ブックレビューBOOK REVIEW

写真家のバイブル。ブレッソンのとらえた「決定的瞬間」
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写真家のバイブル。ブレッソンのとらえた「決定的瞬間」

The Decisive Moment

Henri Cartier-Bresson

ライカを手に、歴史的な瞬間、感動的な瞬間、美しい瞬間を求めて世界中を放浪した写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソン。国際写真家集団「マグナム・フォト」の創設者であり、20世紀を代表する偉大な芸術家である彼の作品は、今なおわたしたちの記憶にくっきりと刻まれています。

本書はブレッソンの代表的な作品を編纂した「The Decisive Moment(決定的瞬間)」の復刻版。マティスによる表紙デザインも鮮明に再現されています。STEIDLらしい、美しい造本。インクの匂いもまだしっかり残っています。この匂い、好きです。深呼吸をしながら、ページをめくってみましょう。

インドの難民キャンプ、

霧につつまれた北京、

メキシコの人びと、

ピカソの陶器を見つめるマティス、

抽象画のようなイタリアの街角。

本書に収録されている写真作品は、1930年代から50年代にかけて撮影されたもの。現代のようなテクノロジーもない時代。ですが、写真は生き生きと状況を語ります。人びとの会話、音楽、街の喧騒が聞こえてくるかのよう。一枚の写真として完成されているのに、とても映像的で多弁。いつ見てもすばらしく魅力にあふれている、比類なき作品集です。

写真に興味のあるすべての方にご覧いただきたい1冊。

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ブックディレクター。古本の仕入れ、選書、デザイン、コーディング、コラージュ、裏側でいろいろやるひと。体力がない。最近はキュー◯ーコーワゴールドによって生かされている。ヒップホップ、電子音楽、SF映画、杉浦康平のデザイン、モダニズム建築、歌川国芳の絵など、古さと新しさが混ざりあったものが好き。