発展した装丁芸術に焦点をあてたもの。首都プラハを起点とし、各国から伝わる芸術運動の動向に刺激され作られた印刷物と、たずさわった人々を紹介しています。特にカレル・タイゲのデザインは圧巻。構成主義的なレイアウトとタイポグラフィ、コラージュを取り入れたデザイン。国外の芸術運動から得た着想を、独自の美学をもって磨き上げています。作品集がほしくなっちゃう。
ともあれ、ヨーロッパの芸術運動がチェコの印刷文化に与えた影響を俯瞰して学ぶには最適の1冊です。