ベッヒャー派もニューカラー派も、わたしはノストスで働くようになってから知ったのですが、そんな素晴らしい2つの流れを汲んだ作品に新たに出会いました。好きじゃないわけがありません。

著者であるガッツ・ディアガートゥンは、デュッセルドルフ美術アカデミーでベッヒャー夫妻に教えをうけたドイツ出身の写真家。ドイツのファサード、フランスのビーチハウス、イギリスのシーサイドリゾートなどを捉えた作品には、厳密な構成基準に従ったタイポロジー(類型学)的手法が用いられています。

そして色彩もガッツ・ディアガートゥン作品を語る上で重要な要素のひとつ。1970年代頃の、ウィリアム・エグルストンやスティーヴン・ショアといったニューカラー派と呼ばれる写真家からの影響をみてとれるのです。
図鑑的な側面をもつタイポロジー作品に、絵画的な視点が加わったともいえるでしょうか。

壁の模様やドアのかたち、そして空や地面といったすべての要素が、フラットな視点と繊細なトーンでまとめあげられた非日常感。
うまくいえないけれど、言葉少なに、ただただのめりこんでしまう不思議な魅力を放つ一冊。