久々にご紹介できるベッヒャー夫妻。淡々とした呼吸のなかに見え隠れする情熱に、毎回心を打たれます。
立ち並ぶのは給水塔、冷却塔、石灰窯、濾過機、そして溶鉱炉といった工業建造物。ベッヒャー夫妻の写真集には、「給水塔」や「溶鉱炉」など被写体をひとつに絞ったものも多数出版されていますが、本書にはさまざまな建造物がまとめて収録されてます。
タイポロジー的手法によって浮き彫りになる類似点と相違点。規則的に並ぶ直線や、歯車がつくる円と曲線、朽ちはじめた資材も、途端に意味を持ちはじめます。
本来アートやデザインを目的としていないはずのものたちが、夫妻のフィルターを通すことでゆるぎない美を備えるのです。
アンドレアス・グルスキーやトーマス・ルフなど、ベッヒャーから影響を受けた”ベッヒャー派”と呼ばれる写真家たちも多くいるので、彼らの作品のなかに師からの影響を探すのも楽しいですよ。
ドイツ出身の写真家、ガッツ・ディアガートゥンの作品集『Gotz Diergarten: Photographs』も最高なので、よかったら一緒にご覧ください。