言わずとも知れたタイポグラフィーの巨匠、スイスのウォルフガング・ヴァインガルト。数々のタイポグラフィ作品を生み、指導者としても活躍したことで、数えきれないほどのデザイナーに多大な影響を与えました。

本書はそんなウォルフガングの40年間にわたる活動を、500ページにわたって収録した作品集。

特に興味深いのは、1962年からはじまったアルファベットのMを用いた実験「The Letter M」。

レタリングや、活版印刷をした文字を立方体に貼り付けて撮影するなどの実験をとおして、文字の三次元的な遠近法や、形状への発見をしました。

はじめにMに興味をもった理由を、「Mは自分自身を差す矢印」で、「私は何年にもわたってMの字に従った」と語っているところも面白い。
ちなみにそのほかの文字についても、Bは壊れやすい花、Zはまぶしい稲妻、Lは3時、Wは飛んでいく鳥…と表現しています。

ウォルフガングが作品の数々を生み出すプロセスまでをも感じられる『My Way to Typography』。氏の文字への旺盛な好奇心と、深い探究心が、今日のデザインの歴史をつくっていることが分かる一冊です。