木や銅をつかって作られた鳥のモビールからはじまり、ウルトラマンセブンの匙やフォーク、実物顔負けのおままごとセット、かまぼこ板と紙粘土のお雛さま。金工作家の長谷川竹次郎が、1歳から20歳まで、ふたりの子どもに贈り続けた手作りのおもちゃたちです。
明治より代々続く茶道具金工家のもとに生まれ、人間国宝・関谷四郎氏に師事し、洗練された茶道具を作り続ける長谷川竹次郎。その制作が終わった夕方からはじまる、子どもへのおもちゃづくりは、深夜にまでおよんだそう。
『父の有難う』では、一つ一つのおもちゃを、妻であり、自身も金工作家である長谷川まみによるエピソードとともに紹介しているのですが、どれも遊び心と愛に満ちていて、くすっと笑えたり、胸が熱くなります。子どもに贈るから"こどもらしいもの"、というのではなく、本人が本気で(そして楽しみながら)制作した、本物を手渡したところもすごい。
20歳になった子どもたちへの最後の贈り物は、茶箱。娘に贈った湯沸かし器のつまみには、インドから持ち帰った菩提樹の実。菓子入れは酉年うまれだから鶴の細工付き。息子は留学先のロンドンに持って行ったそう。
言葉少ない父が贈った、心あたたまる、宝物の記録です。