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トリノの広告に革新を起こしたデザイナー、アルマンド・テスタとその作品。
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トリノの広告に革新を起こしたデザイナー、アルマンド・テスタとその作品。

Armando Testa

Armando Testa

メキシカンハットが印象的なカバレッロと彼に恋するカルメンチータ、青い大きなカバのヒッポ。もしかしたらご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
これらはイタリアのグラフィックデザイナー、アルマンド・テスタが生み出した最も有名なキャラクターと言われています。

生まれてから亡くなるまでイタリアはトリノでその生涯を送ったアルマンド・テスタ。1937年、20歳の頃にICIのポスターでコンテストの優勝を獲得したことで、本格的に広告業界で働くようになります。
お酒そのものを王様として擬人化したCARPANOのポスターや、そのブランド名をヴィジュアル表現に落とし込んだPunt e Mesのポスターなど、そのユーモアあふれるデザインで広告業界における革新者として活躍しました。

さて、冒頭でも紹介したカバレッロとカルメンチータですが、彼らはイタリアのテレビ広告番組「Carosello」で放送された広告に登場するキャラクターです。この背景を調べてみたらすごく面白くて。

戦後のイタリアでは急速な経済発展による消費社会が到来し、テレビの普及も飛躍的に進んでいました。そんななかで放送がはじまったのがRai(イタリア放送協会)による「Carosello」。
まだ規制が厳しかったテレビ業界ではCMの放送自体が難しく、数分のモノクロアニメーション作品に、約30秒ほど商品のプロモーションを付け加えるというかたちで広告がつくられました。こうして生まれたのが、「テレビ広告番組」というイタリアの特有の広告手段だったのです。

広告というよりもアニメーションが主体であったため、子供から大人まで楽しめる国民的人気番組となり、さらに当時方言が中心だったイタリアの人々に標準語を普及させる役割を果たしたともいわれています。そんななかで人気キャラクターを生み出したアルマンド・テスタの、影響力と功績がどれほど大きかったか想像できますね。

イタリアのデザインと、それが庶民の生活に与えた影響...まだまだ深掘りのしがいがありそうです。

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ノストスブックス店長。前職では某テーマパークのお姉さんや、不動産会社の営業をしていました。小説とクラシックなものが好き。一緒に、好きだと思えるものを沢山見つけましょう。