実はこれまで2回ほど入荷したことがありながら、すぐに店頭で売れてしまい、なかなかブックレビューが書けていなかった本書。3回目の正直でやっとみなさんにお披露目できます。
こちらはデザイン集団・メンフィスの創設者のひとり、ナタリー・デュ・パスキエの作品集。メンフィスはイタリアのポストモダンを代表するデザイン集団で、その斬新かつポップなスタイルはデザインや建築界に多大な影響を与えました。

収録されているのは、パスキエのアトリエに保管されていた未発表のドローイングの数々。タイトルにある通り1981年から87年の間、つまりわずか6年の間に手掛けたものとは思えないボリュームです。
テキスタイルのようにパターンだけをクローズアップして見られるのもありがたい。

バッグなどのファッション小物から、衣服、建築まで様々なモチーフが収録されていますが、やっぱり特に目立っているのはメンフィスのために描いた家具でしょうか。改めて見ると、メンフィスの生んだプロダクトはこういったドローイングを限りなく忠実に具現化しているのだと驚かされます。

ついついメンフィスの作品集と見比べながら楽しんでしまいましたが、
『Arranging Things: A Rhetoric of Object Placement』に掲載されているペインティングもパスキエが描いたものなんですよ。タッチや質感がメンフィスのために描いたものと全然違っていて面白いので、併せてご覧いただくとまた違う魅力をお楽しみいただけるのでは。