建築界のノーベル賞に例えられるプリツカー賞を受賞し、ミース・ファン・デル・ローエやル・コルビュジエに影響を受けたモダニズム建築の継承者ともいわれるアルヴァロ・シザ。『Alvaro Siza: Expor On Display』でも氏の代表的な建築作品を見ることができますが、そこに収録されているものとはまた異なる魅力をまとった作品を、今日はご紹介したいと思います。
本書はポルトガルの建築雑誌『a.mag』が、一冊につき一作品を紹介する「AMAG Square Books」シリーズ。こちらのシリーズ第7弾で紹介されてるのが、ポルトガルを代表する建築家、アルヴァロ・シザが手掛けたベイレス邸です。
中庭を取り囲むかたちで設けられた大きな窓ガラス、そしてその窓から注ぎ込まれる明るい光と緑。非凡でありながら、周囲環境との調和が図られた詩的な空間に、思わず時を忘れて眺めてしまいます。
雨風にさらされた黄土色の外壁は黒く汚れ、室内は天井にできた雨漏りのシミや内壁の亀裂なども修繕がされぬままになっていますが、それらの堆積によって宿る美しさがある。40年の歳月がもたらした生活の痕跡こそが、この邸宅のあるべき姿であるといわんかのようです。