今日のおすすめ本の主人公は、ドイツで生まれ、アメリカで活躍した写真家・ハンス・ナムス。アレクセイ・ブロドヴィッチに見出され、アクション・ペインティングの生みの親であるジャクソン・ポロックをはじめ、マーク・ロスコ、ジョゼフ・コーネルなど、前衛的なアーティストのポートレートを撮影したことで知られています。
そんな氏がオリベッティ社から依頼されて撮影した、アメリカ先住民の「TOOL」(道具)。人の手によってつくられ、使われてきた古道具は、ナムスの手にかかると、歴史的な人物のポートレートに負けない存在感を放ちます。それらは石や木や鉄のはずなのに、職人のごつごつした指や、年月を重ねた皺のように見えてくる。
実はこの写真集、米国独立後200周年を記念してつくられたもの。アメリカが200年に渡って歩んできた歴史を、風景写真や人々の姿で辿るのではなく、広大な土地を切り拓いてきた道具でみせる。そしてそのカメラマンに、ハンス・ナムスを選んだオリベッティ社に、拍手を送りたくなります。