アメリカを代表するタイポグラファーとして名高いハーブ・ルバリン。ですがルバリンは自らのことを"優れたタイポグラファーとは思わない"と語っています。その理由を作品を通して明らかにしているのが「
Herb Lubalin: Typographer」。
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本書ではラルフ・ギンズバーグと共同で手がけた雑誌「Eros」「Fact」「Avant Garde」、そしてタイポグラフィー専門誌である「U&lc」をはじめ、氏の作品の数々がタイポグラフィに焦点を当てて幅広く紹介されています。
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文字と文字の余白を自在にカットし、デザインの視点から組み直していく。
規則や定石に縛られることのないクリエイティブな表現は、タイポグラフィを単に文字を頁の上に配置する技法としてだけでなく、アイデアを適切に受け手に伝えたり、単語やフレーズの意味を増幅さるために用いることで、一段階上の水準へと押し上げたのです。
文字をイラストや写真、グラフィックなどと同列に語った点から見ても、いわゆるタイポグラファーとは一線を画していると言えますね。
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作品の下部に掲載されている解説も簡潔ながらおもしろいです。1980年発行の「U&lc」の表紙に書かれている文字はヘブライ語「שלום(平和)」だったとは。いやはや見応え読み応え十分の一冊です。(なつき)