植田正治の写真
1993年に東京ステーションギャラリーで開催された、写真家・植田正治の展示図録。「砂丘」シリーズや「童歴」シリーズをはじめとする約200点の作品を4つのセクションに分けて収録。砂丘に人物を演出的に配置した代表作から、子供たちの日常を捉えたスナップまで、植田の仕事の幅広さを見渡すことができる。アラン・サヤック「植田正治――砂と空と海の単純化世界」、岡井耀毅「現実を夢幻化する私的随想の世界」、池上浩生「植田正治の写真」の3本のテキストを掲載。
The Art of Richard Diebenkorn ハードカバー版
アメリカの画家リチャード・ディーベンコーンの作品集。戦後アメリカ美術を代表する存在として知られる彼の活動を、初期から晩年までたどっている。具象的な作品に取り組んだ時期から、「オーシャンパーク」シリーズに至る抽象表現まで、変遷を追いながらその造形の特徴を紹介。約190点におよぶカラー図版を収録し、抽象と具象のあいだを行き来する表現の広がりを読み解くことができる。
GAS BOOK 28 Yoshirotten
『GASBOOK』シリーズ第28号。グラフィックアーティストでアートディレクター、YOSHIROTTENの作品集。ニューヨークやベルリンを含む国内外のクライアントワークを収録し、ACEホテルのインスタレーションデザインや、BOYS NOIZE、DJ HELL、m-floのCDジャケットデザイン、JAXA COSMODEのプロダクトデザインなど、多岐にわたるプロジェクトが並ぶ。日本の音楽業界向けのデザインも豊富に掲載され、THE LOWBROWS、Mr.Children、MIYAVI、RIZEなどの案件を通して、彼自身の音楽活動との関わりも感じられる。
Marcel Broodthaers: Livre d’image. Bilderbuch
ベルギーの詩人であり芸術家、マルセル・ブロータスの活動を紹介する作品集。インスタレーションの先駆的存在として知られ、数多くのコンセプチュアル・アートを手がけたブロータスの代表作を収録。卵やムール貝の殻といった日常の素材を用い、象徴性と批評性を帯びた造形を展開する作品群は、20世紀美術の文脈において独自の位置を占める。本書は図版とテキストを通じて、その実験的で詩的な創作世界を浮かび上がらせている。
Stern Portfolio No.29 Peter Lindbergh: Invasion
ドイツの写真誌『Stern Fotografie』第29号として刊行された、写真家ピーター・リンドバーグのポートフォリオ集。UFOや爆発、霧に包まれた人物像など、映画やポップ・アートを想起させる幻想的なイメージを通して、ドラマ性と不穏さを併せ持つ表現を展開している。
コルドバ遊記 記憶の中の都市
作家・沓掛良彦の紀行書。スペインの古都コルドバを歩き、街並みや建築、歴史的景観に触れた記録をまとめる。観光地としての外観にとどまらず、日常の風景や市民の生活にも目を向け、歴史の重みと現代の営みが交差する都市の様相を描く。画家・小柳裕の絵画と写真家・横溝静による記録写真が添えられ、文章と絵画・写真が異なる視点からコルドバの記憶を重ねていく。
The Code | John Gossage
アメリカの写真家、ジョン・ゴセージによる作品集。ニューヨーク州イーストハンプトンのハーパーズ・ブックスで開催された展覧会に際して刊行されたもの。東京を中心に、車のティッシュボックス、路地裏、電車の乗降口、新宿ゴールデン街など、都市の日常に潜む断片的な風景をモノクロで撮影している。無造作なようでいて、都市のリズムや時間の層を静かに映し出し、異国の視線を通じて日本の都市像を再構成している。
ピエール・カルダン 時代とモード
ファッションデザイナー、ピエール・カルダンの作品集。1950年代から1990年代にかけての約50年のデザインを写真で振り返る。カルダン自身によるデザイン画を収録するほか、広告ビジュアルやショー写真を通じて、服飾作品の素材やカッティング、色彩の工夫を紹介。各ページ下部には語録が添えられ、デザインへの思考と哲学が言葉によって補われる。
Somewhere Sideways Down at an Angle but Very Close
ドイツ出身のアーティスト、フロリアン・マイゼンバーグによる展示図録。写真やメッセージといったデジタルデータをプリントアウトし、スキャンや再デジタル化を重ねることで、デジタルと物質のあいだを往復する作品を紹介。本書は、その膨大なアウトプットから抜粋して再構成したもので、単なる記録にとどまらず、印刷物として新たなかたちを与えられている。拡張現実(AR)アプリにも対応し、視覚体験を別の感覚へと広げる試みも盛り込まれている。
Mirages | Lieven Hendriks
オランダのアーティスト、リーヴェン・ヘンドリクスの約20年にわたる制作をまとめた作品集。日常の中に人の痕跡が残るモチーフを起点に、光の操作やトロンプルイユ的な効果を用いながら、希望や安らぎ、欲望といった抽象的な概念を表現している。平面でありながら立体的にも見える画面は、見ることの確かさを揺さぶり、絵画の本質や価値を静かに問いかける。時間性と永遠性、存在と不在、真実と虚構のあいだに生じる緊張関係が、作品全体を貫いている。
Elisabeth Wild: Fantaslas
オーストリア出身のアーティスト、エリザベス・ワイルドの作品集。色彩豊かでダイナミックなコラージュ作品を多数収録。光沢紙の雑誌から切り抜かれた商業的なイメージを素材に、ユーモアと不穏さが共存し、きらめくような神秘性とともに次元や時間を超えたような不思議な世界を創り出している。ワイルドの独創性とその芸術の意義を多角的な視点で語られた寄稿も掲載。
野村仁 変化する相 ー 時・場・身体
2009年に国立新美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された図録。現代美術家・野村仁の約40年にわたる創作活動を振り返る回顧展の内容を収録する。写真、立体、平面、インスタレーション、映像など多様なメディアによる作品を通して、「時間」「重力」「自然現象」といった主題を探究してきた歩みを紹介。ドライアイスの昇華や太陽・月の軌跡など、身近な現象から宇宙的スケールの構造までを観察・記録する作品が掲載されている。豊富な図版と解説に加え、年譜や文献リストも収録。
Baseline Magazine no.14: Neue Haas Grotesk
イギリス発のタイポグラフィ専門誌『Baseline』第14号。スイス・モダンを背景に生まれたサンセリフ書体「Neue Haas Grotesk」を特集し、設計思想、歴史的背景、視覚的構造に関する論考と資料を収録。書体の細部構造や字形の変遷を詳細に扱い、設計の意図から印刷・組版の実践まで、グラフィックデザインの実務と批評の両面から検討が加えられている。欧州を中心としたタイポグラフィ文化の文脈のなかで書体を捉え直し、造形と情報設計の関係を問い直す。
Herbert Bayer: Visual Communication, Architecture, Painting
グラフィックデザイナー、ヘルベルト・バイヤーの作品集。バウハウスで教鞭を執り、グラフィックデザイン、建築、絵画、写真など多岐にわたる活動を展開したバイヤーの仕事を、時系列に沿って網羅的に収める。絵画、建築プロジェクト、展覧会デザイン、グラフィックデザインのカラー・モノクロ図版200点以上を収録するとともに、バイヤー自身がアート、建築、展覧会技法、グラフィックの各分野について書いた分析的・内省的な論考も掲載。
松下電器宣伝70年史
1918年から1988年までの松下電器の宣伝活動をまとめた資料集。創業から約70年にわたる広告表現を新聞広告、ポスター、テレビCM、雑誌広告などの資料で構成している。「明るいナショナル」から「ヒューマン・エレクトロニクス」まで時代ごとにブランドメッセージの変遷をたどり、松下幸之助の経営理念とともにナショナルブランドの形成過程を記録。戦前から高度経済成長期、国際展開に至る広告戦略に加え、海外宣伝、受賞作品記録、年表なども収録する。
RETINAGAZER | 塩田正幸
写真家・塩田正幸の作品集。約四半世紀にわたる制作を横断し、初期のスナップシリーズ「NPEAKER」「LIFE HUNTER」、音楽シーンのポートレート、私的な記録写真、近年の「RETINAGAZER」シリーズまで143点の図版を収録。撮影対象も手法も一定せず、音楽、日常、実験的なイメージが時間の流れに沿って混在しながら並び、写真という行為の幅と変容をたどることができる。別冊にはダニエル・アビー、松村正人、石川祥伍による論考を掲載。
The Dusseldorf School of Photography | Stefan Gronert
1970年代から2000年代にかけてのデュッセルドルフ美術アカデミー写真学科と、その出身者たちの仕事を網羅した写真集。ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻が70年代に写真教育へ制度的な基盤を与えて以降の展開を辿り、カンディダ・ヘーファー、アクセル・ヒュッテ、アンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトゥルート、トーマス・ルフ、シモーネ・ニーヴェグ、ローレンツ・バージェスらの代表作160点以上を収録。バウハウス以降最も世界的な影響力を持つとされる写真運動の、初の本格的な概観書。
An Autobiography | Richard Avedon
写真家、リチャード・アヴェドンの回顧録的な作品集。ポートレート、ファッション、ルポタージュの3部からなり、マリリン・モンロー、ジャニス・ジョプリン、アンディ・ウォーホル、サミュエル・ベケット、マルコムXらの著名人のポートレートを掲載。第3部では精神病院の患者やベトナム戦争の犠牲者を撮影した生々しいドキュメンタリー写真を収録する。時系列によらず過去・現在・未来の作品を並置し、自らの人生と仕事を写真によって語り直す試み。
アーヴィング・ペン 三宅一生の仕事への視点
写真家、アーヴィング・ペンの作品集。デザイナー三宅一生との長年にわたる協働から生まれた写真集で、三宅が創り出す布の表面、折り目、垂み、テクスチャーの数々をペンの視点で捉えている。写真によって三宅のデザインは全く新しい表情を帯び、ペンにとってもテクスチャーや自然の形、さらには異国の文化が纏うヴェールや仮面というテーマと向き合う機会となった。一方の仕事がもう一方を映す鏡となった協働の記録。
I'll Wear It Until I'm Dead: The Song Fashion Archives
1990年代にウィーンで創設されたファッション・アート・インテリアのコンセプトストア「SONG」のアーカイブ集。創設者ミュンイル・ソンの個人コレクションから、マルタン・マルジェラ、ドリス・ヴァン・ノッテン、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、バレンシアガなどのアヴァンギャルドなファッションピースを再撮影して収録。撮影はロナルド・ストープス、ノーマ・キスカン、マリア・ジーゲルベックが担当し、ダーク・ヴァン・セーンやメイクアップアーティストのインゲ・グロニャールらとのコラボレーションにより制作された。
喰譜 Jiki-fu | 緒方慎一郎
デザイナー、緒方慎一郎の作品集。虎河豚、猪、薇、鴨、白子筍、稚鮎、毛蟹といった季節の伝統食材を、独自の美意識で再構築したフードアート作品を収録する。器と料理がひとつになる瞬間を捉えた写真が並び、和食の美と哲学を視覚から問い直す。東京大学総合研究博物館のために制作した作品群をまとめ、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された和食の現代的な姿を記録している。
歌舞伎勘亭流 | 竹柴蟹助
歌舞伎の世界であみだされ、200年以上の歴史を生き続ける独自の伝統書体「勘亭流」の資料集。丸みを帯びた太い筆致で字の隙間を埋めるように書かれるこの書体は、江戸時代から歌舞伎の看板や番付、チラシに用いられ、興行の華やかさとともに発展してきた。勘亭流の名手である狂言作者・竹柴蟹助が歌舞伎外題(演目の題名)や役者名を実際に揮毫し、それぞれの字形の成り立ちや書き方を解説とともに収録する。文字の造形と歌舞伎の歴史が交差する独自の実用資料。
Edward Weston
写真家、エドワード・ウェストン(1886-1958)の作品集。対象の形や質感を精密に捉えることで知られるウェストンが手がけた、静物、ヌード、風景を中心とした125点のモノクロ作品を収録。日記から抜粋した125の断章も合わせて掲載し、写真とテキストが一対一で対応する形で生涯と旅の記録を補っている。各時代の代表的な作品が一堂に揃い、作品と言葉を通じてウェストンの芸術世界を俯瞰できる。
Diane Arbus: Monograph
写真家、ダイアン・アーバスの作品集。ヴォーグやハーパーズ・バザーなど人気誌で活躍した後、ヌーディストや覆面舞踏会の参加者、公園に集う人々など社会の周縁に生きる「特別な人々」を撮り続けた。1971年に48歳で亡くなったアーバスの翌年、MoMA回顧展と同時期に刊行された死後のモノグラフで、80点の写真を収録。編集と装幀は画家のマービン・イスラエルと娘のドーン・アーバスが担当している。
Works Ronald Friends | Ronald Stoops
写真家、ロナルド・ストゥープスの作品集。1980年代にモデルとして活動したのち、友人のマルタン・マルジェラの誘いでファッションフォトグラファーへと転身。以降、マルジェラ、ラフ・シモンズ、ヴェロニク・ブランキーノ、オリヴィエ・ティスケンスらアントワープのデザイナーたちとともに仕事を重ねてきた。本書は2019年に東京で開催された展覧会にあわせて刊行されたストゥープス初の単独写真集で、1980年代から2018年にいたるファッションフォトを収録する。1000部限定刊行。
Marfamily Issue 1
ロンドン発のアート/ファッション系インディペンデント誌『MARFA JOURNAL』から派生したプロジェクトの創刊号。俳優のキルスティン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、モデルのナターシャ・ポリー、アーティストのブライアン・ベロットらが参加し、ポートレートや実験的なイメージ、インタビュー、テキストを横断するコンテンツを収録。コラージュ的な手法によってページが構成され、既存の雑誌形式から距離を置きながら、ファッション、アート、カルチャーの交差点で視覚と文章の関係性を問い直す。
The Elements | Choi Yongjoon
韓国・ソウルを拠点に活動する写真家、チェ・ヨンジュンの作品集。前作『Location』(2019年)から3年後の2022年に発表された第二作で、地図アプリケーションや衛星写真を手がかりに、都市景観のなかに潜む幾何学的なグリッドやパターンを切り取る。道路や建築物が有機的に絡み合いながら都市の成長とともに形成されたそれらは、無名のエンジニアや建築家が偶然に生み出した造形美でもある。
The Urban Text | Jon Setter
写真家、ジョン・セッターの作品集。フランスの社会学者ミシェル・ド・セルトーが提唱した「都市のテクスト」の概念を出発点に、シドニーを拠点とするセッターが3年間かけて撮り歩いた69点を収録。建築物の壁面、手すり、階段といった都市空間の断片を幾何学的に切り取り、色彩・質感・パターン・素材の組み合わせへと焦点を絞り込む。日常のなかに埋もれた細部が、見慣れたはずの街の表情を別のものとして映し出してくる。
DAISY 1993-1998 若林奮
2007年に多摩美術大学で開催された、彫刻家・若林奮の展示図録。連作「DAISY 1993-1998」を中心に、鉄や木を素材とした彫刻作品と同時期に制作されたドローイングを収録。立体と線描が並行して掲載され、形態の変化や反復を通じた制作の展開が段階的にたどれる。線と量感のあいだを往来する思考の過程があらわれ、素材の物質性や空間と視線への関心が作品全体に一貫している。
ロック・エンド | 阿木譲
ロック・エンド/「ロック・マガジン」編集長で音楽評論家の阿木譲によるショートエッセイや金坂健二、渋谷陽一、今野雄二、細野晴臣、松岡正剛との対談を収録。それぞれが、ロック、パンク、テクノなどの近代音楽について語る、80年代のプラスティックな質感をそのまま綴じ込めた1冊。巻末には音楽系譜、年表、レコード一覧を掲載。装丁は戸田ツトムと松田行正。
マーク・ロスコ展
1995年に川村記念美術館ほかで開催されたマーク・ロスコの展示の図録。初期の具象作品から、滲むような色の矩形が重なるカラーフィールド絵画の成熟期まで、ロスコの画業を代表作とともに辿る。大画面を満たす色彩の層は、見る者の感情に直接働きかけることを意図したもの。作品図版のほか、講演メモや手紙、インタビューのテキストも収録し、絵画の背後にある思想と言葉を併せて読むことができる。
石内都展 ひろしま/ヨコスカ
2008年に目黒区美術館で開催された展示の図録。写真家・石内都の初期から現在までの仕事を辿り、東京初公開となる新作『ひろしま』を加えた構成で、その全貌を収める。「風景・「ヨコスカ」から」「時の身体/身体の時」「不在の肉体・「ひろしま」へ」の三部に分かれ、横須賀の風景やアパートなどの生活空間、同世代の身体、そして死者の衣服や遺品へと向かう石内の主題の変遷が読み取れる。『絶唱・横須賀ストーリー』『Mother's』『ひろしま』ほか既刊写真集のアーカイブと解説を、カラー・モノクロ図版とともに収録。
ゲルハルト・リヒター ATLAS
2001年に川村記念美術館、広島市現代美術館、大分市美術館を巡回した展覧会の図録。現代アート界の巨匠、ゲルハルト・リヒターが1962年から収集・整理し続けてきたアーカイブ作品「ATLAS」を中心に構成。新聞・雑誌の切り抜き、スナップ写真、スケッチなどから成る655枚のパネル(2001年時点)の図版を収録するとともに、1960年代から90年代の油彩作品11点も掲載。ヘルムート・フリーデルと林寿美による解説テキスト、「ゲルハルト・リヒターの言葉」、年譜も収める。
ピカソとジャクリーヌ その愛の叙事詩
写真家、デイヴィッド・ダグラス・ダンカンによる作品集。パブロ・ピカソの晩年期を中心に、妻ジャクリーヌ・ロックとの関係に焦点を当てた記録で、アトリエで制作に向かう姿や室内での休息、庭で過ごす日常、二人のやり取りが連続する写真で構成されている。創作の現場と私生活が同じ時間の中で並行し、制作の緊張と生活の穏やかさが交錯する場面が収められる。芸術家としてのピカソと、ひとりの人間としての姿が同時に現れ、晩年の時間の流れと周囲との関係が写し取られている。
Small Town / Kleinstadt | Ute Mahler, Werner Mahler
ドイツの写真家デュオ、ウーテ・マーラーとヴェルナー・マーラーによる作品集。人口5000〜20000人規模の「小さな町」をテーマに、2012年以降ドイツ各地を巡って撮影されたモノクロ作品を収録。人影の少ない広場、閉ざされた商店、静かに老いていく風景などを、大判カメラを用いて時間が止まったかのような町の空気や佇まいを丁寧に写し取っている。若者が去り、存続の岐路に立つ地方都市の現在を、感傷に流れることなく見つめた一冊。
Pluie et vent | Abbas Kiarostami
映画監督・写真家、アッバス・キアロスタミによる写真集。2007年の嵐の日、テヘランを離れた車内から、都市や郊外の風景を即興的に撮影したシリーズが収められている。フロントガラスを流れる雨越しに、濡れた樹木の輪郭や揺らぐヘッドライト、道端の壁の色彩が断片的に現れ、視界の不確かさそのものが画面の主題となる。色彩は抑制され、灰色や黒が支配的なトーンの中で、光と気配が静かに交錯する構成。映画的な時間感覚と写真の即時性が重なり合い、見ることの感覚をあらためて問いかけている。
グレース ファッションが教えてくれたこと
ファッション誌『VOGUE』US版で長年クリエイティブ・ディレクターを務めたグレース・コディントンによる回想録。モデルとしてキャリアをスタートし、編集者として数々の伝説的なヴィジュアルを生み出してきた彼女の人生と仕事哲学が、率直な言葉で綴られている。流行や成功の裏側にある試行錯誤、創造性への誠実な姿勢、ファッションを通して学んだ人生の教訓が詰まった一冊。
花森安治の仕事 デザインする手、編集長の眼
2017年に世田谷美術館で開催された展示の図録。生活雑誌『暮しの手帖』の創刊編集長として知られる花森安治の仕事を、学生時代から晩年まで辿る。表紙画やカット、レイアウト、新聞広告まで誌面のあらゆる要素を自ら手がけた花森は、一切広告を入れない編集方針のもと発行部数100万部近くまで雑誌を育て、家庭向けの商品テストや食品添加物・公害問題への批評を誌面で展開した。戦時中の大政翼賛会での仕事にも着目しつつ、ひとつの雑誌を超えた「運動」としての出版活動を、稀少資料とともに振り返る。
Imagination of Letters
書体開発を手がける株式会社モリサワによる作品集。1973年から1996年にかけて制作されたポスター125点を収録し、田中一光、亀倉雄策、勝井三雄、細谷巖ら日本を代表するデザイナーによる作品が並ぶ。書体やレイアウトを通じた視覚表現として文字を捉え、情報伝達の役割にとどまらず文字を図像として扱う試みが各作品に読み取れる。文字とイメージの関係性を主題に、書体・印刷技術の変遷とも重なる23年間の軌跡。アートディレクションは田中一光。
Openness and Idealism: Soviet Posters 1985-1991
1980年代後半、ミハイル・ゴルバチョフ政権下で進められた情報公開政策グラスノスチのもとで生まれたソ連ポスターを集成したグラフィックデザイン集。国家主導の社会主義リアリズムに代わり、色彩豊かで実験的な表現が台頭した時代の空気を約200点超の図版で伝えている。体制の変化と解体を目前に、歴史や社会を批評的に見つめ直したポスターの役割を、研究者の論考や作家インタビューとともに読み解き、ソ連末期における視覚表現の転換を振り返る。
Something Strange This Way カーディフ&ミラー展
2017年に金沢21世紀美術館で開催された、ジャネット・カーディフとジョージ・ビュレス・ミラーの展示図録。インスタレーション作品やサウンドを用いた空間表現を中心に、映像スチル、会場風景、制作資料、テキスト解説を収録。音と映像を組み合わせた作品は鑑賞者の移動や視点の変化によって成立し、その体験の構造が図版と記録を通じてたどれる。時間と空間をめぐる知覚のずれや重なりを主題に据えたふたりの方法論を、展示の全体像とともに把握できる図録。
Bailey’s East End | David Bailey
写真家、デイヴィッド・ベイリーの作品集。ロンドン東部のイースト・エンド、とりわけシルヴァータウンとキャニング・タウン地区を中心に撮影した写真を収録。1960年代、1980年代、2004〜2010年という3つの時期に撮り溜めた作品から構成され、ロンドン・ドックの閉鎖と地元民たちの東への移動という歴史的変容を記録している。母はボウ、父はハックニー、祖父はベスナル・グリーン出身というベイリー自身のルーツと深く結びついたドキュメント。
ヴォルフガング・ライプ展
2003年に東京国立近代美術館で開催された展示の図録。医学から芸術へと転じたドイツの彫刻家、ヴォルフガング・ライプの代表作をカラー図版で収録。牛乳を湛えた大理石の板「ミルク・ストーン」、野山で採集した花粉を床に四角形に敷きつめた作品、蜜蝋パネルによる部屋や回廊のインスタレーション、大がかりな舟のインスタレーションなど、自然物を素材に生と死の連環を問い続ける仕事の全体像を伝える。
Sheraton Years Book
1990年代のストックホルムを舞台に、スケートボーダーたちの日常を記録した作品集。地下駐車場やホテル周辺の広場、路上、安酒場といった都市の隙間に集まる若者たちを追い、滑走の瞬間だけでなく仲間と過ごす時間も繰り返し写し出す。粗い粒子のモノクロ写真に当時の空気と夜の都市の質感が色濃く残り、社会の周縁に置かれた若者たちのあり方を親密な距離感でとらえている。