黒い背景に並べられた石たちは、鈍く光を放っています。触れると硬く冷たいことを頭では理解しているけれど、独特なライティングを使って撮影されたそれらは、まるで命をもった生き物のように見えて仕方ありません。
本書は、インターメディアテクの館長・西野嘉章、デザイナー・原研哉、写真家・上田義彦のコラボレーションで完成した、マニエリスム博物誌3作目。標本類の写真集『CHAMBER of CURIOSITIES』に続き、鳥類標本を撮影した『鳥のビオソフィア』とともに刊行されました。
収められているのは、東京大学総合研究博物館に蓄積された、古い石器、石斧、石剣、石鏃など。百五十万年以上前にアフリカや西アジアで制作されたものから、紀元前五千年前の縄文時代のものまで、100点あまり。
もう壮大すぎて、それらが使われていた風景を想像するのは容易ではないけれど、だからこそロマンを感じるのはわたしだけでしょうか。
人間の祖先が生み出し、長い時間を経て研究のために採掘され、そして上田義彦のフィルターを通して命を吹き返した石の道具。博物館の資料とはまた違った視点でご覧ください。
ちなみに現在、国立科学博物館にて上田義彦の写真展「風景の科学展」も開催中。世界各地の風景写真を科学者の目線で解説するというユニークな展示です。こちらもチェックしてみてくださいね。