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雑誌「つるとはな」を入荷しました。年上の先輩に学ぶ、これからの日々の歩み方。
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雑誌「つるとはな」を入荷しました。年上の先輩に学ぶ、これからの日々の歩み方。

こんにちは!なつきです。

人生の節目でふと立ち止まったり、「このままでいいのかな?」と悩んだり。そんな時、人生の先輩に話を聞きたいと思ったことはありませんか? 「つるとはな」は、年上の先輩を取り上げ、人生の面白みやこれからの日々の歩み方をそっと教えてくれる雑誌です。

今回はそんな「つるとはな」を、創刊号から最新刊まですべて入荷しましたのでご紹介したいと思います。 ちなみにメインビジュアルを飾ってくれたのは、松陰神社前の大先輩こと、おがわ屋の店主・小川さん!スタッフ一同、店頭に立つその姿から日々色々なことを学んでいます。


年上の先輩の話を聞く、小さな場所

「おばあちゃんの名前って、なんだった?」
「うちはつる」
「うちは、はな」

こんな他愛のない会話から生まれた「つるとはな」という雑誌名。このエピソードにちなんで、創刊号には二文字の名前をもつ女性をひたすら探す「君の名は?」という、なんともキャッチーな企画が。こんな風に、単に年上の方にフォーカスするだけでなく、若者を惹き付けるキャッチフレーズや時代の流れがうまく組み込まれ、雑誌の構成という視点から見てもセンスが光る内容になっています。

それもそのはず。編集長は、マガジンハウス発行の雑誌「Olive」の編集長を担当し、「ku:nel」を創刊した岡戸絹枝が、そしてアートディレクターは同じく「ku:nel」でアートディレクションを担当した有山達也がつとめるなど、なんとも錚々たるメンバーによってつくられている雑誌なんです。

常に時代を切り取ってきた編集のプロたちが光を当てる、なんとも魅力的な先輩たち。年齢、性別、パートナーの有無に関わらず、自立して自分の人生を楽しむコツを教えてもらいましょう。

つるとはな 創刊号

「つるとはな」には、各号ごとにテーマが設けられているわけではありません。大きなテーマで一括りにしてしまうのではなく、それぞれの登場人物にまんべんなく光を当てることによって、一人一人の個性が活きるような構成になっています。

創刊号の「よその国のレディース」では、アイルランドに1900年から存在するパブを祖父から受け継いだ2人の姉妹が登場。アイルランドでは誉れ高きパブリカン(パブの経営者)である2人は独身で、結婚したいと思ったことは一度もないそう。自分で築き上げた人生を心から幸せと語る2人を見ていると、日本で蔓延している"結婚こそが幸せ"なんて概念がちっぽけに思えてくる。

マイ・ボーイフレンド」では俳優の火野正平をインタンビュー。番組の企画で、今でも自転車で日本を横断するその姿は、65歳だなんて信じられないほどの色気が漂っています。強面で突っ張っているように見えて、時に子供のように無邪気で可愛い一面をのぞかせる火野さん。ずるい……こんなん、モテるに決まってるじゃん。

そして中にはこんなお笑い路線の企画も!蛭子さんと一緒に、正しいからだの動かし方をおさらいです。この真面目さとゆるさのバランス、絶妙。

つるとはな 創刊号

編集
岡戸絹枝
出版社
つるとはな
発行年
2014年
・死んだもの、打ち上げられたものは美しい
・君の名は?
・安心して不安でいよう
・須賀敦子からの手紙(前編)
・歌って更けゆく鎌倉の夜 他
こちらは「つるとはな」の創刊号と第2号にも掲載されている「須賀敦子からの手紙」の単行本。随筆家・イタリア文学者である須賀敦子が、1975年から亡くなる前年の1997年までの間に綴った55通の書簡すべてを収録しています。

55通の書簡のほか、須賀敦子全集には未収録のエッセイや、妹である北村良子や、親友のコーン夫妻へのインタビューなども併せて収録。

つるとはな 第2号

第2号のインタビュー企画は、リリー・フランキー。「でかいパンツはいてたらすぐに老けますよ」の言葉が心に刺さる……。押忍。

こちらでは、"必需品ではないけれど、あると毎日がちょっとだけ上質になるような日用品"を紹介。人に自慢するためじゃない、自分のためだけのとっておき。贅沢だなぁ。

雑誌名の「つるとはな」にちなんで取り上げたのは、浅草にある銭湯「鶴の湯」と、そこに住む猫の「はな」。雑誌名と一緒の組み合わせというひょんな偶然をきっかけに、普段は語られることのない家族の歩みが紐解かれていくのが面白い。人に歴史あり……いや、猫に歴史あり、ですね。

つるとはな 第2号

編集
岡戸絹枝
出版社
つるとはな
発行年
2015年
・勝負師はロマンチストたいね
・でかいパンツはいてたらすぐに老けますよ
・お似合いですね、白いシャツ
・オレたち、のびしろあるよね
・ポチはいい子ね、ばばの宝 他

つるとはな 第3号

音楽にあわせて力強く、かつ軽快なステップを刻んでいるのは、理容師の宮川さん。「ダンスも床屋も足腰が腕前を決める」とあって、仕事中に曲が流れると自然と身体が踊りだしてしまうそう。お客さんの髪を切っている時の和やかな表情が、ダンスを踊っている時はキリッと引き締まります。80歳で仕事とプライベート、2つの顔を持ってるなんてかっこよすぎる。

大人になっても童心は忘れないものですよね。作家の江國香織と、妹で編集者の江國晴子が取り上げている童謡絵本も、懐かしい日々や家族を思い出させてくれるもののひとつだそう。幼い頃に立ち返えれば、自分のルーツが見えてくる。そのとき感じる優しい気持ちがまたひとつ、自分を強くしてくれるかもしれません。

そしてこの第3号でつるとはな一行が訪ねたのは、新潟。180年もの歴史をもつ蔵元がつくる「鶴の友」という地酒と、古町の「華」である舞妓さんに迫ります。濃厚な活気に包まれた蔵元と、そこでつくられた美味しいお酒でお客様をもてなす舞妓さんに会いにいきたくなっちゃいます。粋な日本の伝統文化に、記事を読むだけで酔いしれてしまいそう。

つるとはな 第3号

編集
岡戸絹枝
出版社
つるとはな
発行年
2016年
・今日は地球を1万歩
・年齢なんてただの数字よ
・新しく軽やかでスマートに
・好きなのよ、もみじの立ち耳、巻きしっぽ
・「その日」まで、何を頼りに生きていく? 他

つるとはな 第4号

最新号である4号にも、素敵なレディーズ&ジェントルメンが勢揃い!いま夫婦で楽しむ趣味は、ピンポンが熱いみたいですよ。家のガレージが卓球場になっているなんて、おしゃれすぎませんか?ロンドンでは、卓球と食事が楽しめる"ピンポンバー"なる施設も話題となっているらしく、世代を超えて愛されるスポーツとなっているようです。

94歳にして現役の染色家として活躍する、柚木沙弥郎さん。深く年齢を重ねた手から生み出される作品はどれも力強く、みずみずしい。かつては染色工芸家・芹沢銈介に弟子入りしていた柚木さんからは、現在でもなお学びの手を止めない姿勢が感じられます。

何でもいいからワクワクできる対象を見つけて、白紙で立ち向かえばいい

ほんと、年齢って何なんでしょうね。

そして、人生の先輩方に混じって紹介されているのは、女子卓球界の次世代エース・平野美宇さん16歳。日々厳しい練習をこなし、世界の大舞台で活躍する彼女から溢れる言葉は、強い意志と力に満ちています。自立した精神や身体の内側からみなぎるエネルギーは、年齢には左右されないんだな。10代だろうが90代だろうが、毎日をひたむきに生きるかどうかが、その人の人生に表れる気がする。

つるとはな 第4号

編集
岡戸絹枝
出版社
つるとはな
発行年
2016年
・毎日登る富士山へ!
・お似合いですね、素足にハイヒール
・よりよき土になるために
・つるつる三昧、花ざかり
・女は命飛美を考える 他
柚木沙弥郎の写真集はこちら。工房での制作風景や書斎、雑貨のコレクションなどを写真家の木寺紀雄が撮影しています。

型染の第一人者、柚木沙弥郎の写真集。装丁は名久井直子。
「まだ若いのにクヨクヨしてるんじゃない!」と喝を入れられているような、はたまた「そんな焦らなくていいんだよ」と優しく背中をなでてもらっているような。どちらにせよ、これからの人生がなんだか一層楽しみになってきました。毎日を一生懸命生きて、人生を振り返ったとき、何かを語れる人間でありたいなと思います。

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ノストスブックス店長。前職では某テーマパークのお姉さんや、不動産会社の営業をしていました。小説とクラシックなものが好き。一緒に、好きだと思えるものを沢山見つけましょう。