「ニューヨーカー」や「ハーパース・バザー」などでイラストを手掛け、一コマ漫画の世界で一斉を風靡したソウル・スタインバーグ。
シニカルかつユーモア溢れる作風も魅力ですが、わたしはなんといっても針金のように細い線でちくちくと縫うように描かれた独特のタッチが好き。
街を行き交う人々や車の列、一風変わった植物のかたち、所々に散りばめられた文字。主人公不在のまま広がる世界は、その中で繰り広げられる小さな起承転結を無限に想像させます。
スタインバーグが大学の建築学科を卒業していることもあってか、実在する建築物のみならず架空の個性的な建物も頻繁に描かれるのですが、これがまたよくてですね。
緻密に書き入れられた窓の数だけ、扉の数だけその奥には物語がある。そんなことをスタインバーグが考えたかはわかりませんが、一枚のイラストの中に無数のストーリーを閉じ込めるスタインバーグらしいモチーフだなといつ見ても思うのです。