イヌイットの壁かけ | 岩崎昌子
岩崎昌子による、北極圏の先住民族イヌイットの壁掛けを紹介する一冊。厳しい自然の中で、イヌイットの女性たちが防寒着の端布を生かして手作りした作品を多数収録。動物や自然、日々の暮らしが色とりどりに表現され、素朴であたたかな造形の魅力が伝わってくる。針仕事を通して受け継がれてきた感性や、暮らしの記録としての側面も感じられる内容となっており、生活と表現が重なり合う豊かな世界を見せている。
David Casavant Archive
ニューヨークのスタイリスト、デイビッド・カサヴァントが10代から集めてきた服を軸に構成された写真集。ヘルムート・ラングやラフ・シモンズなど、1990〜2000年代の希少なコンセプチュアルなメンズウェアが中心で、コレクションの厚みと時代性が伝わる内容。このアーカイブは単なる収集ではなく、若い世代のカルチャーや姿勢へのカサヴァント独自の視点を写す場でもある。ザヴィエル・チャやライアン・トレカーティンら多様なアーティストとのコラボレーションも収録され、服を通して時代の空気や創造性を読み解くことができる一冊。
トーマス・ルフ展
2016年から2017年にかけ、東京国立近代美術館と金沢21世紀美術館で開催された「トーマス・ルフ展」の図録。アンドレアス・グルスキーやトーマス・シュトゥルートらとともにデュッセルドルフ芸術アカデミーでベッヒャー夫妻に学んだトーマス・ルフ。1990年代以降、現代写真を牽引してきてきた氏の初期作から最新作までを一挙に収録。巨大なポートレート、建築、ヌード、天体などをモチーフにした作品を通し、写真表現や人間の認識そのものに問いを投げる。
雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事
an・an、BRUTUS、POPEYEなど人気雑誌の黄金時代を築いたアートディレクター、堀内誠一の仕事集。女性誌をテキスト中心からヴィジュアル中心へと変えた革新的なアートディレクション、写真に代わってイメージを的確に表現するイラストレーションなどをカラーで多数掲載。立木義浩や植田正治など、名だたる写真家たちの作品を活かしながら見事に雑誌に落としこまれた紙面が満載。
フローラの神殿 | ロバート・ジョン・ソーントン、荒俣宏
イギリスの植物学者ロバート・ジョン・ソーントンが手がけた植物図鑑『フローラの神殿』を、荒俣宏が編纂・解説。リンネの植物分類をもとに描かれた花々は、単なる博物図版を超えて、劇的な風景や寓意的モチーフと共に表現されている。谷間に咲くユリや夜に開花する大輪など、ロマンティックで荘厳な構図が魅力で、西欧の博物図鑑でも屈指の美しさを誇る一冊。図版とともに、分類学の背景やソーントンの生涯についての解説も収録。装丁は鈴木一誌。
花の文化史 花の歴史をつくった人々 | 春山行夫
モダニズム詩人、春山行夫による花の資料集。古代から現代にいたるまでの植物にまつわる様々な伝説や神話、そして植物と人間との関わりを軸としたフォークロアなどを圧倒的なボリュームで収録した一冊。さらに園芸や造園、植物採集、探検家たちの歴史なども網羅し、あらゆる花に関する知識が盛り込まれた一冊。装丁は市川英夫、箭内早苗。
バックミンスター・フラー展 ユア・プライベート・スカイ
2001年に神奈川県立近代美術館、愛知県美術館、ワタリウム美術館で開催された「バックミンスター・フラー展 ユア・プライベート・スカイ」の図録。エンジニア、詩人、デザイナー、哲学者、建築家、芸術家、発明家といった多面的な顔をもつフラーの世界に迫る一冊。代表的な作品に加え、スケッチや図面を交えて紹介し、その思想と実践を包括的に紹介している。
Marchenstuberl | Juergen Teller
ドイツ出身の写真家、ユルゲン・テラーによる作品集。テラーが自身と家族のルーツを見つめ直したシリーズ「メルヒェンシュテューバール」を中心に構成されている。テラーは両親の家の地下室にある、家族内で“おとぎ話の小部屋”として親しまれてきたウェットバーを撮影し、個人的な記憶や感情が交錯する空間を独自の視点で写し出した。そのほか、テラー自身やイヴ・サン=ローラン、ケイト・モスらのポートレイトなど、これまでの多彩な作品群からもセレクションが加えられており、テラーの表現の幅と軌跡を総覧できる内容となっている。
Wilder Mann 欧州の獣人 仮装する原始の名残 | シャルル・フレジェ
人類学的な視点から撮影するポートレートで知られるフランスの写真家、シャルル・フレジェの作品集。ヨーロッパ各地に古くから伝わる祭礼を取材し、仮面や角を付けたり、獣毛を着込んだり、鳴り物を提げたりと、奇妙かつ独創的な生き物に扮する人々のポートレートを撮影している。地域ごとに異なる形態を持ちながらも、自然信仰や共同体の記憶と深く結びついた儀礼的な姿は、現代の写真表現を通して新たな意味を帯びて立ち現れる。
Empire | Charles Freger
フランスの写真家、シャルル・フレジェによるポートレートシリーズ「Empire」をまとめた作品集。2004〜2008年にかけてヨーロッパ各地を巡り、共和国軍や王室警備隊など各国のエリート部隊に所属する人々を撮影したもの。行進や儀礼を担う彼らは、歴史を背負う華やかで厳格なユニフォームをまとい、その服飾文化は国家や地域のアイデンティティを象徴している。フレジェはこれらの隊員たちを現代的なポートレートとして撮影し、儀礼や権威の在り方を可視化している。
Campo di Marte | Nathalie du Pasquier
イタリアのポストモダンを代表するデザイン集団メンフィスのメンバーとして知られるナタリー・デュ・パスキエの作品集。1980年代から2020年までに制作した絵画を撮影し、切り抜いて再構築する手法によって生まれた作品群を収録。具象と抽象、平面と立体の境界を揺さぶる視覚的実験が展開され、40年にわたる創作の変遷と探求を映し出している。
高松次郎ミステリーズ
2014〜2015年に東京国立近代美術館で開催された展覧会の公式図録。コンセプチュアル・アートの先駆として知られる高松次郎の制作を、約50点のオブジェ、彫刻、絵画と、150点に及ぶドローイングによって多角的に検証する。高松が1960年代から90年代に展開した多様な表現を時期ごとに整理し、その背後に潜む思考の連続性を読み解く構成。見かけも素材も大きく異なる作品群を横断しながら、形の反復や知覚の揺らぎといった、高松が一貫して探究したテーマを浮かび上がらせる内容であり、国際的に再評価が進む制作の全体像に迫る一冊。
川勝正幸の本棚
編集者・ライターとして知られる故川勝正幸の膨大な書籍コレクションを記録した一冊。彼が生前に蒐集した約1200冊の本や雑誌を一覧形式で収めている。単なる書誌リストにとどまらず、川勝のカルチャーに対する鋭いアンテナや独自の趣味嗜好が浮かび上がり、当時の音楽、映画、アートなどサブカルチャーシーンの息づかいを伝えるアーカイブとしても価値が高い。本棚という形で彼の世界観を再現することで、ポップ文化への愛と知的好奇心、そして編集者としての感性を追体験できる構成となっている。コレクターやサブカルチャー愛好者にとって、時代の気分を体感できる貴重な資料である。
構築の人、ジャン・プルーヴェ | みすず書房
フランスの建築家・デザイナー、ジャン・プルーヴェを紹介する作品集。鋳鉄職人、エンジニア、芸術家という三つの資質を併せ持ち、「構築の人」と称された彼の歩みをたどる。家具や建築、工業製品に至るまで幅広い分野で生み出された造形を通じ、その思想と技術、独自のデザインアプローチを読み解く内容となっている。
The Rietveld Schroder House | ヘリット・リートフェルト
オランダの建築家ヘリット・リートフェルトが1924年に設計した住宅〈シュレーダー邸〉を紹介する写真資料集。外観や内装、作り付けの家具や収納ユニットまでを詳細に撮影し、建築の全体像を多角的に伝える。シュレーダー夫人へのインタビューや、設計思想や背景を解説するテキストも収録され、デ・ステイル運動を代表するこの住宅の魅力と歴史的意義を深く掘り下げている。英語表記。
タイ・カンボジア陶磁
ヨコタ南方民族美術館が所蔵する東南アジアの土器・陶磁器を精選してまとめた図録。タイのバンチェン遺跡から出土した紀元前の土器を中心に、壺、椀、装飾具、印章など147点をカラー図版で紹介する。さらに、日本の茶文化とも深く関わる宋胡録焼、そしてアンコール王朝に代表されるカンボジアのクメール陶磁なども収録。地域ごとの造形思想や技術の変遷をたどり、東南アジア陶磁の多彩な魅力を読み解く資料となっている。
レコード・ジャケット・ライブラリー | 植草甚一
レコード・ジャケット・ライブラリー/外国文学、ジャズ、映画評論家、コラージュアーティストとしても知られる植草甚一監修のもと、デザイン性の高いレコードジャケットを編集・紹介。ビートルズ、ボブ・ディランら名だたるアーティストらの優れたレコードジャケットをカラーとモノクロで多数収録。植草甚一の他、片岡義男、沢渡朔などによるエッセイも併せて掲載。
ジャズ・カバー | ジュリウス・ウィードマン
1940年代から1990年代初頭までのジャズ・レコードを網羅したビジュアル資料集。アルバムカバーの図版とともに、演奏者やアルバム名、発売年、美術監督、写真家、イラストレーター、レーベルなど詳細なデータを収録している。さらにキング・ブリット、ジャイルス・ピーターソン、ライナー・トゥルービーら世界的DJによるトップ10リストやインタビューも掲載し、音楽・デザイン・カルチャーの視点からジャズの魅力を多角的に探っている。
Young Chet | William Claxton
アメリカの写真家ウィリアム・クラクストンによる作品集。ウエストコースト・ジャズを代表するトランペット奏者チェット・ベイカーの活動に密着し、演奏の合間やリハーサル、日常の一瞬をモノクロでとらえている。瑞々しい若き日の姿からは、彼の音楽と同じく繊細で抒情的な気配が漂い、当時のジャズシーンの空気感をも伝えている点が特徴。ステージ上の緊張感と、オフステージで見せる素顔を交錯させながら、ジャズの黄金期を象徴する音楽家の魅力を鮮やかに記録。写真を通して音楽と時代の息遣いを描き出している。
フウロウ | 泊昭雄
広告写真やアートフォトで知られる写真家、泊昭雄による作品集。穏やかな海や滑走するジェットコースター、廃材の山、生い茂る竹林など、日常と非日常が交錯する風景を切り取っている。旅の道連れとなる音楽を背景に、出会った光景やそこに流れる時間を独自のまなざしで捉えた写真群は、風や波の感触、瞬間の物語を鮮やかに伝えている。視覚だけでなく感覚そのものに響くような世界が広がる。
Huber.Huber: Widerspruchliche Bewegungsreize / Contradictory Motion Cues | フーバー・フーバー
スイス人アーティストデュオ、フーバー・フーバーの作品集。2011年に同出版社より刊行された「Universen」の続編であり、この10年間の集大成ともいえる一冊。見るものをイメージで満ち溢れた世界へと誘う写真作品とともにコラージュ作品を掲載。その奇妙な視覚の小宇宙を読み解く手がかりとして、「リンゴ」、「シャーレ」、「塩湖」といった名詞から「湿った」、「幾何学的な」、「不気味なまでの」のような形容詞まで、非常に幅広い索引がついている。英語、ドイツ語、スペイン語表記。一部7国語表記。
The Great Cape Rinderhorn | Thorsten Brinkmann
ドイツ出身のアーティスト、トルステン・ブリンクマンの作品集。テキサス州ヒューストンのライス・ギャラリーとベルギーのBe-Partで行われたインスタレーション展示をもとに構成。ブリンクマンは自身を“連続的収集家”と呼び、蚤の市や古着屋、路上やゴミ捨て場で集めた家具や衣類、日用品などのオブジェを組み合わせ、見慣れた物の機能や意味を解体しながら新たな造形を生み出している。生活圏で使い古された物たちが、展示空間の中で異なる役割を与えられ、ヒトとモノの関係性、文化としての所有の感覚を問い直している。
Jean Colin: Affichiste
フランスのポスター作家ジャン・コランの活動をまとめた作品集。映画ポスターをはじめ、コカ・コーラ、CINZANO、CANADA DRYといった広告ポスターを多数収録している。戦後フランスのグラフィックデザインを牽引した作家のひとりとして、洗練されたユーモアと鮮やかなグラフィック表現を確立。豊富な図版と解説から、広告デザイン史におけるコランの独自の足跡を辿ることができる一冊。フランス語表記。
Levi’s Vintage Clothing 2020 A/W
アメリカ・サンフランシスコ発祥のジーンズのブランド、Levi’s(リーバイス)の2020年秋冬コレクションのルックブック。リーバイスの過去のアーカイブを元に再現された復刻コレクションVINTAGE CLOTHING(ヴィンテージクロージング)。今号ではアメリカ、ケンタッキー州最大の街、1980年代のミュージックシーンのひとつであり、90年代のポストロック、グランジの先駆けとなったルイビルをテーマにした様々なビジュアルを掲載。英語表記。
建築のそれからにまつわる5本の映画 | 中山英之
建築家・中山英之が手がけた5つの建築を紹介する書籍。2019年にTOTOギャラリーで開催された展覧会にあわせて刊行されたもの。設計から竣工までのプロセスに加え、建築が建築家の手を離れた後に刻む時間や変化を見つめ、「建築のそれから」にまつわる物語を描く。写真や図面、テキストを通じて、建築と人、環境との関係性を多角的に捉えている。
Manresa: An Edible Reflection
カリフォルニア州ロス・ガトスのレストラン「Manresa(マンレサ)」のオーナーシェフ、デイヴィッド・キンチによるレシピ兼ドキュメント。サンタクルーズ山脈と海に囲まれた土地の力を料理に映し出すべく、食材の選び方から、一皿の着想、試作のプロセス、メニュー構成にいたる思考を丁寧に語る。30年以上にわたる厨房での経験と世界各地の食文化に触れた旅路が、食材への深いまなざしと結びつき、独創的な組み合わせや洗練された一品を生み出している。
Etxebarri | Juan Pablo Cardenal、Jon Sarabia
スペイン・バスク地方にある名店「アサドール・エチェバリ」を紹介するモノグラフ。ビクトル・アルギンソニスが率いるこのレストランは、世界最高峰のグリル料理店として知られ、前菜からデザートに至るまで、すべての料理がガスではなく選び抜かれた木材による火で調理されている。最も原始的かつ本質的な調理法を追求するその哲学とともに、厨房の様子や料理の数々を美しい写真とともに紹介している。英語表記。
アイデア別冊 1982年 東京デザイナーズ・スペース 22人のフォトグラファー
1982年発行のアイデア別冊、東京デザイナーズ・スペース号。22人のフォトグラファー特集。広告で活躍するフォトグラファーの写真と、使用された広告を多数掲載。十文字美信、沢渡朔、鋤田正義、横須賀功光、浅井慎平、福田繁雄ら22名の作品が並ぶ。座談会「今、写真の時代」、早川良雄「たのしい催し:ドローイング展」なども収録。
アイデア別冊 フランスの衝撃的イラストレーション
グラフィックデザイン誌『アイデア』別冊・フランスの衝撃的イラストレーション特集号。ベルナール・ヴィルモ、レイモンド・サヴィニャック、アンドレ・フランソワ、ジャン・ミシェル・フォロンをはじめとする巨匠から気鋭の作家にいたるまで、フランスの多様で多彩なイラストレーターたちの作品群を紹介。巻末には各作家たちの略歴も収録。
アイデア別冊 1979ニューヨークADC展
グラフィックデザイン誌『アイデア』別冊・1979年に開催された第58回ニューヨークADC展を特集。新聞広告、雑誌エディトリアル、ポスター、書籍&ジャケット、アート&イラストレーション、写真など、各部門ごとの受賞作品を紹介。ADC会長や審査委員長らとの対談記事も収録。
アイデア別冊 1983年 東京デザイナーズ・スペース グラフィック&エディトリアル・デザイン
グラフィックデザイン誌『アイデア』別冊・1983年 東京デザイナーズ・スペース グラフィック&エディトリアル・デザイン特集号。亀倉雄策、田中一光、福田繁雄、田名網敬一、大橋正、粟津潔らを筆頭におよそ90名にも及ぶデザイナーたちによる装丁やロゴマーク、グラフィックなどの作品群をカラー、モノクロ図版で収録。巻末にはそれぞれ「私の仕事について」という短いテキストを寄せている。
10 FACES 02 | YUUK + 蓮井元彦
ヘアアーティストYUUKと写真家・蓮井元彦によるコラボレーションから生まれたビジュアルブック『10 FACES』第2弾。小松菜奈、杉咲花、成海璃子、二階堂ふみ、清野菜名ら10人の俳優・モデルを被写体に、自然体で飾らない表情や一瞬のまなざしを丁寧に写し取ったポートレートを収録する。それぞれの個性と魅力を引き出す繊細なヘアスタイリングと写真の融合が、静かで豊かな物語性をたたえた一冊となっている。限定1000部発行。
リー・ミンウェイとその関係 | 森美術館
2014年から2015年にかけて森美術館で開催された展覧会の公式カタログ。台湾出身で、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、リー・ミンウェイの約20年にわたる創作活動を紹介する。観客との対話や体験を通じて“関係性”を主題とする代表的プロジェクトに加え、ジョン・ケージ、李禹煥、小沢剛ら、同テーマをめぐる他作家の作品も収録。豊富な図版とともに、それぞれの作品に関する丁寧な解説を掲載している。
Cai Guo Qiang: From The Pan-Pacific 蔡國強 環太平洋より
1994年にいわき市立美術館で開催された展覧会にあわせて刊行されたカタログ。中国出身の現代美術家・蔡國強(ツァイ・グオチャン)が、いわきに拠点を置き、地域の素材や住民との交流を通して制作した作品「なぜいわきで発表するのか」を紹介。太平洋に面した港町の風景を背景に、船や魚、廃船、流木といった地域に根ざした素材を取り入れ、土地との密接な関係から生み出される表現を展開。作品を通じて投げかけられた問いに対し、太平洋をめぐる文化的・歴史的な視点から応答する構成となっている。
Between Me & the Us | 濱田紘輔
東京を拠点に活動する写真家・濱田紘輔が、2016年から2018年にかけてアメリカ各地を旅しながら撮影した作品集。レンタカーで東海岸から南部を経て西海岸へと移動するなかで、ガソリンスタンド、ダイナー、駐車場、路上など、日々の暮らしの場で偶然出会い、短い言葉を交わした人々の姿を写し取っている。
話しているのは誰?現代美術に潜む文学
2019年に国立新美術館で開催された展覧会の公式図録。田村友一郎、ミヤギフトシ、小林エリカ、豊嶋康子、山城知佳子、北島敬三の6名による映像、写真、インスタレーションを、文学という視点から読み解く内容。詩や物語、記録といった言語の要素が、どのように現代美術の表現へ浸透し、作品の構造や受容に影響しているのかを探る構成。展示風景や作品図版のほか、作家ごとの背景や制作プロセスを示す解説を通して、ジャンルを横断する思考の広がりを表現している。
安井仲治作品集
2023年から2024年にかけて兵庫県立美術館ほか全国を巡回した、生誕120年回顧展にあわせて刊行された図録。大正から太平洋戦争開戦に至る激動の時代を生き、38歳で早逝した写真家・安井仲治の活動を5章構成でたどる。動植物のクローズアップや静物、亡命ユダヤ人、サーカス団、労働者の姿まで、多様な主題を独自の視線で捉えた代表作を網羅。ソラリゼーションをはじめとする実験的技法から、社会の周縁に寄り添うドキュメントまで、安井の幅広い創作領域を紹介している。
三瀬夏之介 ゆらぐ絵画 潜行、氾濫、上昇、斜行、迂回
2024年に山形美術館で開催された展示の図録。東北の風土や土地の歴史に民俗学的視点で向き合い、記憶の層を重ね上げるように描く独自の方法は、巨大な緞帳を思わせる空間的絵画へと発展している。その近年の代表作に加え、地域と連動した取り組みや山形美術館の所蔵作品との呼応を通して、三瀬が描こうとする「風景」の変容を読み取ることができる。
Los Alamos | William Eggleston
「ニュー・カラー」を象徴する写真家ウィリアム・エグルストンが、1960〜70年代にかけてアメリカ南部を旅しながら撮影した作品を収めた写真集。メンフィスを起点にロスアラモスへと続くロードトリップの途上で出会った風景や建物、人々の日常を捉えている。エグルストンが「世界を民主的に見る」と語った視線は、被写体の大小や価値を問わず目の前の事象を等価に写し、アメリカ南部の生活世界を詩的に浮かび上がらせている。
2 1/4 | William Eggleston
アメリカ南部を拠点に活動し、「ニュー・カラー」を代表する写真家ウィリアム・エグルストンの作品集。1966〜71年にかけて、6×6判のフォーマットで撮影されたカラー写真を45点収録。エグルストンが黒白写真からカラーへ移行した初期の探求期の作品群であり、身近な風景や室内、人物を淡々と切り取ったスナップは何気ない瞬間を鮮やかに切り取っている。巻末には小説家ブルース・ワグナーによるテキストを収録し、作品世界の背景を補完している。
型録 20冊セット(1〜19号+号外) | 広瀬勉
写真家・広瀬勉の自主制作写真誌「型録」20冊(1〜19号+号外)セット。各号ごとに「コマーシャル」「夜の学校」「机上」「帳」など異なるテーマを掲げ、東京を中心とした日常の断片をモノクロで切り取っている。街を行き交う人の姿、取り壊し途中の建物、野良猫や犬、小さな看板や机の上の品々など、見過ごされがちな光景が、硬質なコントラストによって浮かび上がる。短いテキストと写真が呼応し、都市の奥行きや時間の手触りをさりげなく伝える構成も魅力。
Distant Drums | 濱田英明
写真家・濱田英明が2013〜2018年にかけて、ロンドン、パリ、エジプト、台北、香港、ハノイなどで撮影した作品をまとめた一冊。観光地の絶景ではなく、ふとした日常の光景に潜む気配や機微をとらえた写真が並ぶ。窓辺に寄りかかる少女や、渡り鳥の群れ、砂漠を駆ける少年など、世界各地で出会った出来事が、柔らかな光とともに写し出されている。まるでその場所にいるような感覚になれる一冊。
Every Kind of Wind: Calder and the 21st Century
アメリカの彫刻家アレクサンダー・カルダーの作品を紹介する一冊。2022年から2023年にかけてニューヨークのNahmad Contemporaryで開催された展覧会にあわせて刊行されたもの。革新的なモビールやスタビルに代表される彫刻作品に加え、現代美術家5名の作品と対話的に展示された様子を収録している。図版と解説を通じて、カルダーの芸術がどのように現代作家に影響を与え、再解釈されているのかを浮かび上がらせている。
Calder Intime | Alexander Calder
アメリカの彫刻家アレクサンダー・カルダーの作品集。カラフルな缶詰の箱で形づくられた鳥や、ガラス片を用いた大きな魚、玩具や針金のオブジェ、サーカスを題材にした造形、モビール、アクセサリーなど、多彩な作品を収録している。いずれも家族や親しい友人のために制作されたもので、ユーモアと自由な発想に満ちている点が際立っている。身近な素材を生かしながら展開された造形は、カルダーの人間味と豊かな表現力を浮かび上がらせている。