先日訪れた上野の国立科学博物館。こどもの頃から好きな場所でしたが、大人になっても楽しめる、いえ、むしろ大人の方が満喫できる素晴らしい展示内容。ちびっこにまぎれて科学のおさらいをするもよし、化石や鉱物を静かに愛でるもよし。昭和初期に建造された日本館の重厚な佇まいを眺めるだけでも、一日中飽きません。さらにミュージアムショップには魅力的な図鑑がたくさんありまして、目移りしてもう大変。もうここに住みたい。
ああ、ノストスブックスも図鑑を増やしたいなあと思いつつ、今回はクラシックな図版をふんだんに掲載しているものを中心に、大人もたのしめる図鑑または博物誌をまとめてみました。
史上最美の植物図鑑
イギリスの植物学者/ロバート・ジョン・ソーントンが制作したリンネ植物分類解説図集を、荒俣宏が編纂。ヨーロッパの博物図鑑愛好家のあいだで古くから「史上最美の一冊」と折り紙をつけられてきた名著の復刻版です。大判サイズで美しい装丁がとても贅沢な、絵で見る植物図鑑!
学術の域を超えたロマンティックで艶やかな花達が、鮮やかに紙面を飾っています。
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天文学者ヨハネス・へべリウスからの贈りもの
月の地形学の父として知られるポーランドの天文学者、ヨハネス・へべリウスの星座図絵。巻頭と巻末では、近代ヨーロッパ天文学に足跡を残したヘベリウスと、サマルカンド(現タシュケント)の天文学者ウルグ・ベグの業績を照らし合わせながら解説。ページいっぱいに印刷された56点の美しい星座図が目をたのしませてくれます。
画像は日本の春の夜空で観察できるおとめ座、おおぐま座、からす座。
星が見える夜は探してみてはいかがでしょう。
こちらは北天図。それぞれの星座にまつわるストーリーも知りたくなりますね。個人的にはろくぶんぎ座、みなみのさんかく座、コンパス座などお道具系の星座がお気に入りです。
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星が見える夜は探してみてはいかがでしょう。
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近代西洋版画を読み解く
こちらは近世ヨーロッパでさかんに制作された版画を、マスメディア的な観点から紹介した図像集。博物図鑑、寓話の挿絵、風景、人物、幻想画、記録図、解剖図の7篇にわけ、カラー図板をはさみながら丁寧な解説が添えられています。くわえて巻末には版画の種類や彩色方法、入手方法などのガイドが掲載されており、技術的な側面でも参考になる1冊。
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小さきものたちへの讃歌
ホルヘ・ルイス・ボルヘス:奇怪で不思議ないきもの辞典
ホルヘ・ルイス・ボルヘスといえば幻想的な文学作品が思い浮かびますが、こんな異色の著作も。ケンタウロス、一角獣、チェシャ猫など、人類が創造した東西古今の120の空想上の生物をあつめて解説した辞典です。楽しく読める1冊。
あとがきに代えて、最後の”怪物”として紹介されているのがボルヘス本人。本書を手にとったなら、翻訳者の柳瀬尚紀によるこの洒落の効いたエンドロールまでぜひ目を通してみてください。
あとがきに代えて、最後の”怪物”として紹介されているのがボルヘス本人。本書を手にとったなら、翻訳者の柳瀬尚紀によるこの洒落の効いたエンドロールまでぜひ目を通してみてください。