そんな思いつきからはじまった今回の「導かれて、旅。 」特集。前回の怪談特集に続き、セレクトした書籍の中から、スタッフがお気に入りの1冊をご紹介します。
なつきのおすすめ「パリからの手紙」
なつきです。暑い夏がやってきましたね。夏休みで旅行の真っ最中!という方も多いのではないでしょうか。「今年はどこに行こうかな?」と計画を立てている時、もうすでに心はフワフワと遠く彼方へ…そんな感覚も旅の醍醐味ですよね。さて、私がオススメする旅本は、「パリからの手紙」です。
著者は、グラフィックデザイナー、絵本作家、エディトリアルデザイナーとして幅広く活躍した堀内誠一。彼がフランスへ移住し、パリを拠点にヨーロッパを旅する中で描いた絵手紙を編集したもの。
その手紙を宛てた人々というのが、なんとも錚々たるメンバーなんです!澁澤龍彦や谷川俊太郎、安野光雅、石井桃子などなど。著者の豪華な交友関係も垣間見ることができます。
パリに着いてアパートを借りたところから始まり、家族とダリ美術館へ行った話、ドイツへの小旅行で見た天使像に心が安らいだ話、ナポリで正月を迎えた話などが、絵手紙の書かれた年代順に綴られていきます。初めての海外暮らしとあって、綴ることは山ほどあるわけです。目に入るもの全てが興味深く著者自身ワクワクした様子が、絵手紙としては長文にも思える文章や、堀内氏の独特なタッチで描かれたカラフルな絵からも伝わってきます。
旅先でその時感じていることを誰かに話したくなる気持ち、すごく分かるなぁ。SNSやメッセージでのやり取りが主流になった今、絵手紙を描く人はきっと稀でしょうけど、自分が見た景色や感動を、誰かに伝えたくなる気持ちは同じだと思うんです。
それに、遠いどこかで自分のことを思い出して、手紙に綴ることに時間を使ってくれたと思うと、受け取った側も嬉しかったでしょうね。絵手紙は手描きだから、その特別感も尚更でしょう。だからこそ、この絵手紙がずっと受取人の手元に残っていて、こうして本が出来上がったんですから。
みなさんも次に旅に出たら、大切な誰かに絵手紙をしたためてみてはいかがですか?
著者は、グラフィックデザイナー、絵本作家、エディトリアルデザイナーとして幅広く活躍した堀内誠一。彼がフランスへ移住し、パリを拠点にヨーロッパを旅する中で描いた絵手紙を編集したもの。
その手紙を宛てた人々というのが、なんとも錚々たるメンバーなんです!澁澤龍彦や谷川俊太郎、安野光雅、石井桃子などなど。著者の豪華な交友関係も垣間見ることができます。
パリに着いてアパートを借りたところから始まり、家族とダリ美術館へ行った話、ドイツへの小旅行で見た天使像に心が安らいだ話、ナポリで正月を迎えた話などが、絵手紙の書かれた年代順に綴られていきます。初めての海外暮らしとあって、綴ることは山ほどあるわけです。目に入るもの全てが興味深く著者自身ワクワクした様子が、絵手紙としては長文にも思える文章や、堀内氏の独特なタッチで描かれたカラフルな絵からも伝わってきます。
旅先でその時感じていることを誰かに話したくなる気持ち、すごく分かるなぁ。SNSやメッセージでのやり取りが主流になった今、絵手紙を描く人はきっと稀でしょうけど、自分が見た景色や感動を、誰かに伝えたくなる気持ちは同じだと思うんです。
それに、遠いどこかで自分のことを思い出して、手紙に綴ることに時間を使ってくれたと思うと、受け取った側も嬉しかったでしょうね。絵手紙は手描きだから、その特別感も尚更でしょう。だからこそ、この絵手紙がずっと受取人の手元に残っていて、こうして本が出来上がったんですから。
みなさんも次に旅に出たら、大切な誰かに絵手紙をしたためてみてはいかがですか?
パリからの手紙
- 著者
- 堀内誠一
- 出版社
- 日本エディタースクール出版部
- 発行年
- 1980年
グラフィックデザイナー、絵本作家、エディトリアルデザイナーなど幅広く活躍した堀内誠一の絵手紙集。パリを拠点にヨーロッパを旅する最中、澁澤龍彦・谷川俊太郎・安野光雅・石井桃子・岸田衿子・早川良雄など多彩な顔ぶれに宛てた絵手紙を編纂して収録したもの。
石井のおすすめ「季刊デザイン 13号 旅特集」
1976年から1977年にかけての「季刊デザイン」は熱い。
上記1年における「季刊デザイン」は、「音」「食」「性」そして「旅」をテーマに、グラフィックデザインを捉える視野を拡張、というよりむしろ境界線をとっぱらい、タテヨコ斜め縦横無尽に切り込む異色のスタイルを展開しました。今回はそのなかから1976年春「旅」特集号をご紹介したいと思います。
評論家・草森紳一が、江戸時代の渡世人である笹川繁蔵の墓所を訪ねようとした回想からはじまる本号。えっ、これデザイン誌ですよね。と、いきなりの謎展開に戸惑いつつも、中身を覗いてみましょう。
横尾忠則の絵画「日本原景旅行」シリーズに詩人・高橋睦郎がテキストを添えた「草枕旅ということ」。日本の観光名所をサイケデリックな色彩で描いた横尾忠則の作品図版とともに、高橋睦郎が詩歌の世界から旅の本源的意味を探ります。この時代のデザイン誌は文学者たちによる解説や評論が掲載されていることが多く、非常に読み応えがあります。
粟津潔、石岡瑛子、河村要助、和田誠ら8人のデザイナーが旅先から編集部宛てに送ったという設定でデザインしたオリジナル絵葉書。行き先はデンマーク、バハマ、ニューヨーク、東京、自分の部屋、とバラエティ豊か。旅を満喫している風のテキストもちゃんとしたためています。実際には作業場から一歩も動かず描いているわけで、想像すると少々切ない。
デザイン誌らしく、観光ポスターを集めたパートも。ポスター群はクレジット付きで現代/近代/海外と分類され、丁寧な解説が添えられています。昭和のポスターはグラフィック表現もさることながら、小気味好いひびきのキャッチコピーも魅力です。
ほかにも、黒田征太郎と長友啓典によるシニカルな東京新名所図絵、地図にまつわる亀倉雄策の評論、木村恒久のメソポタミア探険記など、一筋縄ではいかない布陣。
たとえばこんな、デザインから出発する旅はいかがでしょう。
上記1年における「季刊デザイン」は、「音」「食」「性」そして「旅」をテーマに、グラフィックデザインを捉える視野を拡張、というよりむしろ境界線をとっぱらい、タテヨコ斜め縦横無尽に切り込む異色のスタイルを展開しました。今回はそのなかから1976年春「旅」特集号をご紹介したいと思います。
評論家・草森紳一が、江戸時代の渡世人である笹川繁蔵の墓所を訪ねようとした回想からはじまる本号。えっ、これデザイン誌ですよね。と、いきなりの謎展開に戸惑いつつも、中身を覗いてみましょう。
横尾忠則の絵画「日本原景旅行」シリーズに詩人・高橋睦郎がテキストを添えた「草枕旅ということ」。日本の観光名所をサイケデリックな色彩で描いた横尾忠則の作品図版とともに、高橋睦郎が詩歌の世界から旅の本源的意味を探ります。この時代のデザイン誌は文学者たちによる解説や評論が掲載されていることが多く、非常に読み応えがあります。
粟津潔、石岡瑛子、河村要助、和田誠ら8人のデザイナーが旅先から編集部宛てに送ったという設定でデザインしたオリジナル絵葉書。行き先はデンマーク、バハマ、ニューヨーク、東京、自分の部屋、とバラエティ豊か。旅を満喫している風のテキストもちゃんとしたためています。実際には作業場から一歩も動かず描いているわけで、想像すると少々切ない。
デザイン誌らしく、観光ポスターを集めたパートも。ポスター群はクレジット付きで現代/近代/海外と分類され、丁寧な解説が添えられています。昭和のポスターはグラフィック表現もさることながら、小気味好いひびきのキャッチコピーも魅力です。
ほかにも、黒田征太郎と長友啓典によるシニカルな東京新名所図絵、地図にまつわる亀倉雄策の評論、木村恒久のメソポタミア探険記など、一筋縄ではいかない布陣。
たとえばこんな、デザインから出発する旅はいかがでしょう。
季刊デザイン 13号 旅特集
- 出版社
- 美術出版社
- 発行年
- 1976年
デザイン誌「季刊デザイン」第13号、旅特集。草森紳一「笹川繁蔵親分の墓」、高橋睦郎「草枕旅ということ」、黒田征太郎・長友啓典「東京」、木村恒久「秘境ミナレット探検記」、亀倉雄策「地図」、浅葉克己「スコットランドの光と闇」など、多彩な記事を掲載。
中野のおすすめ「A Twenty Year Retrospective」
中野です。今回の特集からの一冊は、マイケル・ケンナ「A Twenty Year Retrospective」。この写真集の幻想的で美しい風景を見ていると無性に旅に行きたくなります。
マイケル・ケンナの写真はどれも静かな音のない世界ですが、見るタイミングで気持ちも変わるのが面白くて好きです。
日々パソコンやスマホに囲まれて過ごしているので、旅には一切何も持っていかない。朝、誰もいない湖や山の麓でぼんやりしたり、夜の星空の下で寝転がったり。情報や音のない場所に身を置くことでリフレッシュできそう。
マイケル・ケンナの写真はどれも静かな音のない世界ですが、見るタイミングで気持ちも変わるのが面白くて好きです。
日々パソコンやスマホに囲まれて過ごしているので、旅には一切何も持っていかない。朝、誰もいない湖や山の麓でぼんやりしたり、夜の星空の下で寝転がったり。情報や音のない場所に身を置くことでリフレッシュできそう。
A Twenty Year Retrospective
- 著者
- マイケル・ケンナ
- 出版社
- トレヴィル
- 発行年
- 1994年
マイケル・ケンナの作品集。20世紀における建造物、雪山、工場などの無人のランドスケープをモノクロで多数掲載。
山田のおすすめ「More Than Words」
山田がオススメするのは、写真家・高野雅子がアメリカ、ヨーロッパを訪れた撮影した、まさに旅行の写真集。
グラデーションの空にコントラストが効いた砂浜。ジョエル・マイロウィッツの『Summer's Day』を思い出します。
もともとカラフルなサルベーション・マウンテンですが、高野さんの写真では目が冴えるような鮮やかさ!30年かけておじさんが一人で作ったという逸話も気になります。一度は行ってみたい。
写真の鮮やかさが映える、白を貴重としたデザイン。ポストカード・ブックレット・ポスターをまとめた「飾れる」函入りの写真集は、開けたときにおみやげのようなワクワク感があります。
グラデーションの空にコントラストが効いた砂浜。ジョエル・マイロウィッツの『Summer's Day』を思い出します。
もともとカラフルなサルベーション・マウンテンですが、高野さんの写真では目が冴えるような鮮やかさ!30年かけておじさんが一人で作ったという逸話も気になります。一度は行ってみたい。
写真の鮮やかさが映える、白を貴重としたデザイン。ポストカード・ブックレット・ポスターをまとめた「飾れる」函入りの写真集は、開けたときにおみやげのようなワクワク感があります。
More Than Words
- 著者
- Masako Takano
- 発行年
- 2015年
写真家・Masako Takakoが旅行で訪れたアメリカ、北欧、ヨーロッパの人や風景をカラーで撮影。写真の鮮やかさが映える、白を貴重としたデザインのポストカード・ブックレット・ポスターを収めた「飾れる」写真集。
それでは皆さま、ハヴァ・ナイス・トリップ。