オランダを代表するグラフィックデザイナー、カレル・マルテンスの作品集「printed matter」。printed matterとは印刷物のこと。長いキャリアの中でマルテンスが手がけたブックデザイン、エディトリアルデザイン、ポスター、切手、カードなど多岐にわたる印刷物をまとめあげた貴重な作品集です。
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全ページが袋とじで仕上げられ、造本、レイアウトも非常にユニークで実験的な一冊です。ざらざらとした紙に印刷された、色彩豊かな幾何学模様とシンプルなタイプフェイス、モノプリントが生み出す絶妙な擦れ。眺めるだけでも創造意欲をかきたてられます。
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コラージュのように色を重ね、隣り合わせ、紙面で繰り広げられる色彩実験は紙の色も計算済み。時には既存のカードやカタログの上に印刷を施す遊び心も。異なる色を多用しながらも、決してぶつかることなく調和された組み合わせにセンスが光ります。青いバナナ、緑のモナリザ。描かれる物体たちは本来の色を忘れ、また新たな表情をのぞかせます。
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また、マルテンスは優れたタイポグラファーとしても世界的に高い評価を得ています。文字という情報を伝える「道具」も、彼にとってはもはやオブジェに見えるのでしょう。デザインはもちろん、重なりや組み合わせを追求したタイポグラフィは、シュルレアリスムの「ファウンド・オブジェ」のごとく使用価値に美的価値を付加されています。
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第2版は、新たに24ページが追加された増補版となっております。グラフィックデザインやタイポグラフィ、色彩、さらには印刷見本として、お手元にどうぞ。