部屋はあったかくて居心地が良いし、インターネットにつながれば退屈しないし、音楽も映画も読書も楽しめるし。でも、最近なんだか身も心も打たれ弱い。徹夜で仕事などしようものなら、翌日は屍。地下鉄の階段の登り降りで筋肉痛。加齢もありますが、ぬるま湯にどっぷり浸っているうちに、生き物としてのたくましさを失ってしまったのではなかろうか。と、漠然とした不安を覚える今日この頃。
そこで、なんとはなしに店頭よりアウトドア本をセレクトしてパラパラと目を通してみたところ、思いのほか好奇心をそそられましたのでここにまとめてみたいと思います。全国のインドア派におくるアウトドア本 5選、はじまります。
野宿だってアウトドア
とはいえ、いきなり大自然へ飛び出すのはとても危険。なので、まずは街なかから。そう、野宿です。体力があり余っていた10代の頃は終電を逃しては路上で夜を明かしたりもしていましたが、大人になってからはそうそう経験する機会はありません。段ボールや寝袋をはじめとする野宿グッズの紹介、季節や天気に応じた快適な野宿ポイントの選び方など、この1冊があれば野宿スキルは格段にアップすることでしょう。いざという時に役立ちそうです。ただし、野宿には都会ならではの危険もともないますし、場合によってはお巡りさんに連行される可能性もございますので、くれぐれも気をつけましょう。
段ボールは立派な寝具。
段ボールは立派な寝具。
腹が減っては冒険はできぬ
寝床の次は食料です。ジビエは無理でも、野外で食べる料理は格別に美味しいもの。ということで、野外における調理の知識は必須。本書は薪や燃料、食材ごとに分類されたレシピ集、後片付けの仕方など、アウトドアクッキングに必要な知識が詰まった1冊。初心者でもトライしやすい内容のためか、ノストスブックスの意外なロングセラー本でもあります。よりワイルドな上級者にはC.W.ニコル著「冒険家の食卓」もおすすめです。
歩く人のためのバイブル
徐々にエンジンが温まってまいりました。そもそもですが、どうして体を動かすとスッキリ爽快な気分になったり、気分転換ができるのでしょうか。「なぜ歩くのか?」というシンプルな問いに対して本書の著者であるコリン・フレッチャーはこう答えています。「身も心もひどく傷めつけられ、傷ついたときでも、薬の世話にならずに元気を回復できる唯一の妙薬が、ウォーキングであるからだ」と。ストンと、腑に落ちることばです。出版されてから40年ちかくの時を経てもなお、旅人たちのバイブルとして根強い人気を誇る理由は、時代に左右されることのない人の本能に基づくウォーキング哲学にあるのかもしれません。本書は2012年に文庫版でも復刻されています。
あまりの冷え込みに耐えかねて先日は寝袋で寝ました@自宅。マミー・スタイル最強。
あまりの冷え込みに耐えかねて先日は寝袋で寝ました@自宅。マミー・スタイル最強。
バックパッカーのエンサイクロペディア
「遊歩大全」を紹介するのならば、こちらの「バックパッキング入門」も加えねばなりません。「遊歩大全」が精神論も含めたアメリカ的バックパッキング全書であるならば、こちらは日本人向けの実用書。ギアのディテールから、その使い方、手入れの方法まで、膨大な情報が詰め込まれています。著者の芦沢一洋氏といえば、日本におけるバックパッキングブームの火付け役。ページを通して、節度を持って自然と向かい合う思想と、道具への深い愛情が伝わってきます。実用性とデザインの良さ、双方を愛したって良いじゃない。と思って購入したものの、いまはクローゼットに眠るゴアテックスのジャケットやトレッキングシューズ、バックパックたちを想ってわたしはいま猛省しています。
バックパッカーたちに思想的な影響を与えたもののひとつ、「ホール・アース・カタログ」。
挿画は小林泰彦氏。
バックパッカーたちに思想的な影響を与えたもののひとつ、「ホール・アース・カタログ」。
挿画は小林泰彦氏。
パタゴニアの歩んできた30年
文字から得る知識も大切ですが、ビジュアルブックによるイメトレも重要ですね。最後にご紹介するのは、アウトドアブランド、パタゴニアが展開してきた過去30年分の広告を集めた写真集。アウトドアスポーツを楽しむ人びとだけでなく、野外で働く人びと、雄大な自然のランドスケープ、野生動物など、自然との結びつきを重要視した写真が大量にアーカイブされています。タイトルの「Unexpected」とは「思いがけないこと」。撮影者はプロカメラマンだったり、一般の旅行者だったりと様々ですが、それぞれが出会った思いがけない最高の瞬間を切り取ったもの。眺めているだけでもわくわくします。