今回のテーマは「ランドスケープ」、つまり風景です。一口に風景と言っても、海、空、道、街……などなどいろいろな場所がありますし、風景写真は一般的に画角が広いため、ポートレートほど画の中心がわかりやすくありません。見方がわからなかったときは、「このどこにでもありそうな写真のどこが良いの?」なんてよく思っていました。
しかし、捉え方の糸口が見つかると、広い画角の中からいろいろな発見をするように。ここで挙げるランドスケープの楽しみ方はごく一部ですので、皆さんそれぞれの楽しみ方を見つけてくださいね!
何気ない暮らしの風景が「構図」と「色」で輝き出す
「ニューカラー」を代表する写真家/ウィリアム・エグルストンの作品のテーマは、「今の生活」。広大なアメリカで営まれる普遍的な暮らしの中に、いくつもの小さな発見が見えてきます。
大きな家が並ぶ住宅街を写したランドスケープ。こうして離れた視点から見てみると、まるで美しく配置された造形アートのようです。その巧妙な視点と色使いで、エグルストンはカラー写真をアートの領域に押し上げた「近代アート写真の父」とも言われています。
また、日当たりを考慮して建てられる密集した日本の住宅に対し、アメリカは道路に面した平屋建て。こうした風土の違いを楽しめるのもランドスケープの魅力なのではないでしょうか。
長く続く道すがらに見える、鮮やかなサイン。エグルストンは「赤は他の色と反発するから扱いが難しい」と言いつつ、補色の緑と合わせることで程よいアクセントとして使っています。色の魔術師か。
青空を背負ったまっ平らな白屋根に、斜めに差し込む車の黄色。よく見たら隅にエグルストンの影が写っていて、パキッとキマッた構図にちょっとした遊び心を感じます。
リズムのある色の散らばりが楽しい2枚。
大きな家が並ぶ住宅街を写したランドスケープ。こうして離れた視点から見てみると、まるで美しく配置された造形アートのようです。その巧妙な視点と色使いで、エグルストンはカラー写真をアートの領域に押し上げた「近代アート写真の父」とも言われています。
また、日当たりを考慮して建てられる密集した日本の住宅に対し、アメリカは道路に面した平屋建て。こうした風土の違いを楽しめるのもランドスケープの魅力なのではないでしょうか。
長く続く道すがらに見える、鮮やかなサイン。エグルストンは「赤は他の色と反発するから扱いが難しい」と言いつつ、補色の緑と合わせることで程よいアクセントとして使っています。色の魔術師か。
青空を背負ったまっ平らな白屋根に、斜めに差し込む車の黄色。よく見たら隅にエグルストンの影が写っていて、パキッとキマッた構図にちょっとした遊び心を感じます。
リズムのある色の散らばりが楽しい2枚。
Los Alamos
- 著者
- William Eggleston
- 出版社
- Gagosian Gallery
- 発行年
- 2012年
「ニュー・カラー」を代表する写真家、ウィリアム・エグルストンの写真集。アメリカはロスアラモスで撮影されたランドスケープやポートレートを中心に、鮮やかなカラー写真を多数掲載。豪華版。
無人のランドスケープが湛える空気とエネルギー
マイケル・ケンナのランドスケープは、エグルストンの作風と打って変わって人や生活が一切映りません。自然や建造物が放つ空気感とエネルギーを額面に湛えたモノクロ写真は、得も言われぬ迫力があります。
何千年、何万年と生を営んできた自然の生命力が、今にも写真の枠から溢れ出てきそう。
樹木の根のように蔓延るレール。人間が作り上げた建造物すら、人間のにおいを感じないから不思議です。
刹那に捉えた風の姿。実は動いているんじゃないかと思うくらい、躍動感があります。
この完璧な構図には一目惚れしました。ケンナ自身もこの構図をを見つけたとき、息をするのも忘れてシャッターを切り続けたんじゃないかな。この張り詰めた空気感は、彼の止まった呼吸であるような気がしてなりません。
同じようにモノクロで空気感を伝えるようなランドスケープで、村越としやは日本独特の湿度を写真にうつし込んでいます。
何千年、何万年と生を営んできた自然の生命力が、今にも写真の枠から溢れ出てきそう。
樹木の根のように蔓延るレール。人間が作り上げた建造物すら、人間のにおいを感じないから不思議です。
刹那に捉えた風の姿。実は動いているんじゃないかと思うくらい、躍動感があります。
この完璧な構図には一目惚れしました。ケンナ自身もこの構図をを見つけたとき、息をするのも忘れてシャッターを切り続けたんじゃないかな。この張り詰めた空気感は、彼の止まった呼吸であるような気がしてなりません。
A Twenty Year Retrospective
- 著者
- マイケル・ケンナ
- 出版社
- トレヴィル
- 発行年
- 1994年
マイケル・ケンナの作品集。20世紀における建造物、雪山、工場などの無人のランドスケープをモノクロで多数掲載。
移りゆく大都会の景色を見下ろす
ベレニス・アボットの写真集『Changing New York』は、大都会・ニューヨークが舞台。開発が進み、工業化されていく街の姿をとらえています。
そびえ立つビル、ビル、ビル。
足が震えそうな高さから、金網越しのビル街を撮影。写真の中なのに、縦の奥行きの深さにハラハラしてきます。直方体のビルが描く直線と、それに重なる金網の曲線がそれぞれを引き立て合っているのも美しい。
時間によって表情を変えるニューヨークの街。時間の流れを楽しめるのは、陽の光をしっかりと映し込むことのできるランドスケープならでは。
巨大建築の写真といえば、アンドレアス・グルスキーの作品は外せません!ミクロとマクロの視点を1枚の写真に納めた壮大なランドスケープは、一度目にするだけで脳裏に焼き付いてしまいます。
グルスキーをはじめ、世界の建造物をおさめた写真をまとめた記事はこちらがオススメです。
そびえ立つビル、ビル、ビル。
足が震えそうな高さから、金網越しのビル街を撮影。写真の中なのに、縦の奥行きの深さにハラハラしてきます。直方体のビルが描く直線と、それに重なる金網の曲線がそれぞれを引き立て合っているのも美しい。
時間によって表情を変えるニューヨークの街。時間の流れを楽しめるのは、陽の光をしっかりと映し込むことのできるランドスケープならでは。
Berenice Abbott: Changing New York
- 著者
- Berenice Abbott
- 出版社
- The New Press
- 発行年
- 1999年
ベレニス・アボットの写真集。工業化が進むニューヨーク・シティをあらゆる視点から撮り収めたモノクロ写真を多数掲載。変わりゆく街並みのなかで、暮らす人々の生活が垣間見える。
アンドレアス・グルスキーの写真集。島や山岳のほか、オフィスや工場などをパノラミックに捉えた作品を掲載。人間の目では捉えきれない壮大な世界を平面に収める。
朽ち果てる風景に感じる趣
アーロン・シスキンドが撮るのは、「朽ちた風景」。コンクリートの割れ目や剥がれた塗装、落書きなど、廃れたり汚れたりして見向きもされてこなかったものをあえて写真におさめています。
時間をかけて自然が作り上げてきた風化の風景は、もはやアートの世界。
割れたガラス窓。まるで何かを描いているよう。
嗚呼、壁やペイントのテクスチャもたまりません!
時間をかけて自然が作り上げてきた風化の風景は、もはやアートの世界。
割れたガラス窓。まるで何かを描いているよう。
嗚呼、壁やペイントのテクスチャもたまりません!
Aaron Siskind 100
- 著者
- Aaron Siskind
- 出版社
- Power House Books
- 発行年
- 2003年
アメリカの写真家、アーロン・シスキンドの作品集。壁のペイントのほか、割れたガラス、塗装の剥離、シミなども芸術として捉え、モノクロで撮影。
最近は休みのたびに1人でギャラリーや本屋に行き、写真を眺めては悶絶しています。そのおかげもあってか、自分で言うのもなんですが、前回よりも写真を紹介する表現がうまくなった気がします。どうですかね?
何もわからなかったど初心者がこうしてブログを任せてもらえるようになり、自分の使命は「まだ本も写真もデザインも知らない人にその素晴らしさを伝えること」だと勝手に思っています。もちろんまだまだひよっこですので、今後も成長を見守っていただけたら!