アメリカ最大のネットワークを有する放送局CBS社の副社長であり、クリエイティブディレクターとして40年に渡ってCBSのコーポレートイメージを高め、築き上げたルウ・ドーフスマンをご存知でしょうか?今回は、いまなおデザイナー達に多大な影響を与え続けるドーフスマンのグラフィックワークの数々を記録した一冊をご紹介します。
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CBSに関するすべてのグラフィックに対するディレクションを一任され、数々の新聞広告、レターヘッド、エレベーターのボタン、食堂ディスプレイ、サインまで、統一したイメージを作り上げます。
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CBSといえば「
The Unblinking Eye(瞬きしない目) 」。ロゴ自体のデザインは別のデザイナーが手がけたもので、実は変更される予定だったようですが、社長の鶴の一声で継続使用が決まりました。このロゴをドースフマンはあらゆる制作物に繰り返し使うことで、アメリカで誰もが知るロゴとして定着させました。
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ドーフスマンのグラフィックワークは、ニューヨークタイムス紙が当時「
明確なタイポグラフィ、シンプルなスローガン、スマートなイラストレーション 」と評した通り、力強いタイポグラフィを多用したシンプルなものばかり。50年以上経過した現在でも全く色褪せません。
シンプルなメッセージを大きくレイアウトすることで、人びとの印象をより惹きつけることに成功しています。当時の日本人グラフィックデザイナーの作品にも、ほとんど模倣といえるほど近しい作品があることから、世界中に影響を与えていたことがわかります。
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ステーショナリーのフォーマットデザインの指示。細かい指示が入っています。「常に7ラインを空ける」「一番下はここまで」
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食堂には食にまつわる単語で埋めつくされたタイポグラフィの壁を。インパクト絶大です。スペースに何やら魚を入れているようですがイミテーションでしょう。これもいろんなところでオマージュのような作品を見ます。
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CBS本社自体のデザイン設計では、エレベーターのサインやフロア階数、それぞれの部屋に掲げるプレートなどもディレクションしています。
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人類初の有人月面着陸を記念してCBS放送が発行したメモリアルブックでは造本設計を担当しています。月面さながらのテクスチャーをエンボス加工で表現。
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10:56:20 PM 7/20/69
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ハーブ・ルバーリンとルウ・ドーフスマン。良い笑顔です。ドーフスマンは2008年90歳で亡くなりました。人生のおよそ半分をCBSのコーポレートイメージの向上と統一のために捧げたということですね。
"CBS has a corporate commitment to excellence in design, and Lou Dorfsman is the one whose genius has translated that commitment into reality. Deservedly, he has become a legend in the annals of commercial design."
CBS創設者ウィリアム・S・ペイリーの言葉が残されています。企業側もデザインの力を信じて、ドーフスマンに全幅の信頼を持っていたのがよくわかります。