どうしてこうも惹かれてしまうのでしょう。抽象的でありながらも、どこか可笑しみを感じる生命体のような雰囲気をもったハンス・アルプの作品。コラージュやアッサンブラージュの手法をつかった絵画や、石膏やブロンズなどを使用した彫刻作品は、曲線や丸みを帯びたフォルムが特徴です。
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本書におさめられている、1950年代から60年代に制作した人形シリーズ「Poupees」も、ひと目見ただけでアルプのものと分かる作品ばかり。人形シリーズ、といっても目や口、髪の毛が描いてあるものばかりではありません。
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それなのに眺めていると、ゆらゆらとした曲線で形づくられた紙や彫刻やドローイングが、それぞれ個性をもった人や動物に見えてくるから不思議。首を傾けているもの、まっすぐと立ってこちらを見ているもの。太っちょだったりやせっぽっちだったり…。
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さらに、作品と並んで詩も掲載されており、氏の詩人としての一面も感じることができます。あわせて読んでいただくと、手触りの良いハードカバーの本書がより宝物のように感じられることと思います。